もしも、エリスがルーデウスと別れなかったら…   作:あえch

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父は、俺にとって

─アルス視点─

 

俺の父はすごい人だ。

 

「アルス!お父さんはすごいのよ!」

 

すごく強いママがそう言うし。

 

「ははっ。お前の親父はすげえぞ?なんせ、龍神を倒しちまったんだからな」

 

剣術を良く俺に教えてくれるパウロ爺も、そう言っている。

 

「俺の父はすごいんだなぁ」

 

俺は子供ながらにそう思った。

でも、それだけ。実感は湧かなかった。

 

その理由は単純。

あまり接点が無かったから。

 

別に嫌だとは思わない。

父が頑張っているのを俺は知っているから。

 

毎日朝早くから修行に出かけて、難しそうな本をいっぱい読んで。

息を切らしながら「俺が守るんだ…」そう言いながら夜遅くに帰ってくる。

 

吐くほど頑張る父。

みんなに尊敬されてる父。

 

そんな偉大な父。

俺は一生話すことなど出来ないと思ってた。

 

「アルス。今日は俺と一緒に散歩しようか」

 

早朝。少し眠たい身体。

そんな状態で言われた、散歩しようという父からの言葉。

 

瞬間。俺は抱きかかえてくれるアイシャ姉の腕から飛び降りて大きな声を出した。

 

「はい!父上、お願いします!」

 

「ははは、そんなに気負わなくて大丈夫だよ」

 

笑う父、偉大な父。

俺は、そんな父の背中を追う。

ゆっくりと胸を躍らせて。

 

父の背中、前だけを見る俺。

 

だから、気付けなかったのかもしれない。

 

「お兄ちゃん。アルス君のこと、取らないでよ…」

 

後ろで呟くアイシャ姉。

誰にも聞こえないほど小さな言葉。

 

小さく、小さく放たれるアイシャ姉の言葉。

そんな言葉は、俺の耳には…

 

 

全く入ってこなかった。

 

 

─────────────────────────

 

 

「ルーデウス!外行くわよ!」

 

「そんなに急がなくても大丈夫ですよ……」

 

父は、俺の手を握ってママの元へと向かった。

その手は、すごく暖かくて、優しくて、やっぱりすごい人なんだと思った。

 

俺の手を引く父。

そんな父は笑顔を絶やさない。

 

「アルスも来るのね。分かったわ。今日は私が修行をつけてあげる!」

 

この言葉と同時。

まるで当たり前のようにママが父に抱きついた。

 

ぎゅーっと。父のお腹に抱きつく。

髪を揺らして抱きつくママの背中を父が優しく撫でる。

 

「……外に出たら、ルーデウスに抱きつけないから、今のうちに溜めておくわ」

 

「ふふっ。俺は外でも何処でも大歓迎ですよ?」

 

父の片手には俺。

もう片方にはママ。

 

こんな光景。アイシャ姉から聞いたけど、こんな家族を仲良し家族というらしい。

 

仲良し。俺もママを見習って、父の太ももに抱きついてみる。

一生懸命、握ってみる。

 

ぎゅー

 

怒られるかな?俺は目を細くして、不安な目で父を見つめる。

しかし、俺の視界に映るのは偉大な人の大きな笑顔だった。

 

「お、アルスもママみたいに甘えん坊さんか?父さんは嬉しいぞ〜」

 

「ちょっ!私は甘えん坊なんかじゃないわよ!」

 

「えぇ〜?昨晩もエリス、俺のことぎゅーってしてくれたじゃないですか」

 

「なっ!?あれは、ルーデウスがキスしてくるから……ルーデウスが悪いの!」

 

この言葉を聞いて、ふふっと笑う父。

俺も真似して笑ってみる。

 

「へへへ、へへ…」

 

父と仲良くなれるように頑張る。

父の反応は?

 

「す、すごい苦笑い…でも可愛いな〜」

 

流石はエリスの子供だ!と言って抱えられる俺。

言葉と同時。さらに大きく笑う父。

 

抱っこされる俺と笑う父。

そんな光景のまま…

 

俺は、父とママに挟まれて早朝の散歩に出かけた。

 

 

─────────────────────────

 

 

「やっぱり、エリスは強いな」

 

「……いや、ダメね。ルーデウスが、あの鎧を着てたら私は負けてたわ」

 

ぜぇ、ぜぇと呼吸を乱す俺の視界に映るのは、倒れる父と、それを見下ろすママの姿。

俺が呼吸を乱す理由は単純。

あまりにも父とママのトレーニングが大変だったから。

 

「アルス、無理しなくて良いからな?」

 

「だ、大丈夫です。せっかく父上が居るんだから…」

 

座り込む父が俺に声をかけてくれる。

心配の声。俺は、それを聞きながら考えていた。

 

(長い走り込みと速くて鋭い素振り。父上とママが結婚してから十年ぐらいって、白ママから聞いたけど……毎日こんなことをしてるのか)

 

ほら、俺のお腹で休憩しますか?と呟く父と、汗臭いわよ?と心配するママ。

それでも良い!と元気よく話す父と、ダメ!と怒るママ。

 

仲良く話す二人。

俺は、そんな父とママを見つめながら呟く。

 

「父上は強いって聞いてたけど…それでも、ママの方が強いんだ」

 

小さな呟き。

そんな呟きに反応してくれるのは白ママだった。

 

「ルディは、闘気を纏えないからね。見えてても反応出来ないんだよ」

 

座り込む俺の隣に立つのは白ママ。

俺のママが俺に教えてくれる。

 

「ボクも、最近闘気を纏う練習してるんだけど。やっぱり闘気が有るのと無いのとじゃ全然違うからね」

 

そう言って指を刺す白ママ。

その先は父の目。

 

「ルディの視線。それを見ると、すごく勉強になる」

 

その言葉。

俺は父の姿を見る。

 

鳴るのは、ガン!という木刀がぶつかる音。

いつのまにか休憩は終わっていたようで、父とママが木刀を振るっていた。

 

じっくりと見る。

じっくりと、じっくりと父を見る。

 

視線だけ。見ていると、すごいことに気付いた。

 

「すごい。なんか、目がギョロギョロ動いてる…」

 

俺の言葉。それを聞いた白ママがクスクスと笑う。

すごいことに気付いた俺。それを白ママが解説してくれる。

 

「目がギョロギョロ動く。そうだね、ルディは要所を見る力がすごいんだ。足の先から頭の先まで…相手がどうやって動くのか、しっかりと見てる」

 

要するに観察眼がすごいんだと興奮気味に話す白ママ。

少し難しい。俺は完全に理解することが出来なかった。

 

でも、これだけは分かった。

 

「やっぱり、父上は誰よりも強いんだ…」

 

俺の父、七大列強二位の父。

誰よりも強くて優しくて偉大な父。

 

そんな父は、俺にとって輝きを放つ存在だった。

 

「いつか、父上みたいに俺もなってみたい…」

 

父と修行した日。今日という日を俺は忘れることはない、いや、忘れることは出来ないだろう。

 

それほどの一日。

俺の尊敬する父、家族から褒められる父。

 

そんな父。

しかし、この数日後に聞いた父の情報は、尊敬とは真逆のものだった。

 

「なんで、なんで……そんなことするんですか?」

 

俺の見た父、偉大な父。彼は…

 

…白ママを、地下室に閉じ込めていたんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一部で、一番好きなのは?(参考にさせていただきます)

  • 序章
  • 冒険編
  • 学園編
  • 迷宮編
  • アトーフェ編
  • ロキシーと治癒魔術
  • 老人の日記
  • VSオルステッド
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