もしも、エリスがルーデウスと別れなかったら…   作:あえch

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5月28日 文体を大幅に変更しました。


愛情と、止まらない嫉妬

 

 

魔法大学にルディが来た。

特別生の入学試験。そんな理由でボクは彼と対峙する。

 

ルディはカッコいい。大きな杖を持つ所も、少し困惑しながらボクを見つめる所も。

 

「初めまして!ルーデウス・グレイラットです!」

 

「あ、うん。ボクはフィッツ。よろしく…」

 

ボクたちの周りに人が集まってくる。

それでも、ボクの視界には大好きな彼しか居なくて。

 

そんな中で、戦いは始まった。

 

「始め!」

 

ボクは本気で戦った。

でも、勝てなかった。

 

ボクの魔術が乱れて、彼のストーンキャノンが頬を掠る。

 

負けた、負けちゃった。でも嬉しい。

ルディが生きててくれて、サングラス越しでも輝いて見える君が居てくれて。

 

『ありがとう』ボクは、そんな感謝を伝えようとした。

その時だった。ボクの中で何かが崩れる音がした。

 

「ふふん!ルーデウスは、すっごいんだから!本気を出したらこんなもんじゃないわよ!」

 

「……」

 

赤い髪が揺れる。それと同時、ルディの隣に立った美人で可憐な人。

ルディは笑って、隣に立つ美人な人を見つめた。

 

「乱魔があったから勝てただけですよ」

 

「ん?要するに、ルーデウスは凄いってことよね!私も特別生になるわ!」

 

「エリス、『要するに』で何も要約出来てないんですが……とりあえず、教頭に特別生について相談しに行きましょうか」

 

別れ際。彼がボクの耳元でお礼を言う。

 

「フィッツ先輩、僕に花を持たせてくださってありがとうございます」

 

そして、ボクから離れていく。

要件がなくなれば、ボクは要らない。

 

 

ルディと美人な人は肩を寄せ合った。

理由もなく、当たり前のように。

ずっと離れずに、幸せそうな顔をする。

 

そして、彼はこの言葉を放ったんだ。

 

「エリス、愛してます」

 

ボクは、涙が止まらなかった。

 

 

─────────────────────────

 

 

─ルーデウス視点─

 

フィッツ先輩との模擬戦を終え、俺とエリスはジーナス教頭と話していた。

少し長い話だったため、エリスが首を傾げながら頭に「?」マークを浮かべていたので、俺から要約して話すことにした。

 

端的に言うと、入学自体は難しくないらしい。

しかし、それは一般生として入学する場合の話だ。

特別生になるのは簡単ではない。

 

「ルーデウスと一緒じゃなきゃ駄目よ! 一緒に強くなるの!」

 

「そりゃあ、僕もエリスと一緒が良いですけど」

 

特別生になるには相応の格が必要になる。

強さ、魔術、経験。何か特別なものがなければ特別生にはなれないらしい。

 

ということで、それを見極めるため後日エリスの試験を行うことになった。

エリスの肩書きはS級冒険者。それだけでも十分すごいのだが、それだけでは物足りないと判断される可能性がある。

試験があるだけでも及第点といえるだろう。

 

「頑張るわ!」と張り切る彼女。その姿が愛らしい。

縦に揺れる胸は魅力的だし、ぷるんと揺れる唇は見ているだけで興奮してくる。

 

あぁ、エリスと早く寮でいちゃいちゃしたいぜ。

よし、エリスには絶対合格してもらって、ベッドの上で俺の名前をたっぷり呼んでもらおう!

 

グヘヘと笑うルーデウス。

その姿を見て、再度首を傾げるエリス。

 

仲の良い二人に「離婚」という言葉は存在しなかった。

 

─────────────────────────

 

エリスの試験の日は、あっという間にやってきた。

場所は学園の校庭。どうやら模擬戦を行うらしい。

エリスが校庭の真ん中に立つ。俺は少し離れた場所にあるベンチに腰掛けた。

 

「ルーデウス! ちゃんと見てなさいよ!」

 

「はいはい、ちゃんと見てるから大丈夫ですよ〜」

 

エリスが俺に手を振る。

俺も呼応するように手を振り返した。

 

それを見て安心してくれたのか、彼女が無邪気に笑う。

どうやら、緊張はしていないようだ。エリスの肝っ玉にはびっくりしちゃうね。

 

相手は誰だろう。エリスの素早い素振りを見ながら考える。

そんな時だった。俺の隣に誰かが座った。

 

「こんばんは。ルーデウス殿、で間違いありませんか?」

 

「あ、はい。ルーデウス・グレイラットです」

 

俺の隣に居たのは綺麗な金髪が特徴の女性。

初めて会ったが、この人のことは知っている。話に聞いていた、この学園の生徒会長――アリエルさんだ。

 

「隣、よろしいですか?」

 

「あ、はい。大丈夫です」

 

確認を取り、俺の隣に腰掛ける王女様。

なんだ、俺何かしたか? 入学前から面倒ごとは勘弁だぞ。

 

俺の疑問。それを見透かすように彼女が口を開く。

 

「先日、私の護衛であるフィッツがお世話になったようで。確認に参った次第です」

 

この言葉を聞いた俺は黙ってしまった。

入学試験の件か? 王女様、怒ってるよな?

乱魔を使ったのが駄目だったのか? いや、そもそもフィッツ先輩に勝つこと自体がマナー違反だったのか?

 

分からない。報復とかあるのかな? だとしたら俺だけにして欲しい。エリスは巻き込まないでくれ。

 

とりあえず、謝ろう。

 

「あの、すみません。僕の行動が気に障りましたか?」

 

「ふふっ、いえいえ。少し怒ってはいますが、あなたの考えている怒りではありませんよ?」

 

結局怒っているのか。

俺の知らない怒り? 入学試験以外でフィッツ先輩関連…うーん、心当たりがない。本当にない。接点もなかったしな。

 

分からないものは仕方ない。今はエリスの試験を見届けよう。

 

そう思ってエリスを見た時だった。

俺の目に飛び込んできた、衝撃の光景。

 

「あなたは天使だ。私が勝ったら、デートをしていただきたい」

 

「何よ、あんた。デート?」

 

俺の目に入ってきた光景――

それは男が膝をつき、エリスの手を握っている光景。

 

「自己紹介が遅れました。私の名前はルーク・ノトス・グレイラット。ぜひ、覚えていてください」

 

「ふーん。強くなれるなら、その『デート』とかいうのしてもいいわよ」

 

俺のお嫁さんにデートの誘い。

エリスが取られる…嫌だ。俺は声を張り上げた。

 

「エリスは俺の物だああああああ!」

 

「んなっ!?/// ルーデウス! なんで、いきなり恥ずかしいこと言うのよ!」

 

エリスが真っ赤な顔で声を出す。

俺の大好きな、既婚者のエリスが口説かれたのだ。アピールしておかねば。

 

皆の前で愛を叫んだ。うん。俺は後で恥ずかしがり屋の彼女から殴られるだろう。

しかし、後悔はない。

 

エリスは誰にも渡さん。

俺とエリスは永遠に一緒なのだ。誰にも邪魔はさせん。

そんなことを考え、俺は「ふん」と鼻息を荒くした。

 

ルーデウスとは対照的に、呆れ顔で溜息をこぼすアリエル。

結婚、愛情、嫉妬。試験は始まった。

 

 

─────────────────────────

 

─シルフィ視点─

 

「ルディ、ルディ……」

 

ボクは泣いた。涙が止まらなかった。

ルディと結婚すること、ボクの一生の夢が終わってしまった。

 

目が真っ赤になる。目尻から雫が落ちる。

『ルディ』という言葉だけが、静かな部屋に響き渡る。

 

そんなボクを、アリエル様が見つめていた。

 

「シルフィ?どうしました?」

 

「アリエル様。ルディが、ルディが…」

 

アリエル様に説明する。

ルディが結婚していて、幸せそうだった。

ルディが幸せなのは嬉しいことのはずなのに、苦しかった。

ボクは嫌な奴だ。

 

アリエル様は静かに聞いていた。

そして、ボクを優しく抱きしめてくれる。

 

「シルフィ、安心なさい」

 

「安心、出来ないよ」

 

「大丈夫。まだ遅くないですから」

 

遅くないという言葉。ルディは結婚してるのに? 結婚してて、幸せそうなのに?

ボクの頭に浮かぶ絶望と疑問。

アリエル様は、そんなボクに言葉を続けた。

 

「お嫁さんは、一人とは限らないのですから」

 

「あ、アリエル様、それって…」

 

「シルフィ、共に頑張りましょう!」

 

駄目だよ。この言葉を、ボクは出すことが出来なかった。

ルディと一生添い遂げたい。

ボクは、夢を諦められなかった。

 

─────────────────────────

 

ボクは校庭に立っていた。

ルークの後ろで、エリスと対峙する。

 

ボクとルークでエリスに挑む。

 

それが、アリエル様の作戦だ。

 

エリスがルディと一緒に特別生になったら、接点も増えて仲良くなっちゃう。

だけど、ここでボクたちが勝てば彼女は一般生。

そうしたら、ボクもルディと話せるかもしれない。

 

ダメなことなのは分かってる。でも、諦められなかった。

 

「エリスは、俺の物だぁぁぁぁ!」

 

ルディの宣言に、エリスが頬を染める。

ルディが好きなんだろうな。ボクは目を細めて考えた。

 

一瞬の静寂。

その瞬間、目の前の女性が練り上げる。

 

練り上げた物、それは殺気。

腰を落として、赤い髪が揺れる。

刹那、猛獣のような気配と共に、アリエル様の声が響き渡る。

 

「始め!」

 

ダン!

 

鳴る爆音。

その音の正体は、地面を抉り取るような踏み込み。

一瞬の出来事。赤い髪が飛び込んでくる。

 

「早く、ルーデウスに追いつきたいの。退きなさい」

 

彼女の小さな声が、ボクの耳に届く。

速い。とてつもなく速い。でも、ボクだって遊んでいたわけじゃない。

 

ボクは右手で風魔術を作り、彼女から距離を取る。

そんなボクを追撃するように、追い詰めるように踏み込むエリス。

しかし、その勢いは止まることになる。

 

ガン!

 

木刀と木刀がぶつかる音。

ルークが、ボクと彼女の間に割って入る。

 

「絶対に、デートをさせていただくっ!」

 

(ルークがエリスの勢いを止めてくれた。撃ち合いが始まる。その間に、ボクが風魔術でルークの援護を……)

 

回す思考。

ルディに教えてもらった無詠唱魔術。

ボクは右手を向ける。そして、赤い髪を捕捉する。

ボクもルディの隣に立ちたい。そんな想いを込めて。

ボクもルディを愛してるのに。そんな嫉妬を込めて。

 

回り続ける想い。

しかし、そんな想いは裏切られることになる。

 

「ふんっ!!!」

 

「ぐふっ!」

 

エリスの横薙ぎが、ルークの脇腹に当たる。

ルークは木刀で受けていた。

しかし、彼女はそのまま振り抜いたのだ。

 

防御なんてお構いなし。

スピードもパワーも、全てが想像を遥かに超える。

 

ルークが横に大きく吹っ飛ぶ。

脇腹を抑えて、小鹿のようにプルプルと震えている。

 

ルークは一発でやられた。

 

赤い瞳がボクの姿を映す。

瞬間、ボクの身体が縮こまる。猛獣に睨まれた小動物のように。

殺気を受けて、手が震える。

 

ダン。

 

再度、彼女が踏み込んでくる。

狙いはボク、彼女がボクに近づいて来る。

先ほどよりも速い踏み込み。

しかし、分かったことがある。

 

分かったこと、それは彼女の動きは直線的だということ。

 

「ボクも、ルディの隣に立ちたい」

 

愛する人に今までの成長を見せる。

ボクは、今度は下がらない。

ギリギリまで、彼女を引き付ける。

 

そして、一番スピードが乗る所。

彼女の顔がボクの目の前に来た時、ボクは掌を向けた。

 

「エアバースト!」

 

掌に突風を作り、彼女にぶつける。

スピードに乗った所を、カウンターでぶつける。

 

この事実。エリスの首が跳ね上がる。

ボクの魔術。ルディに教わった無詠唱魔術。

そのおかげで勝てた。ルディ、ルディ。

 

確かに風魔術は命中した。

勝ったと、ボクは思った。

 

だけど、ボクの耳に届いたのは聞こえる筈のない声だった。

 

「やっぱり、ルーデウスの魔術は違うわね。」

 

突風を受け、後ろに仰け反った彼女。

しかし、変化した物はそれだけ。

ダメージはほとんどない。仰け反ったまま、ボクを睨む姿がそれを物語っていた。

 

エリスは姿勢を戻し、剣を振るう。

ボクに向かって、最速で。

 

絶望的。でも、まだ負けていない。ルディなら、絶対に諦めない。

 

ボクは、掌に再度突風を作る。

そして、捕捉する。

でも、狙う所は顔じゃない。きっと警戒してる。

それなら、ボクが狙う所は右手だ。

 

剣を持っている右手を狙って、武器を落とす。

 

それが、ボクの狙いだった。

 

バン!!!

 

鈍い音と同時、ボクのお腹に激痛が走る。

 

「ぶえっ、なんで、ボクが殴られて…」

 

「ルーデウスの隣で戦うなら、これぐらい当たり前よ」

 

ボクの身体が、くの字に曲がる。お腹に、激痛。鈍器で殴られたような激痛が走る。

 

激痛の正体。それは、エリスの左拳。

彼女は、ボクの視線が右手に落ちた時、攻撃を変えていたんだ。

剣を握っていない左手。それを、ボクのお腹に突き刺したんだ。

 

狂犬、S級冒険者、そしてルディのお嫁さん。

この肩書きは想像以上の物だった。

ボクの狙いは、見透かされていた。

 

脇腹が無くなったと錯覚する程の威力。

ボクの身体は、一発で破壊された。

 

「ルディ……」

 

愛しの名前を呼ぶ。

誰にも、ボクの呟きは届かない。

 

「少しだけ、ルーデウスに追いつけたわね」

 

バン!

 

エリスの横薙ぎがボクの頬を飛ばす。

ボクの視界が闇に落ちていく。

 

暗い、痛い……

 

ボクは、ルディの隣には…

 

…相応しくなかったんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

この後の展開について…

  • ルーデウスとエリスのいちゃいちゃ多め
  • シルフィ視点多め
  • 展開早めにして、早く進める
  • ルーデウスとエリス(別枠でR-18)
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