もしも、エリスがルーデウスと別れなかったら…   作:あえch

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支え合い

 

 

俺って本当に弱いよな。

一人で戦うって決めて、覚悟を決めたつもりになって。

俺だけが犠牲になれば良いって、そう思って。

 

思って、思って。

考えて、考えて。

 

結局は、こうなるんだ。

 

「ルディ、終わったよ」

 

「ルーデウス!大丈夫!?」

 

シルフィとエリス、二人のお嫁さんに抱きつかれる俺。

俺の心にゆっくりと、じんわりと熱が広がっていく。

 

暖かくて心地良い…

 

一人で戦うと決めた俺、一人じゃ何も出来ない俺。

そんな俺は、みんなと居ることが幸せだと思ってしまったんだ。

 

 

─────────────────────────

 

 

本当に、本当に強かった。

水神と北帝、北王とペルギウス。

俺たちの中に一人でも、一つでも欠けていたら絶対に勝てなかった。

 

「辞めろ!こっちに来るな!!!」

 

一人の男が叫んだ。

 

「俺には人質が居る!今こそ私のために戦え!泥沼!!!」

 

真っ青な顔で脅しを掛けるダリウス。

最後の最後、敵の大将が大声を挙げる。

 

「貴様もだ!エリス・ボレアス・グレイラット!怪我をしているなどどうでもいい!私を助けろ!!!」

 

ダリウスが握っているのは護身用の小刀。

小さくて軽い刀。

そんな刀を握る奴を全員が見つめる。

俺もエリスもシルフィも、ギレーヌもアリエルもルークも。

人質に取られているアイシャとアルスでさえ奴を冷たい目で見つめる。

 

まだ止まらない声。

刹那、奴の右腕から飛んだのは鮮血。

 

「はへ?」

 

「もう良い、黙れ」

 

そう言いながら動き出していたのはギレーヌ。

彼女は光の太刀を使用していた。

剣神流奥義 光の太刀、彼女はこの技を下衆に叩き込む。

 

「あ、あぁ…何故私がこんな目に、何故だ、何故だぁ……」

 

痛みに悶えながら膝を落とすダリウス。

俺は、そんな奴にゆっくりと歩みを進める。

そして俺はゆっくりと放つ、この言葉を。

 

「なんで北帝と戦ってる時、人質を攻撃しなかったんだ?」

 

「……」

 

「黙るなよ、俺には分かるよ。お前はアリエルの言葉に揺れたんだろ?アリエルが言っていた龍神殺し、お前は俺の不意打ちを警戒した。俺のストーンキャノンを警戒したんだ」

 

「何が言いたい」

 

「お前が北帝と戦ってる時に人質を盾にしてたらさ、多分俺は負けてたよ」

 

「私に、私に情けを掛けてくれるのか?生かしてくれるのか?」

 

ダリウスの命乞い。

刹那、俺の瞳が潤む。

 

「ちげぇ、ちげぇよ。お前は俺に負けたんじゃないってことだ。アリエルとシルフィ、エリスにギレーヌ。そう、俺以外に負けたんだ」

 

俺が放つ言葉。

刹那、ダリウスが行うのは歯軋り。

 

「ふ、ふざけるなよ。私が、この私があのアリエルなどという小娘に負けたというのか」

 

最後の最後、俺が行うのは復讐。

ダリウスが一番嫌がること、アリエルに負けたという事実。

俺は奴を言葉で追い詰めていく。

 

俺は限界まで奴を苦しめる。

 

「ダリウス、もう終わりだ」

 

「私が、この私がぁ……」

 

苦しんだアイシャとアルス。怪我をしたエリスとシルフィ。

家族、俺の大切な人。

そんな人たちを傷つけたダリウス。

 

苦しんだ家族を思い出し、歯を食いしばる俺。

床に落ちた小刀。俺は奴の剣を力一杯握る。

憎しみを一本の剣に乗せて。俺は自らの手で奴を、醜い男の首を、出来る限りゆっくりと叩き切った。

 

 

─────────────────────────

 

 

俺はアリエルに土下座した。

俺は殺そうとしたと。貴族を、アリエルを皆殺しにしようとしたと土下座した。

 

「ルーデウス!なんでそんなことした!」

 

ルークが叫ぶ。

 

「ごめんなさい、ごめんなさい」

 

俺はひたすら謝った。

謝るんじゃなくて理由を話せと言われても、俺はただひたすらに謝った。

全部、全部俺が悪い。

殺すなら俺にしてくれ。シルフィとエリス、アイシャとアルスには手を出さないでくれと謝った。

 

止まらない土下座。

声を掛けるのは一人の王女。

 

「ルーデウス殿。私が、あなたの王様になることは可能でしょうか?」

 

「王様?」

 

唐突な言葉。

ゆっくりと放たれた言葉に俺は目を見開く。

 

「ルーデウス殿、あなたはシルフィを大切にしてくれました。私の約束を守ってくれました。アイシャさんも日記をシルフィに渡して、シルフィを地下から出すという私のお願いを聞いてくれました」

 

アリエルが俺に近付いてくる。

その光景にルークが「アリエル様!危ないです!」と言いながら近付こうとする。しかし、叶わない。ルークを止めたのはゆっくりと首を横に振るシルフィ。

 

俺とアリエル。

二人の距離、誰にも邪魔はされず縮まっていく距離。

刹那、交わすのは約束。

 

「ルーデウス殿。いや、ルーデウス・グレイラット。私があなたを……」

 

動き続けるアリエルの唇。

止まらない唇から放たれる言葉は、短かった。

 

「王として必ず、勝たせてみせます」

 

あなたへの恩返しが王様になるというのは少し我儘かもしれませんねと笑うアリエル。

俺は、そんな彼女を見つめた。

ただ、潤む瞳で見つめてた。

 

魔力枯渇した身体、血に濡れたパーティ会場。

俺はそんな中で覚悟を決める。

 

「アリエル様、お願いします」

 

俺を助けてくれたアリエル、殺されそうになったのに助けてくれたアリエル。

人としての器、王としてのカリスマ。

俺は、それを見続けるために決断する。

 

「俺と一緒に戦ってください」

 

言葉と同時。俺は、その日、アリエルの配下になった。

 

 

─────────────────────────

 

 

「本当にさ、しぶとすぎるんだよ……」

 

彼の名はヒトガミ。

白い顔を険しくする神。

 

「人質を取らせて、家族から切り離して。一人にして水神とペルギウスまで敵にしたのにさ」

 

日記では容易く壊れた男。

そんな醜い男が神へと牙を剥く。

 

「それでも死なない。本当にゴキブリ並みの生命力してるよね」

 

ルーデウスをゴキブリと称する神。

卑下する神。しかし、状況は変わらない。

 

「戦況も込みで最高のシチュエーションだったのにさ。ダリウスの奴、失敗しやがって」

 

神が認める失敗。

奴が認めるのは敗北。

 

どうする、どうする。

 

思考を回す神。

奴は、一人の男を頼るんだ。

 

「本当は嫌だけど、やるしかないよね」

 

ルーデウス殺し。

奴が本気になる。

 

「ミリス国、作れない魔導鎧。ふふっ、まだ僕の殺しは終わっちゃいないよ」

 

ルーデウスVSヒトガミ。

最後の勝負が、始まりを迎える。

 

 

─────────────────────────

 

「ねぇ、あのさ、僕の願いこと聞いてくれるかい?」

 

「珍しいな、アンタが願い事なんて」

 

ヒトガミと喋る男。

彼の正体は、視点を変えれば最強と呼べる使徒。

 

「殺したい奴が居るんだよ」

 

殺害予告、それを目を見開いて聞くのは……

 

「それって、まさか……」

 

「あぁ、そうさ。ゴキブリ並みの生命力を持つアイツ。そんなクズも僕と君なら必ず殺せる」

 

驚きの表情をするのは闘気を纏えない身体を持つ『ギース・ヌーカディア』

ルーデウスと同じ性質。しかし、強さの種類は全く異なる。

頭を使う男。そんな男がルーデウスを追い詰める。

 

ルーデウス殺し。

この事実に一人の男が頷く。

最強の使徒が、コクンと頷く。

 

ギースVSルーデウス

使徒同士の対決が、次の物語への布石となる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アスラ王国編 終幕

二部のここまでについて。

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