─ルーデウス視点─
最後の勝負。
ヒトガミとの戦いを覚悟していた時、一人の男が来た。
ヒトガミの使徒だと言った男は、ある提案をする。
「先輩。俺と戦おうぜ」
詰みだと思った戦況。
魔導鎧が作れなくなった戦況。
そんな中で、彼は俺を見つめる。
「俺と、アンタで」
始まる、始まってしまう。
俺とヒトガミの最終決戦。
「神を超えようぜ」
ギースと俺。
使徒同士の共闘が、始まりを迎える。
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ギースがヒトガミの使徒である。
これは、俺の中では一番高い可能性だった。
「日記の後半、二つの国が俺を襲った時ギースが居た」
ヒトガミが俺をラプラス以上と評した決戦。
その時、ギースの死体があったと日記には記されていた。
意味不明の日記、正体不明の死体。
そこから導き出される可能性は一つ。
『ギースはヒトガミの使徒である』
俺は警戒しながらギースの言葉を聞く。
「ギース。お前はヒトガミを裏切ったのか?」
「あぁ、もちろんそうだ」
軽くも真剣な瞳。
俺はギースの姿から何かを感じ取る。
「ギース、俺には時間がない。要件を言ってくれ」
「そうだな、結論から言うぜ」
ギースが口を開く。
刹那、空気が凍りつく。
「先輩、着ないか?」
「着る?」
ギースが口に出す言葉。
それは、未来への一言。
「あのブツ。最強にして最低と言われた、あのブツだ」
最強にして最低。
ギースは俺に勝ち筋を伝えてくる。
七大列強の勝ち筋を俺に伝えてくる。
「闘神鎧。先輩なら、使いこなせる」
この選択。
大きな分岐点が、俺の前に現れる。
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「闘神鎧!?ルディ!あれはダメだよ!!!絶対にダメだ!」
シルフィが声を挙げる。
彼女は俺と学園で七大列強について調べていた。
この中で、彼女は俺と同じぐらい闘神鎧に詳しい。
だからこそ叫ぶ、俺に向かって。
「ルディ!大丈夫!ボクが強くなるから!」
シルフィの叫び。刹那、俺はゆっくりと彼女の前に腕を置く。
「シルフィ、大丈夫。まだ着るとは言ってないから」
シルフィがこれだけ取り乱すのも無理はない。
それほど闘神鎧とは恐ろしいものだ。
七大列強三位 闘神鎧
全てを破壊するその鎧は、最強にして最低と呼ばれる。
帝級を連発出来るその性能は『魔龍王と互角』とさえ称されるほど。
巡る俺の頭。
俺は質問を整え、あることを口にする。
「ギース、その闘神鎧はもうここにあるのか?」
「ふっ、流石は先輩。そこに気付くか」
ニヤけるギース。
彼は、言葉を置いていく。
「あぁ、もちろんあるぜ。あった場所はとんでもなく難しい迷宮だった」
「……やっぱり」
俺は呟く。
質問の真意を彼は感じとる。
「正直言うとな先輩、俺はヒトガミにこう言われたんだ。殺せってな。闘神鎧を着て、ルーデウスを殺せと言われた」
呟くギース。
俺は、そんな彼に言葉を置いていく。
「でも、俺は死んでいないしお前に殺されてもいない。ギース、お前は、こんな理由からヒトガミを裏切ったって言いたいのか?」
「いーや、もちろん違う。もっと大切なことだ。先輩が聞きたいだろうことだ」
「……」
「重くて持てなかったからな。俺の覚悟を見せるために、持ち運ぶために、先輩のために着てきたぜ」
「ギース、お前、まさか……」
「あぁ、『試運転』させてもらったぜ」
ヒトガミの使徒、ギース。
彼は、大きな覚悟を決めていたんだ。
闘神鎧を着ても大丈夫。
彼は、身体で示していく。
「先輩、短時間なら大丈夫だ」
大丈夫という言葉。
それが証明するのは、たった一つの事実。
そう、闘神鎧。
彼は着て、大丈夫ということを証明してきたんだ。
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ギースは何度も呟いてきた。
闘神鎧は着ても大丈夫だと。
昔の大戦でも、着てる奴は居たと。
少量の生命力なら吸われても大丈夫だと。
俺はヒトガミに故郷を潰された。
だから、アンタと、先輩と共に超えたいんだよ!と俺に向かって叫んできた。
ギースの叫び。
俺は、この言葉を返す。
「ギース、帰ってくれ」
「先輩?」
シルフィの心配、背中に居るみんなの決意。
俺は、それに乗って言葉を放つ。
「俺は、着ない」
俺の決意。
それは、みんなと戦うこと。
「俺は、勝てる」
シルフィが居て、ロキシーが居て、エリスが居て、リーリャやパウロ、アイシャやアルスが居て、ララが居る。
そう、俺には家族が居る。
そんな俺。だから、もう大丈夫だ。
もう、心配しなくても大丈夫だ。
「闘神鎧、俺は着ないよ」
ギースの姿を見て、俺は笑う。
心配していたシルフィを見つめて、俺は笑う。
「みんなが居るだけで、俺は勝てる」
この言葉が、ギースの耳へと広がっていく。
刹那、俺は覚悟を決める。
「勝って、勝って。みんなを守る」
闘神鎧を着ない。
そんな事実だけが、俺の未来を照らしてた。
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みんなと約束した。
ミリスとの戦い、集大成の戦いに向けて俺たちは抱きしめ合った。
ロキシーとは、ララをこれからも一緒に育てようと約束して。
シルフィとは、初めての子供を作ろうと約束する。
そしてエリスとは、冒険者の時みたいに、結婚した時みたいに、また一緒に暮らして幸せになろうと約束する。
パウロと最後に交わす酒。
みんなと過ごす日々がこれからも永遠でありますように。
俺は、地下にあるロキシーの御神体に手を合わせて、最後のお祈りをした。
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「なぁ、知ってるか?今回の戦争って勝ち確なんだぜ?」
今でも覚えてる。
戦いの前の、この言葉。
「相手の国、内乱があってぐちゃぐちゃらしいからな。ミリス様の加護を受けてる俺らの敵じゃねぇよ」
兵隊同士で話す。
俺はニヤリと笑って、言葉を返す。
「あぁ、そうだな」
数時間前まで、俺は永遠に笑ってた。
ドン!!!
音が鳴った。
爆音が鳴った。
もう俺の顔に笑みは無い。
その代わり俺の顔に、額に掛かったのは『血』
真っ赤なドロドロが俺の瞳を支配する。
「なんで、なんでレジスト効かねぇんだよ……」
俺の、俺たちの仲間が減っていく。
その原因、策略は分かってる。
たった一つの岩。
遠く離れた所から放たれる岩が、俺たちの頭を粉々に砕く。
岩、ストーンキャノン。
そう、分かってるんだ。
でも、どうすることも出来ない。
魔術を対策するレジスト。そんな対策を集団で撃っても、小さな岩は、いとも簡単に対策を、俺たちを貫通してくる。
ドン!ドン!!!
「また、死んだ……」
俺の隣の奴が、飯を食った仲間が死んでいく。
いとも簡単に、頭が無くなって即死していく。
怖い、怖い。
俺は初めてそう思う。
ミリス様のためなら死ねる。
そう信じて、願ったはずなのに、俺の足がすくむ。
ガタガタと震えて動かなくなる。
歯がガタガタと動く。
そんな中、俺はある物を見たんだ。
前衛で剣を振りながら、見えない速度で岩を放つ男を。
不規則な動きで浮いて、不規則な岩を放つ怪物を。
その男の名は『ルーデウス・グレイラット』
前衛と後衛の間で、ただ即死を続ける怪物が俺の瞳を支配する。
「もう、勝てない。勝てない……」
足の震えが増す。奥歯が壊れるんじゃないかと思うほど口がガタガタする。
止まらない恐怖。
刹那、何かが俺の横を通る。
「あれがルーデウス・グレイラット。僕を英雄にしてくれる人物ですか」
幼い男が俺の横に佇む。
彼は大きな剣を背中に刺し、怪物を見つめていた。
「あなたは?」
俺は問う。
俺は幼い男の子に、震えが止まらない唇で問いた。
「ふふっ、我が名はアレクサンダー・カールマン・ライバック!オルステッドを殺した泥沼を殺し、戦争を勝利に導く英雄、北神三世である!」
北神 アレクサンダー。
そう、彼もまた、泥沼と同様『怪物』であった。
「今は上機嫌でしてね、答えてあげましたよ。まぁ、あなたみたいな雑魚には興味は無いんですがね」
いや、あなた『たち』かな?
そう言いながら北神は歩みを進める。
不意打ちはしない。
北神は、ゆっくりと泥沼の前に現れる。
「僕は英雄になる。ルーデウス・グレイラット。あなたを超えてね」
「北神 アレクサンダー・カールマン・ライバック……」
泥沼VS北神。
怪物VS怪物。
七大列強同士の対決が、血塗れの戦場を輝かせる。
ギースは、どうやって闘神鎧を持ち運んだのだろう。
彼の着て運んだと言う言葉、その言葉は嘘か誠か。
それは分からない。
しかし、分かっていることが一つある。
『闘神鎧は強い』
これだけは、不変的な事実だった。
二部のここまでについて。
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