「あやつは辞めておけ」
魔界大帝が、そう呟いた。
「あやつは、人ではない」
あのうるさくて適当な魔界大帝が、真顔でそう言った。
「あやつは……」
真顔のまま、この重大さを伝えるかつてを知る魔族。
「ラプラス以上の、化け物じゃ」
魔界大帝の言葉。
この言葉は、あまりにも重くて大きい。
それは、誰もが理解出来る。
しかし、それでも、青い瞳を持つ魔術師は、こう言った。
「勝ちます。そして、必ず……」
『ロキシー・ミグルディア』
彼女が、青い瞳を光らせる。
「ルディを、救います」
思いは同じ。
エリスとシルフィとロキシー。
三人のお嫁さんが、最強へと向かう。
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地竜谷。
黄金の鎧が、大切な物を殺そうとしていた。
「ルー、デウス……」
彼の名は『ルイジェルド・スペルディア』
かつて呪いの槍を持たされた、スペルド族の戦士長。
「すまん……本当に、すまん」
ごふっと血を吐き、謝る。
膝を折り、その場に座り込む彼はとても小さかった。
「我には分からん。今から殺されるのは貴様だ。何故、貴様が謝る?」
「俺では、止められなかったからだ」
圧倒的な力の差。
かつて悪魔と恐れられたスペルド族、その戦士長でも歯が立たないほどの敵。
闘神鎧 泥沼のルーデウス。
そんな彼の前で、苦悶の表情で謝り、項垂れる男。
「ルーデウス、お前に人を殺させないという言葉。俺が、裏切ってしまった」
「……聞いて損したな。その謝罪は、ラプラスを超えることに必要ではない」
「……」
槍を力なく握り、座り込むルイジェルド。
そんな彼の首に、剣が一つ。
「泥沼の大切な者。まずは貴様からだ。ルイジェルド・スペルディア」
この言葉に、ルイジェルドは笑った。
俺を大切な者として見てくれていたのかと、笑った。
彼の笑顔は気高く、誇らしい。
しかし、その笑顔は、この時だけは、涙が滲んで辛そうだった。
「死ね」
闘神鎧が剣を振り下ろす。
ルイジェルドの首へと落ちる。
死ぬ……誰もがそう思う。
しかし、違う。
刹那、鳴ったのは金属音。
ガン!!!
闘神鎧が目を見開く。
ルイジェルドが前を向く。
二人の瞳に映るのは、真紅のように赤い髪。
七大列強となった者が、かつての師匠を救う。
「ルイジェルド、久しぶりね」
ニヤリと笑い、ルイジェルドに声を掛ける。
声を掛けた主は、人族最強となった剣士。
「そして、久しぶりね……」
声の主、それは『エリス・グレイラット』
人族最強となった剣士。
愛情と執念。彼女らしい想いと言葉が、戦場へと響き渡る。
「闘神鎧!!!」
待ちに待った対決。
エリス陣営VS闘神鎧ルーデウス。
愛に飢える獣の死闘が、始まりを迎える。
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「我が、力で負けたのか?」
この言葉と同時、闘神鎧は自身の右手を見た。
その手は、小刻みに震えている。
少量の痺れ。エリスとの剣の衝突によって生まれた衝撃に、闘神鎧の右手は震えていた。
トン
闘神鎧は、冷静に後ろに飛んだ。
その速度は、まるで光。
力みなく放たれたバックステップは、剣神さえも驚くほどであった。
「なるほどな。あれが、闘神鎧のスピードか」
本気でないスピードでこれ。
恐ろしい事実が、戦場を緊張へと導く。
緊張が走る戦場。そんな中で、闘神鎧は頭を回していた。
(思ったよりも高いパワー。それに、我の動きを見ることが出来る者たち。なるほど。人族にしては、かなり強い者たちだ)
剣士と魔術師。
全ての人間が、闘神鎧を睨みつける。
(強い。確かに、悪くない。しかし……)
刹那、ニヤリと笑うのは闘神鎧。
「何も、問題はないな」
小さな呟き。
刹那、闘神鎧が指先を地面へと向ける。
「貴様らなど、我が相手をするまでもない」
この言葉と同時。
土から生成されるのは、即席の土の塊。
「あれは……」
ロキシーの唖然とした顔。
魔術師ならば分かる、恐ろしいほどの高等テクニック。
「泥の人形?」
人型の土の塊。
闘神鎧がルーデウスと組んだからこそ出来る技。
土魔術×重力魔術。
茶色い土の人形。
とてつもない強さが、エリスたちへと襲いかかる。
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『泥人形』
ルーデウスのフィギュアの知識を活用した技。
泥人形を作り、重力魔術で動かす。
不死魔族ではないという闘神鎧ルーデウスの弱点を補う、壊れても良い不死の人形。
「貴様らには、これで十分だ」
「……」
手となり、足となる人形。
そんな人形が、一歩前に出る。
「あくまで人形だが……アイツはつえぇぞ」
生唾を飲み込みながら、パウロが声を絞り出す。
でも、全員で戦えば勝てる。
その覚悟を持って、パウロは前へと一歩を出る。
しかし、そんな彼についてくる者は、誰一人として居なかった。
「ちょうど良いわね。ウォーミングアップになりそうだわ」
ルイジェルドを治す時間も欲しいし。
そう言いながら、こちらも一人だけ前へ出る。
「エリス、頼んだわよ」
「エリス、無傷で倒してくださいね」
「さっさと殺せ。茶番に興味はねぇ」
ニナとイゾルテと剣神。
強者たちが、エリスを送る。
「いや、ですが……「ですが、じゃない」
ロキシーがサポートに入ろうとする。
しかし、させない。
ニナが、ロキシーの前に剣を置く。
「エリスが勝てるって言ったんだから、任せれば良いのよ」
睨み、殺気を出すエリス。
剣を握る泥人形と狂犬。
第一ラウンドは、タイマンのぶつかり合い。
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ドン!!!
爆音と同時、恐ろしく速い踏み込みが戦場を揺らす。
先制攻撃は泥人形。
エリスが先手を取られる。
「速いっ」
遠巻きに見ている血塗れのルイジェルドの言葉。
彼が、シルフィの治癒を受けながら、エリスへと叫ぶ。
「エリス!」
泥人形のスピードは、速い。
そのスピードは帝級クラス。
そう、帝級。その速度は、強者であるルイジェルドよりも速い。
だからこそ、彼は、大きな声で叫ぶ。
「逃げろ!!!」
逃亡指示。
弟子を想う師匠が、声を挙げる。
あの人形にタイマンで勝つことなど不可能。
体勢を立て直せ。
そんな意味を持って、指示を出す。
しかし、引かない。
エリスは、ルイジェルドの言葉には反応しなかった。
ガン!!!
爆音が鳴った。
剣と剣がぶつかった。
戦場であれば、聞き慣れた音。
しかし、この音に、ルイジェルドは目を見開く。
「どうして、そんなことが出来る……」
ルイジェルドが目を見開いた先。
そこには、腕を変な方向に曲げる泥人形の姿があった。
「随分と、遅いわね」
二年前とは違う。
彼女が思い浮かべるのは、かつての自分自身。
「そして、覚悟も感じない」
弱かった自分自身。
しかし、今は違う。
今の彼女は『神級』
そう、剣神を倒した最強の剣士。
帝級の泥人形など、恐るるに足りない。
ガン!
金属音が鳴った。
エリスが剣を振り抜く。
これを受けようとする泥人形。
しかし、剣同士が当たった瞬間、泥人形の身体がブレる。
「スピード、パワー。共に人族の限界を超えている」
帝級をいとも簡単に手玉に取る。
その姿に、ルイジェルドが言葉を放つ。
人族最強……否、種族の限界を超えて。
彼女は強者の域に達している。
ガン!ガン!ガン!!!
炎の太刀の三連打。
彼女のインファイトが持ち通り火を吹く。
よろけ続ける泥人形。
刹那、人形の身体が崩れる。
「ぶっ倒す」
泥人形を殺す。
そう覚悟を決め、左足を踏み込む。
泥の塊を粉砕する。
この事実を、闘神鎧とルーデウスへ知らしめる。
変わらないはずの事実。
しかし、その事実は、奴によって捻じ曲げられる。
ズルっ
「誰が、タイマンと言った」
言葉と同時、彼女の足が沈む。
エリスの鋭い踏み込みが止まる。
速いエリスを殺す。
そのために、奴が、泥人形へと力を貸す。
「やはり、弱いな。エリス・グレイラット」
「……」
速いエリスの足を止めたのは『泥沼』
とてつもなく鋭い踏み込みを補足し、恐ろしいほどの完成度を誇る泥沼。
そんな完璧な魔術。放てるのは、奴しかいない。
「二年前と同じことを言ってやろう」
ミリスでの戦争。
あの時の言葉を『闘神鎧』が呟く。
「止まったな」
泥沼に足を取られて。
狂犬が下を向く。
かつての言葉に、エリスが黙る。
弱々しい姿。
彼女に、ルイジェルドが叫ぶ。
「エリス!!!」
心配そうに、辛そうに。
しかし、彼の想いは届かない。
彼の心配を他所に、身体は宙を浮く。
「終わりだ」
「……」
浮くエリスの身体。
強者の、浮いてゆく姿。
ルイジェルドが、歯を食いしばり考える。
あぁ、負ける。終わってしまう。
この事実。
彼は、間違っていないはず。
しかし、浮いてゆく狂犬は、エリスは、この時、笑っていたんだ。
ドガン!!!
「身体、軽くなったわね」
言葉を放ち、地面へと着地する狂犬。
彼女は、爆音を鳴らし、動きの止まった泥人形を破壊する。
「貴様……何故、効かない?」
「やっぱり、この人形弱いわね」
二年前とは違う。かつて涙を流した時とは、まるで違う。
彼女は、エリス・グレイラットは、強い。
「そして、アンタも弱い」
闘神鎧を弱いと言うほどの力。
そして、それは、決してハッタリなどではなかった。
「ルーデウスに比べたら、アンタも弱い」
「エリス・グレイラット……」
泥を破壊し、佇むエリス。
死ぬ気で魔術の原理を学び、体得したエリス。
そんな彼女に、お嫁さんに、重力魔術は効かなかったんだ。
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「勘違い、するなよ」
呟く闘神鎧。
刹那、彼の剣が光る。
「貴様は、貴様らは、奴に生きさせてもらっているだけだ。奴が我に抗っているからだ」
光る鎧が持つ剣。
彼が剣に纏うのは雷。
「出力が低い。そうでなければ、貴様らなど人形で殺せている」
出力は二割……否、一割未満。
二年経っても支配されない。お嫁さんと共に戦い続ける男。
身体と、そして何より『心』が強い男。ルーデウス・グレイラット。
貴様は、やはり弱い。
そんな言葉でエリスを罵倒する闘神鎧。
最強からの罵倒。
しかし、この罵倒に、エリスは笑う。
「ルーデウスも、戦ってくれてるのね」
一人じゃない。この事実に笑い、瞳を潤ませながら、エリスは剣を握る。
「私は、ルーデウスを救う」
「笑わせるな。貴様ら程度の力で、我を超えられると思うなよ」
闘神鎧VS狂犬。
最も大きな死闘が、雷を纏う剣と共に始まりを迎える。
勝敗予想 勝つのは?
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闘神鎧ルーデウス
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狂犬&グレイラット家