もしも、エリスがルーデウスと別れなかったら…   作:あえch

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幸せへの道
グレイラット家


 

 

─ギース視点─

 

先輩は、やっぱりすげぇな。

俺はヒトガミと話しながら、そう思った。

 

「水神と北帝、それ以外も力でねじ伏せられんのか」

 

最後に会ったのは迷宮。

俺が見ていた先輩の強さはそこで止まっている。

それ故に見誤る。

最強を殺した男、俺は男の成長を侮ってしまう。

俺と同じ、闘気が纏えない弱い男だと錯覚してしまう。

 

「俺が七大列強を率いれば殺せると思ったけどよ、アンタの話を聞いてるとそれも難しそうだな」

 

難しいというより不可能。

彼を力でねじ伏せるのは、神でさえ出来なかった。

 

「そうなんだよ。本当にさ、イラつくよね」

 

歯軋りをする神。

俺は、そんな神に言葉を投げかける。

 

「じゃあ、こういうのはどうだ?」

 

「ん?」

 

ルーデウス殺し。

俺は覚悟を決める。

 

「殺すんじゃない、死んでもらえばいい」

 

俺の言葉が白い空間に溶ける。

ゆっくりと呟いた、重たい言葉が溶ける。

刹那、俺の瞳を支配するのは笑顔。

 

「ふふっ、死んでもらう。なるほどね、すごく良いね」

 

満面の笑みを向けるのは『ヒトガミ』

奴が、俺に言葉を置いていく。

 

「ルーデウスとその娘ララ。僕の最大の敵である二人の人間を……」

 

俺とヒトガミ。

最後の共闘が幕を開ける。

 

「殺してよ」

 

闘気が纏えない俺、何度も失敗した俺。

そんな俺は七大列強を、ルーデウスを殺すことになるんだ。

 

 

─────────────────────────

 

 

全ての役目を終えたパーティ会場。

血に濡れたパーティ会場に一人の女性が佇んでいた。

その人物は水神流のスペシャリスト。

青髪が特徴的な女性。

 

「お師匠様……?」

 

ペタペタという血に濡れた足音。

それほどの大虐殺。

そんな中、一人の女性は水神を『師匠』と呼んだんだ。

 

「なんで、なんで?」

 

うつ伏せに倒れる老婆レイダ・リィア。

一人の女性は、老婆を震えた瞳で見つめる。

 

「誰が、誰がお師匠様を……」

 

師であり家族。

そんな人物の死体を見つめて、女性はあることを決意する。

 

「殺す、殺してやる」

 

老婆の虚ろな瞳に映るのは、血に反射する女性の姿。

水神流には似つかわしくない殺気。

一人の女性は放っていく。

 

「私が、お師匠様……いや、お婆様の仇を取る」

 

ゆっくりと言葉を放ったのは水神流派最高の逸材

『イゾルテ・クルーエル』

エリスと修行しなかった女性、修行を完遂しなかった女性。

そんな彼女が掲げるのは殺し。

彼女は何かをブツブツと呟きながら歩き出す。

 

「殺す、殺してやる。全てを捨ててでも、殺してやる」

 

イゾルテ・クルーエル、最強の水神流。

この物語は、そんな彼女の運命をも大きく、大きく変化させることになるんだ。

 

 

─────────────────────────

 

 

─シルフィエット視点─

 

最近、ボクは昔を思い出すことが増えた。

ルディと学んだ学園でのこと、ルディと結婚した時のこと。

思い出してみると、その全ての思い出がボクにとっての幸せだった。

 

幸せ、幸せ。

 

ルディと居られれば、ボクはそれだけで幸せだった。

ずっと、ずーっと一緒。ルディとの幸せな生活。

 

大好きなルディ。

ボクにとっての大切な人。

 

そんな人がつけていた日記。辛かった思い出。

そんな思い出。だからこそ書いていこうと思う。

 

嫌な思い出を最高の思い出に。

 

ボクも彼を見習って、日記をつけていこうと思う。

 

 

─────────────────────────

 

 

▫️

今日から日記をつけることにする。

ルディとの、みんなとの思い出を振り返られるように。

今は辛いけど、きっと、いつか最高の思い出になると思うから。

 

すぐに思い出せるように、ボクは日記をつけていこうと思う。

 

▫️

アスラ王国の戦争が終わった。

皆にそう言ったら、エリスにまだ戦うの?って言われた。

ボクとアリエル様はその言葉に「戦うも何も、相手が居ないよ。脳筋すぎるよ…」と答えた。

エリスはふーんとだけ言って、近くに居たルディに擦り寄ってた。

 

その姿を横目に、ボクはアリエル様と話し合った。

 

アリエル様の国力が下がったという言葉。

ボクはその言葉に、これからどうしよう…という言葉を返した。

 

みんなの「完勝じゃない」という言葉がボクの耳を揺らす。

そう、みんな。ボクも含めてみんな。でも、エリスだけは違ったんだ。彼女は『ある言葉』を呟く。

その『ある言葉』とは『どうでもいい』という言葉。

 

ルーデウスが生きているならそれ以外はどうでもいいという言葉。

 

ボクは、エリスの言葉に納得した。

ルディが無事ならそれで良い。ボクはエリスの近くで、ルディと手を繋ぎながらそう思った。

 

▫️

ルディを殴った。ボクは気持ちのまま思いっきり彼を殴った。

ルディが「王級治癒魔術が使えることがミリスにバレた。俺だけが悪いって言いに行く」と言ったから、ボクは硬い握り拳を作って、闘気を纏って彼を殴った。

「なんで、なんでそうやって一人で全部やろうとするんだよ!」とボクは叫んだ。

 

この叫びにルディは「もう、もう何も失いたくないんだよ。死ぬのは俺だけで良いんだよ」って呟きながら、「なんで俺なんかに使ったんだよ。エリスを連れて、隠れて王級治癒魔術を使えば良かったのに、なんで俺なんかに、クズな俺なんかに使ったんだよ」と呟いてた。

 

ボクはこの言葉に、涙目になりながら彼に抱きついた。

「そんなの決まってるだろ。ルディを、愛する人を守るために決まってるだろ!」という言葉を、彼の胸の中で叫んだ。

 

「ルディが、ルディが死ぬなんて嫌だよ…」

 

ボクは、この言葉を何度も呟いた。

 

ルディはクズなんかじゃない。最高にカッコいい、ボクの旦那さんだよ。

 

ボクの気持ちは揺るがない。

ボクの頭には、この言葉がこびり付いて離れなかった。

 

▫️

ルディと添い寝した。

彼の熱が心地良かった。

暗い部屋で、彼の言葉だけが光ってた。

 

「シルフィ、一人で戦おうとしてごめん。いや、違うな」

 

ルディとボク。

気持ちをぶつけ合った二人。

そんなボクたちは、幸せを分かち合ってた。

 

「俺を一人にしないでくれて、ありがとう」

 

短い言葉。

たった五文字の『ありがとう』という言葉が、ボクとルディを一つにした。

 

▫️

アイシャちゃんとアルス君がルディと話していた。

人質になった件で話し合いをしていた。

 

逃げて、人質になって。家族の、お兄ちゃんの迷惑になってごめんなさいと謝っていた。

ただ、謝ってた。

 

涙を流しながらアイシャちゃんが謝る。

その姿がルディと重なる。

 

やっぱり妹なんだ。

泣きながら本気になる姿はカッコいい。

ボクは、アイシャちゃんの姿を見つめながらそう思った。

 

▫️

目尻を濡らしながら「もう、アルス君には近付かないです」とアイシャちゃんが呟いた。

ボクでも分かる、アイシャちゃんは泣いていたのだろう。

ルディと同じように苦しんでいたのだろう。

でも、ボクには何も出来なかった。

ルディも同様に、苦しそうに俯くだけで何も出来なかった。

 

全員の言葉が詰まる。

全員。いや、違う。一人の女の子だけはみんなと違ったんだ。

 

「アルス、あなたはそれで良いの?」

 

この言葉を放ったのはエリス。

アルス君は、そんなエリスに一つだけ言葉を残す。

 

「嫌だ」

 

子供らしい言葉。

でも、この時の彼の言葉は、子供の言葉にしては酷く冷たくて、重たかったんだ。

 

▫️

ルディとエリスとロキシーとボクで話し合いをした。

 

アイシャちゃんとアルス君に関して、何をすれば良いのか、何をやってあげれば良いのか分からないとルディが言っていた。

言葉が詰まって出てこないと、そう言っていた。

 

ボクとロキシーは色々と提案した。

もっとじっくり話し合おうとか。

アルス君が大人になったらもう一度話そうとか。

そんな話し合いをした。

 

でも、分かってた。

そんなのは逃げ、何の解決にもならない。

みんな、みんな分かってた。

 

詰まる話し合い。

そんな中、一人の女の子が言葉を放つ。

 

「ルーデウス、大丈夫よ」

 

短く言葉を放ったのはエリス。

彼女は、一つの行動に出るんだ。

 

▫️

エリスがアルス君と撃ち合いをした。

ただの撃ち合いじゃない。真剣の撃ち合い。

キラリと光る恐ろしい銀線が辺りの景色を輝かせる。

 

アルス君は弱気だった。

「ママには勝てません」そう言っていた。

何も出来ないと俯くアルス君。しかし、エリスのある言葉に空気が変わる。

 

「私に勝ったら、アイシャと結婚していいわよ」

 

この言葉に、アルス君の目つきが変わった。

 

▫️

エリスは恐ろしいほど強かった。

異常なほどのスピードとパワー。

闘気を纏えるボク、同じはずのボク。

しかし、ボクとは比べ物にならない実力。

 

刹那、ぐちゃっと、何かが庭の地面に落ちた。

 

「右腕、落ちたわね」

 

エリスの言葉、短い言葉。

その言葉が意味するのは一つの事実。

 

「アルス君、右腕が……」

 

アイシャちゃんの言葉。

そう、アルス君の右腕は……切断されていたんだ。

 

▫️

アルス君が剣を握りしめた。

利き腕じゃない左手で剣を握りしめた。

 

そんな光景。口を開いたのは赤い髪。

 

「アルス、あなたは弱い」

 

エリスがこの言葉を呟いた。

弱いという罵倒。しかし、言葉はそれで終わらない。

 

「私みたいに、弱い」

 

私みたいという自らを卑下する言葉。

その言葉には、アルス君同様に重さがあった。

 

「ルーデウスに守られて、守られて。ずっと迷惑をかけてる。私は、きっと戦士にはなれない」

 

ルーデウスを守りたいと願うエリス。

彼女は、言葉を放つ。

 

「でも、あなたは違う。私の子供だけど違う」

 

彼女の言葉の終わりは、たった一つ。

 

「私じゃない。ルーデウスの血を引いてるんだから、きっと守れるはず」

 

強くて、すごくてカッコいいルーデウス。

そんな息子なんだから大丈夫という励ましの言葉がアルス君の耳へ。

 

「……はい、守ります。アイシャ姉を、俺に守らせてください」

 

彼の虚ろな目。

アルス君の虚ろな目がボクたちを射抜く。

 

そう、彼は限界まで戦ったんだ。

そして、勝ち取ったんだ。

信頼を。そして、信用を。

 

勝ち得た事実。

その日、アイシャちゃんとアルス君は血に汚れた庭の中で…

 

結婚したんだ。

 

▫️

ルディが家族全員を集めた。

みんなが重い顔をする。

重たい空気、そんな中で発した言葉は、これだった。

 

「みんな、お願いだ」

 

土下座はしない。

彼の言葉が部屋に響く。

 

「俺と一緒に……」

 

揺れるボクたちの耳。

瞬間、覚悟を決める。

 

「戦ってくれ」

 

そう言いながらルディが全員に差し出したのは、一冊の日記だった。

 

▫️

全員が日記を読んだ。

あの最低最悪の日記。

酷い内容の日記。しかし、誰も目を逸らすことはなかった。

 

そんな中でルディが心配していたのはロキシーのこと。

出産を悪とする日記。それを読んだロキシーは、また自殺してしまうんじゃないかと思ってた。

でも、違った。

ロキシーはボクたちの想像を超えてきたんだ。

 

「なるほど、内容は理解出来ました。私はとにかく元気な赤ちゃんを産めば良いんですね」

 

勤勉に、唐突に、真面目に。

そんなことを口にする。

 

「ん?へ?ロキシーさん?それで良いんですか?」

 

「え?間違えましたか?」

 

「いや、合ってるんですが、なんというか、すごいというか…」

 

「なんですかルディ、はっきり言ってください」

 

弱まるルディの語尾、強くなるロキシーの語尾。

二人は、話しながらそのまま見つめ合った後、笑っていたんだ。

 

▫️

ロキシーが出産した。

アイシャちゃんとボクがお手伝いをする。

ロキシーがアイシャちゃんに「新婚早々すみません」と言うと、彼女は「全然へーき!寧ろ、ロキシーさんとお兄ちゃんに恩返し出来て最高!!!」と笑顔で答えてた。

 

ボクは、それを笑いながら見つめる。

 

「幸せ、幸せ〜」と言うアイシャちゃんと「痛い、です。でも、幸せです」とちょっと苦しそうに呟くロキシー。

 

幸せ、幸せ。

 

そう、ボクたちは確かに幸せだった。

 

▫️

ロキシーの出産が成功した。

娘の名前は『ララ』ボクたちはそう命名した。

 

「ルディ、やっと産めました」

 

「ロキシー、ロキシー。ありがとう。生きててくれて、本当にありがとう……」

 

疲れ切ったロキシーと涙を流すルディ。

 

新しい家族が一人増える。

ボクたちは日記とは違う歩みを、幸せを掴み始めていたんだ。

 

▫️

本格的にこれからの話し合いが始まった。

時間は有限、ボクたちは今の状況を話し合う。

 

①ルディの国家転覆罪について

②アスラ王国の国力低下について

③王級治癒魔術とミリス国について

 

①に関してはアリエル様がなんとかしてくれたらしい。

ルディが配下になったから彼を庇う。何も不思議なことはない。

ルディは魅力的だから、きっとアリエル様も大事にしてくれたのだろう。

 

内乱でダリウスが全て殺した。

中途半端に生き残りが居なかったから、こういうことに出来る。

全てを殺したルディ。強い奴を殺したルディ。そんなルディのやったことは、決して無駄なんかじゃなかったんだ。

 

②に関してはルディがお手伝いすることになった。

七大列強が後ろ盾に居る。それだけで他の国は簡単に手が出せなくなる。

七大列強、最強殺し。

ダリウスに利用されたそんな肩書きが、今度はボクたちの背中を押す。

 

風が吹いている。

間違いなく、ボクたちに流れが来ていたんだ。

一つを除いて、絶対に。

 

「ミリス国は、止められない」

 

ルディの言葉。

そう、③に関しては絶望的な状況だった。

 

▫️

ミリス国潰し。

日記で得た情報。必ずボクとルディを殺しにくる。

それをアリエル様に相談した。

もしかしたら、配下から除外されるかもしれないという覚悟で話した。

しかし、アリエル様の言葉は真逆だった。

 

「そうしたら、全面戦争ですね」

 

アリエル様の言葉が、ボクたちの戦いを示唆していた。

 

▫️

ミリスとの全面戦争。

ボクたちは覚悟を決める。

エリスは剣を振るい、ロキシーはライトニングの修行をする。

ボクは闘気を纏いながら治癒魔術の修行をする。

 

本気の修行。

でも、本当は分かってたんだ。

 

勝てない。

ボクたちは、ミリスには勝てない。

理由は明白だった。

 

▫️

ルディの魔導鎧が使えない。

この事実は分かっていたつもりだった。

でも、あくまで『つもり』

ボクたちは真の意味で理解出来ていなかったんだ。

 

「ごめん、俺が闘気を纏えなくてごめん……」

 

最後にして最大の障壁。

ボクたちは、考えを巡らして巡らして……俯いてた。

 

 

─────────────────────────

 

 

ペルギウス様に禁止された魔導鎧製作。

没収された魔導鎧、作るにしてもペルギウス様はケオスブレイカーで上空からボクたちを監視してる。

作ることは出来ない。

 

どうする、ボクたちはどうすれば良い。

 

ボクはルディと一緒に、一生懸命考えた。

どうにかして一日で魔道鎧を作る、ルディが闘気を纏えるように一緒に修行する。

そんな不可能を選択肢に入れながら、ボクたちは最後まで足掻く。

 

無理、無理。

 

出来ない選択肢だけがボクの前で増えていく。

諦め始める思考。刹那、玄関のドアが鳴る。

コンコンと、ボクたちの運命を揺らす。

 

「先輩、久しぶりだな」

 

軽快な言葉。

ボクたちとは違う、軽い言葉。

 

「単刀直入に言うぜ、先輩」

 

単刀直入、彼の声がルディの耳を揺らす。

 

「俺は、裏切った」

 

「は?」

 

ルディの素っ頓狂な声。

苦しむ彼を助けるのは、ルディを先輩と呼ぶ人物。

 

『ギース・ヌーカディア』

 

「誰をだよ…」

 

ルディの質問。しかし、そんなものは意味がない。

彼が裏切る人物は一人しかいない。

 

「ヒトガミ、俺はアイツを……」

 

軽いはずなのに重い。

ギースの言葉が、ボクたちに重くのしかかる。

 

「裏切るぜ」

 

ボクは、ルディは。

彼の言葉に…目を見開いたんだ。

 

 

─────────────────────────

 

 

─ルーデウス視点─

 

気付いた時、俺は白い空間に居た。

もう見慣れた景色。驚くこともなかった。

 

「やぁ、久しぶり」

 

「……」

 

奴はよく笑う。でも、この時は俺の想像以上の笑顔だった。

ごめんねと言ったり、でも、僕は悪くないんだよーと言ったり。

そんな言葉が白い空間に溶ける。

 

軽くてムカつく声。

でも、俺は怒らない。

 

「最後の戦いだな」

 

「は?」

 

「もう分かってんだよ。アイシャとアルスはダリウスなんかに人質にされるなんてヘマはしない。お前が力を貸したんだろ?」

 

「……」

 

今思えばおかしいことだらけだった。

日記も、今までも。

俺はアイツに貶められた。

やっと、理解することが出来た。

 

「勝負だ、ヒトガミ」

 

俺とヒトガミ。

俺は明確で、でも静かな殺意を持って奴に語りかける。

 

「俺が、俺たちが超えてやる」

 

「君が、君たちが僕を超える?ふふっ、そんなの出来るわけないだろ」

 

馬鹿にする神、最強。でも、関係ない。神だろうが関係ない。

俺たちが、お前を超えてやる。

この事実は、決意は揺るがない。

 

「さぁ、始めようぜヒトガミ」

 

土下座はしない。

助けを乞うこともない。

ただ、俺はニヤリと笑う。同時、ヒトガミも、俺の神もニヤリと笑う。

 

「君を殺すのは、僕だ」

 

「やってみろよヒトガミ。俺は、もう一人じゃない。俺たちがお前を殺す」

 

さぁ、始めよう。

俺たちの最後を。

 

「俺とお前の、俺たちとお前の、正真正銘最後の勝負だ」

 

俺の言葉が白い空間に溶ける。

ただの事実。しかし、確実で揺るぎない事実。

オルステッドを殺した最大の使徒の謀反。

そんな事実が、一人の神を追い詰め始める瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二部のここまでについて。

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