もしも、エリスがルーデウスと別れなかったら…   作:あえch

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5月29日 文体を大幅に変更しました。


狂犬の弱点 前編

 

─エリス視点─

 

 

私はルーデウスが好きだ。

すごく、すごく好きだ。

 

彼を見るだけで顔が熱くなって。

彼に名前を呼ばれるだけで、幸せな気持ちになってしまう。

 

彼が、ルーデウスが居るだけで、ニマニマとした笑みが溢れてしまう。

 

 

 

私は、あの日誓った。

フィットア領に帰還して彼に初めてを捧げた時。

 

『ルーデウスを守る』そう誓った。

 

だから必死に修行した。

冒険者になって、難しい依頼をこなして。

 

ルーデウスと結婚して。彼と時間を共にした。

 

毎日彼と一緒に過ごせて、すごく幸せで。

彼と、剣術と魔術を鍛える日々が私の生きがいだった。

私は、ルーデウスと一緒に強くなれている。そう思っていた。

 

でも違った。今なら分かる。

私は、ルーデウスに、強い彼に甘えてしまったんだ。

 

弱い。相応しくない。私は彼の足手纏いだった。

 

 

─────────────────────────

 

私の一日、ルーデウスとの一日が始まる。

今日も私はルーデウスと修行をする。

剣術、魔術。強くなるための日々を送る。

 

いつもと変わらない日々。そう思っていたけれど。この日は少しだけ違った。

 

「ルーデウス殿!我と婚儀の決闘をしてもらう!」

 

「へ?ぼ、僕ですか?」

 

ルーデウスが結婚の申し出をされた。

相手は男の獣族。

 

いつもなら殴りかかっていたけれど。

この時は止まってしまった。

婚儀という言葉。ルーデウスが私以外と結婚してしまう。

 

少しだけ不安だった。

 

「ルーデウス、結婚するの?」

 

私の言葉に彼は唖然とする。

そして、冷や汗を掻きながら。

 

「いやいや!僕、男ですよ!?相手も男!結婚する訳ないですよ!」

 

「そうなの?」

 

私を横目に置きながら、ルーデウスが獣族と話す。

軽く話した彼が私の疑問に答えてくれた。

 

結論から言うと、ルーデウスは結婚しないらしい。

結婚するのはリニアとプルセナなのだそうだ。

 

良かった。まだルーデウスと一緒に居られる。

彼と生活出来る。

 

安心が頭を駆け巡る。その瞬間、私の中に迷いは消えていた。

 

 

ルーデウスに近付く獣族を片っ端から、ひたすら木刀で叩く。

 

彼が怪我をしないように私が守る。

彼の前衛として、恥ずかしくないように強くなる。

 

私は負けない。目の前に転がる獣族の山が私に自信をくれる。

 

その時、聞こえた。私の耳を揺らす笑い声。

今までの敵とは違う。圧倒的な闘気と威圧。

 

「フハハ!良い剣士が居るな!」

 

「誰?」

 

私は目の前の人物に問いた。

黒い巨体。その身体から左右三本ずつ生えた太い腕。

 

一目見て分かる、強い。

直感的に思う。コイツを、この男を、ルーデウスに近付けてはダメだ。

 

「ハハハ!我が名は…「ふんっ!!!」

 

腕を組みながら、目を瞑って名乗ろうとした黒い巨体。

名乗り。自己紹介なんてさせない。

私は敵の言葉を遮り、巨体の胸を木刀で斬りつけた。

 

「ルーデウスに近付くんじゃないわよ!」

 

木刀を最速で振り切って、宣言する。

手応えはあった。避けられたわけじゃない。

 

私は顔を上げた。ダメージを確かめるために。倒した敵を見下ろすために。

そんな理由で上げた顔。私の視界に広がるのは、有り得ない光景だった。

 

「フハハ!やはり、人族はせっかちだな!」

 

私の視界に広がるのは、綺麗な黒。

木刀で叩いたとは思えないほど傷一つ無い巨体。

その光景に、私の握る木刀が悲鳴を上げる。

 

「木刀、折れたわ」

 

「フハハ!改めて名乗ろう!我が名はバーディ・ガーディ!魔王である!」

 

ダメージどころか触れられたことも忘れているような余裕。

この感覚、覚えがある。

 

覚え、忘れられない記憶。

泣くだけで何も出来なかった記憶。

 

ルーデウスが死ぬ。そう思った、最悪の記憶。

 

「オルステッド並みの硬さね」

 

私は呟いた。そして、腰の剣に手を掛ける。

銀色に光る真剣。私は引き抜いた。

 

そして、そのまま、私は剣を上段に構える。

 

「剣神流か!良いぞ!」

 

魔王の言葉。それと同時、私は懐に飛び込んだ。

歯を食いしばって、必死で。剣を何度も何度も叩きつけた。

 

斬れるまで斬る。そんな考えで、ただひたすらに。

 

それ以降のことはあまり良く覚えていない。

最初、笑っていた魔王。そんな魔王から徐々に笑みが消えていく。

つまらなそうな顔に変わっていく。

 

まるで遊びに飽きた子供のような、そんな表情。

 

「貴様の光の太刀が見たかったのだが」

 

私は膝に手を付いた。

息を切らして、多量の汗を掻く私を魔王が見下ろす。

 

遠い、とてつもなく遠い。

私には何もかも足りない。

 

ポタ、ポタ。

汗が私の前髪を伝って地面に落ちる。

 

私に光の太刀は無い。

 

私は、魔王に傷一つ付けられなかった。

 

 

私は、ルーデウスを守ることが出来なかったんだ。

 

 

─────────────────────────

 

 

─ルーデウス視点─

 

「ルーデウス、ごめんなさいっ」

 

「……」

 

俺は今、エリスをベンチに寝かせ治癒魔術を掛けている。

そんな彼女の目覚め。その第一声は謝罪だった。

 

彼女が謝罪する理由。事の顛末はフィッツ先輩から聞いた。

 

エリスはバーディ・ガーディに斬りかかったらしい。

歯を食いしばりながら、何度も何度も、俺のために。

 

疲れ切った彼女。そんなエリスをバーディ・ガーディは、あの太い指でデコピンしたのだそうだ。

 

倒れるエリスと見下ろす黒い巨体。

図書室から帰ってきた俺は、この光景を見てしまった。

 

視界に広がる情報。俺は勘違いしてしまった。

エリスがバーディ・ガーディに傷付けられたと思っちゃったんだよね。

 

本当はデコピンだけだったのに。

 

それから、俺は気付いた時には叫び声を上げながらストーンキャノンをぶっ放してた。

 

魔王に向かって、全力のやつを。

 

いやぁ、早とちりって怖いね。

相手が不死魔王で良かったよ、本当に。

だって魔王の身体が粉々になったんだよ?

 

ナナホシと協力したストーンキャノンの威力向上。

まだまだ未完だが。うん、普通の人なら死んでたな。

うん、気を付けよう。

 

「我!大復活!!!」

 

俺の息が切れる。疲れによって少し落ち着きを取り戻した後、この声と共にバーディとフィッツ先輩から事情を聞いたというわけだ。

 

そして、今に至る。

 

 

「ルーデウスっ、ごめんなさい」

 

「大丈夫ですから、エリスは僕の相棒ですから」

 

俺の言葉に偽りはない。

エリスは俺の相棒で、大切な人で。

一生愛すると決めた、そんな人だ。

 

でも、それと同時に理解してしまった。

ヒトガミの言葉。

エリスが俺の戦闘に要らないという考え。

 

それは圧倒的な破壊力不足。

彼女の剣は、オルステッドに傷を付けることが出来ない。

 

ヒトガミの助言の真意は、これだったんだ。

 

「わたしっ、ルーデウスのこと、守りたくてっ!」

 

「……」

 

「でもっ、わたしはルーデウスの足手纏いで、ごめんなさいっ」

 

違う、エリスは悪くない。

フィットア領で彼女と離れなかったのは俺だ。

 

悪いのは俺。エリスは悪くない。だから、責任を取るのは俺だ。

 

「エリス、自分を足手纏いだ。なんて言わないでください」

 

「ルーデウス?」

 

俺は覚悟を決める。

なぁ、ヒトガミ。お前がここに来させたってことは何かあるんだろ?

エリスが、俺たちが強くなる方法が。

 

「一緒に斬りましょう」

 

覚悟は決めた。後は実行するだけ。

 

魔王 バーディ・ガーディ。

その先に霞んで見える。龍神 オルステッド。

 

手は伸ばそうとしなければ届かない。

 

人らしく、クズらしく。

俺は醜く手を伸ばしてやる。

 

エリスが自分自身を好きになれるように。

そんな光景を、幸せを掴めるように。

俺は、ゆっくりと…

 

 

 

 

…手を伸ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





狂犬の弱点。克服の鍵を握る白い髪。
彼。いや、彼女の先にあるもの。
複雑な感情、葛藤の先にあるのは……

この後の展開について…

  • ルーデウスとエリスのいちゃいちゃ多め
  • シルフィ視点多め
  • 展開早めにして、早く進める
  • ルーデウスとエリス(別枠でR-18)
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