─エリス視点─
私は、ルーデウスのためなら何だって賭けられる。
そう、文字通り全てを私は賭けることが出来る。
「ルーデウス、大好き」
ありきたりな言葉かもしれない。
それでも、私は呟いた。
俯いて呼吸を乱すルーデウスを私は見つめた。
「エリス、エリス。俺、本当に駄目なんだ」
ルーデウスの弱音。涙を流しながら私の胸に飛び込む彼。
そんな彼。でも、私は彼が駄目だとは思わない。弱いとも思わない。
だって、彼の口から溢れる言葉は弱音だけじゃなかったから。
「エリス。俺は、駄目な俺は、家族を守るよ」
ベッドで二人きり。
もう数えきれないほどの添い寝。
添い寝、彼の腕の中。
私は優しい腕の中で、一つ呼吸をする。
大きな、大きな呼吸。
目の前にあるのは、私と同じように大きく呼吸をする彼の唇。
カッコいい彼の唇。「んっ」という声を出しながら、そんな唇に噛みつけた私は、すごく幸せなんだと思った。
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ルーデウスが吐いた。
ベチャベチャと音を鳴らして、苦悶の表情をする。
時間は深夜。
彼と抱き合いながら寝ていた私のお腹が、彼の吐瀉物で温かくなる。
「エリス、ごめんなさい」
可愛いエリスと可愛いネグリジェを汚してごめんなさいと謝るルーデウス。
涙目で、苦しそうに謝るルーデウス。
私は、ゆっくりと口を開いた。
「別に良いわよ。ルーデウスのなら、何とも思わないわ」
正直、ルーデウスが汚してごめんなさいと言った時私は驚いた。
だって、私の頭にそんな思考は無かったから。
ルーデウスが苦しそうなのは嫌だとか。
元気付けたいけど、抱きしめるのは苦しいのかな?とか。
そんなことしか私の頭には無かった。
アイシャも居なくなってアルスも消えた空間。
私でも分かった。ルーデウスは体調が悪くなったんじゃない、風邪を引いたんじゃない。
精神的に苦しんでる。
それが、彼に悲しい顔をさせていると。私にも理解することが出来た。
それから私は毎日添い寝をするようになった。
ロキシーも入れて三人の時もあれば、私と彼の二人きりの時もある。
彼が吐いたり苦しそうにしていたら、大好きって言って彼を抱きしめる。
そんな行動、理由は単純。
彼に元気になって欲しいから。
これだけを思って私は彼に何度もキスをした。
それから少しの時が経った。
彼との添い寝。ルーデウスとの会話はすごく楽しかった。
好きって言い合うだけで楽しくて、彼が私を抱きしめてくれることがあれば、顔を真っ赤にして喜んでしまう。
恥ずかしいけど嬉しい。
私は、すごく幸せだった。
「アイシャとアルスが人質に取られた」
彼が何度も、何度もこの言葉を呟いていた。
彼の目はギラギラと輝いていて、絶望なんて感じない。
私は頭が良くない。
だけど、彼とは少しだけ長い時間一緒に居たから分かる。
苦しくて吐いても彼は戦おうとする。
寝れなくて目の下に隈をベッタリ貼っても、彼は戦おうとする。
でも、それは『一人で』
彼は、私を頼ろうとはしてくれなかった。
ロキシーから、こんな言葉を聞いた。
「あの脅迫。ルディはダリウスの味方をするかもしれません。そうなれば、殺すのはアリエル王女様の方。そして、それが意味するのは一つです」
私が理解出来なかったルーデウスの真意。
ロキシーが説明をしてくれる。
「ダリウスは、エリスのお祖父さんの仇。ダリウスの味方をすれば当然殺せなくなります」
ここまで言ったロキシーは俯いた。
私の前で、大きくなった自身のお腹を触りながら下を向いた。
ここまで言われた私。
私は、やっと理解することが出来た。
彼が、ルーデウスが私を頼らない理由。
それに、やっと気づくことが出来た。
「お祖父様の仇を味方するから、私は頼ってもらえないのね」
私の言葉に、ロキシーはコクンと頷いた。
俯くロキシー。でも、私は俯かない。
その理由は、たった一つだった。
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アイシャは居ないし、シルフィは地下に居る。
リーリャは衰弱してる。
料理を作ってくれる人が居ない。
だから、私が料理を作った。
ルーデウスのために、一生懸命作った。
顔にいっぱい炭が跳ねて料理が黒くなる。
匂いも悪くて、調味料?も間違えたかもしれない。
それでも、頑張って作ってみた。
ルーデウスに喜んで欲しいから、一生懸命頑張った。
「ルーデウス、話があるの」
私は少し黒い顔で彼の背中に飛び込んだ。
フラフラと廊下を歩いて、今日も何かと戦おうとする彼に抱きついた。
黒い料理と赤くなる私。
元気なルーデウスも、辛そうなルーデウスも。
どんな彼でも大好き。私は、そう呟いて彼を二人きりの部屋に引っ張った。
彼は大きな勘違いをしているんだと思う。
お祖父様の仇であるダリウス。
そんな奴に味方するという選択。
私に申し訳ないと思う彼の心。
彼は間違えてる。
私がしたいことは、そんなことじゃないのに。
「ルーデウス、ダリウスの味方をするのね」
二人きりの部屋で私は話した。
この言葉に、彼の目が大きく開いたのが印象的だった。
「なんで、そのことを……」
「ロキシーから聞いたの」
私の鋭い言葉に彼が俯く。
俯く理由、私は分からなかった。
だから、私の考えてることを口にする。
「ダリウスってお祖父様の仇なのね。お祖父様にはお世話になったわ。お祖父様は好きだし、そんな仇のダリウスを殺せと言われれば、もちろん殺せる」
私の言葉。
彼は、ゆっくりと口を開く。
「そう、ですよね。当たり前です。サウロス様の仇、俺はそんな男に味方をしようとしていました」
ルーデウスは下を見ながら声を出す。
私より少し大きな身体が小さく見える。
そんな彼が放つ「エリスになら、殺されても良いな」という言葉。
笑いながら放たれた言葉。
私は、その言葉を静かに聞いていた。
「……」
「……」
静かな部屋には、何も話さない私と俯くルーデウスの光景が広がっていた。
私は、その光景の中でルーデウスを見つめる。
そして、そのまま数秒。
私は立ち上がり、彼の隣へと腰掛けた。
「お祖父様は大好きよ、それは間違えてないわ。でも、私はルーデウスがすっごく、すっごく大好きなの。だから、私はルーデウスのためなら何でもするわ。ルーデウスのために、私は剣を振りたいの」
学園の時に決めた、ルーデウスを守るという決意。
そんな私がルーデウスを殺す。
そんなことはありえない。
ルーデウスが居ない世界なんて、絶対に嫌だ。
私は、ルーデウスに依存してるのかもしれない。
でも、関係ない。
ルーデウスが好きで好きで、頭がおかしくなっちゃうぐらい好きなのは間違いじゃない。
だから、お祖父様の仇を取れなくても良い。
家族の仇に味方をすることになっても、別に良い。
ルーデウスが笑ってくれるなら、私はそれが幸せだから。
「エリス、ごめんなさい」
ルーデウスが泣いた、私に抱きついて泣いた。
彼には、色々なことを言われた。
ギレーヌはダリウスを殺そうとしているから、もしかしたらギレーヌと殺し合いになるかもとか。
俺は弱いから、また間違えてしまうかもとか。
そんなことを私の胸の中で言われた。
弱々しい彼の背中。私の答えは、決まってる。
「ルーデウスと一緒なら、それで良いわ」
言葉と同時、私は彼の頭を撫でた。
あまり撫でたことがない彼の頭。
いつも私が撫でられてばかりだから、すごく新鮮だった。
でも、だからこそ、彼の暖かみを感じることが出来た。
「エリス、ありがとう」
私のネグリジェの袖が彼にギュッと摘まれる。
しばらく寝ていなかった彼が私に肩を預けてくれる。
私の黒くなった料理を口いっぱいに頬張って、涙を流しながら美味しいと言ってくれるルーデウス。
そんな彼を、私は見つめる。
久々に眠るルーデウス。
私の膝の上で眠る彼を見て、私は決意を固める。
ルーデウスのために命を賭ける。
私は拳を強く握りしめて、スヤスヤと眠る彼に誓いを立てた。
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久々に眠った男。
エリスの膝の上でスヤスヤと眠る男。
そんな男。彼の名前は『ルーデウス・グレイラット』
彼は、久々に夢を見る。
「やぁ、また会ったね」
「ヒトガミ、何しに来たんだよ」
「ふふっ。良いことを教えてあげようと思ってさ」
ヒトガミの言葉。
瞬間、ルーデウスが静かになる。
かつて、もうお前の言うことなんて聞かないと言ったルーデウス。
そんな彼が、ヒトガミに質問を投げかける。
「良いことって何だよ」
「良いこと、それはね?」
ヒトガミの笑顔。
大きな笑顔が、ルーデウスに向けられる。
「全部、全部壊しちゃえってことだよ」
「は?」
笑顔の次。ヒトガミの言葉がルーデウスに襲いかかる。
「アリエルとダリウスとアスラ王国を」
ヒトガミVSルーデウス、この二人が対決することは間違いない。
しかし、敵が本当に敵の顔をしているとは限らない。
本当の敵とは味方である。
ルーデウスは思い知ることになるんだ。
「───しちゃいなよ」
ヒトガミの言葉が白い空間に溶ける。
奴の言葉と真意。それが明らかになるのは、もう少し先の物語。
すみません、今回は少し短めでした。
次回から大きく物語が動き出します。
オルステッド戦を初めとした戦い、戦術について…
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原作の情報を使っていて面白い。
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複雑で分かりにくい。