もしも、エリスがルーデウスと別れなかったら…   作:あえch

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再度交わる、神と人間

 

─ルーデウス視点─

 

 

気付いた時、俺は白い空間に居た。

エリスの柔らかい膝で眠っていた俺、一瞬だけ己が幸せだと感じられた俺。

そんな俺は、夢を見ていた。

 

「やぁ、こんにちは」

 

ヒトガミ。

 

「ふふっ、随分と苦しんでるみたいじゃないか」

 

苦しんでる、苦しんでる。

そうか、そうだな、俺は弱いからな。

 

「ん?随分と弱気だね。」

 

あぁ、俺が自分で選択をしてさ。アイシャとアルスに逃げられて、家族が傷付いて、皆を窮地追い詰めてる。

分かっちまったんだよ。全部、全部俺のせいだったんだなって。

全部、俺が悪かったんだなって。

 

「そうかな?僕は、そんなに悪い作戦だとは思わなかったけどね」

 

ははっ、そうか。お前はそう言うんだな。

分かってる、俺は間違えた。

そうだ、俺は間違えたんだよ。

 

そんな俺に優しい言葉を掛ける。

お前って、本当におかしいな。

また、俺のこと騙そうとでも思ってるのか?

 

「おいおい、いきなり逆ギレは辞めてくれよ。はぁ、せっかく優しくしてあげたのにさ。本当に君って狂ってるね。そもそも、僕が君を騙す理由が何処にあるんだよ。龍神だって殺してくれたし、僕のために未来から来てくれた。そんな君を僕が騙す。そう思う方がおかしいと思うけどね」

 

黙れよ。

そう言って、また俺を騙すんだろ。

 

「君も頑固だな〜。少なくとも、日記と違ってミリスは君たちを襲ってこないだろ?それこそ変わった証拠。オルステッドを殺したことによる嬉しい変化さ。アイシャとアルスは駆け落ちしたけど、それは日記があったから。僕のせいにするのは無理がある」

 

なんだよ、何が言いたいんだよ。

 

「言いたいこと、そうだね。一つあるとすれば、君には幸せになってほしいってことだよ。今回も駆け落ちされて失敗しちゃったけどさ、君は良く頑張ってるんだから。君は幸せにならなくちゃならない」

 

幸せになれ。

こんな言葉を、お前の口から聞くことになるとはな。

 

「まぁね。僕も、こんなに深入りする人間は初めてだよ。僕は、それぐらい君を想ってる。だから、僕を信じなくてもいい。せめて、助言だけでも聞いてくれよ」

 

理由は、あるのか?

 

「うん、もちろんさ。細かく話すよ」

 

なら、少しだけ聞く。

 

「ふふっ、そうこなくっちゃね。それでこそ、僕も話がいがあるってもんだよ」

 

奴は、この言葉を放ち、俺に右手を差し出す。

ゆっくりと俺の目の前に差し出された腕。

俺は、そんな奴の手を握った。

 

助けを求めようと掴む俺。刹那、奴の言葉が白い空間に重く響く。

初めて握った手、それはすごく柔らかかった。

光る奴の手。

俺は、力強く握る。

 

ヒトガミと俺。

 

この時、俺は奴の言葉を聞いて、少し安心してしまったんだ。

 

 

─────────────────────────

 

 

最初に言っておく。

俺は、お前を信じていない。

だから、助言と、それが良い理由もちゃんと聞かせろ。

 

「お、随分と睨んでくるね。もちろんさ。まずさ、アリエルとアイシャを人質に取られて、君はどうするつもりなんだい?」

 

人質に取られて?

それは、もう、味方するしかないだろ。

殺したい、死ぬほど殺したい相手だけど。

ダリウス、アイツの味方をするしかねぇだろ。

 

「ははっ。まずさ、そこが違うんだよ。ダリウスの味方をする。それをすれば君は一生アイツの奴隷さ。人質を取られて、死ぬまで働かされる。君の人生の終わりだろうね」

 

うるせぇよ。じゃあ、なんだよ。

どうすれば良いんだよ。

 

「簡単な話だよ。ダリウスと、その一派を殺しちゃえば良いんだよ」

 

は?

お前は、俺にアイシャとアルスを見殺しにしろって言うのか?

 

「あぁ、違う違う。だから、人質からダリウスたちが離れたタイミングで、奴らを殺すんだよ」

 

離れたタイミングで殺す?

そんなこと、どうやってやるんだよ。

それに、俺はアリエル一派が誰で、ダリウス一派が誰かも知らないんだぞ?

狙って誰かを殺すなんて出来るわけないだろ。

 

「ふふっ、そうだろうね。でも、一瞬だけあるじゃないか。貴族全員が集まる時がさ。そして、その時にアリエルもダリウスも関係なく全員殺しちゃえばいいんだよ」

 

全員を殺す、全員が集まる。

お前、まさか?

 

「良い顔するね〜。その姿でその顔をされたら爆笑必須だよ。そう、君が今思った通り。あの時間さ」

 

一瞬の時間。

貴族全員を殺す。

俺に、出来るのか?

 

「うん、絶対に出来る。アリエルとダリエルの政権争い、その時のパーティ会場。そこに全員の貴族が集まる時、君の願いは叶えられる」

 

殺す、全員を殺す。そうか、やるしかないのか。

アイシャとアルスを助けるために、俺はやるしかないのか。

 

「ふふっ、楽しくなってきたね。そうだよ。君の選択肢はそれしかない」

 

俺は、お前の言うことは聞かない。

あくまで、選択するのは俺だ。

 

「うん、それで良いと思うよ。『アスラ王国潰し』君の言う通り、あくまで選択肢の一つに過ぎないからね」

 

お前の言ってることは筋が通ってる。でも、明らかにおかしい所もあるだろ。

 

「ん?おかしい所?」

 

そうだよ。

ダリウスだけじゃなくて、アリエルも殺す。

お前は、それが良いって言いたいのか?

 

「もちろん、当たり前さ。前も言ったけど、アリエルはシルフィを殺そうとしている。ルークは君と一緒にシルフィを政争に参加させようとしていたし、前も言った通り、婚約済みの君と結婚させようとした行動、これは明らかにおかしい」

 

前も言ってたな。

シルフィが駒にされてるって。

 

「ふふっ、君も本当は分かってるんだろ?そして、もう一つの。最悪のダメ押しの事実を」

 

アイシャが駆け落ちに使った指輪のこと、だな。

あれはアリエルの物だ。

アリエルがアイシャの駆け落ちを手助けしたんだ。

 

「その通り、この時点でアリエルは信用出来ない。しかも、あの女はアスラの王になりたいけど、人口は減らしたくないんだよ。国自体が弱くなるからね。だから、君がやるべき貴族全員殺し、アリエルは許さないだろうね」

 

それに関しては、アリエルからダリウス一派が誰かを聞き出せば貴族全員殺す必要なんてなくなるけど。

そうか、そうだな。アリエル。アイツは、シルフィを殺そうとしてるのか。

 

「それだけじゃないよ。この機会を逃せば、君はアリエル一派を一気に殺すことが出来なくなる。貴族が一ヶ所に集まることなんて、そうそう無いからね。そうなればダリウスと同じ。アルスとアイシャを人質に取られて脅され続けるだけさ」

 

アリエルも、俺の敵なのか。

でも、シルフィと結婚出来たのはアリエルのおかげだし。

やっぱり、信じても……

 

「信じて、信じて。君は一体どれだけ騙されてきた?どれだけ辛い思いをしてきた?苦しい思い。僕が断言するよ。この機会を逃せば、もう家族は守れない。全てを守るなら、このタイミングだけだ」

 

随分と長く喋るんだな。

でも、俺が静かに聞いてるからって信じてるとは思うなよ。

今回は、お前の言葉に筋が通ってた。

俺が、そう判断しただけだ。

これは、俺の決断だ。

 

「ふふふっ。そうか、そうだろうね。どんな決断でも、最終的に決めるのは君さ。でも、これだけは言える。僕は筋を通すよ。君が大好きだからね」

 

大好きか。

お前も、本気なんだな。

 

「本気、そうだね。僕は今本気だよ」

 

もう、分かった。お前の言いたいことは全部分かった。

 

「それは良かった。じゃあ、そろそろ終わりだね」

 

もう、俺は騙されない。

俺は、家族を守るよ。

 

「うん、良い決意だ。じゃあ、最後に言おうか」

 

助言か。

この言葉も、もう慣れてきちまったな。

 

「よし、言うよ」

 

頼む。

 

「ルーデウス・グレイラットよ、ダリウスとアリエル。そして、その他貴族たちを殺しなさい!アスラ王国を潰すのです!さすれば、あなたは罪人にもならず、家族を守ることも出来るでしょう!」

 

家族を、守る。

そうか、そうだな。やってやるよ。

 

「良い覚悟。僕は、もう必要ないみたいだね」

 

あぁ、行ってくる。

 

俺の言葉と同時、歪み始める空間。

俺は、歯を食いしばる。

王を殺して一国を潰す。

俺は、そんな決意を固める。

 

全部、全部、ぶっ殺してやる。

 

この言葉と同時、俺は眉間に皺を寄せた。

膨らんでいく殺意。俺は、それを表情に乗せる。

 

アスラ王国潰し。

 

俺が自分自身で決めたと思った選択肢が、己へと降りかかってくる瞬間だった。

 

 

─────────────────────────

 

 

「朝か」

 

ひんやりとする空気が肌を撫でる。

俺は、そんな空気の中、目を覚ました。

 

「エリス、ありがとう」

 

俺は、この言葉を呟いた。

俺の隣で俺を包み込みながら眠る彼女へ、小さく、力強く呟いた。

いつもと違う、寝起きの不安はない。

俺は、力強く言葉を続ける。

 

「もう、やるしかないんだよな」

 

俺は、ベッドから離れて考える。

 

アリエルと話した方がいいか?とか。

殺しを正当化していいのか?とか。

 

そんな考えが俺の頭を過る。

しかし、思考の終着点は一つだった。

俺がやるべきことは一つだった。

 

「家族が傷ついてからじゃ遅い、俺が家族を守るんだ」

 

アリエルが敵ならば、こちらの手の内を晒すわけにはいかない。

もう、俺は失敗するわけにはいかない。失うわけにはいかないんだ。

 

この時、この瞬間、俺は歯を食いしばる。

『アスラ王国潰し』俺は、家族のため、大切な人を守るために友人を殺すことを決意する。

国を潰す。俺は、必ず成功させる。

 

「そのために、まずは準備だな」

 

俺は準備を始める。

家族を守るために動き出す。

 

①重力魔術の習得

②王級治癒魔術の使用禁止

 

俺は、この計画を立てて歩き出す。

家族とヒトガミの顔を思い浮かべて、拳を握りしめる。

 

ダリウスVSアリエルじゃない。

 

ダリウスVSアリエルVSルーデウス。

この三つ巴、最悪の三つ巴。

 

ここまで、俺は自分自身で判断した。自分の判断で頑張った。

でも、俺はアイシャとアルスに駆け落ちされて、家族を不幸にした。

俺は失敗した。だから、奴を信じてしまったんだ。

 

「もう人のせいにはしない。今度こそ、俺が守るんだ」

 

人から悪魔へ。

俺は決意する。

何十、何百という殺し。

俺は想像する。

 

「この殺意。全部、全部ぶつけてやる」

 

この言葉と同時。俺に降りかかるのは、血のように赤く染まり始める、誰も予想出来ない未来だった。

 

 

 

 

 

 

 




自らの意思で本気で戦い、失敗した男。
そんな経験をした男だからこそ、助けを求めて手を伸ばしたのかもしれない。
最悪な敵を味方だと思い、差し出される手を取ってしまったのかもしれない。

おまけの話で、ルーデウスがオルステッドに負けたルートがあったら読む?(原作との違いは、オルステッドの魔力残量。ほとんど残っていないからヤバくなってもルーデウスが主体で戦う)

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