TOS-TL~妹令嬢はお兄さまを救いたい~   作:お兄さまファンクラブ名誉会員

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今回からあらすじを追加することにしたので初投稿です。


前回のあらすじ

ガオラキアの森でソードダンサーとの死闘を制したセレスたち。その後、予定通りプレセアを彼女の故郷のオゼットへと送り届けることになったのだが……。



過去のトラウマを乗り越えよ

「どういう……ことだ?」

「彼女は父親が亡くなっていることが理解できていないのでしょう。でもどうして……?」

「感情が希薄な方だとは思ってはいましたが、流石にこれは異常すぎますわね」

 

 

プレセアの父親は亡くなっていた。それも腐敗が進み、一部白骨化までしている。というのにプレセアはそれを気にする様子もなく、伐採してあった神木の加工を始めてしまう。これは流石に異常すぎる。

 

 

「なあ。なんかプレセアちゃんの症状、今のコレットちゃんと似てねえか?感情が抜け落ちてる感じとか」

「何だって……?いや、言われてみればそうかもしれねえ」

 

 

そんな中、それを見ていたゼロスがコレットの症状と類似していることを指摘する。彼女と一番近くにいるロイドは考えた末にそれに同意した。だがそれはおかしいとジーニアスは反論する。

 

 

「でもプレセアは要の紋をしてるよ?エクスフィアに付いてるし」

 

 

彼の言うように、プレセアのエクスフィアには要の紋が装着されている。サイバックで判明した、コレットの持つクルシスの輝石に要の紋が無かった問題とは完全に別問題のはずである。

 

 

「……なあプレセア。ちょっとエクスフィアを見せてもらえねえか?」

「……はい。構いません」

「サンキュー」

 

 

不審に思ったロイドがプレセアの胸元を観察すると……。

 

 

「な、何だこれは!?」

「……どうしたのロイド?」

「だってこれは……」

 

 

ロイドが驚愕の声を上げ、それを聞いたジーニアスは困惑する。

 

 

「ふむふむ、なるほどな。俺さま、わかっちゃったぜ」

「ゼロス?いったいに何がわかったんだい?」

 

 

そんなロイドの様子を見てゼロスはピーンと来たようで、ドヤ顔で胸を張った。

 

 

「ロイドくんはプレセアちゃんの胸元に惚れちゃったんだよ!」

「ふん!」

「あんぎゃーっ!?」

「お兄さま……」

 

 

そしてゼロスは茶化してしいなに足を踏まれるノルマをこなした。

 

 

「いやまさかそんな……?」

 

 

ゼロスが転げまわる横でロイドが確認のために再度エクスフィアを、それが彼女から外れないように慎重に観察すると、ゆっくりと振り返って驚愕の真実を告げる。

 

 

「これは要の紋じゃない。台座に使われているのは抑制鉱石に違いないが、まじないが完全に別物……。これじゃあ要の紋としての機能を持ってない……」

「な、何だって……?じゃあまさか、今のプレセアは!?」

「ああ。……マーブルさんと同じだ」

「……許せない。そんなことをした奴をボクは絶対に許さない。見つけたらボクの魔法で灰も残さず焼き尽くしてやる」

 

 

寄生状態のエクスフィアを装着しているとどうなるかを、大切な友人を失って嫌というほど理解させられているジーニアスは完全にブチ切れた。

 

 

「……え〜っと?つまりどういうことだってばよ?」

「その状態だと何かあるんですの?」

 

 

逆に普段は理性的なジーニアスが完全にブチ切れていることに困惑するのはワイルダー兄妹だ。彼らはイセリアで起き、パルマコスタでも足を引いたその事件を知らなかったからだ。

 

 

「プレセアは何者かによって危険な状態のエクスフィアを装備させられてるんだ。もしも何かの拍子にプレセアからエクスフィアが外れたりすると、プレセアの体内のマナが暴走して……プレセアがプレセアじゃなくなる」

「は?」「ええと……?」

 

 

ロイドがぼかして伝えるも、ワイルダー兄妹はピンと来なかったらしく首を傾げている。

 

 

「つまりプレセアが魔物になって、もう元には戻れなくなるんだよ」

「はぁっ!?」「なんてこと……っ!?」

 

 

ロイドと同じくその場にいて、悲劇に巻き込まれたジーニアスが直球で真実を伝えると、ワイルダー兄妹は驚愕に目を見開いた。

 

 

「……ボクたちはそうなって、苦しみながら亡くなった人を知ってるんだ……」

 

 

ワイルダー兄妹は、悲しそうに俯くジーニアスからそれが本当のことだと理解させられた。つまり早急に抑制鉱石を入手しなければならないのだが、コレットのときのようにたまたま運よく手に入るとは限らないだろう。

 

 

「では急がないといけませんわね。抑制鉱石の産地はトイズバレー鉱山でしたけれど……」

「ああ。早速貸しを返してもらうことになっちまったな。もっと有効利用できるチャンスはあるかもしれねえが……。ま、俺さまはかわいい女の子の味方だからな。ちょっくら行って交渉してくるぜ」

「ちょいと待ちな。ゼロス、アンタいったいどうするんだい?」

 

 

しかし幸いなことに今のゼロスにはそれを入手出来る最強の伝がある。早速メルトキオへと急ごうとするゼロスだったが、しいながそれに待ったをかけた。ゼロスはこの後どうするかを考えながらメルトキオで起きていたことをかいつまんで説明した。

 

 

「というわけでレザレノの会長には貸しがあるからな。それを使って鉱山への進入の許可をもらってくるわ」

「へぇ〜?アンタ……割と使えるんだね」

「ちょちょちょちょ〜い!割とって何よ割とって!俺さま、実は隠れた実力者さまなんだぜ〜?」

「あーはいはい。そーですね、すごーい」

「ちょ、俺さまの扱い雑すぎぃ〜っ!?」

 

 

理由を聞いて、まさかのゼロスの有能さにしいなが驚くも、やっぱりゼロスはゼロスだったので扱いは雑だった。

 

 

「でも鉱山まではエレカーでも結構掛かりますわよ?いくら貸しがあるとはいえ、花嫁を一人で王都に放置させるのはどうなのでしょう?」

「やっべ。それを忘れてたな」

 

 

しかしここでセレスが疑問を呈する。リーガルはアリシアを連れてメルトキオに滞在しているため、彼を連れ出すとなるとアリシアは一人になる。それも長期間の離脱となるであろうそれを納得させる材料が、貸しがあるとはいえ今の彼らには不足していた。

 

 

「地図でもちょうど反対側ですし、道中には岩礁地帯もあるのでエレカーでは短期間での移動は不可能ですわ。それこそ空を飛んでいくとかではないと……」

「ならあるじゃねえか。良いものが」

「……あっ」

「というわけだ、ロイドくん」

 

 

名案を思いついたゼロスは、ロイドに振り返って何をするかを伝えようとする。

 

 

「ん?何が、というわけなんだ?」

 

 

ピンと来ていないロイドを見て、いきなり過程をすっ飛ばして話を進めそうになったことに気づくゼロス。流石にそれではリフィルですら話についていけないだろう。

これからの作戦をゼロスは細かく伝えることにした。

 

 

「……まず俺さまは走ってメルトキオまで戻る。んで、ロイドくんたちが戻るまでに会長を説得しておく。その間にロイドくんたちはエレカーを使って雷の神殿に行って、ヴォルトと契約してレアバードを稼働できるようにしておいてくれ。レアバードならメルトキオからトイズバレーまで数時間で飛んで戻れるからな。少なくとも朝に出れば日帰り出来るはずだ。それならあの会長さんも首を縦に振らざるを得ないだろうよ」

「ゔ、ヴォルトだって!?あたしはごめんだよ!?」

 

 

だがヴォルトの名を聞いて、過去に彼との契約に一悶着あったしいなは、この場から逃げ出そうとする。

 

 

「しいな!逃げるな!人の命が掛かってるんだ。それにここで逃げたらお前、一生後悔するぞ」

「うぐっ……」

 

 

しかしそれを許すゼロスではない。ここでしいなの過去のトラウマを精算することが出来ると確信している彼は、彼女を逃がさなかった。

 

 

「セレス、今の一番の戦力はお前だ。だからお前はしいなに付いて、あいつを助けてやってくれ」

「……まあ、仕方ありませんわね。この流れでは断れませんし」

 

 

そしてしいなと一番仲の悪いセレスを説得するという問題を解決すると、ゼロスは懐からウイングパックを取り出した。

 

 

「ほい、ウイングパック。セレス、お前に預けておくぜ」

「ええ。確かに受け取りましたわ」

「よし。んじゃまあ、そういうことで。……そっちは任せたぜ、ロイド」

「ああ!」

 

 

取り出したウイングパックをセレスに渡すと、ゼロスは一行に背を向けて今まで来た道を一人で走り始める。

 

 

「ゼロス!」

 

 

そこに後ろから声をかけるのはメンバーの中で今一番気合の入っているジーニアスだ。絶対に無事にこの問題を解決したい彼は、たった一人でメルトキオへと戻るゼロスに声を掛けられずにはいられなかったのだ。

 

 

「頼んだよ!」

 

 

それに対してゼロスは振り返らず、グッと親指を立てて答えたのだった。

 

 

 

ゼロスが走り去った後、プレセアも抜けて六人となった一行は、エレカーで雷の神殿へと向かうことになった。

なったのだが……。

 

 

「ま、また水なのね……」

「先生……」「姉さん……」

 

 

そう、エレカーは海上を移動する乗り物なのである。これにビビり散らかしているのは水が大の苦手であるリフィルだ。

 

 

「まあ人間、誰にでも苦手なことはありますわよね」

「先生はエルフだぜ」

 

 

それを見たセレスは、完璧な大人の女性にも弱点はあるのですわね〜と思いつつ擁護をするも、ロイドからツッコミを入れられてしまった。

 

 

「なるほど……。まあエルフ、誰にでも」

「いや言い直すんかい!」

 

 

そこでわざわざ言い直してみれば、案の定しいなからツッコミを入れられてしまった。わざとボケたので反応はしないが。

 

 

「かといって他に方法はありませんし……どうしますの?」

「う~ん……」

 

 

怖がるリフィルをどうするかを考えるセレスたちだったが、それを見てリフィルは訂正を求め始める。

 

 

「ちょっとあなたたち?私は別に水が怖いとかそんなことはないので大丈夫です。ええ!もちろん!当然!問題なんてありませんとも」

「「「「(ええ……?)」」」」

 

 

どう見ても海を怖がっているのに、ここに来て意地を張るリフィルに困惑するセレスたち。リフィルはそれから目を逸らすようにエレカーへと乗り込んでいく。

それを見て、まあ本人が良いなら……と残りのメンバーもエレカーへと乗り込むのだった。

 

 

 

 

 

「うわ〜……ビリビリだよ」

「それにみろよあの床。どう考えてもあれって踏んだら感電するやつじゃねえか?」

 

 

雷の神殿に到着した一行だったが、入った瞬間から轟く雷鳴に不快感を隠せなかった。加えて明らかに罠ですと言ってるような、床に刻まれた大きな紋章に尻込みさせられてしまう。

 

 

「そうね。でも雷は高いところに落ちるものよ。こういうときにどうすれば良いか、あなたならわかるわね?」

 

 

そんな中、明らかに異質な台座が高所にあるのを確認したリフィルは、ロイドへとヒントを与えた。

 

 

「なるほど、あっちに引き寄せてしまえば良いのか。流石先生!」

「……ロイド、あなたはもっと観察力と学力を身につけ……ロイド!」

「ごめん先生!ちょっと何言ってるかわからないぜ!!!」

 

 

お説教の気配を察知したロイドは台座へと逃げ出した。

 

 

「ん?今度の部屋にはなんかでっけえ祭壇があるな」

「それに岩の上にさっきと同じ台座があるよ。ロイド、さっきみたいにソーサラーリングで壊せるんじゃない?」

「やってみるか」

 

 

その後入り口のギミックを解除した一行は、その先の部屋で謎の岩が三段積み重なった上に、前の部屋で見た台座と同じものを発見した。

 

 

「くそっ、ダメか。これじゃあ届かないな」

「うん……この黄色と赤の岩は別の変換器を探してくるしかなさそうだね」

「え?そうなんですの?」

 

 

だが一番下の岩を破壊するも次の岩が破壊できなかった。そこでロイドは二段目以降の岩を破壊できるソーサラーリングの変換器を探しに行こうとする。それを見たセレスは徐に鞄へと手を入れ……。

 

 

「やあっ!」

 

 

取り出した愛用の剣で岩を一閃した。

当然、過去にギミックを解除しているのを見たことのあるしいなは、この岩がそんなことでは破壊できないことを知っていたので……。

 

 

「何やってるんだいセレス。そんなことでこの岩は壊れたりしないよ。さ、遊んでないで探しに…………は?」

「ま、マジかよ」「ウソデショ……?」

 

 

しかし二段目と三段目の岩は分断されて切断面からズレていく。さらにセレスが追加で剣を振ると、斬られた岩はマナに分解されて消滅した。そうなれば当然、上に乗っていた台座はすぐ目の前へと落下してくるのである。

 

 

「さ、では参りましょうか」

「ああ……」

 

 

哀れ雷の神殿はその全てを無視されることになったのだった。

 

 

 

 

 

「……よし。本来ならだいぶ面倒そうな仕掛けだったけど、これで何か起きるのか?……ってうわあ!危ねえ!?」

 

 

降って来た台座には、当然ながら入り口で見たような機能があった。それをロイドが起動させると、台座に巨大な雷が落ちる。と同時に巨大な雷球が現れる。

 

 

「こいつがヴォルトか!」

「くぁせふじこ!」*1

「くそっ!まただ!何言ってるかわかんないよ!」

 

 

顕現したヴォルトだが、やはりエルフではないしいなにはヴォルトが何を言いたいか理解できない。

 

 

「いえ、待って。何かわかるかもしれない。解析できるかも……」

「先生!あぶねえ!」

「きゃあっ!?」

「姉さん!?」

 

 

エルフの血が入っているため何を言っているのか少しわかるリフィルが解析しようとするも、彼女目掛けて雷球が発射される。ロイドが間一髪彼女を押し倒して回避したが、ヴォルトは完全に敵対していて取り付く島もない。

 

 

「ダメだ……。これじゃあまたみんなが……」

 

 

戦闘前からピンチに陥り、トラウマを想起されられてしまい震えて怯え、立ち尽くすしいな。そんな彼女目掛けてヴォルトは雷球を発射した。

 

 

「しいな!危ないっ!……うわああっ!?」

「コリンっ!?」

 

 

動けないしいなを庇ったのは小狐精霊、コリンだった。彼女はしいなに体当たりをすることでその射線から逃れさせたのだ。

しかしその代償として雷球の直撃を受けてしまう。感電して地面に落下し、力なく倒れるコリンへとしいなが駆け寄っていくも、その間に力尽きた彼女はマナへと還って消えてしまった。

 

 

「ああ……っ!ああああっ!!!!」

 

 

相棒が目の前で死んでしまった事実を受け止めきれず、絶望からしいなは崩れ落ちてしまった。だがヴォルトは待ってくれない。しいな目掛けて新たな雷球を装填し始める。

 

 

「まずいよ!このままじゃやられちゃう!」

「くそっ!何とかならないのか!」

 

 

契約担当者のしいなが戦意を喪失して戦闘不能、さらに言葉も理解できない発狂精霊に、ロイドたちは冷静さを失いつつあった。

 

 

「何とかするしかありませんわよ。フリーズランサー!」

 

 

そこに唯一冷静さを保っていたセレスが、ヴォルトの雷球目掛けて氷の槍を乱射する。強力な冷気に晒された雷球は相殺されて消し飛んだ。だがヴォルトも負けじと次弾を装填し始める。

セレスはしいなの前に立ち、次の攻撃に備えて魔法バリアを形成しつつ泣き崩れて何もできないしいなを見下ろした。

 

 

「何をやってるんですかあなたは。そんなところで無様に膝をついて。情けない」

「くっ……でもコリンが」

「……いいですか?相手が先に攻撃して来たのならそれはもう敵。言いたいことがあるなら、殴って黙らせてから言うことを聞かせるのが一番でしてよ」

「ヤミノホノオニダカレテキエロ!」*2

「……はあ。これは魔法バリアじゃ保ちませんわね」

 

 

しいなを庇いながら説教するセレスだったが、精霊の魔法をバリアだけで防ぎ切るのは難しかった。

 

 

「……はっ!」

 

 

そこでバリアが割れる直前、鞄から剣を取り出し、貫通してくる雷球を斬り飛ばして消滅させた。

 

 

「敵対した相手に何もせず好き放題させるなど愚の骨頂。言葉がわからなくとも、敗者は黙って私の言うことを聞け。これで事足りるのですわ」

「でも言葉が通じないんだよ!?」

「精霊が人間の言葉を理解できていないはずがありませんわ。文献にもそう残ってますし。それにあなたが今立たなければ、あなたの相棒の死は無駄になります。大事な相棒の死を無駄にするつもりですの?」

「……っ!?」

「お立ちなさい。立って、命を賭してあなたを守った彼女の価値を証明してみせなさいな」

 

 

ヴォルトの雷球をひたすらフリーズランサーで封殺するセレス。しいなが周りを見れば自分のために一緒に戦おうとしてくれている仲間がいる。

 

 

「……そうだ。あたしにはコリン、それに心強い仲間がいる」

 

 

再び立ち上がったしいなの顔に恐怖はなかった。

 

 

「あたしはもう、里にいた時と同じ一人ぼっちじゃないんだ。……もう、何も怖くない!」

「ちょ、それは死亡フラグでしてよ!?」

「いくよ、みんな!」

「おう!」「任せてよ!」「……大丈夫なのかしら」

 

 

このあと滅茶苦茶しいなたちは特攻した。

 

セレスたちの勝利を信じて!*3

 

 

 

*1
インターネットスラングの日本語部分

*2
仮面ストーカーの死亡フラグ

*3
某お空の物語で全滅






オゼット直行なのでミズホはカットです。レアバードも強奪されていないので、今後もミズホの出番はありません。

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