TOS-TL~妹令嬢はお兄さまを救いたい~   作:お兄さまファンクラブ名誉会員

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マスクド淑女

がっくりと項垂れたゼロスが今度こそ本当にアルタミラへと旅立った後、セレスはこれからの方針を考えることにした。

 

 

「あのメス猫がシルヴァラントへ向かい、お兄さまが一向に加わるまで4年と半年。長いようでほとんど残っている時間はありませんわね」

 

 

セレスとしては、崩壊する直前の救いの塔で兄の身に何があったのかを知る権利ぐらいはあると言いたい。しかし、彼女がロイド達一行に加わるのは、おそらく今回も心配性なゼロスによって拒否されるだろう。であれば、ある程度まで虚弱体質をなんとかしてコッソリついて行くしかない。

今現在の彼女の戦力は、氷属性のフリーズランサー、アブソリュート、光属性のレイ、プリズムソードの4種の魔法に加えて剣と帽子、鞄とそれに仕込んだ杖の4つの装備。

旅について行くには心もとない……わけではない。何故ならロイドは魔神剣だけ、ジーニアスもファイアボールしか覚えていないレベルでイセリアを追放されて旅に出ている。それに比べれば彼女の戦闘力は圧倒的である。もっとも彼女がそれを知る術はないが。

 

 

「手札を増やす必要がありますわ。それに加えて装備も。……トクナガ!」

「はい、セレスさま」

 

 

行動あるのみとトクナガを呼べば、彼は文字通りすっ飛んできた。

 

 

「先立つものを手に入れるにはどうすればいいのかしら?」

「……先立つもの、でございますか?」

 

 

そしてセレスは資金調達の方法を尋ねる。トクナガからすれば飛んで来たはいいものの、突然主から聞かされたのは資金調達の話である。軟禁状態とはいえ、貴族の娘であるセレスには生活に困らないだけの資金が毎月振り込まれている。その彼女が資金を必要とする状況は、流石のトクナガにも理解できなかった。

 

 

「……失礼ながらセレスさま。それを何にお使いになるので?」

「新しいドレスを買うのよ。お兄さまの横に立つにふさわしいドレスをね」

「せ、セレスさま……!」

 

 

資金の使い道を尋ねれば、なんと自分はゼロスの横に立つと宣言するセレス。そんな主の決意にトクナガは感動した。

……なお感動しているところを悪いが、実際には大嘘である。

そしてかくかくしかじかと説明してくれたトクナガ曰く、資金を貯めるには地道に魔物を討伐する、アルタミラのカジノで大勝する、闘技場で勝ちあがるなどが挙げられた。

 

 

「ギャンブルで勝つのは確実性に欠けますし、魔物を討伐するのなら闘技場でも問題ありませんわね。そもそもこの辺りって255回引っ叩かないと壊れない板しかありませんし。……となれば」

 

 

兄の宝珠を握りしめ、セレスは修道院から出立の準備を始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

「次の挑戦者は仮面をつけた少女だ!」

『わああああ!!!!』

 

 

セレスは王都メルトキオの闘技場に仮面をつけて参加していた。仮面をつけるだけで変装になるのはテセアラ王都の不思議案件だが、兄であるゼロスがそれを証明している。

 

 

「こんな子供が闘技場に挑戦だと?ガキはさっさと帰ってママのおっぱいでも吸ってるんだな」

 

 

選手入場が終わり、対戦相手を確認したローグだったが……セレスが相手だと見るなり開幕から煽りまくった。

 

 

「まあ、お下品ですこと。それに子供だからって舐めてると痛い目を見ますわよおじさま。……ふふっ、だから頭の先が光ってらっしゃるのね」

「んだとこのガキ……!」

 

 

そしてそれを聞くなり煽り返すセレス。酷い応酬である。社交界であればこの皮肉程度かわいいものであるのだが。

それに先に煽ったのはローグであるが、髪の毛を弄るセレスもセレスだ。特に中年の男性に髪の話はご法度すぎる。頭が光ったローグは完全に怒り心頭だ。

そうして試合前の煽り合いが終わったのを確認した審判が試合開始の合図をする。

 

 

「両者構え!……始め!」

「行くぞクソガキ!覚悟しろ!!」

「こちらも行きますわ!フリーズランサー!!!」

 

 

試合開始と同時に突撃するローグであるが、セレスの詠唱速度には敵わない。あっという間に詠唱を終えたセレスのフリーズランサーがローグに襲い掛かった。

 

 

「んなっ!?魔法だと!?ぐわっ!ぐわっ!ぬわーっ!?」

「ああっとこれは強い!なんと仮面少女は魔法使いだった!強力なフリーズランサーで対戦相手を一撃でノックアウトだー!!!」

「……やりましたわ、お兄さま」

 

 

結論から言えば、シングル戦の初級にセレスの相手になる対戦相手はいなかった。接近される前にフリーズランサー直撃で全て終了である。セレスの戦闘能力を考えれば当然ではあるが。

さらにその後も……。

 

 

「アブソリュート!プリズムソード!スタァ…キャノンッ!」

 

 

虚弱体質はなんだったのかと言われるレベルでど派手に上級魔法やらスターキャノンやらをぶっ放しまくった。兄の宝珠が近くにある時は何故か力が湧いてくる気がするので、調子に乗りすぎてしまったのだ。

そして王都メルトキオ広しとはいえ闘技場でそんなことを続ければ、当然その噂は流れるわけで……。

 

 

「やあやあ美しい仮面のお嬢さん。あなたのお名前は?」

「!?」

 

 

ゼロスの耳に入るのは当たり前である。セレスが王都に到着してから数か月後、春になって王都に戻ってきた彼は、シングル戦上級に現れるという謎の仮面少女の噂を執事のセバスチャンから聞き付けた。そして闘技場に入っていざ試合を見てみると、魔法をぶっ放しているのがセレスかもしれないと気づいた。

 

 

「おいおいおい!あの仮面の子、もしかしなくともセレスじゃねーか!こんなとこで何やってんだ!危ないから今すぐやめさせろ!……っておいセバスチャン!なんで俺を抑えてるんだ!離せ!」

「いけませんゼロスさま!今ここで乗り込んで、もし本当にあの方がセレスさまなら、軟禁なされているセレスさまが修道院を抜け出して王都に来ているということが公になってしまいます!」

「だー!くっそー!」

 

 

こうしてなんとか観客席から闘技場内に無理やり乗り込もうとするのをセバスチャンに止められて諦めた彼であったが、試合終了のタイミングで控え室の方に乗り込んだ。

当然、乗り込んできたゼロスに正体がバレるのを危惧したセレスは大慌てだ。

 

 

「……ま」

「ま?」

「マスクド淑女でしてよ!」

「ますくどしゅくじょ」

 

 

そしてセレスは咄嗟にマスクド淑女と名乗った。意味がわからず硬直するゼロス。

 

 

「……」

「……」

 

 

気まずい雰囲気だけが辺りを支配する。明らかに正体がバレているのをセレスは理解したし、ゼロスも謎の仮面少女がセレスであることに確信を持ったからだ。

 

 

「えっと……わ、私急いでますの。失礼しますわ!」

「あっ、おい!」

 

 

しばらくして先に硬直が解けたセレスは逃げだした。そしてゼロスは見逃した。というか身動きが取れなかった。

 

 

「……。あいつ、あんなに元気だったか?」

 

 

ゼロスとしてはセレスを叱るべきだったのだが……妹が元気になったという喜びでそれ以外のことはすべて頭の中から吹き飛び、機能停止していたのであった。

 

 

 

 

────────────────────

 

 

 

 

 

「セレスの軟禁を解け」

「……これはこれは神子さま。いったい何の御冗談で?」

 

 

その日の深夜、教会でゼロスと教皇は対峙していた。国王が病に臥せっているので、実質的に国を動かしているのはマーテル教の教皇である彼だ。

 

 

「俺は冗談で言ったわけじゃない。いいか、もう一度だけ言うぞ。セレスの軟禁を解け」

「……はっはっは。何をバカなことを。犯罪者、しかもハーフエルフの母親を持つ娘ですぞ。ならばその娘が母親の罪を償うのは当たり前のことでしょう?」

「……」

「まったく。これだからハーフエルフは嫌なのです。問題ばかり起こして死んだ後も神子さまを巻き込むとは。神子さまも迷惑でしょう?やれやれ、かの娘も、さぞかし不出来な娘なのでしょうな」

 

 

セレスの母親が神子であるゼロスを殺害するために魔法を放ち、それを庇ってゼロスの母親が死亡し、セレスの母親も捕縛されて処刑された事件を知らない者はいない。ハーフエルフ法によって連座で処分されたセレスのことも。

だがしかし、その話をよりにもよってゼロスの前でしてしまった。本編と違ってセレスにデレられたゼロスに、罪のないセレスをバカにする話を加えてだ。

 

 

「そうか……なら仕方ないな」

 

 

話の決裂を確信したゼロスは、完全にブチ切れながらも冷静に懐に手を伸ばす。当然慌てたのは教皇である。母親を失ってハーフエルフを憎んでいると思っていたゼロスが手のひらを返したからだ。さらに言えば魔法剣士であるゼロスの戦闘力は非常に高く、違法な手段で得た権力以外ただの一般人である教皇は手も足も出ない。

 

 

「ぼ、暴力で片付けようとしても無駄だ!衛兵!衛兵!神子さまがご乱心だ!!!」

 

 

腰に差した剣で自分が殺されると思った教皇は騒ぎたてる。ゼロスは腰ではなく懐に手を伸ばしているのに。当然その声によって衛兵が駆け込んでくる。

 

 

「教皇さま!ご無事ですか!」

「神子さまがご乱心とは何事ですか!」

 

 

そして駆け込んできた衛兵が見たものは、ゼロスが何かの紙束を地面にぶちまけたところであった。

そのうちの一枚を拾った衛兵は中身を確認し……教皇に詰め寄った。

 

 

「教皇さま。これはどういうことですかな」

「……は?……なっ、こ、これがどうしてここに!?」

 

 

ゼロスがぶちまけたのは教皇の汚職、それも国王殺害の計画書という国家反逆罪の明らかな証拠だった。しいなに言って集めさせていたそれは、教皇信者である教皇騎士団にすらその信用を失わせるに足るものだったのだ。

 

 

「話は牢屋の中でするんだな。……連れていけ」

「「はっ」」

「な、何をする貴様らーっ!」

 

 

こうしてあっけなく教皇は御用となった。教皇を失った教会の最高権力者は神子であるゼロスになり、彼はハーフエルフ法を一部ではあるが一晩で改正した。してしまった。それは連座の廃止である。

 

 

「……これであいつも少しは暮らしやすくなるだろ」

 

 

ゼロスは妹のために文字通り何でもしてしまったのだった。

 

 

 






謎の仮面少女セレスちゃん



水神剣、閃空踏破、プチメテオ、スターキャノン


フリーズランサー、アブソリュート、レイ、プリズムソード

装備はラストフェンサー+エレメンタルクレスト。


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