もしも、エリスがルーデウスと別れなかったら…   作:あえch

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ルーデウス家の覚悟

─シルフィ視点─

 

怪物が居た。

恐ろしく強い者達が居た。

 

「コイツらが、泥沼と戦おうとしてるやつらね」

 

この言葉を放ったのは『ニナ・ファリオン』

 

彼女はスタスタと歩き、ボクの前で止まる。

ボクの後ろにはアイシャとアルス君が居て、みんなで最強達を見つめる。

 

「エリス殿のご家族ですね。やはり良い目を、戦う目をしている者ばかりだ」

 

「そんなものはどうでも良い。早く戦わせろ」

 

「僕は、ニナが無事ならそれで良い」

 

「全て、受け流してみせます」

 

ニナの後ろに居るのは五人。

ボクのことを認めてくれる『北神 アレックス・カールマン・ライバック』

早く戦わせろと、闘気を纏いながら戦闘態勢に入る『元剣神 ガル・ファリオン』

少し声が小さく、しかし佇まいは強者な『現剣神 ジノ・ブリッツ』

カウンターを使いこなす『水神 イゾルテ・クルーエル』

 

そして、もう一人。

恐ろしいほどの闘気を纏う女性が、一人。

 

「シルフィ、随分と待たせたわね」

 

見違えるほど強くなった、愛情に飢えて覚醒した少女が、ボクの前に一人。

 

「私は、救いに来た」

 

『七大列強六位 狂犬 エリス・グレイラット』

 

怪物と呼ばれるルディ。

そのルディと名を連ねる、七大列強になった少女が、ニヤリと笑う。

 

「私と一緒に!ルーデウスを救うわよ!!!」

 

ボク達の最後の勝負。

愛情が軸となる勝負が、始まりを迎える。

 

 

─────────────────────────

 

 

始まりは、一通の手紙だった。

 

『ルディを見つけました』

 

旅に出ていたロキシー。

彼女が、ボクたちに手紙を送る。

彼女は、魔界大帝キシリカという人物に会ったらしい。

 

『千里眼でルディの居場所を見つけてもらいました』

 

ロキシーはすごいと思った。

分からないルディの居場所。

それを、ロキシーは見つけてみせた。

恐ろしいほどの執念。ボクも、負けていられない。そう思わされた。

 

『全員集まってください。集合場所は、ここです』

 

ロキシーが手紙に示した場所、それは……

 

『地竜谷』

 

大きな谷が、ボクたちの決戦場所だった。

 

「ロキシーは何処に居るの?」

 

「エリス、ロキシーはここには居ないよ。ボクたちは剣の聖地とシャリーアで居た位置がある程度近かったからね。先に合流しただけ」

 

「ふーん、そうなのね」

 

エリスは頷いた。

ボクは、その姿に少し安心する。

良かった。やっぱり彼女はエリスだ。

見違えるほど強くなったエリス。ボクが一瞬分からないほど強くなったエリス。

そんな彼女のいつも通りの姿に、ボクは安堵の笑みを溢す。

 

「なんか、エリスって感じで良いね」

 

「……私って感じって何よ」

 

ボクはエリスを見つめて、クスクスと笑う。

笑ってる場合じゃないと怒られるかもしれないけど、ボクは笑った。

理由、それは後悔がなかったから。

エリス同様、ボクも修行をした。

死ぬ気で努力をした。

だから、焦りはない。

ボクとエリスならルディを助けられる。

そんな確信と自信が、ボクにはあった。

 

(それにしても、本当にエリス、恐ろしいほど強くなってる)

 

ボクは、エリスの姿を見つめて考える。

今までのエリスは、なんというか荒削りなように見えた。

破壊力は凄まじく、剣は速くはあったが鋭くはなかったと思う。

銀線は一撃で葬るというより何撃でも叩き込んでやる!という覚悟の剣だった気がする。

 

だけど、今は違う。

彼女の闘気は洗練されていて、今も全くと言っていいほど隙がない。

見て分かる、七大列強の名は伊達じゃない。

一体どれだけの覚悟と研鑽を積めばこれほどになれるのか想像が出来ぬほどに、彼女は強い。

 

本当に、エリスは強くなった。

でも、ボクだって負けてない。

そう言おうとした時、ボクの背中から声が聞こえてくる。

 

「母上。一つ、お願いがあります」

 

剣を携えて、剣士になる人物が、一人。

 

「戦ってください」

 

彼の名は『アルス・グレイラット』

ルーデウスの家族が、狂犬を見つめる。

 

「僕と、一戦お願いします」

 

「……良いわよ」

 

母と息子。

久々に出会った二人が、剣で語り合おうと動き出す。

 

 

─────────────────────────

 

 

「……」

 

「……」

 

二人の剣士が、互いに見つめ合う。

風が吹き、服が靡く。

互いが握るのは、当然のように真剣。

なんとも言えない空気が辺りに漂う。

 

ドン!!!

 

刹那、アルスが踏み込んだ。

剣に炎を纏わせ、エリスへと向かう。

ジグザグに踏み込み、的を絞らせない。

彼は、確かに速い。

 

ガン!!!

 

当たるのは金属音。

大きな音が、二人の間に鳴り響く。

二年前では考えられなかったアルスのスピード。

しかし、エリスもまた、恐ろしいほど成長している。

 

「僕の両手の剣技を、片手で受けられた…」

 

「アルス、本当に成長したわね」

 

「くっ……」

 

最初の一太刀で分かる。

恐ろしいほどの力の差。

誰にでも分かるほどの力の差。

しかし、それでも、アルスは動きを止めない。

 

ガン!ガン!ガン!!!

 

「があああああ!」

 

叫び、エリスへと立ち向かう。

中々の気迫。

エリスは、それを受け疑問を口にする。

 

「アルス、この戦いは私の、私たちの戦いよ」

 

「そうです!それがなんですか!?」

 

「だから、あなたは無理しなくても良い。それこそ、死ぬかもしれない」

 

「母上らしくないですね!!!そもそも、僕は死ぬことなんて怖くない!」

 

死ぬことなんて怖くない。

この言葉に、エリスが目を細める。

この言葉の重み。それを、アルスは理解しているのかと。

疑問に思ったエリスが、息子を試す。

 

「なんだ、これ」

 

刹那、アルスが冷や汗をかく。

その理由は、エリスの殺気。

彼女は剣を振りながら、アルスを睨み殺気を出す。

あの剣神をも倒した殺気。それを、10程度の歳をした子供が受ける。

 

「……これが、ここからの戦いよ」

 

「……」

 

冷や汗をかいたアルスが、エリスの言葉を聞く。

エリスは、分かっていたのだろう。この戦いの重みを。

レベルの高い戦い。いや、高いとも表せぬほどの戦い。

正に死闘。救いを求める墓場。

 

アルスの止まった動きに合わせて、剣を止めるエリス。

もう終わり。そう考えながら、エリスが振り向く。

しかし、違う。彼は違う。

彼は『ルーデウス・グレイラットの息子』なのだ。

 

「俺のせいで、父上は苦しんだ」

 

「別に、アルスのせいじゃないわよ。寧ろ、私のせい……「違う!俺のせいだ!」

 

アスラ王国。あの地獄を、彼が思い出す。

 

「自分の実力に過信して、父上を困らせた……でも、だからこそ、今度は間違えない」

 

力は過信しない。

無理はしない。

その覚悟を持って、エリスへと瞳を向ける。

 

「母上、俺は……」

 

幼い子供が感じた責任。

それは、あまりにも大きい。

 

「父上を、助けます」

 

アルス・グレイラット。

彼の愛情と覚悟が、エリスの心を揺らす。

 

「……分かったわ。後方支援頼むわね」

 

「!?分かりました!頑張ります!」

 

アルス・グレイラットの瞳に光が灯る。

ルーデウス家の愛情が光る。

息子と親。

彼らの戦いが、始まりを迎えようとしていた。

 

 

─────────────────────────

 

 

「それにしても、やっぱりアンタも息子には甘いのね。普通に連れて行くなんてびっくりしたわよ」

 

「ルーデウスを救いたいって気持ちを感じただけ。それに、アルスなら死なないって思ったわ」

 

ニナとエリスが、言葉を交える。

 

「それでも、やっぱりアンタ甘ちゃんだったわよ。なんか家族って良いわね〜。ほっこりしたわ」

 

「……別に、そんなことないわよ。でも、まぁ、昔、アルスの腕斬っちゃったから。それに比べたら甘かったかもしれないわね」

 

「……は?」

 

腕、斬ったんかい!と驚くニナ。

当然のように言葉を向けるエリス。

二人が、椅子へと腰掛ける。

 

「明日、早速出発するんでしょ?最後の戦いに」

 

「ニナ、あなたは来てくれないの?」

 

「何言ってんのよ。行くに決まってるでしょ?」

 

当然よ。と言葉を放つニナ。

しかし、そんな戦友は、下を向く。

 

「でも、死んだら嫌だなーと思って。まだ、ジノと結婚出来てないし」

 

ニナの言葉に、エリスも下を向く。

結婚という幸せを知っているエリス。彼女が、悲しそうに下を向く。

 

「何よ、そんな顔しないでよ。私が選んでる道なんだから、別に良いのよ」

 

「……」

 

「それに、嬉しい誤算もあったわ。シルフィっていう白髪の子。相当の治癒魔術師でしょ?アンタが与えたアルス君のかすり傷、ものすごい速度で治してたもの」

 

「シルフィはすごいもの。それぐらい当然よ」

 

「ふふっ。やっぱり、アンタが認めるなんて珍しい」

 

戦友と戦友の会話。

少し落ち着いた強者の会話が、夜の闇を照らす。

 

「ねぇ、エリス?」

 

「何よ」

 

剣は抜かない。

その代わりにニナが出すのは、一つの拳。

 

「私の結婚式、絶対に参加しなさいよ」

 

「……気が向いたら、行くわ」

 

この言葉に、ニヤリと笑うニナ。

そんなニナに、エリスも拳を出す。

 

コツン。

 

二人がするのは、静かなグータッチ。

冒険時代にルーデウスとした、幸せなグータッチ。

 

戦友との絆。

好きな人との愛。

 

色んな物が混ざり合い、物語は動き始める。

 

 

─────────────────────────

 

 

「全部、全部、殺してやる」

 

金色に輝く鎧。

奴は、強い。

 

「貴様を支配するために、大切な奴を、全部、殺してやる」

 

全員ではなく全部。

人を物として扱う奴は、本気になる。

 

「ロキシー・ミグルディア、シルフィエット・グレイラット。そして……」

 

戦いは地竜谷。

そう、あるべき未来では最終決戦であった場所。

 

「エリス・グレイラット。貴様達を殺す」

 

全員が歩み出す。

目標に向かって、歩き出す。

殺しと救い。

そんな矛盾が、ルーデウス家へと襲いかかる。

 

 




〈補足〉

エリス陣営について

ガル・ファリオン

元剣神、恐ろしいほど強い剣士。
しかし、現在自信を無くして水神流の剣士になっている。
二連敗したことで自信を失っている。


ジノ・ブリッツ

現剣神、ガルに勝った実績を持つ。
エリスに付いていっているが、それはニナが居るから。
彼はエリスやルーデウスには興味がない。
ただニナが怪我をしないように。
それだけを考えて、戦おうとしている。


ニナ・ファリオン

エリスの戦友。
持ち味はスピード。
強いが、エリス、ジノ、ガル、イゾルテには大きく劣る。
しかし、強いことは間違いない。
ジノに行く必要が無いと言われ「エリスに行くって約束したから行くに決まってるでしょ!」と少しキレたらしい。
エリスの心の支えにもなってるかも……?


イゾルテ・クルーエル

水神。
ルーデウスへの復讐を誓う剣士。
カウンターは恐ろしい完成度。
相性が悪く、エリスにはあまり勝てていないが、奇抜ではなく正統派の剣撃や魔術であれば持ち前の基本で受け流す。


アレックス・カールマン・ライバック

北神二世。
王竜剣カジャクトを使いこなす。
エリスの師匠。
エリスやガルのせいで強さが霞んでいるが、間違いなく強者。


シルフィエット・グレイラット

ルーデウスのお嫁さん。
治癒魔術を使いこなし、闘気を纏える。
貴重な回復役。必要な存在。


ロキシー・ミグルディア

ルーデウスのお嫁さん。
ルーデウスを探すため、世界中を旅した。
そして、ライトニングを徹底的に鍛えたらしい。
仕事が出来る優秀なお嫁さん。
鍛えたライトニングの威力は如何に?


アルス・グレイラット

ルーデウスとエリスの息子。
強いが、良くて聖級程度の剣士。
しかし、覚悟はある。
剣士だが、今回は主に後方支援を担当する。


パウロ・グレイラット

ルーデウスのお父さん。
ロキシーと一緒にルーデウスを探す旅に出た。
修行はしていたが、歳もあるため厳しい部分もある。
しかし、こちらも気迫は十分。
その気迫は、この戦いの要になるかもしれない…


エリス・グレイラット

怪物、破壊力は文句なしの人族最強。
炎の太刀×光の太刀の破壊力は他の七大列強にも全く引けを取らない(オルステッドやラプラスなどの人外達は除く)
フェイント、体力、速さ……強さを上げればキリが無いが、とにかくルーデウスへの愛情で誰も想像出来ないほどの強さを手にした。
間違いなくこの戦いの要。
この人物が居なければ、この戦いは実現することすらなかった。

エリス修行編で一番面白かったのは?

  • ニナとの戦い
  • 光の太刀習得
  • 水神との戦い
  • 北神二世との戦い
  • 剣神との戦い
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