人族は、最強を超えられる。
それを証明するために、家族は剣を振るう。
「ここまで、来た」
剣士が剣を振るい、シルフィが回復し、赤い髪が決める。
そう、赤い髪。人族最強のお嫁さん、エリスが決める。
「私は、私たちは……」
さぁ、始めよう。
正真正銘最後の勝負を。
「ルーデウスを、救える」
『救う』という覚悟ではない。
未来を見据えた『救える』という言葉。
救うことが出来る。エリスは、そう信じて剣を振るう。
しかし、それほどの強さ。可能性を持ってしても、現実は無情。
「舐める、なよ」
闘神鎧。奴は、簡単な相手ではない。
「泥沼の予見眼と我の予測。それを使えば、貴様らの攻撃を防ぐことなど容易」
剣を振りかぶって、再度闘気を捻り出す。
その闘気は、恐ろしいほどの量と質。
「ここで死に、我の生贄になるのは……」
闘神鎧VSエリス。
勝負は、ここから。
「貴様だ」
物語は大きな山を登る。
闘神鎧という山に挑む、ルーデウスを愛する者たち。
愛情が支配する戦い。それは何を生み、何を成すのか。
─────────────────────────
「くっ!俺では、無理か」
ルイジェルド・スペルディア。
彼が、苦悶の表情を浮かべる。
「俺は、俺では、何も出来ない……」
剣神、水神、北神、そしてエリス。
これほどの神と合わせるには、彼ではあまりにも未熟。
彼では、帝級では、足りない。
そう、彼は、分かっていたんだ。
「俺は、足手纏いなのか?」
槍を握りしめ、唇を噛み締める。
自身の力不足を感じ、俯く。
しかし、違う。
彼の考えは、否定される。
「俺が、使ってやるよ」
多量の経験を持つ男が、帝級を使う。
「ルイジェルド。俺が、てめぇを使ってやる」
彼の名は元剣神 ガル・ファリオン。
彼もまた、闘神鎧同様に強者であった。
「初動を見て、予測する。合理的だが、甘ぇな」
隠密の剣技。
彼は、ルイジェルドの背中へと身を隠す。
「俺が殺す。お前の最強の防衛、予見眼。俺が、止めてやるよ」
笑って、剣を握る。
彼の神速が、闘神鎧へと襲いかかる。
バン!!!
爆音と同時。
闘神鎧の関節に、彼の剣が当たる。
「お前の予見眼。初動が見れなきゃ、ただの産廃だな」
「貴様ぁ……」
元人族最強。
彼は、ルイジェルドの背中に身を隠し、初動を見えなくしたんだ。
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闘神鎧の関節は弱い。
金の鎧を繋ぐ節目の部分である関節は脆い。
これは、確かに間違いではなかった。
「俺は、確かに斬った……なのに、なんでだ?」
今までほとんどを一撃で葬ってきたガル・ファリオン。
彼が、目を見開く。
「初動を隠す動きは見事だ。それによって、我は斬られた。そこは認めてやる。しかし……」
防衛は予見眼だけにあらず。
神と呼ばれる闘神鎧。奴の防御は、全ての人間の想像を絶する。
「貴様の、貴様如きの水神流では、火力不足だ」
闘神鎧の関節に詰まるのは『土』
そう、泥沼の恐ろしい精度を誇る土。
奴は、闘神鎧は……誰よりも、ルーデウス・グレイラットの力を使いこなしていたんだ。
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闘神鎧の考える防衛力上昇。
これは、決して予見眼だけではない。
奴もまた、自身の関節の弱さは熟知している。
「関節には柔らかくもクッション性のある土を詰めている」
まるでゴムのような、伸び縮むする土を詰めて。
「我と泥沼の間には、とてつもなく硬い土のプロテクトを装備している」
硬い、とにかく硬い。
圧巻の防御力を誇るプロテクトのような土を闘神鎧は選ぶ。
隙のない防御。
それを見て、剣神が叫ぶ。
「俺の水神流が弱い……何、言ってやがる。ふざけんじゃねぇよ」
自信を失った者による怒り。
それが、闘神鎧へと向けられる。
「防御の出力は一割未満だ!ということは防御も一割未満だろ!それに、関節が弱ぇことは変わってねぇはずだ!」
正論だと言わんばかりに叫ぶ。
自信に飢えた人間が、自信を取り戻すために叫ぶ。
「そして、お前は、殺す魔術は使えねぇ!」
剣神が叫んだ。
この言葉の意図は単純。
闘神鎧はここまでストーンキャノンを使わなかった。否、闘神鎧は使えなかった。
気絶させるための雷剣、足止めするための泥沼。
ルーデウスを制御しきれていない奴では、ストーンキャノンという彼の奥の手を使うことは到底不可能。
だから、使えない。
殺すための魔術は使えない。
それこそが、剣神の自信だった。
「殺す魔術?そうだな。『我にとっての殺し』それは出来んな」
言葉とは裏腹、闘神鎧が笑う。
───刹那、空気が変わった。
剣神の背中に走るゾクっとするような悪寒。
その背中を撫でるように聞こえてくるのは、優しい声。
「シールフィ、水遊びでもしようか」
闘神鎧の左の人差し指に集まるのはウォーターボール。
ただの、誰でも使える弱い初級魔術。
しかし、違う。奴が、泥沼 ルーデウス・グレイラットが使えば、その常識は変わる。
「そのデカさは、なんだ?」
剣神の困惑。
まるで地球のような、とてつもなく大きなウォーターボールが、自信を失った剣神の瞳に映る。
「簡単な話だ」
闘神鎧の、否、ルーデウス・グレイラットの魔術は、強い。
「我と、泥沼にとって……」
ウォーターボールを作って、少し笑いながら辺りを見渡す。
闘神鎧が、戦いを終わらせようと声を出す。
「この程度、水遊びも同義だということだ」
初級魔術、ウォーターボール。
泥沼が遊ぼうと扱えば、それは凶器となる。
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「水遊び……みんな、みんな。水遊び、しようよ」
闘神鎧の内側から聞こえてくるのは、優しい声。
その声に、家族が瞳を潤ませる。
「ルディ、ルディ……」
彼の声は、小さくて弱くて細くて。
笑いながら挙げる悲痛の叫びは、家族の心を動かすことなど容易であった。
「ボク、もうやだよ。ルディのそんな姿、見たくないよ」
瞳を潤ませて、俯くのは『シルフィエット・グレイラット』
彼女が、綺麗な白い髪を靡かせる。
「だから……」
潤んだ瞳。同時に呟くのは、この言葉。
「もう、戦わないで」
彼女の願い。命を賭けた願い。
しかし、そんな願いは、叶わない。
「命乞いか……くだらん。ならば、貴様から殺してやろう」
命乞いじゃない!そう叫ぼうとする女の子の言葉が、遮られる。
「シルフィエット・グレイラット。そして、その足であるニナ・ファリオン……」
シルフィとニナ。
二人の戦士が、冷や汗をかく。
「貴様らから!我の生贄にしてやろう!」
言葉と同時。
刹那、闘神鎧がウォーターボールを整え、二人を捕捉する。
大きな声を挙げ、捕捉する闘神鎧。
ルディと叫び、愛しの人を涙目で救おうとするシルフィ。
この二人。しかし、足りない。
この二人だけでは、戦いは成立しない。
「やっと、片腕を塞いだわね」
ルーデウスを愛するお嫁さん。
彼女が叫ばなかったのは、単純。
「左腕、今のあんたは使えない」
ピンチはチャンス。
闘神鎧の左指に浮かぶウォーターボールは、エリス・グレイラットの術中。
「今、私はアンタを超える」
「エリス・グレイラット……」
刹那、闘神鎧がエリスに振り向く。
邪魔だと、我には届かないと声を挙げる。
しかし、居ない。厄介な奴は、居ない。
そう、そこに、厄介な獣 エリス・グレイラットの姿は無かったんだ。
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とても、とても静かだった。
闘神鎧が振り向いた刹那の数秒。
ヒューという谷の風が聞こえ、サァーという木の葉が揺れる音が聞こえるほどには、とても静かだった。
闘神鎧が構える、全員の吐息が溢れる。
お嫁さんの涙が落ちる。
ポツン。
一滴の雫。
瞬間、物語は動き出す。
ドン!!!
刹那、爆音が鳴った。
同時、彼女が、エリス・グレイラットが音と共に姿を現す。
「倒す」
「……」
全員が畏怖するほどの踏み込みは、ルイジェルドの背中から。
そう、彼女は、ルイジェルドの背中に隠れ、初動を隠していたんだ。
「スピードは、覆すためにある」
この言葉は、とてつもなく重かった。
剣神を倒した獣の、速度を覆すための技の数々。
初動を隠すという最上級のテクニック。
それを彼女は、経験ではなくセンスで可能にする。
奇抜派に近い動き。
エリスは、覚悟を決めて完遂する。
ガン!!!
爆音が鳴った。
金属音が鳴った。
刹那の斬り合い。
ガン!という金属音。それは、あり得ないことであった。
「なんで、不意打ち出来ないのよ……」
ニナが遠目から声を絞り出した。
闘神鎧を見つめて、彼女は目を見開く。
答え合わせは、最強の口から。
「剣神の猿真似。貴様では、出来るわけがない」
出来ない。そう言い切る。ビリビリと光る雷剣は、ウォーターボールを構えていても健在。
光る剣。映るのは、闘神鎧の佇む姿。
「殺気が漏れている貴様では、隠密など不可能」
ここに来て露呈するのは致命的な事実。
破壊力を差し込む。その事実が不可能であるという恐怖。
覚悟が止まる。
ニナも、シルフィも目を見開き、絶望する。
勝てない。誰もがそう思う。
しかし、こんな絶望は、彼女にとってはなんでもない。
「その通りね。闘神鎧、アンタの言う通り、私は隠密なんて出来ない」
ルーデウスみたいに、上手い騙し討ちは出来ない。
そう言いながら、エリス・グレイラットは笑う。
「でも、だからこそ、そんな私だから出来る」
二年前とは違う。
彼女は、自信と覚悟を胸に抱く。
「囮。私は、最上級の囮になれる」
エリスがニヤリと笑った。
刹那、何かが動く。
闘神鎧のゾクっとする予感を遮るように、最速が動く。
キーワードは『ニナへの殺気』
愛する者を守るために、あの男が動く。
「ニナは、僕が殺させない」
この言葉の主は、エリスではない。
イゾルテでも無ければ、自信を失い、水神流を扱う元剣神でもない。
自信に満ち溢れた天才。
最速の男『ジノ・ブリッツ』
「ニナは、僕が守る」
剣を振るった。
あの時と同じ。剣神ガルを倒した時と同じ。否、それ以上のスピードで。
エリスと同様、愛する人を守るために。
彼は、今までで一番、命を賭けて剣を振るった。
ブン!!!
最速の剣が、空を斬る。
「……なんで、そうなる?」
「我の水神流を、貴様ら如きの物差しで測れると思うなよ」
ジノが目を見開く。
鳴ったのは風切り音であった。
そう、風切り音。恐ろしい剣は、闘神鎧には当たらなかった。
奴は、そう。不意打ちを、見てから流してみせる。
「……エリス・グレイラット。我は、少し、貴様を侮っていたな」
圧倒的な力の差。
奴は、ジノのことは見ない。
空を斬った最速の男のことなど見ない。
それほど、この戦いはエリスのものであった。
二年前とは違う獣。エリス・グレイラットの驚異的な成長。
この事実に、闘神鎧は剣を振り上げる。
認めて、その上で殺す。
貴様ならば、最上級の生贄になると。
そう呟き、剣を振るう。
ウォーターボールと剣。
ここに来て、闘神鎧の攻撃が完成する。
「さぁ、終わりだ」
ジノが崩れる。
エリスが痺れる。
ウォーターボールと雷剣が、シルフィとエリスを捕捉する。
終わる……
誰もがそう思う。
しかし、始まった波状攻撃は、簡単には終わらない。
「もう、私は間違えません」
言葉と同時。
飛び込んでくるのは、かつての英雄。
「もう、私は、死なせない」
息子を失った男。
『アレックス・カールマン・ライバック』
北神二世が、この戦いを終わらせんと剣を抜く。
誰もが認める世界最強の剣。
王竜剣 カジャクト。
それを握る彼は、強い。
「戦う者を、強い人を、私が助ける!!!」
闘神鎧の背後から飛び込む。
エリス、ジノ。そして、アレックス。
神級による覚悟の三段攻撃。
この攻撃に、闘神鎧は、北神を見つけることは出来なかったんだ。
─────────────────────────
剣神がお手本を見せた。
しかし、火力不足で斬ることは出来なかった。
エリスが覚悟を決めて隠密をした。
しかし、殺気は隠すことは出来なかった。
ジノが愛情を込めて剣を振るった。
しかし、そのスピードが通ることはなかった。
何も、何も通用しなかった。
でも、そのどれもが無駄ではなくて、そのどれもが倒すための鍵だった。
だからこそ、この攻撃が、闘神鎧に通用したのだろう。
「私が、決める!!!」
アレックス・カールマン・ライバック。
彼の覚悟が、息子への想いが、この戦いを揺らす。
それほどの覚悟。闘神鎧の反応は、確かに遅れていた。
「狙いは、関節か」
剣神の水神流を喰らった関節へ。
軋む関節へ、アレックスは剣を振り下ろす。
当たるまで数ミリ。
闘神鎧は、覚悟する。
腕が斬られる……
そう考える。
しかし、それを、あの男は許さない。
「エリスを、守らないと」
優しい、優しい声だった。
何かを守ろうとする男の声は、とても優しかった。
「ルー、デウス?」
エリスが痺れる身体で呟いた。
この言葉に、闘神鎧でさえ目を見開いた。
奴の身体が、恐ろしい速度で180度反転する。
これを命令したのは、闘神鎧ではない。
最強の魔術師。ルーデウス・グレイラットが、闘神鎧に命令する。
「カジャクトから、俺が守るんだ。エリスを、シルフィを、ロキシーを……」
彼がボヤける頭で考えるのは、かつてルーデウス自身が負けた北神三世の姿。
彼の守りたかった者を襲い、雑魚と罵った北神三世。
彼は、あの剣を持っていた。
『王竜剣カジャクト』
この剣に、ルーデウスが反応する。
「俺が、みんな、みんな、守るんだ」
強い、とてつもなく強い意志。
そんな意思が、優しさが、ここに来て裏目に出る。
バン!!!
爆音が鳴った。
闘神鎧の腕が光を描いた。
誰も見えない速度。
そんな銀線が、アレックスの左腕を消滅させる。
「ルーデウス。ごめんなさい」
エリスが涙を流す。
先ほどまで戦おうとしていた戦士が、膝を崩す。
シルフィのように、瞳を潤ませる。
「ルーデウス、ルーデウス……」
先ほどとは違う涙。
それが証明するのは『想定外』
そう、エリスの戦術眼を持ってしても、ルーデウスの愛情は想定外であった。
「私じゃ、ルーデウスを……救えない」
覚悟が終わる。
その姿に、目を見開いていた英雄が叫ぶ。
「まだです!!!」
アレックスは、エリスの姿を見つめていた。
膝を落とし、絶望する強者の姿。
その姿を、彼は自身の息子の姿と重ねていた。
「まだ!私は戦える!!!」
失った左腕。部位を欠損しても、英雄の気高さは変わらない。
「私は!まだ……「終わりだ」
言葉と同時。
アレックスの左腕に入り込むのは、小さな雫。
「何故、無くなっている?」
アレックスは、再度目を見開いた。
彼の困惑。それは、簡単であった。
「何故、ウォーターボールが無くなっている?」
左指にあったはずの巨大なウォーターボール。
それが、跡形もなく消える。
「圧縮し、小さくしたのだ。アレックス、貴様を殺すためにな」
斬れた左腕に入った雫の正体。
血管の中に入り込んだ雫の恐ろしさ。
それが、明らかになる。
「圧縮して小さくする?そんなこと、不可能。昔でも、人外でもそんなこと出来る奴なんて居なかった……「ならば、見せてやろう」
食い気味に放たれた言葉。
闘神鎧が、アレックスの身体へと指を向ける。
「爆ぜろ」
ボン!!!
言葉と同時。
刹那、アレックスの身体が爆散した。
─────────────────────────
「あぁ、あぁ……なんで、こうなるのよ」
英雄の身体が爆ぜる。
ニナの言葉にピクピクと動きを見せるのは、生首だけになったアレックス。
「これだけ、これだけ努力して、命を賭けたのに……」
ニナの膝が落ちる。
それが証明する事実。
それは、恐ろしいほど単純で、恐ろしいほど苦しい事実であった。
「なんで、勝てないのよ」
勝てない、勝てない。
崩れたのは、最上級の集団戦。
バン!!!
雷剣が再度走った。
その剣は、ルイジェルドを捉える。
「ぐっ!!!」
痺れた。
雷が、彼の身体を走った。
「二人目」
飛んでいった。
まるで棒切れのように。
ルイジェルドは、爆音と同時。音よりも速く岩壁にぶつかった。
もう、無理だった。
人族の全てを賭けても、無駄だった。
「嫌だ、嫌だ。負けたくない」
小さな言葉が響いた。
最悪の戦況に、何かが揺れた。
その正体は、白い髪。
彼女は、絶望するエリスと、そして愛する人だけを見つめていた。
「ルディを救えない。ルディに辛い想いをさせるなんて……」
拳を握りしめる。
彼女は、唇を噛み締める。
「嫌だ!!!」
刹那、彼女は走り出した。
英雄とスペルド族に向かって。
「まだ、ボクは魔力枯渇はしていない」
なんのために修行をしてきたのか。
付けた力の使い所を、証明せんと走り出す。
英雄とスペルド族を救おうと走り出す。
「まだ!ボクはルディを救える!!!」
幸せだった日々を思い出して、走る。走る。
闘気を練って、走る。
ルディと、また生きるために走る。
しかし、その走りは、覚悟は、無謀だった。
「焦ったな。シルフィエット・グレイラット」
ニナに抱えられず、独断の走り。
そして、気持ちに任せた回復。
この動きは、安直であった。
「逃げ場が決まっている獲物。それほど殺しやすい物はない」
再度、闘神鎧の左指に集まるのはウォーターボール。
奴の水遊びが、家族を捕捉する。
「今度こそ、終わりだ」
生首だけのアレックス。
ゴホッと血を吐くルイジェルド。
そして、目を見開き、立ち止まるシルフィ。
その全てに、水の球体が襲いかかる。
死ぬ……誰もがそう思う。
しかし、そんな時、戦いは始まりを迎えるんだ。
ザン!!!
目を閉じるシルフィ。
そんな彼女の目の前で、ウォーターボールが弾ける。
「お久しぶりですね。闘神鎧 泥沼のルーデウス・グレイラット」
「貴様は……」
シルフィの前に立つのは、英雄。
いや、違う。これから英雄になる男の姿。
「英雄に、なりにきました」
彼の名は『アレクサンダー・カールマン・ライバック』
北神三世が、ウォーターボールを斬った木の棒を、ただの棒切れを捨てる。
「父上。カジャクト、お借りしますね」
爆散した父 アレックス・カールマン・ライバック。
彼が涙を流し、コクンと頷く。
大切な息子を見て、彼は瞳を潤ませる。
英雄ではなく父としての姿。
それを見たアレクサンダーが、楽しそうに笑う。
「さぁ、始めましょうか」
二年前と同じ笑顔。
しかし、違う。
彼の笑顔は、何かが違う。
「僕。いや、僕たちが英雄になる物語……」
子供のような身勝手な笑顔じゃない。
今の彼の笑顔は、正に傑物を超えた強者の風格。
「あなたを超える物語を、始めましょう」
復活した北神 アレックス・カールマン・ライバック。
彼の練り出した闘気に、戦場の空気が変わる。
─────────────────────────
ポツポツと雨が降った。
誰も気付かないほど、小さな雨だった。
「私には、これしかないです」
彼女の名は『ロキシー・ミグルディア』
治癒魔術も土魔術も、全て奪われた青い髪が呟く。
「私が、ルディのために出来ること。それは、これしかない」
戦うことは苦手かもしれない。
才能はないのかもしれない。
しかし、彼女は、ルーデウスの師匠は、誰よりも努力家だった。
「ルディ。私は、まだ戦えます」
絶望はしない。
奥の手は、彼女の想い。
「私は、私には……」
絶望は早い。
まだ、戦いは終わらない。
「この魔術があります」
ロキシーの言葉。
刹那、青白い何かが上空に輝きを作った。
勝敗予想 勝つのは?
-
闘神鎧ルーデウス
-
狂犬&グレイラット家