TOS-TL~妹令嬢はお兄さまを救いたい~ 作:お兄さまファンクラブ名誉会員
「まあいいか。よく聞けセレス。俺はいつでもおまえの味方だ。だから困ったことがあったらちゃんと言え。俺が必ず何とかしてやる。……じゃ、またな」
「ええ、またお会いしましょう。お兄さま」
セレスが落ち着いたのを見計らってゼロスは彼女に想いを伝える。ゼロスとしては身体の弱いセレスを心配するものの、憎まれているゆえに会うことはできないと思っていた。しかし、その彼女が自分に甘えてきたので、想像をはるかに超える収穫があった。
要するに過去に戻って甘えられるようになったセレスがデレまくったために、シスコンのゼロスは絶好調になった、それだけである。そしてその絶好調のままアルタミラへとゼロスは旅立って行く。
……と思われたが。
煙がドロンとすると同時に、無駄に派手な衣装をまとった女が現れた。
「アホ神子、あんたに手紙だよ」
「ん~?おお!しいなじゃ~ん」
ミズホの里の女忍者、しいなである。相も変わらずこれっぽっちも忍んでいない衣装をまとった彼女は、厳重に封をされた書簡を持っていた。
「ついに俺さまのみりきにメロメロになったのか~い?」
「アホなこと言ってるんじゃないよ!まったく……。教皇さまから配達を頼まれたから仕方なく来たんだよ。ほらこれ」
「あいよ。……ああ、またか」
アホなことを言うゼロスにツッコミをいれつつ、しいなはこんな厄介そうなもの持っていたくないとでも言うように彼に書簡を押し付ける。そして封を開いて中身を見るなりゼロスは眉間にしわを寄せた。
ここまでの流れ通りどこからどう見ても厄介事とわかるし、そんなものに関わる気も無いしいなはその件に関してはだんまりを決め込む。もちろんそれ以外で文句があるので黙り切っているわけではないが。
「……しかしなんだってんだい。ただのミズホの民のあたしにこんな役が回って来るなんてさ。おかげさまでこんなに遠い南の島までくることになっちまったよ」
「あ~。そりゃ俺さまに用事があるときの伝達には、ミズホのしいなを使えって俺さまが指名したからだな!」
「はあ!?あ、あんたのせいだったのかい!?」
「だ~っはっはっは!」
「あたしだって暇じゃないんだよ!というか、人さまに迷惑かけておいて笑ってるんじゃないよ!」
「ぐわ~っ!」
しいなをからかいまくり、ゼロスが制裁を受ける。ロイド達一行からすれば何度となく繰り返されたいつもの展開ではあるが、それを見せられて面白くないのはセレスだ。
「お、お兄さまを惑わすメス猫……っ!覚悟ーっ!!!」
「うわっ!?いきなり襲いかかってくるなんて危ないねえ!?」
そしてセレスはしいなに飛び掛かる。本来の時間軸であればゼロスは既に海の上。つまりしいなとセレスがかち合うことはなかったのだが、色々あって出発の時間が大幅に遅れたために早期対面してしまったのだ。
とは言えセレスはまだ11歳の子どもである。しいなも14歳ではあるが、小学生が中学生に喧嘩を挑んでも勝負になるわけがないし、少々怒りっぽいとはいえ精神的に大人びているしいなが子ども相手に喧嘩などするわけもない。サッと躱したしいなは、間違いなく問題の原因であるゼロスを問い詰める。
「なんなんだいこの子は!?あんたの知り合いかい!?」
「俺さまの彼女」
「は?」
するとゼロスはセレスを指して彼女と紹介する。もちろんしいなを嫉妬させるためだけの嘘である。嫉妬しないので意味はないが。
そして本来の時間軸ではセレスはツンツンモードのためにそれで済むはずだったのだが。
「聞きましたわねトクナガ。言質は取りましたわよ」
「はい、セレスさま」
「え?」
がしかしデレデレモードの彼女にこの類の冗談は言ってはいけなかった。というか、デレデレモードになっていることは既に知っているのにやらかすあたり、流石はアホ神子である。
そしてこの時点でのしいなは、ゼロスとセレスに異母兄妹の関係があるのを知らない。その上で大事な妹に抱き着かれてゼロスの表情が微妙に崩れているのあって、色々と察し始めた彼女の顔はどんどん引きつっていく。
「うわあ……。ゼロス、あんた、王都に居る社交界のご婦人とやらだけには飽き足らず、ついにこんなに小さい子にまで手を出し始めたのかい?しかも赤の他人の女の子に自分のことをお兄さまって呼ぶようにまで強要して……」
もちろん、ゼロスの女好きをしいなが知らないわけがない。
が、幼い少女相手に手を出すとまでは流石に思っていなかったため、悲しいことに彼のセクハラ発言に慣れつつあるしいなですら完全にドン引きである。
「正直あんたがそこまで手が早いとは思ってなかったよ。もし王都の衛兵のお世話になったとしても、あたしは助けに入らないからね」
「ちょ、しいな!?」
「ロリコンは病気だから治したほうが良いとあたしは思うよ。じゃあね」
そしてドン引きしたままのしいなは、現れたときのようにドロンと消えてしまった。
残ったのはゼロスが幼い少女に手を出そうとした事案(誤解)のみである。
「ま、待て!誤解だって!」
「もう行ってしまいましたよ、お兄さま」
「誤解だ~~~!!!」
ゼロスの慟哭は虚しく修道院に響くのであった……。
ゼロスは"ロリコン"の称号を手に入れさせられた!