もしも、エリスがルーデウスと別れなかったら…   作:あえch

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二部 最終章 愛情と信頼の果てに
剣神の道


 

 

「俺を、殺すか?」

 

燃え盛る道場。

パチパチと炎が燃え盛る木々の中で、二人の剣士が見つめ合っていた。

 

「泥沼を超える、殺すと言った俺を、殺すか?」

 

この言葉を放ったのは剣神。

彼は、力なく言葉を放ち、全身に火傷を負っていた。

痛々しい火傷。そんな酷い傷を負った彼の喉元には、一つの剣があった。

 

「随分と、弱気ね」

 

「ふっ……そりゃあ、俺は負けたからな」

 

剣神 ガルファリオン。

そんな『元』人族最強の喉元に剣を構えるのは『狂犬 エリス・グレイラット』

彼女は、勝っていた。

あの、剣神に。

 

「殺さないわよ」

 

空気が変わる。

刹那、エリスから殺気が消える。

 

「……俺を殺さねぇと、剣神にはなれねぇぞ?」

 

剣神の言葉。

それを聞いた彼女は、ため息を吐く。

 

「剣神?そんなもの、どうでもいいわ」

 

剣神になる?彼女の目的はこれか?否、そんなものではない。

そんなちっぽけな目標じゃない。

 

「アンタは、手伝ってくれればいい」

 

剣神を見つめて、赤い瞳に闘志を宿す。

 

「手伝う……そうか、お前の目的はそこだったな」

 

エリスの目的。

それは『救い』

愛しの人を救って、一緒になる。

そんな、普通の女の子が見るような願い。

 

「お前なら、エリス・グレイラットなら、本当にやれるかもしれねぇ」

 

女の子が見るようなありきたりな願い。

しかし、その願いはとてつもなく難しい。

あの剣神が『やれるかも』と。そう断言出来ぬほどには、難しい。

 

しかし、不可能ではない。

殺すより難しい『救い』

少なくとも、一人のお嫁さんは、微塵も諦めてなどいない。

 

「私は、救う。そのために、アンタを使う」

 

剣神を駒に。

覚悟を、胸に。

 

「私は、私の全てを賭けて!ルーデウスを救う!!!」

 

焼け野原に広がる覚悟の声。

大きな、大きな願いの声。

この声を聞いた剣神は、元人族最強は、この日、この瞬間、エリスの仲間になった。

ニヤけながら、楽しそうに、泥沼を救うための駒になったんだ。

 

 

─────────────────────────

 

 

剣神VS狂犬。

あの恐ろしい死闘から三日が経った。

 

「アンタねぇ……」

 

ニナ・ファリオン。

彼女が、声を挙げる。

 

「なんで!あの傷が三日で治ってんのよ!!!」

 

死闘を終えたエリスに向かって、彼女が声を荒げる。

その声は、困惑と心配が入り混じった声色。

 

「別に、普通よ。論文読んでて初級の治癒魔術なら使えたし、毎日自分で掛けてたら治ったの」

 

「毎日って、三日じゃない……はぁ、まぁ良いわ」

 

大きなため息を吐くニナ。

その顔は、諦め。

最早人外に近い存在になった戦友への諦めのため息であった。

ため息を吐くニナ。

彼女が話を変える。

 

「それで、これからどうするわけ?」

 

「どうするって、ルーデウスを助ける以外に選択肢はあるの?」

 

エリスの言葉。

この言葉に、ニナは目を細める。

 

「だからぁ!そんなことは分かってるわよ!アンタのイカれ狂った愛情見てたら!そういうことじゃなくて、どうやって助けるか?って聞いてるの!」

 

「……それは、気合いよ」

 

「気合いでどうにかなるかぁ!」

 

口籠るエリスに、ツッコミを入れるニナ。

ニナは再度ため息を吐き、エリスに顔を近付ける。

人差し指を立てて、説明する。

 

「私ね、アンタがそう言うと思って剣王 ギレーヌに泥沼のこと聞いたの。そしたら、なんて言ったと思う?」

 

「ルーデウスは、すごいの。とか?」

 

「随分と大雑把ね……アンタじゃないんだから剣王は細かく説明してくれるわよ」

 

難しい顔をして、ニナがエリスを見つめる。

 

「ストーンキャノンで全員死ぬ、そう言ってたわけ」

 

「……」

 

ルーデウスのストーンキャノン。

それがここに来て牙を剥く。

ルーデウスを倒すのは至難。

その事実が、エリス達に襲いかかる。

 

「そんなえっぐいストーンキャノン。受け切れるのは龍神と……ワンチャンスでアイツだけ」

 

アイツ。

その人物とは、カウンターを持つ最上級の剣士。

 

「イゾルテ・クルーエル」

 

「そういうこと。でも、アイツは恐らく協力しない。私と北神二世、あと剣神様は協力するだろうけどアイツは協力しない」

 

なんでか?

その理由は、単純であった。

 

「アイツは泥沼を殺そうとしてるんだから。分かるでしょ?救おうとしてるアンタに協力なんてあり得ない。だから、もっと作戦を考えてから……「それは、違います」

 

話すニナとエリス。

二人の間に割って入るのは、水神流最強の剣士。

 

「それは、違う。私は、そこまで意固地じゃない」

 

あの狂犬のように、そこまで狂っていない。

そう言いながらエリスとニナに語りかけるのは『水神 イゾルテ・クルーエル』

 

「私は、エリス・グレイラット。あなたの進む道に興味があります」

 

「アンタ、本当に良いの?」

 

「はい。そもそも、ここに来てから痛感しました。私の圧倒的火力不足。泥沼が纏った闘神鎧。私は傷を負わせられない。そして、何より、狂犬より弱い私に、挑戦する資格はない」

 

トントン拍子に進む話。

それに違和感を感じるのはニナ・ファリオン。

 

「なんか、話が良すぎるわね……エリス!騙されちゃダメよ!!!コイツ、多分闘神鎧を引き剥がして、闘気を纏えなくなった泥沼を暗殺する気だわ!」

 

ニナの言葉。

この言葉に困惑するイゾルテ。

 

「ニナ。あなたは、私に協力して欲しいのか欲しくないのかどっちなんですか?」

 

「うっさい!アンタは黙ってなさいよ!」

 

ハァハァと息を荒くし、もぉー!と混乱するニナ。

そんな彼女に、エリスが近付く。

そして、ポンっと優しく肩に手を置く。

 

「イゾルテ。アンタがルーデウスを殺そうとしたら、私が殺す」

 

「ふふっ。そうですか。良いですよ」

 

良いの!?そう言いながら更に困惑するニナ。

二人は、困惑する剣士の側で約束する。

 

「私の言いたいことは言った。あとは何でも良いわ」

 

「それなら、遠慮なく」

 

「私、水神 イゾルテ・クルーエルは……」

 

救い×復讐。

正反対の二人が、協力する。

 

「あなたと一緒に、泥沼に立ち向かいます」

 

笑う水神と狂犬。

ニヤける水神と奇抜。

二人は、自分自身の未来のために、協力し始めるんだ。

 

 

─────────────────────────

 

 

君たちは、この男の名前を知っているだろうか?

 

『ジノ・ブリッツ』

 

そう、この男。

天才と呼ばれる剣帝の息子。

彼は、正に異端。

剣神に挑もうとする異端中の異端。

 

しかし、私たちは理解しなければならない。

この異端を、天才の覚悟を。

 

「僕は、ニナと結婚する」

 

さぁ、始めよう。

終わりの始まり。

最後に向けてのキーパーソンを。

 

「僕は、剣神を超える」

 

冷静に、熱く。

彼が飢えているのは『愛情』

この時の彼の瞳は、ギラギラとしていて、まるで飢えた獣のようであった。

 

 

─────────────────────────

 

 

僕は、この言葉を呟いた。

 

「ニナと結婚したい」

 

何故、この言葉を言ったのかは分からない。

ニナが結婚のことを聞いてくれたのか、はたまた僕から言ったのか。

それは分からない。

きっかけだって覚えてないし、どんな声色で言ったのかも覚えていない。

でも、覚えていることがある。

たった一つ、理解していたことがある。

 

「僕は、ニナが好きだ」

 

ニナにはジノらしくないと言われた。

何々がしたいとか、自分から好きだというのは、あまりジノらしくないと言われた。

でも、そう言ったニナは笑っていて。

嫌だとは一言も言われなかったのを、僕は良く覚えてる。

 

「結婚させてください」

 

僕は剣神に、この言葉を呟いた。

僕にとっては義父になる存在で、実感は湧かないけど、そうなる事実を、僕は疑わなかった。

絶対にそうなるって。

僕は、そう信じてた。

 

「ダメだ」

 

断られた。

意味が分からなかった。

剣神は即答だった。

迷うこともなかった。

ただ、僕だけを見つめてた。

僕だけを睨んでた。

 

なんで?僕がそう聞くことはなかった。

ただ、黙って。文句だけが僕の頭を駆け巡った。

 

こんなにニナが好きなのに。

こんなに、僕はニナを愛しているのに。

 

僕は、ニナの為なら……何だって出来るのに。

 

巡る文句。

刹那、剣神が笑う。

 

「結婚……そうか、やっぱり良いぜ」

 

何でも。

この言葉に他意はない。

しかし、あまりにも理不尽。

それほどの試練が、僕の前に現れる。

 

「ニナとの結婚。俺に勝ったら、許してやる」

 

剣神 ガルファリオン。

奴に勝つというあまりにも理不尽な試練。

しかし、僕はそうは思わなかった。

勝てば良いんだ。ただ、笑い、闘気を剥き出しにする剣神を見つめて、それだけを思った。

剣神の言葉と同時。僕は、決心する。

 

剣神を超える。

 

僕は、それだけを考えて、剣を振るうようになった。

 

 

─────────────────────────

 

 

俺は、自身の能力を最大限上げれば勝てると思った。

あくまで自己評価だけど、それでも剣神に勝てると思った。

でも、違った。

剣神は、そんな甘い相手じゃなかった。

 

「エリス・グレイラット。おもしれぇな」

 

剣神の言葉。

これが意味するのは、剣神の上達。

彼は、剣神は、あの歳で、さらなる進化を遂げようとしていたんだ。

 

エリス・グレイラット。

奴がこの道場に訪れたことは、有名だった。

剣神を雑魚呼ばわりして、七大列強二位の泥沼よりも強くなると言ったことは、剣神を超えるために一人で修行する僕の耳にも入ってきた。

 

神速の如き早さで上達するエリス。

しかし、関係ない。

僕が勝つべきは剣神 ガル・ファリオン。

僕が勝つべきは獣じゃない。

だから、気にすることはない。

僕は、ずーっと、そう思ってた。

 

久々に道場に入った。

深い理由はない。

ただ、木刀が汚れて使えなくなったから、変えようと思った。

その時だった。道場で、大きな稽古があった。

 

僕の視線の先には、二人の剣士が居た。

片方は水神。基礎を極めたと言われる恐ろしい剣士。

しかし、そんな剣士は、膝を付いていた。

 

「エリス・グレイラット。本当に強いですね」

 

膝を付く水神。それを見下ろすのは、狂犬 エリス・グレイラット。

本当に、本当に恐ろしい速度で強くなる獣。

しかし、どうでもよかった。

僕は、剣神を倒せればそれでいい。

僕は、そう思ってたから。

でも、違う。

獣は、あらゆる者をやる気にさせる。

 

「エリス・グレイラット。俺を超えられると思うなよ」

 

言葉と同時。

僕は、その主を見つめた。

僕の瞳に映るのは、笑った顔。

そう、楽しそうに笑いながら欲を出す、剣神 ガル・ファリオンの姿が、そこにはあったんだ。

 

剣神が強くなる。

この事実は、僕にとって誤算だった。

剣神は、強くなり続けるエリスを見て、欲を出して、強くなろうと剣を振るっていた。

そう、剣神にも俺と同じく『目的』が出来てた。

 

自らの木刀を見つめた。

僕の計算では、僕の能力を最大限上げれば勝てると思った。

でも、違った。

今のままでは勝てない。

剣神が覚醒することを前提にしなければ、僕は勝てない。

 

勝てなければ、僕はニナと結婚出来ない。

 

それは嫌だ。

僕は、目的に沿って、計画を練り直した。

 

 

─────────────────────────

 

 

計画を練り直してから一年が経った。

僕は、剣神に勝つまで成長した。

今日、僕は証明する。

剣神に勝てると、ニナと結婚すると。

僕は、愛情を証明する。

 

ジノ・ブリッツVSガル・ファリオン。

 

剣神の座を決める勝負が、始まりを迎える。

 

 

─────────────────────────

 

 

「剣神様、やはり行くのですか?」

 

「まぁ、約束だからな」

 

エリスとの決戦から五日。

剣神は剣を握り、覚悟を決めていた。

 

「泥沼を救う。本当に出来るのでしょうか……」

 

この言葉を放つのは、剣帝 ティモシー・ブリッツ。

剣帝が不安になるほどの相手。

しかし、戦う当の本人である剣神は、笑っていた。

 

「ははっ。勝てる勝てないじゃねぇ。面白いか面白くないか、その二択だろ?」

 

剣を握り、ニヤける剣神。

彼は、人族最強の肩書きを失った。

しかし、自信を無くしてはいなかった。

エリスとの戦いを終えた彼は、確かに負けた。

しかし、自らの成長を感じたあの戦いは楽しく、そして自らの自信にも繋がった。

 

剣神 ガル・ファリオン

 

七大列強と人族最強という肩書きを奪われた彼は、尚も強く、勇ましかった。

 

「じゃあな」

 

剣だけを握り、後を去る。

剣帝に後を任せて去る。

これで終わり。

誰もが、そう思った。

 

「剣神様、ニナを貰いにきました」

 

「……」

 

エリスとの戦いで覚醒した剣神 ガル・ファリオン。

彼の自信を崩すのは、やはりこの男。

 

「剣聖 ジノ・ブリッツは、あなたに……」

 

さぁ、始めよう。

人族最強を決める、もう一つの勝負を始めよう。

 

「剣神 ガル・ファリオンに勝ちます」

 

人族VS人族。

剣士同士の対決が、始まりを迎える。

 

 

─────────────────────────

 

 

ドン

 

「……は?」

 

音と同時、剣帝が倒れた。

素っ頓狂な声を上げた剣帝の膝は落ち、変な方向に曲がっていた。

 

「何故、私の膝が落ちている……」

 

剣帝には、何が何だか分からなかった。

何をされたのかも、何故自分が膝を付いているのかも分からない。

ただ、分かるのは痛み。

彼の膝には、ズキズキとする痛みが残っていた。

 

「……はえぇな」

 

剣神が呟いた。

剣帝は、この言葉に目を見開いた。

そう、剣帝は、この時気付く。

自分のされたことに。

しかし、気付けば気付くほど、それがおかしいことであることは、明白であった。

 

「ジノ、お前、まさか……」

 

剣帝は、この言葉と共に息子を見た。

彼は、木刀を抜いていた。

それが物語るのは攻撃したということ。

単純。

彼は、ジノ・ブリッツは、剣帝ですら見えないスピードで、剣を振るったんだ。

 

「光の太刀ですらねぇ太刀。それで、ぶっ倒したってわけか」

 

「……」

 

ジノは喋らない。

しかし、その姿は昔とは違う。

昔の、やる気のなかった瞳ではない。

ただ、彼は、勝つために思考を巡らせていた。

愛する人との婚約だけを夢見ていた。

 

「今、俺は楽しんでんだ。エリス・グレイラット。奴のおかげで、欲がある」

 

「……そうですか」

 

「それが意味することが、お前に分かるか?」

 

剣神は、自らの木刀を引き抜き、ジノにその剣先を向ける。

 

「強ぇってことだ。今の俺は、過去一に強ぇ」

 

楽しそうに未来へと向ける瞳。

覚醒した剣神は、確かに強い。

 

「この熱。再熱出来るのは、奴だけだ。俺を完膚なきまでに叩きのめしたオルステッド。その最強を殺した、泥沼だけだ」

 

木刀を力強く握り、弱める。

彼は、戦いから目を背ける。

 

「てめぇじゃ足りねぇ。興が冷めんだよ」

 

この言葉を残し、背中を向ける剣神。

スタスタと歩く剣神は、誰にも止められない。

背中から漏れ出る圧は恐ろしい。誰もがそう考える。

しかし、一人だけ、その圧に何も感じていない者が居た。

 

「僕には、関係ない」

 

若き天才 ジノ・ブリッツ。

彼が、闘気を練り上げる。

 

「僕は、覚醒したあなたを倒す」

 

剣神への挑戦状。

その闘気に、覚悟に、剣神が振り向く。

 

「ニナと、僕は結婚する」

 

「……やってみろ」

 

握られる木刀。

覚悟の熱が、道場へと満ちる。

 

 

─────────────────────────

 

 

剣神流。

この流派は最強である。

初撃で決め切るこの攻撃は、正に正統派。

真向勝負と呼ぶに相応しい攻撃。

 

ドン!!!

 

爆音が鳴った。

二つの床から同時に鳴った。

 

バン!!!

 

剣同士がぶつかった。

その剣は、二つとも速く、鋭かった。

 

……しかし、その剣は、互角ではなかった。

 

(俺が、この俺が……)

 

目を見開く剣神。

彼は、確かに覚醒していた。

しかし、時代は移ろう。

彼もまた、その対象であった。

 

(差し込まれた?)

 

剣神流の勝負は、一瞬で決まる。

下手をすれば、0.1秒で決まるほどの刹那の世界。

そんな世界で勝つために、彼らは無限とも呼べる鍛錬を積む。

その無限を超えて、覚醒する剣神。しかし、その姿は、その人族最強の姿は、同じぐらいの鍛錬を積んだジノ・ブリッツにとって、驚くものではなかった。

 

「流石は剣神様ですね」

 

ジノの結論。

剣神倒しへ、彼はエリスと反対方向へと舵を切った。

自らの覚悟と体力を押し付けようと奇抜派で長期戦を仕掛けたエリス。

それとは真逆。

ジノは、スピードに特化させた。

有り余る才能を全てスピードへと昇華させた。

総合力では、ガルに勝てない。

それは、ジノにも分かっていた。

だからこそ、彼は、全てを捨てた。

まるで、一本の細い槍のように尖らせて、スピードだけを求めて剣を振るった。

 

剣神は、確かに覚醒していたのだろう。

それでなければ、音を置き去りにするほどのジノのスピードに反応すら出来なかったはず。

しかし、彼もまた考慮していたのだ。

剣神の覚醒を。元人族最強の成長を。

 

「差し込まれた……それは認めてやる。でもなぁ!」

 

剣神が叫んだ。

それに、ジノは冷ややかな目を向ける。

 

「パワーじゃ、俺に分があんだろ!」

 

剣神が腕に力を入れた。

その姿に、ジノは脱力した。

彼は、分かっていたんだ。

その剣神の姿が、強がりなことに。

 

「剣神様、僕の勝ちです」

 

今まで、剣神は最速であった。

かつて負けた龍神は、剣神に水神流を使った。

剣神流でも龍神なら剣神に勝てただろう。しかし、それでも、オルステッドは水神流を使った。

自身が負けたエリスもまた、奇抜派を使った。

剣神のスピードを認めた獣は、その土俵を譲り、自らの狩場へと誘い込んだ。

 

そう、彼は、負けたことなどなかった。

自らの土俵であるスピードで、彼は負けたことなどなかったんだ。

 

バン!!!

 

「ぐふっ……」

 

顔が跳ね飛ぶ剣神。

それを見つめるジノ。

剣神は、この時、変わる。

新たな世代へと移ろう。

 

二太刀目への執念。

スピードで負けたと動揺した者と、合理的に、ただ結婚するために動いた者。

この二人のスピード差は、明白であった。

 

(あぁ、俺は……)

 

人生で初めての連敗。

この事実は、剣神の心を折るのに十分だったのかもしれない。

 

(スピードで、コイツに負けたのか……)

 

移ろう時代。変わる剣神。

ジノ・ブリッツは、この時、最速になる。

元人族最強を超えて、最速になる。

 

負けた剣神。自信を無くした剣神。

彼は、この日、この瞬間、剣神流を捨てる。

そう、彼はこの時『水神流の剣士』へと、成り下がるんだ。

 

 

─────────────────────────

 

 

「何故、何故、我は一つになれない」

 

魔大陸。

荒れる荒野で、金色に光る鎧が苛立ちを募らせていた。

 

「ここまで着ているのに、何故我は一つになれない」

 

彼の名は闘神鎧。

この世界で最強の七大列強。

 

「……泥沼、何故我の物にならない」

 

鎧は焦っていた。

人族、泥沼を乗っ取れない。

この事実。

彼は、舐めていたのかもしれない。

 

「このままでは……」

 

常に強者を狙う闘神鎧。

彼の目標が、遠ざかる。

 

「ラプラスに、勝てない」

 

抗う泥沼。

絶望を加速させる闘神鎧。

そんな鎧に声をかけるのは、ルーデウスと同じヒトガミの使徒。

 

「荒れてんなぁ、闘神鎧」

 

乗っ取れない鎧へ。

軽口を叩くのは、この男。

 

「今のお前じゃあ、先輩は乗っ取れねぇよ」

 

「貴様は、誰だ?」

 

闘神鎧の疑問。

答えるのは、ヒトガミの切り札。

 

「別に、俺が誰かなんてどうでも良いだろ」

 

闘神鎧へと近付く。

彼が呟くのは、悪魔の一言。

 

「乗っ取る方法、簡単だ。殺しちまえば良いんだよ」

 

悪魔の囁き。

地獄へと誘うのは『ギース・ヌーカディア』

彼が、泥沼を死へと導く。

 

「泥沼 ルーデウス・グレイラットの家族と、娘であるララ・グレイラットを……」

 

最後の勝負。

闘神鎧との勝負が、幕を開ける。

 

「殺せ」

 

泥沼×闘神鎧。

怪物に挑むのはルーデウスの家族。

グレイラット家VS闘神鎧。

愛が最強を救う対決が、始まりを迎える。

 

 

 

 

 

 

 

エリス修行編で一番面白かったのは?

  • ニナとの戦い
  • 光の太刀習得
  • 水神との戦い
  • 北神二世との戦い
  • 剣神との戦い
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