─シルフィ視点─
最近、ルディの様子がおかしい。
「シルフィ…シルフィっ…」
この言葉と同時。辛そうな顔をするルディ。
ボクの名前を何度も呼んで、ボクに抱きついて…
俺、もう分からない…そう言って、涙を流すこともある。
「シルフィ…俺、シルフィが大好きだから…」
ルディの言葉。
ボクは、彼の背中を撫でる。
ただ、何も言わずに…微笑みながら、撫でる。
ルディが辛いなら、ボクが居るよって…
そんな気持ちで、それだけを思って、ルディの背中を撫でる。
最近のルディは、良く笑う。
「シルフィ!俺、ずーっと一緒に居るから!」
大きな声で、抱きしめてくれる。
元気な声で、ボクの後頭部を撫でてくれる。
元気なルディ。
……でも、ボクは知っている。
その元気が、空元気なことを。
「ルディ…ボクも、ルディと一緒に居たい」
ボクの言葉。
彼の元気で、震えた声に返す言葉。
苦しそうなルディ、辛そうなルディ…
そんなルディに、ボクが返せること。
ボクは、愛しの人の腕の中で、永遠に、永遠に…それだけを、考えてた。
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これは、ある日のこと。
ボクは、ルディと手を繋いで、ソファに座っていた。
「シルフィは、今日も美人さんだな〜」
ニコッと笑って、ボクを見つめてくれるルディ。
スススっと、ボクに近付いて、ボクの頬を撫でて…
ボクのおでこに一つ、ちゅっと、キスを落としてくれる。
「ルディ…今日は、ボクの日だもんね?」
「うん。今日の俺は、シルフィだけのものだ」
ボクの頬から手を離したルディが、ボクの髪を撫でる。
サラサラで良い匂いだな…顔の近いルディの囁き。
ボクの耳を、幸せにしてくれる囁き。
……どうしよう。ルディが好きすぎて、ボクの頭、おかしくなっちゃうよ。
ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ…
ルディが、ボクの唇に噛み付く。
何度も、何度も…ボクの瞳を見つめて、舌を入れる深いキスをしてくれる。
んっ…とボクが呟くと、可愛いって言ってくれて…
その度に、ボクたちは互いを求め合う。
「ルディ…ボク、我慢出来なくなっちゃった…」
「シルフィ、俺も…もう、苦しい」
恋人繋ぎのルディが、もっと近付きたいと言いながら、ボクにハグしてくれる。
荒い呼吸で、ドクン、ドクンと心臓を鳴らして、ボクに好きって呟きながら、お姫様抱っこしてくれる。
ボクの背中に当たるのは、ルディのガチガチになった硬いモノ。
この感触に、ボクの頬も赤くなってしまう。
(今日も、ボク。ルディにめちゃくちゃにされちゃう…)
嬉しくて、嬉しくて堪らない予想。
ボクをお姫様抱っこしてくれるルディが、ボクにニコッと微笑んでくれる。
世界で一番カッコいい王子様…
ボクの目に映るのは、変わっていく風景。
ルディとボク、二人だけの世界。
しかし、それは、終わりを告げてしまった。
ドンドン。
ボクたちの世界に割り込むのは、玄関のドアがノックされる音。
瞬間、ルディもボクも動きを止めた。
「誰かな?」
「来客……やだ。シルフィと、離れたくない」
「ルディ、それはダメだよ…アリエル様とかだったら、ボクもルディも怒られちゃうだろうし…」
ボクの言葉に、ルディは顔をしかめる。
ボクを見つめて、玄関を見つめて…また、ボクを見つめる。
悩むルディ、えっちなルディ。
そんなルディだけど、ボクを困らせたくないと。ボクが悲しくなるようなことはしたくないと。
そう呟いて、お姫様抱っこしたボクを優しく下に降ろしてくれた。
「シルフィ。後で、絶対にするから…」
「へへへ…楽しみだなぁ」
頬をポリポリと掻くボク。
そんなボクの身体を、ルディがぎゅっと抱きしめてくれる。
そして、そのまま…ボクとルディは、興奮を抑えながら、恋人繋ぎで…玄関へと足を運んだ。
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「ルーデウス・グレイラット。今日は、話があって来た」
「……なんですか?」
玄関の扉。開けた先には、一人の男の人が立っていた。
赤髪が特徴的な男性。ボクの、お友達。
『ルーク・ノトス・グレイラット』
彼が、とても真剣な眼差しで、ボクたちを見つめる。
ただ、その場に背筋を伸ばして、綺麗な瞳で、ボクを…ルディを見つめる。
そんなルークの立ち姿。
ルディも、真剣な眼差しで声を出す。
「ルーク先輩…どうぞ、入ってください」
ルディの言葉。
別に、不思議でもなんでもない言葉。
ルークは、来客。
この言葉は、何も疑うことはない。
でも、何故だろう。
なんで、ボクの長い耳は、ルディの言葉に震えてしまったんだろう。
それに、理由はない。
でも、ボクはこの時、何故か、ルディの言葉が…
…すごく、怯えているように聞こえたんだ。
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ボクは、お茶を淹れて、ルディとルークの元に行った。
二人は向かい合わせで座っていて、ボクはそんな二人の間に立つ。
何処に座ろう…そうやって迷っていると、ルディが、ボクの腕を引っ張った。
「シルフィ、こっち」
「あ、、、うん」
ボクは、ルディの腕に引っ張られて、彼の隣に腰掛ける。
ルディの腕…それは力が強くて、強引で。少しだけ、痛かった。
「ルディ…ちょっと、痛い…」
「シルフィ、離れないで」
痛いという言葉に帰ってきたのは、離れないでという強引な言葉。
すごく、真剣な顔のルディ。
ボクは、そんなルディの手が少し痛くて、目を細めてしまった。
「それで、ルーク先輩。要件は何ですか?」
「あぁ、すまない。長居するのも悪いよな」
ルークは、気まずそうに言葉を挙げる。
ボクとルディの距離…近い距離に、何かを感じ取ったのかもしれない。
「単刀直入に聞く。ルーデウス、アリエル様の勢力に付いてくれないか?」
ルークの言葉。彼の、声色。
ボクは、目を見開いて驚いた。
ボクが驚いた理由は、冗談でもなんでもなかったから。
ルークの願いは、本気の、本物の願いだったから。
静かに聞くルディ。
そんなルディに、ルークは言葉を続ける。
「ルーデウス、お前はすごいよ。最強の龍神を倒して、七大列強になって…人脈もとてつもなく広い。そんなお前がアリエル様の側に居れば、きっと…「お断りします」
ルークの演説。
それを、一刀両断するように、ルディが断りの声を挙げる。
その声は、すごく冷たくて…側で聞いているだけのボクが震えてしまうほど、無慈悲で恐ろしかった。
「……なんで、いや、、、悪かったな」
この言葉と同時、ルークが俯く。
その顔は、疑問というより絶望の顔。
どうすれば良かったんだろう…そう考えていそうな、悲しい顔だった。
(ルディにしては、冷たいけど…そうだよね。ルディは、アリエル様の勢力争いには関係ない…そうしたら、ボクがやることは一つだ)
俯いて、立ちあがろうとするルーク。
ボクは、そんな彼の腕を掴んだ。
「ルーク、待って」
ボクの言葉。
ボクは、ルークを見つめて、声を挙げる。
なるべく、ゆっくり…
限界まで、熱く。
ボクは、ルークの心に届くように、声を挙げる。
「シルフィ、どうした?」
「ボクが、行くよ」
この言葉に、ルークは目を丸くした。
ボクは、そんなルークを見つめる。
(ルークは驚いているけど、これは普通のことだ)
ルークの驚き…ボクは、不思議だった。
ルディが行かなくても、ボクが行く。
それは、至極当然のことだ。
(ルディは、アリエル様の護衛には関係ない。だから、ボクが行って、アリエル様を助けよう)
こんな想い。
同時にボクが思い浮かべるのは、愛しの人の顔。
アリエル様の護衛をして、協力して…頑張る。
ボクの頑張り。ルディとイチャイチャすることは、あまり出来なくなっちゃうけど…大丈夫。
大丈夫。全部終わったら、ルディに撫でてもらえば良いんだ。
暖かくて、優しい手。
そんな手に、甘えちゃおう。
ルディは、優しいから、きっと許してくれる。
ルディとの夜…それを、楽しみに頑張れば良いんだ。
『ボク、行ってくるね?』
こんな短い言葉。
ボクは、放とうとしてルディを見た。
「シルフィ、シルフィ…なんで、どっか行っちゃうんだよ…」
瞬間、隣のルディがボクを掴む。
腰を掴んで、ボクを捕まえる。
嬉しい気持ちもあるけど、少し痛い。
そんな抱擁。
刹那、ボクは目を見開く。
「シルフィ…お願いだから、何処にも行かないでくれ…」
この言葉と同時。
驚いたボクの手首に付けられたのは…
硬い、硬い。ルディの土魔術で生成された…
…『手錠』だった。