TOS-TL~妹令嬢はお兄さまを救いたい~ 作:お兄さまファンクラブ名誉会員
誤字脱字チェックが大変なので初投稿です。
前回のあらすじ
プレセアのエクスフィア問題を解決するためゼロスと別れたセレスたち。まずは足となるレアバードの動力を得るため、必要となる雷の神殿へと向かう。そしてしいなは仲間と共にヴォルトへと特攻したのだった。
「ぜえ……ぜえ……。あたしたちの……勝ちだ!!!」
「オマエニマケルナラクイハナイサ……」*1
「……やられすぎなのでは?」
結論から言うと、しいなはヴォルトに勝った。ただし、その内容は酷いものであった。
まず前衛のロイドとしいながヴォルトへと特攻し、ヴォルト自身の周囲に無数の落雷を発生させる魔法*2にて速攻で壊滅。そんな前衛陣に驚いて動きが止まったジーニアスへとスパークウェブが襲いかかって彼も撃沈。
セレスはリフィルが回復魔法を唱える暇もなく通常ではあり得ない速度で壊滅したパーティを、リフィルとコレットを守りながら立て直すハメになったのだ。セレスが苦言を呈すのも仕方ないだろう。
だがそんなことはお構いなしに、勝ったのだからとしいなはヴォルトへと突撃した。
「さあヴォルト!早くあたしと契約しておくれよ!」
体制を整え直したヴォルトへと詰め寄るしいな。完全に頭が沸騰していて、大事なことを忘れている。それをわかっていたロイドはしいなを後ろから羽交い締めにして止めに入った。
「何だいロイド!離しなって!あたしはヴォルトと契約しなきゃいけないんだ!」
「待てってしいな!契約するには誓いを立てなきゃダメだって自分で言ってたじゃないか!」
「……え?あっ!?」
言われて思い出し、顔を赤くして大人しくなるしいな。ロイドは彼女が落ち着いたのを見て腕を離した。
「……マナを搾取しあう二つの世界の関係を修復して救う。ヴォルト。あたしはアンタと、そしてコリンに、それを誓うよ」
「……」
そうしてしいなが契約の誓いを立てると、ヴォルトは彼女へとマナを収束させ、契約の指輪を授けた。
そのときだった。
「な、なんだ!?」
「地面が……揺れてる……!?」
突如として大地震が起き、それに伴って周囲のマナが乱れ始める。
「何か来ますわ!」
急速にマナが収束するのを感じたセレスが警戒を促すと、しいなが召喚していないにも関らずウンディーネが現れる。
「今、二つの世界のマナは分かたれました」
彼女が言うには、二つの世界の精霊が同時に一人と契約を結んだのは初めてのことで、それによって二つの世界で搾取し合っていたマナの流れが停止したらしい。
「ということはシルヴァラントとテセアラ、両方の精霊と契約していけば、俺たちの目的は達成できるんだな」
「そうね。今のところしいなが契約しているのはウンディーネとヴォルトだけだけど、シルヴァラントの精霊のいる場所は判明しているわ。プレセアの問題が解決したら旧トリエット跡、パラクラフ王廟、そしてマナの守護塔へと向かうことにしましょう」
ロイドが方針を立てるとリフィルがそれを補足し、彼らの今後の予定は決まった。
「それより用事が済んだのなら早く行こうよ。プレセアを助けなきゃ!」
「ええ。お兄さまがメルトキオで準備を進めているはずですわ。オゼットに向かうのは明日になるでしょうけど、お兄さまへの連絡はできる限り早い方が良いはずですわ」
ジーニアスが早くプレセアを助けたくてロイドたちを急かし、セレスがそれに同意したことで、一行はメルトキオへと急行することになる。
こうしてヴォルトと契約したしいなたちは、メルトキオへと文字通り飛んで戻るのだった。
「お~、お帰りセレス」
「ただいま戻りましたわ。お兄さま」
「無事で何より。で、首尾はどうだった?」
ロイドやしいなたちが宿屋へと向かう中、一人ワイルダー邸へと降り立ったセレスは、玄関前でゼロスに迎えられた。そして彼女は雷の神殿の神殿での顛末を聞かれ、神殿内部やその道中であったことを端的かつ客観的に伝えることとなるのだが……。
「まあ個人的な結論を正直に言わせてもらうなら……それはそれはもう最悪でしたわ……」
「お、おう……。おつかれ」
ゼロスはヴォルトとの戦闘も、神殿のギミック解除も、最終的にはセレスにおんぶにだっこだったことを聞かされる。最後には死んだ魚のような目をして説明するセレスに、お疲れ様としか言えなくなってしまったゼロスであった。
「失礼する」
「お、来たな」
翌朝、レアバードの準備が完了した知らせを受けたゼロスによって、リーガルがワイルダー邸へと呼び出されていた。後ろにはアリシアも控えており、リーガルが不在の間の彼女の安全をワイルダー邸にて確保することになっている。
「リーガルさま……」
「ははは、アリシアは心配性だな。大丈夫だ。鉱山に行って入り口を開けてくるだけの簡単な仕事だからな。……そうだ。戻ったら今日はレストランでディナーにしよう。きっと楽しい食事になるはずだ」
「はい。リーガルさま」
「うむ。では、アリシアを頼む」
「「お任せください」」
リーガルがアリシアを執事二人に預け、ワイルダー邸内から出ようとすると。
「ようゼロス、セレス」
「お、来たな〜ロイドくん」
「……えっと、この人が?」
「そうだぜ~。アルタミラに本拠地を置く大企業、レザレノ・カンパニーの会長のリーガルだ」
「お初にお目にかかる。紹介に与ったリーガル・ブライアンだ」
「俺はロイド・アーヴィング。ロイドでいいぜ」
ロイドたちが現れ、お互いに自己紹介が始まる。そしてそれが終わり、さあ出発だという時だった。
「ようやくこれでプレセアが助かるんだね!」
「……えっ?プレセア?それってプレセア姉さんですか?」
リーガルを見送るために待っていたアリシアが、プレセアの名前を出したジーニアスへと詰め寄った。
「ちょ、いったい何!?」
「今姉さんを助けるって言いましたよね。姉さんに何かあったんですか!?」
「あわわわ……」
「まあ待て、落ち着けアリシア。まだお前の姉であると決まったわけではないだろう?」
姉であるプレセアに何かあったと聞いて冷静さを失うアリシア。詰め寄られたジーニアスがうろたえるのを見て、リーガルは彼女の肩に手を乗せて落ち着かせる。確かにリーガルの言うように同名の別人である可能性もあった。
「……ん?そういや最初に会った時に……」
「彼女、アリシア・コンバティールと名乗って訂正されてましたわね。そしてプレセアさんのお名前はプレセア・コンバティール……」
しかし、苗字も一致していることをワイルダー兄妹が思い出し、被害者が彼女の姉であることが確定してしまった。
「ど、どうしましょうリーガルさま。姉さんが……姉さんが……」
「うむう……」
アリシアはリーガルに抱き着くと泣き始めてしまう。リーガルが鉱山に向かうことだけでも心配なのに、それに加えて突然の姉の悲報。一般メイドが受け止める事実としては、それらは非常に重すぎた。
「……連れていくしかないわね」
「先生!?」「姉さん!?正気!?」
泣き止まないアリシアを見て、リフィルは彼女を連れていくことを提案する。正気を疑ってきたジーニアスに蹴りを入れると、彼女を連れていく理由を説明することにした。
「泣いている彼女をこのまま放置はできないわ。それにメイドをしていたのなら体力はあるはず。鉱山内では彼が全力で守るでしょうし、このまま彼女を残しておくより連れて行く方が安心できると思うわ」
「ああ。アリシアは何があっても必ず守る。アリシア。レアバードに乗っている間、私に掴まっていられるな?」
「……はい」
こうしてリーガルがアリシアを後ろに乗せ、レアバードでトイズバレー鉱山へと向かうことになったのだった。
「へ~。簡単に鉱山の採掘場への入り口って開くんだな~」
「登録されている網膜と指紋の二段階認証だからな。今回は簡単に開いたように見えてしまったが、本来は基本的に私以外には開けられない、かなり強固なセキュリティなのだぞ」
「そうなのか?」
「ああ。この扉を私以外が開けようとすると、専用のキーカード、定期的に変更される暗証番号、そしてレザレノの社員証の三つが必要になる。開閉履歴は本社へと即時送信される上、その時に使われた社員証から開閉させた人物を特定できるから、盗掘などの犯罪は簡単に防げる手筈になっているのだ」
「ほほ~なるほど。完全に理解したぜ」
リーガルがセンサーを覗き込んでパネルへと手を当てると自動で開く扉を見て、ロイドはそれが簡単に開くものだと思った。しかし実際は違うのだと説明され、ロイドはうんうんとうなずいて腕を組む。その仕草を見たジーニアスは白けた視線を彼へと送る。
「ロイド、意味深にうなずいてるけどさ。全然わかってないでしょ」
「はっはっは!何を言っているのかなジーニアスくん。さ、扉も空いたし進もうぜ!」
「ロイド……」「誤魔化しましたわね……」
ツッコミを入れられるも何事もなかったかのように採掘場へと入っていくロイド。やれやれと言いながらジーニアスがそれを追いかけると、コレットを連れたリフィルとしいなもそれに続いた。
セレスは警護のために自分は残ることを決めていたが、ゼロスがロイドたちと共に中へと入っていかないのを見て、彼へと声を掛けた。
「ではお兄さま。入り口の守護は私にお任せくださいませ」
「おう、セレス。ここは任せたぜ~。……って言う訳ないだろ。ヴォルトの件は緊急事態だったからセレスに任せたが、今回はそうじゃねえ。俺さまも一緒にここに残るからな」
「まあ。心配性なお兄さまですこと」
しかしセレスはゼロスも残ると聞かされてしまう。心配性だとは言いながらも彼女は嬉しそうだった。
「ですが……こういう時に限って問題が起きるものなのですわよね」
「あん?どういうことだ?」
「招かれざるお客様がいらっしゃったようですわ」
セレスが前に出てアリシアを後ろへと庇うと、採掘場の入り口がある洞窟へと薄汚れた男たちが入ってきた。
「久しぶりに採掘場への扉が開いたと思ったら会長自らがお出ましとはな。ヴァーリのやつが死んでからはなかなか侵入する機会に恵まれなかったが、今日はラッキーだな」
「ああ。それにこいつらを捕まえればレザレノから大量の身代金が手に入る。一生遊んで暮らせるに違いねえぜ」
「ぐへへ。お付きのメイドは要らないだろうから俺たちで楽しもうぜ~。最近女にご無沙汰だしな~」
どうやらエクスフィアブローカーのヴァーリの仲間らしい。舌なめずりをする彼らに嫌悪感を抱きつつも、セレスは彼らに既視感も感じていた。
「……最後の方はお兄さまにちょっと似てますわね」
「えっ!?せ、セレス!?俺さま、もしかしてそんな風に思われてたの!?」
そしてそれが兄だと気づいてしまった。当然ゼロスは心外だとセレスに反論するのだが……。
「……日頃の行いを思い出しながら、胸に手を当ててよく考えてみたらいかがですの?」
「………ぐふっ」
思いっきり身に覚えしかなかったゼロスは白目を剥くのだった。アリシアがゼロスから離れるようにこそっとリーガルの後ろに避難したのは致し方のないことだろう。
「さ、ここは私たちに任せて会長さんは彼女と一緒に隠れていてくださいませ」
「ああ、わかった。行くぞ、アリシア」
「ええ。お気を付けて……」
セレスはリーガルがアリシアを連れて採掘場へと避難するのを確認し、
「……お兄さま。寝てる場合ではありませんわ……よっ!」
「あだっ!?ちょ、セレス~。足を踏むのは酷くないか~?」
ゼロスを起こした。
「では参りましょうか。こちらも暇ではないので早めに倒れ---」
そして剣を抜く。すると磨き上げられた青く輝く刀身が備え付けられた照明の光をキラリと反射する。
そのときだった。
「や、やべえぞお前ら」
「なんだよ。ここからが良いところじゃねえか」
「あの剣、それにあの貧乳……!間違いねえ!あの女、闘技場の狂剣姫だ!」
「なんだって!?」「それは本当か!?」
セレスが抜いた剣を見て一人の男が騒ぎ始め、彼女を指差して叫んだ。
「ああ間違いねえ!あの貧乳ぺたんこロリ断崖絶壁は狂kぐあああああああ!!!!」
「「サード!?」」
そしてサードと呼ばれたその男は真っ二つになった。
「さっきから人のことを貧乳貧乳と……どうやら死にたいようですわね」
「こいつらもう死んでるぞ」
「……あら?」
ついでに巻き込まれた残りの二人も遅れて真っ二つになった。
「まあそういうこともありますわよね」
「……そうだな」
「では皆様が戻るまで待ちましょうか。無事に鉱石が見つかるとよいのですけれど……」
「どうだろうな……」
採掘場の方を眺めているセレスを横目で見ながら、炎魔法で死体を焼却しつつゼロスは思った。
(剣筋がまったく見えなかった。セレスのやつ、いったいどこまで強くなってるんだ……?)
ゼロスの独白に答えてくれるものは誰もいない。
その後、無事に抑制鉱石を見つけたロイドたちを加え、一行はオゼットへと飛ぶのだった。
原作ではイベントがしいな&コリン関係で激長なのに、戦闘では魔法を撃たされて硬直中にタコ殴りにされ、オーバーリミッツするだけのサンドバッグヴォルトさん。というわけで残念ながらこの扱い。
ごろつきは下水道でリーガルと一緒に出てくるやつらをイメージ。闘技場覇者設定のセレスに敵うはずもなかった。
多忙のため、次回以降はまた遅くなる予定。気長にお待ちくださいませ。