TOS-TL~妹令嬢はお兄さまを救いたい~   作:お兄さまファンクラブ名誉会員

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遭遇

「あれから4年。装備はなんとか体裁を整えましたけど、これで本当に大丈夫なのかしら……」

 

 

セレスが闘技場通いを始めて4年。ついに兄であるゼロスがロイド一行と関わり始める頃合いになってしまい……端的に言えば彼女は非常に焦っていた。

今の彼女の装備は、愛用の剣と帽子と新調した鞄に加えて、猫足もどきの靴、北国で使われているというペンギン生地の手袋、精霊の加護を受けたらしい指輪、そして精霊の加護を織り込んだらしいローブ。

 

いつもの装備以外、前半の二つは闘技場での戦利品とファイトマネーを用いての取り寄せ品。後半二つは誕生記念日に兄からプレゼントされたもの。

セレスの知る限りでは、精霊の加護を受けた品というのは国宝級であり、そんなものをゼロスはいったいどこからどうやって入手してきたというのか。

 

 

(まさかお兄さま……)

「ちょちょちょちょ〜い!俺は泥棒なんてしてねーぞ!」

「あ、お兄さま。ごきげんよう」

 

 

セレスが物思いに耽っていると、いかにもこれから出かけるぞといった格好のゼロスがやってきた。

 

 

「なんで私が考えてることがわかったんだ?って顔してるけど、普通にわかるからな?」

「あら。どうしてですの?」

「そりゃおまえ、俺がプレゼントした指輪とローブ眺めながら物思いに耽ってたら、そんなん誰でもわかるって」

「それはまあ……そうかもしれませんわね?」

 

 

自分だとそこまで詳しくはわからないだろうな、とセレスは思った。もし逆の立場なら、これは誰から貰ったものだろうか?とでも考えていると思うだろう。彼の日頃の行いが悪すぎるのが悪い。

 

 

「そもそも贈り物に盗品渡すバカがいるわけないでしょーよ。俺さまそんな目で見られてたってわけ?」

「盗品とまでは行かなくとも、女性からの贈り物を転がしたりはしていそうですわ。そういうことは一度もないのですの?」

「はっはっは!……よし、この話はやめよう。もう足は踏まれたくない」

「そこは否定してくださいませ……」

 

 

セレスの痛恨の一撃が決まり、ゼロスは黙らざるを得なかった。なお彼曰く特殊な伝手で入手したが、違法なことは何もしてないとのこと。セレスは兄が衛兵のお世話になることをやらかしてなくて安心した。

 

 

「ま、セレスのことで俺にわからないことはないと思うぜ」

「それは嘘ですわ」

「んなっ!?」

「というか私のことを何でも知っているとしたら、それはむしろ怖いですわ。へんたいふしんしゃさんは近寄らないでくださいませ」

「ぐふっ」

「ふふふ」

 

 

前の時間軸ではお互いに誤解が積み重なって気まずくなっていたのだから、何でも知っているのは嘘だと断言するのは致し方ないだろう。

なお最後の追撃はワザとである。

 

 

「ってまあそれはどうでもいいや。今から出かけるからおまえも一緒に行こうぜ」

「ええ、いいですわよ」

 

 

セレスはゼロスに連れられて屋敷を出る。原作の足音はもうすぐそこまで聞こえていた。

 

 

 

 

 

『ここがテセアラの王都メルトキオか〜』

『シルヴァラントとは違って広くて大きいよ〜!』

「……こ、この声は」

 

 

セレスたちが外門へと向かっていると、ある意味では懐かしい、そしてできれば聞きたくなかった声が聞こえてしまい、彼女は立ち止まってしまった。

 

 

「ん?どうかしたかセレぬわっ!?へぶっ!」

「お兄さま!?」

「あ〜っ!ろ、ロイド!マズイよ!コレットが!」

 

 

そして突然立ち止まったセレスを気遣ってゼロスが後ろを振り返った瞬間、何者かによって後ろからぶつかられた結果、彼は倒れてしまった。

顔から。

 

 

「あたたたた……」

「だ、大丈夫ですか?お兄さま」

「ま~、これぐらい平気よ平気」

「そうですのね。ならよかったですわ。……って全然大丈夫ではありませんわよ……?」

 

 

立ち上がったゼロスは顔面鼻血まみれだった。まさに三枚目である。

 

 

「ほんとごめん!実はコレット……えっと、この子は今本調子じゃなくて……。とにかく先生!この人の傷を治してくれ!」

「わかったわ。ファーストエイド!」

 

 

慌てて駆け寄ってきたロイドに平謝りされ、リフィルによる回復魔術を受けたゼロスは、血で汚れてしまった衣類以外は元に戻った。そしてロイドたちに向き直り、ぶつかってきたのがコレットであることを確認したゼロスは。

 

 

「はっはっは!問題ないぜ。それに美少女に愛の体当たりをされるなら俺さまも本も『ふんっ!』いぎっ!せ、セレス!足!足を踏んでるって!」

「……プイッ」

「「うわあ痛そう……」」

「……自業自得ね」

 

 

コレットが美少女だから許すと言って戯けてみせ、セレスに足を踏まれてしまった。

それを見てロイドとジーニアスは足を踏まれて痛そうだと思うだけだったが、リフィルはこのチャラい男が色々とダメな男だと確信してため息をつくのだった。

 

 

「いや~参ったな。こりゃ今日のデートはお預けになりそうだぜ」

「仕方ありませんわよ。そういう日もありますわ」

 

 

その後彼らとはその場で別れ、血で汚れたままの格好では出歩けないと邸宅へと戻った二人だったが……。あいにくとゼロスの外出用の服はクリーニングに出してまだ戻ってきていなかった。クローゼットはすっからかんである。これではもうどこにも出かけられないだろう。

しかしそれでも諦めきれないゼロスはセレスへと向き返り。

 

 

「仕方ない。セレス、おまえの服を」

 

 

セレスの服を着て出かけるといい始めた。完全に血迷っている。

 

 

「もしもしポリスメンですの?」

「やめろそれだけはマジで」

「冗談ですわよ。繋がっていませんわ」

 

 

それを見て通報するふりをするセレス。もちろん繋がっていたら御用である。そもそも女性モノの服を着て王都を出歩く美男子(?)なんて通報待ったなしなのだが。

 

 

「ゼロスさま。今よろしいでしょうか」

 

 

二人がクローゼットの前で話していると、部屋の外からセバスチャンに声をかけられた。

 

 

「ん?どうしたセバスチャン」

「王城よりゼロスさまに登城せよとの報せが入っております」

 

 

どうやら登城命令のようだ。原作より遥かに早く教皇が失脚したものの、毒は既に盛られていたために国王は伏せってしまっている。それ故にマーテル教の神子であるゼロスと、王女であるヒルダによって臨時で国の方針は決められているのだ。今回もそれだろうと思った彼は、登城することにした。

 

 

「あー、ヒルダかな。わかった、行くと返事をしておいてくれ」

「かしこまりました」

 

 

返事をもらったセバスチャンが去っていく。

 

 

「というわけで俺は城に行ってくる。おまえはここで待っててくれ」

「わかりましたわ。いってらっしゃいませ、お兄さま」

 

 

流石に王城にまでついて行けるわけもなく、セレスはお留守番だ。闘技場も既にロイド達とゼロスが遭遇してしまったため、下手に通う訳にもいかなくなったといっていい。いつどのタイミングで、彼らが救いの塔へと向かうかわからないからだ。

その結果、今できることが無くなってしまったため、セレスはお茶を飲みながらのんびり彼の帰りを待つことにした。

 

 

そして数十分後。ゼロスが帰ってきた。ロイド達を連れて。

 

 

「おうセレス。帰ったぜ」

「お帰りなさいませ、お兄さま」

「帰ってすぐで突然だけど、これからサイバックに行ってくる。ロイドくんたちがそこに用があるんだと。で、俺さまはその案内役ってわけだな」

「ええと……。行くのは構いませんけれど、確かお兄さまのよそ行きの服は」

 

 

今のゼロスの恰好は登城用のフォーマルなものだ。遠出するには目立ちすぎるし、移動も困難だ。

 

 

「ん?……あーっ!?そうだった、俺さまとしたことがすっかり忘れてたぜ。いや~悪いなロイドくん。出発は明日になりそうだ」

「あ、ああ。別にそれは構わないけど」

 

 

ロイドはコレットを見る。相変わらず虚ろな目でどこにも焦点が合っていない彼女は、彼に腕を引かれるままだった。

 

 

「……あら?彼女、ペンダントをしてらっしゃいませんわね?」

 

 

ふとセレスがコレットの胸元を見た。彼女の背からは未だに桃色の羽が出たままになっているし、前の時間軸で出会った時と雰囲気も違っているが……。

それはそれとしてロイドにペンダントをプレゼントして貰ったことを非常に喜んでいる、と彼らのことを調査したトクナガから又聞きしたそれを、何故か首から下げていないことに気づいた。

 

 

「ペンダント?なんだそれ?」

「ええと……確か大切な方に作ってもらったペンダントだと聞いておりますわ。ドワーフ直伝の技術を使った特別なモノだとか」

「コレットってそんなペンダントしてたか?」

「うーん。ボクは見たことないよ?」

「私もないわね。それよりドワーフ直伝の技術を使ったってことは、もしかしてそれは」

「「「要の紋」」」

 

 

セレスの言葉に要の紋を思い出す三人。

 

 

「まさかコレットの宝珠はエクスフィアなの?」

「確かにそれなら彼女がこうなった可能性も理解できるわね」

「でも要の紋は抑制鉱石が無いと作れないぜ。まじないは俺でも掘れるけど、モノが手元になければどうしようも」

「おいおい待てって。要の紋?なんだそれは?」

 

 

突然納得し始める三人に、話について行けていないゼロスが聞くと、ロイド曰く『要の紋が無いエクスフィアは身体に毒なんだぜ』ということらしい。説明が雑すぎる。

 

 

「抑制鉱石とやらは知らんが、エクスフィアについてはサイバックで研究がされているからちょうどいいな。そこのかわい子『……』ぐぎっ!?だから無言で足を踏むなって!?」

「よし、予定通りゼロスに案内してもらって明日サイバックに行こう」

「おっけ~」「わかったわ」

「ちょ、お~い!俺さまを無視しないでくれ~」

「それじゃゼロス。明日からよろしくな」

 

 

ゼロスがセレスに足を踏まれているのを見るも、今回はそれをスルーしてロイドたちは宿へと向かった。

 

 

 

 

「で……セレスも一緒に行くのか?」

 

 

翌朝、ロイドたちはゼロスと、王城への入城時に世話になったプレセアを加えてサイバックに向かうことにしたのだが……。

 

 

「いやセレスには留守番を」

「お兄さま。また私だけお留守番ですの?」

 

 

セレスを連れていくか否かで問題が発生していた。ゼロスはいつもの過保護で同行を断るつもりであり、セレスも許可はされないだろうとは思いつつゴネてみる気満々であった。

 

 

「グランテセアラブリッジを渡って隣町へ行き、そして帰って来るだけではありませんか。私だってたまにはお出かけしたいですわ」

「え?たまには?……ゼロス。おまえもしかしてセレスをずっと屋敷に閉じ込めてるのか?」

「いやそんなことは」

 

 

そんなことはない。アルタミラなどに連れていっている。セレスはすっとぼけているが。

 

 

「お兄さまだけいつもお出かけしてるんですの。現に王城へ向かったのもお兄さまだけでしたわ」

「そういえばゼロスしかいなかったな」

「いやだってあれは」

「……はあ。ゼロス。妹さんが大事なのはわかるけれど、過保護すぎるのもどうかと思うわよ」

「兄妹で仲が良いのはボクと姉さんみたいで良いことだと思うけどね~」

 

 

セレスの迫真の演技に騙され、ロイドは納得、リフィルは呆れ、そしてジーニアスは擁護に回った。原作と違ってゼロスはジーニアスのことを出合い頭にガキンチョ呼ばわりしていないため、ジーニアスからゼロスへの当たりは強くないが……それはそれとしてゼロスは絶体絶命だった。

そしてゼロスが崖っぷちに立たされている中、何かを思い出したようにロイドは口を開く。

 

 

「なんかあったよな。妹を大事にしすぎる兄。前に先生に習った気がす『そんなこと教えてません』……で、そういうのなんて言うんだっけ?」

「「シスコン」」

「ぐはっ」

 

 

ロイドの想起したシスコンに口撃されるゼロス。そしてさらに。

 

 

「シスコン。シスコンとはシスターコンプレックスの略称であり、妹のことを好きすぎる兄がその妹を」

「もうやめてプレセアちゃん!とっくに俺さまのライフはゼロだぜ!?」

 

 

プレセアの解説が入りゼロスは撃沈。

 

 

「だぁーっ!わかったよ!セレスも連れていく!これでいいな!?」

(うふふ。計画通り、ですわ)

 

 

ここに兄妹のかけひき勝負はついたのだった。

 

 

 

 

 

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