もしも、エリスがルーデウスと別れなかったら…   作:あえch

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ルーデウスの覚悟

 

 

─ルーデウス視点─

 

最後の勝負。

ヒトガミとの戦いを覚悟していた時、一人の男が来た。

ヒトガミの使徒だと言った男は、ある提案をする。

 

「先輩。俺と戦おうぜ」

 

詰みだと思った戦況。

魔導鎧が作れなくなった戦況。

そんな中で、彼は俺を見つめる。

 

「俺と、アンタで」

 

始まる、始まってしまう。

俺とヒトガミの最終決戦。

 

「神を超えようぜ」

 

ギースと俺。

使徒同士の共闘が、始まりを迎える。

 

 

─────────────────────────

 

 

ギースがヒトガミの使徒である。

これは、俺の中では一番高い可能性だった。

 

「日記の後半、二つの国が俺を襲った時ギースが居た」

 

ヒトガミが俺をラプラス以上と評した決戦。

その時、ギースの死体があったと日記には記されていた。

意味不明の日記、正体不明の死体。

そこから導き出される可能性は一つ。

 

『ギースはヒトガミの使徒である』

 

俺は警戒しながらギースの言葉を聞く。

 

「ギース。お前はヒトガミを裏切ったのか?」

 

「あぁ、もちろんそうだ」

 

軽くも真剣な瞳。

俺はギースの姿から何かを感じ取る。

 

「ギース、俺には時間がない。要件を言ってくれ」

 

「そうだな、結論から言うぜ」

 

ギースが口を開く。

刹那、空気が凍りつく。

 

「先輩、着ないか?」

 

「着る?」

 

ギースが口に出す言葉。

それは、未来への一言。

 

「あのブツ。最強にして最低と言われた、あのブツだ」

 

最強にして最低。

ギースは俺に勝ち筋を伝えてくる。

七大列強の勝ち筋を俺に伝えてくる。

 

「闘神鎧。先輩なら、使いこなせる」

 

この選択。

大きな分岐点が、俺の前に現れる。

 

 

─────────────────────────

 

 

「闘神鎧!?ルディ!あれはダメだよ!!!絶対にダメだ!」

 

シルフィが声を挙げる。

彼女は俺と学園で七大列強について調べていた。

この中で、彼女は俺と同じぐらい闘神鎧に詳しい。

だからこそ叫ぶ、俺に向かって。

 

「ルディ!大丈夫!ボクが強くなるから!」

 

シルフィの叫び。刹那、俺はゆっくりと彼女の前に腕を置く。

 

「シルフィ、大丈夫。まだ着るとは言ってないから」

 

シルフィがこれだけ取り乱すのも無理はない。

それほど闘神鎧とは恐ろしいものだ。

 

七大列強三位 闘神鎧

全てを破壊するその鎧は、最強にして最低と呼ばれる。

帝級を連発出来るその性能は『魔龍王と互角』とさえ称されるほど。

 

巡る俺の頭。

俺は質問を整え、あることを口にする。

 

「ギース、その闘神鎧はもうここにあるのか?」

 

「ふっ、流石は先輩。そこに気付くか」

 

ニヤけるギース。

彼は、言葉を置いていく。

 

「あぁ、もちろんあるぜ。あった場所はとんでもなく難しい迷宮だった」

 

「……やっぱり」

 

俺は呟く。

質問の真意を彼は感じとる。

 

「正直言うとな先輩、俺はヒトガミにこう言われたんだ。殺せってな。闘神鎧を着て、ルーデウスを殺せと言われた」

 

呟くギース。

俺は、そんな彼に言葉を置いていく。

 

「でも、俺は死んでいないしお前に殺されてもいない。ギース、お前は、こんな理由からヒトガミを裏切ったって言いたいのか?」

 

「いーや、もちろん違う。もっと大切なことだ。先輩が聞きたいだろうことだ」

 

「……」

 

「重くて持てなかったからな。俺の覚悟を見せるために、持ち運ぶために、先輩のために着てきたぜ」

 

「ギース、お前、まさか……」

 

「あぁ、『試運転』させてもらったぜ」

 

ヒトガミの使徒、ギース。

彼は、大きな覚悟を決めていたんだ。

 

闘神鎧を着ても大丈夫。

彼は、身体で示していく。

 

「先輩、短時間なら大丈夫だ」

 

大丈夫という言葉。

それが証明するのは、たった一つの事実。

 

そう、闘神鎧。

彼は着て、大丈夫ということを証明してきたんだ。

 

 

─────────────────────────

 

 

ギースは何度も呟いてきた。

 

闘神鎧は着ても大丈夫だと。

昔の大戦でも、着てる奴は居たと。

少量の生命力なら吸われても大丈夫だと。

 

俺はヒトガミに故郷を潰された。

だから、アンタと、先輩と共に超えたいんだよ!と俺に向かって叫んできた。

 

ギースの叫び。

俺は、この言葉を返す。

 

「ギース、帰ってくれ」

 

「先輩?」

 

シルフィの心配、背中に居るみんなの決意。

俺は、それに乗って言葉を放つ。

 

「俺は、着ない」

 

俺の決意。

それは、みんなと戦うこと。

 

「俺は、勝てる」

 

シルフィが居て、ロキシーが居て、エリスが居て、リーリャやパウロ、アイシャやアルスが居て、ララが居る。

そう、俺には家族が居る。

 

そんな俺。だから、もう大丈夫だ。

 

もう、心配しなくても大丈夫だ。

 

「闘神鎧、俺は着ないよ」

 

ギースの姿を見て、俺は笑う。

心配していたシルフィを見つめて、俺は笑う。

 

「みんなが居るだけで、俺は勝てる」

 

この言葉が、ギースの耳へと広がっていく。

刹那、俺は覚悟を決める。

 

「勝って、勝って。みんなを守る」

 

闘神鎧を着ない。

そんな事実だけが、俺の未来を照らしてた。

 

 

─────────────────────────

 

 

 

みんなと約束した。

ミリスとの戦い、集大成の戦いに向けて俺たちは抱きしめ合った。

 

ロキシーとは、ララをこれからも一緒に育てようと約束して。

シルフィとは、初めての子供を作ろうと約束する。

 

そしてエリスとは、冒険者の時みたいに、結婚した時みたいに、また一緒に暮らして幸せになろうと約束する。

 

パウロと最後に交わす酒。

みんなと過ごす日々がこれからも永遠でありますように。

 

俺は、地下にあるロキシーの御神体に手を合わせて、最後のお祈りをした。

 

 

─────────────────────────

 

 

「なぁ、知ってるか?今回の戦争って勝ち確なんだぜ?」

 

今でも覚えてる。

戦いの前の、この言葉。

 

「相手の国、内乱があってぐちゃぐちゃらしいからな。ミリス様の加護を受けてる俺らの敵じゃねぇよ」

 

兵隊同士で話す。

俺はニヤリと笑って、言葉を返す。

 

「あぁ、そうだな」

 

数時間前まで、俺は永遠に笑ってた。

 

 

ドン!!!

 

音が鳴った。

爆音が鳴った。

 

もう俺の顔に笑みは無い。

その代わり俺の顔に、額に掛かったのは『血』

真っ赤なドロドロが俺の瞳を支配する。

 

「なんで、なんでレジスト効かねぇんだよ……」

 

俺の、俺たちの仲間が減っていく。

その原因、策略は分かってる。

たった一つの岩。

遠く離れた所から放たれる岩が、俺たちの頭を粉々に砕く。

 

岩、ストーンキャノン。

 

そう、分かってるんだ。

でも、どうすることも出来ない。

魔術を対策するレジスト。そんな対策を集団で撃っても、小さな岩は、いとも簡単に対策を、俺たちを貫通してくる。

 

ドン!ドン!!!

 

「また、死んだ……」

 

俺の隣の奴が、飯を食った仲間が死んでいく。

いとも簡単に、頭が無くなって即死していく。

 

怖い、怖い。

 

俺は初めてそう思う。

ミリス様のためなら死ねる。

そう信じて、願ったはずなのに、俺の足がすくむ。

ガタガタと震えて動かなくなる。

 

歯がガタガタと動く。

そんな中、俺はある物を見たんだ。

 

前衛で剣を振りながら、見えない速度で岩を放つ男を。

不規則な動きで浮いて、不規則な岩を放つ怪物を。

 

その男の名は『ルーデウス・グレイラット』

 

前衛と後衛の間で、ただ即死を続ける怪物が俺の瞳を支配する。

 

「もう、勝てない。勝てない……」

 

足の震えが増す。奥歯が壊れるんじゃないかと思うほど口がガタガタする。

止まらない恐怖。

 

刹那、何かが俺の横を通る。

 

「あれがルーデウス・グレイラット。僕を英雄にしてくれる人物ですか」

 

幼い男が俺の横に佇む。

彼は大きな剣を背中に刺し、怪物を見つめていた。

 

「あなたは?」

 

俺は問う。

俺は幼い男の子に、震えが止まらない唇で問いた。

 

「ふふっ、我が名はアレクサンダー・カールマン・ライバック!オルステッドを殺した泥沼を殺し、戦争を勝利に導く英雄、北神三世である!」

 

北神 アレクサンダー。

そう、彼もまた、泥沼と同様『怪物』であった。

 

「今は上機嫌でしてね、答えてあげましたよ。まぁ、あなたみたいな雑魚には興味は無いんですがね」

 

いや、あなた『たち』かな?

そう言いながら北神は歩みを進める。

不意打ちはしない。

北神は、ゆっくりと泥沼の前に現れる。

 

「僕は英雄になる。ルーデウス・グレイラット。あなたを超えてね」

 

「北神 アレクサンダー・カールマン・ライバック……」

 

泥沼VS北神。

怪物VS怪物。

 

七大列強同士の対決が、血塗れの戦場を輝かせる。

 

 

 

 

 

 

 




ギースは、どうやって闘神鎧を持ち運んだのだろう。
彼の着て運んだと言う言葉、その言葉は嘘か誠か。

それは分からない。
しかし、分かっていることが一つある。

『闘神鎧は強い』

これだけは、不変的な事実だった。

二部のここまでについて。

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