闇に呑まれていた鬼の娘を500年かけて看病した仙人が、異国で恋愛小説の餌食に…… 作:時代に遅れている
それにしても神子の小説はいつ出版されるのか……それは第一章が終わってからですね。
今回あまり面白くないかもしれませんが、頭空っぽにしてお読みください。
雷電将軍の一太刀を受け止めた瞬間、全身に重圧がのしかかる。刀身越しに伝わる雷の力は、まるで稲妻そのものが押し寄せてくるかのようだった。剣を握る手が震え、足元の地面が軋む。それでも、俺は一歩も引かない。
「よかった……怪我はないな」目の端で、千代と旅人の無事を確認する。おそらく、旅人が俺が来るまでの間、将軍の相手をしてくれていたのだろう。その姿に感謝しつつも、今は目の前の敵に集中しなければならない。
雷電将軍の力は圧倒的だ。このままでは押し切られる。俺は必死に剣を支えながら、後退しつつも隙を窺う。
「トーマ!」
「なんだい、相棒!」
「お前、旅人を背負いながら千代と安全なところまで逃げられるか?」
「それは……」
「早く答えろ!時間がない!」
「できるけど、今の俺たちはお尋ね者だ。捕まらずに逃げられるかどうかは……」
「それなら任せておけ」
俺はすぐさま「雲煙の術」を発動し、辺り一面に濃い霧を発生させた。視界を奪われた兵士たちは混乱し、動きを止める。
「これは……」
「これなら見つからずに逃げられるだろ?分かったらさっさと行け!」
「分かった。さぁ、君も……」
「蒼雲!」
「俺は大丈夫だ。必ずそっちに行く」
「……絶対だからね」
「死ぬなよォォォ!!」
霧の中、雷電将軍の姿がぼんやりと浮かび上がる。彼女は刀を構え、こちらを見据えている。
「そのような霧で逃げられると?」
「少なくとも、あんたの部下には無理だ。そして、あんたを俺が押さえていれば、あいつらが逃げられる。俺はその時間を稼いでおさらばだ!」力いっぱいに押し出した。
「この私と戦って生きて帰ろうとは正気ですか?」
「正気だろうが狂気だろうが、俺はまだ死ねないのでな……」
互いに得物を構え、数瞬だけ静寂が走る。
俺と将軍は、その間にもわずかな隙を探り合っていた。
そして――
「行くぞッ!」
俺は地を蹴り、将軍もまた音を残さず駆け出した。刹那、紫電の如く閃いた将軍の刀が俺に迫る。その軌道は横一閃、鋭く、重く、まるで大地ごと断ち切らんとする一撃だ。
だが――見えている。
俺は剣を振る素振りを見せながら、寸前で身を沈め、刀の軌道の下を潜り抜ける。
(純粋な力勝負では、どう考えても勝ち目はない……)
ならば、狙うは「一瞬の隙」――ただそれだけだ。
将軍「!?」
予想外の動きに、一瞬、彼女の動きが止まる。
今だ――!
俺は地を蹴って跳躍し、手にした水の剣を将軍めがけて放った。放たれた刃は空中で分裂し、いくつもの分身となって彼女を包囲するように襲いかかる。
砂煙が舞い上がり、視界を奪う。
(これで、少しは動きを鈍らせられるか――)
すかさず、俺は両手を印に組み、水を喚び起こす。体の奥底から力を引き上げ、意思を込める。
「青龍、世を清め、不浄を洗い流せ!」
水から形作られた青龍が雄叫びを上げ、砂煙の中心――将軍の立つ場所へと突撃する。
その瞬間、俺の額を汗が流れる。
……確かに、直撃すれば並の相手なら立っていられない。
だが。
「………」
砂煙が晴れると、そこに立っていたのは――まったく傷一つない雷電将軍だった。
彼女の足元に、青龍の水が散っただけ。まるで何事もなかったかのように、淡々と。
俺は息を飲む。
「……こいつは想定外だ。」
一体どれだけの力を秘めている――そう思う前に、背筋が自然と粟立っていた。
それほどまでに、圧倒的な存在感だった。
「………なかなかやりますね」
静かに響くその声に、俺は眉をひそめた。
「よくそんな言葉が出てくるな。俺の攻撃を平然と受け止めているくせに……」
言葉の裏には焦りも苛立ちもない。ただ、観察者のような冷静さ。俺は、そんな彼女の余裕を崩してやりたかった。
だから――
足元に水を走らせ、将軍の背後に分身を生成する。己の体液に限りなく近い水を使い、姿かたちまでも模したその影は、実体を持つ一振りの刃と共に、一閃のごとく将軍に斬りかかる。
だが。
「……!」
将軍の瞳がわずかに見開かれる。瞬間、彼女の周囲に雷が渦を巻く。空気が震え、雷の衝波が爆ぜ、俺の分身は呆気なく霧散した。
さすがだ。読まれたか――だが、こちらも手は止めない。
分身が弾けると同時に、俺自身がすかさず前へと踏み込む。水の剣を逆手に握り、斬り上げるように将軍の振り下ろす一太刀を迎え撃った。
「――ッ!!」
刀と剣が激突した瞬間、周囲の空気が一変する。雷と水、相反する元素が接触し、唸りを上げて暴発。視界を白く染める閃光と轟音が辺りを包み、俺と将軍は互いに距離を取るように吹き飛ばされた。
地面に軽く着地し、再び構え直しながら、息を整える。
(くそっ……反応されるとはな)
「くっ! あれにも反応するとは……」
だが、将軍は微動だにせず、まるで何もなかったかのように再び直立していた。真紅のリボンが風に揺れる。その視線がまっすぐに俺を貫く。
「これでも稲妻を守護する者。舐めてもらっては困ります」
……守護。
確かに、その力は国すら守れるだろう。だがその剣は、今、俺の大切な人を斬ろうとしていた。許すわけにはいかない。
「それにしても……この凄まじい元素力」
「貴方は何者ですか?」
将軍の目に、明確な問いが浮かぶ。
雷電将軍の問いかけに、心がざわめいた。彼女の視線は鋭く、まるで過去の記憶を見透かすかのようだった。その言葉の一つ一つが、胸の奥深くに突き刺さる。
将軍の目に、明確な問いが浮かぶ。
「蒼――」
「いえ、名ではなく……いや、直接聞きましょう。」
「貴方は、人間ではない」
彼女の言葉に、心が凍りついた。過去の記憶が、鮮明によみがえる。
「先ほど技の数々……以前聞いた事があります。元素は異なりますが……」
「魔神戦争の後に生き残った神々が璃月で集まった時に……」
「モラクスと共に仙人もいた中一人席を外していた……」
「彼は……龍の姿をし、」
「幻影や、」
「龍を作り出し」
「圧倒的力で数多の魔神を倒した」
「烈火の暴龍ではないですか?」
その名を聞いた瞬間、心が締め付けられるようだった。俺は、口を開く気になれなかった。
「今の貴方が使っている力は水……勢いもなく落ち着いた雰囲気で戦闘をなさっていますが」
「一つ一つの技は荒れ狂う嵐のそれです。」
「それに、その手に持っている元素力で作られた剣…」
俺は剣を強く握る。
「倶利伽羅……剣でしたね。それは本来なら実体があり、纏っているのは水ではなく炎を纏っているべきはず……」
将軍の言葉が、心の奥底に眠る記憶を呼び覚ます。
「力に慢心し、本気にならない者に勝機を見出すことなど……」
「出来はしないのです」
その言葉に、怒りが込み上げてきた。力に慢心……だと?ふざけるな。
俺は……俺は………自身の力が影響して――
『私ね、………もっと………』
守れなかったんだ!!
ダッ
俺は将軍に目掛けて一直線に駆け出した。怒りと悔しさ、そして過去の後悔が、俺の体を突き動かす。
俺は全力で駆け出し、蹴りを振り抜いた。目の前の将軍は素早く反応し、雷元素を帯びた刀で衝撃を受け止める―しかし、俺はそれに構わず体を回してもうひと蹴り入れた脚。将軍はバランスを崩し後方へと飛んでいく。
***
その隙に、俺は手にした水の剣を全力で振り抜いた。咄嗟に将軍も刀を連打し応戦してくる。剣先は雷電将軍の刀と激突し、火花が散る。 刃が交差するたび、地面に衝撃波が走り、小石が砕け散る。
「くっ、これじゃ決着なんてつかないどころか、一方的に押しやられる。」
***
俺は集中して、小さな青龍を何体も編み出した。先ほど作り出したような大きなものは無理でも、この連携なら多方向への牽制が可能だ。 俺の乱撃が続く中、将軍の背後を青龍が狙い、水の鱗が輝きながら飛び出していく──
「もう結構……」
雷電将軍の言葉が耳に届いた瞬間、全身に緊張が走った。彼女の紫電を帯びた姿が、まるで雷そのもののように迫ってくる。次の瞬間、彼女の姿が消え、背後に気配を感じた。振り返る間もなく、空間が切り裂かれ、時間が凍りついた。体が動かない。雷のシンボルが体に浮かび上がり、六本の雷光が周囲を囲む。その刃が一斉に振り下ろされ、全身に激痛が走った。意識が遠のく中、雷電将軍の冷静な声が響いた。
「これで終わりにしましょう。」
彼女の言葉とともに、視界が暗転していった。
兵士たちの声が耳に入る。
「将軍様!奴は…」
「馬鹿者!将軍様が夢想の一太刀を放ったのだぞ!生きておるわけがないだろう!!」
「そうでございますよね?将軍様」
私は沈黙を保ち、霧が晴れるのを待った。
霧が晴れると、そこにあったのはーー
ーーーーーーーー
―気づけばオレたちは「木漏茶屋」に逃げこんでいた。千代もパイモンも、旅人も、オレも疲れ切っている。次の行動に備え、今はただ身を隠すしかない状況だった。
千代は震えながら黙っていた。
「千代……蒼雲のこと、心配なのか?」パイモンの声が震える。
彼女は小さく、でも確かに「そうだよ……」と答える。
「だ、大丈夫だって!アイツ、色々と鈍感だけど、強いし!戦いの感?みたいなのでーー」
「………」
「うぅ……慰め方が分からないぞ……」
パイモンは励まそうとするが、うまく言葉をまとめられない。
目を覚ました旅人は低く言った、「そっとしておいてあげよう」。
オレは、庭先の隅から遠く消えた千代を見つめた。木漏れ日が優しく差し込む中、彼女の肩が小さく揺れている。心配だ。でも今は守るしかない。だから俺は、この場所で見守る。
そんなとき、綾華が駆け込んできた。
「トーマ」
「!?お嬢!」
声が震える。だが彼女は静かに笑っている。
「旅人さんが、あなたたちを助けてくれたようですね」
俺は即答した。「旅人だけじゃない。相棒がーー」
綾華はうなずいた。「はい。将軍に倒された旅人さんたちを逃すために、蒼雲さんが殿(しんがり)をつとめたと」
「トーマ、今は彼が生きている事を願いましょう。今私たちが出来るのはそれだけですから」
俺は力なくうなずいた。
ーーーーーーー
霧が晴れた時、私の目の前にあったのは、雷の斬撃でバラバラにされた龍の分身体だった。彼の本体ではない。だが、あの一瞬で自身を覆うように龍を支持し直し、威力を軽減させるとは……。やはり一筋縄ではいきませんね。
兵士「将軍様、奴は……」
兵士「馬鹿者!将軍様が夢想の一太刀を放ったのだぞ!生きておるわけがないだろう!!」
兵士「そうでございますよね?将軍様」
私は答えなかった。霧が晴れると、そこには……
兵士「!?」
兵士「!」
彼らを目狩り令の対象に。次こそ……必ずや一太刀を。
ーーーーーーーーーーーー
「はぁ、はぁ、はぁ……」
息が荒い。口の中は鉄の味、視界はにじんでまともに見えやしない。
「……な、なんとか……間に合ったな」
俺は――間一髪で“あの”一太刀から逃れた。
夢想の一太刀――雷電将軍が振るう最強の技。
あの瞬間、俺は仙術を発動し、水と自身の位置を強制的に入れ替えた。
水が存在する場所ならどこでも逃げられる術……その代わり、制御はきかず、体力の消費は尋常じゃない。
「っ……!」
脚がもつれ、地面に膝をつく。
そのまま、前のめりに倒れた。
地面の冷たさが気持ちいいと思うほど、全身の火照りと痛みがひどい。
「……まだ……生きてる……のか」
噂では、あの一太刀を受けた者で生き延びた者はいないと聞いていた。
きっと将軍も、街中であれを最大出力で撃つわけにはいかなかったのだろう。
だとしても、このダメージは――
「っく……」
両腕も、肋骨も、背中も、どこもかしこも割れたような痛み。
手足は震え、うまく力が入らない。
目の前の景色がぐるぐる回る。
「……も……う……動け……ない……」
意識が遠のいていく……そんな時だった。
/
「ん?なんだ?あそこに……人?」
\
「!? だ、大変だァァァァ!!誰かァァ!誰か来てくれェェェ!!」
うるさい声が耳を打つ。視界の隅で誰かが駆け寄ってきた。
\
「どうしたんですか?そのような大声を出して」
女性の声――静かで、澄んでいて、どこか気品を感じる。
/
「珊瑚宮様! 実は、巡回中にこの男が倒れているのを発見しました!」
「……かなりの重傷です!」
彼女――珊瑚宮と呼ばれる彼女は俺の方へ一歩進み、静かに膝をついた。
「…………」
沈黙。
だが、彼女の瞳には揺るぎない決意の光が宿っていた。
「すぐに彼をサワラ4番隊へ運んでください。迅速に。治療は最優先で」
「はっ!」
兵士たちの気配が近づき、俺の体が丁寧に持ち上げられる。
もう、視界も定まらない。
次回、蒼雲の過去……が少し明らかに
稲妻篇が終わったら続きは何が良いか 選択によって稲妻篇の最後が変わる。
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璃月篇(海灯祭)※この話の本編
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引き続き稲妻篇