司「役者たるもの、やはり様々な経験を積まねばな!」   作:司単推しの豆腐

10 / 10
なんか日間160位くらいになっていたようで…間があいたにも関わらず見ていただき感謝しかないです。
のろのろとした投稿頻度ではありますが、楽しんでいただけたら幸いです。


第十歩

「わ~!!!」「ど、どこ…ここ?!」「これは…」

 

目の前に広がるのはいつも通りの景色。

オレの、オレだけのセカイ。

そこに、オレ以外の人が来るのは初めてだった。

 

感慨深いかと聞かれると、そうでもないが…それでも踏み出せた気がする。

少なくともその充足感が今は心地よかった。

 

「司くん、説明をしてくれるかな?先ほどの言葉から察するに、ここは君の『セカイ』なのだろう?」

「あぁ…そうだな何から説明したもの「司くーーーん!!!」かぁっ?!」

 

横っ腹に衝撃が走る。横腹に目を向けると最近忙しさゆえに顔を合わせていなかったもう一人のおてんば姫がいた。

 

「ミ、クぅ…あ、あれほど突進するのはやめろと……」

「わ~♪はじめましての人がたくさんだ~!」

「おーい、ミク!そんなに早く走ったら危ないよ!」

 

く…もっと強く言っておいたほうがよかったか…。

 

「「「…ミク?」」」

 

驚いたような声を上げ首をかしげる三人。

…そういえば、ミクは『初音ミク』だったか。最近は知名度を失念することが多い気がするな…。

 

感覚を戻さなくては、ならんな…。

 

「ミクちゃんって…あのミクちゃん?!」

「うんっ☆ミクはミクだよ~♪」

 

「は、初音ミクと…カイト……?え、映像じゃ…ない、よね。る、類どうなって…」

「バーチャルシンガーが実在するように見えるということはここはバーチャル空間である可能性が高い。けれど僕らの肉体はここにあり変化した形跡もない…。すると彼らが実体化していると考えるのが妥当だけれどあの体は僕らとそう変わらないように見えるつまり肉体を作り出されたというよりこの空間が彼らを実体化させている…?…ここはとても不思議な場所のようだ──」

「だ、ダメだ…。ちょっと、説明してよ…」

「もとよりそのつもりだが……類は聞いてくれるのか?これ」

 

うお、小さく独り言言いながら目線はこっち向いてる。こわ。

 

「多分、話し始めたら止まるでしょ」

「わ、分かった…えむも、聞いてくれるか」

「はーい!」

 

危うく脱線しかけたが戻せたな。

 

「先ほども言ったが…ここはセカイ。オレの想いからできた場所だそうだ」

「なんで本人が疑問形なの…?」

「セカイがなぜできたのか詳しいことはオレにもわからんのだ。カイトやミクに聞こうにも」

「ここは司くんの想いからできたセカイだよ」

「だよ~♪」

「とのことでな…オレは半分くらい諦めている!」

「自慢げに言うこと…?」

 

わからんのだからしょうがない。小学生の頃から来ているが……あの頃と理解度は大して変わらん気がするな。

 

「で、だな。想いとは、オレの場合は夢、目標のことだ」

「ふむ?場合、ということは他にもセカイを作っている人がいるということかな?」

「それも分からん。複数あるような言い方をするときもあるが…少なくとも他のセカイを知っているわけでもないようだ」

「うーん…と、つまり不思議なセカイなんだね!」

「うむ…おおむねそのような認識で構わんと思うぞ」

 

…なにを言おうとしたんだったか。

 

「えー…と…。何か、聞きたいことはあるか」

「え、言うこともうないの?」

「オレがセカイについて知っていることはあらかた既に…あぁ、Untitledというのを流すとここに来れるんだ。さっきやったみたいにな」

「…どうやら本当にネタ切れみたいだね?」

 

類は少し考えるような様子を見せたのち、すぐこちらへ向く。

 

「このセカイへの疑問は自分で調べるとして…君はなぜ僕らをここに連れてきたんだい?」

 

そう問われると、答えに窮する。

思うことを言えばいいだけなのだが。

 

「仲間なのだから、隠し事はなしだろう?それに大したことでもない…と、思っていたんだが…」

 

類やネネと共にミクとカイトのほうを向く。

 

「……見込みが甘かったな!ハッハッハッ!」

「価値観の是正が急務かもねぇ」

「元アイドルなんだし…多少はしょうがないんじゃない?…にしても、って話ではあるけど」

 

なんだか話しやすい気がするな、以前よりも。

気の持ちようかもしれんが、それでも確かに感じる。

 

「ねえねえ!ここってあたしたちもいつでも来れるのかな!」

「む、それは分からん…そのへんどうなんだ?カイト」

「うーんと、司くんがこのセカイに招いた人はUntitledを流せばいつでも来れるよ」

 

へぇ…そうなのか…。オレだけのセカイと思っていたが、拡張性は案外高いのかもな。

 

「おやおやそれは…実に、探求心がそそられるねぇ……ところで、話はもうないかな?もしないのなら、ここを探索してもいいかな?」

「構わんが…ほどほどに頼むぞ?」

「わかっているさ…うん?あれは、ぬいぐるみ?自立して動いている?意思は?中身はいったい…?」

「ぬ、ぬいぐるみたちを解剖とかはしないでくれよ…?」

 

なんというか…類は好奇心がとても強いようだ。頭がいいからこそ理解できないものにはそれが色濃く出るのだろうか。

 

「ねぇねぇ類くん!一緒に探検しない?!」

 

……こっちのおてんば姫も同様に好奇心が高いようだ。

 

「あぁ、行ってみようか…ふふ、フフフっ…!不思議があふれて仕方がないねぇ!」

「不思議探検隊!レッツゴー!」

「あまり遠くに行くなよ!?広くて探すのにはオレでも時間がかかるんだから!」

「はーい!」

 

えむは元気よく返事をしたが…類に関しては聞こえてるのか……?あの二人だとブレーキ役がいないような…。

 

「…ねぇ」

「どうした?えぇと…」

 

…先ほどはネネ、と呼称したが…。実際の名前はどうなんだろうな?あのロボ、ネネロボのモチーフなんだとは理解できるが名前をそのまま取るとも考えにくい。

 

「……ごめんなさい」

「む?どうして謝る?名前をまだオレやえむに言えていないことについてなら、なんとなく予想はできてはいるが君が言えるまで待つぞ?ネネ(仮)!」

「…ふふっ、なにそれ…じゃ、じゃなくて今日のこと」

 

ネネはこちらをまっすぐ向き直して、深く息を吸って堰を切るように言う。

 

「…今日は、ごめん。充電がなくなっちゃったのは、結局のところ私の管理ミスで……それで、今日のショーは…あんなに、多くのお客さんが来てくれてたのに」

「そんなこと気にするな、と言いたいが…そうもいかんだろうな」

 

きっとネネはこう思っている。今日来てくれた人たちの多くが『天馬司』のお客さんだった。私の失敗でオレの顔に泥を塗った、とでも。

 

「まぁ、オレからいえることとしては…思い上がるな」

「…!」

「道具の不備は決して一人の責任ではない。むしろ、人数が少ないからこそ全員で目を向けなければいけないことだった」

「そうかもしれない…けど、結局のところ使うのは私なんだから私が一番気をつけなきゃいけなかった」

 

きっと責任感が強いんだろう、ネネは。

それに加えて、過去の失敗から自分の評価が著しく低い。

だから自分ができること、しなくちゃいけなかったことを失敗したときに自分を強く責めてしまう。

 

「あぁ、反省しているんだな…それはとてもいいことだ。反省も、後悔もきっと力になる。オレも何度したことかわからない…そのうえで言わせてもらう」

 

お客さんにとって、あのショーは一回きりだっただろう。

もしかしたら、失敗してしまったダメなショーとしてその人生に刻まれていくのかもしれない。

けれど─

 

「─その反省で失敗は塗り替えらるか?」

「…!そん、なの…!」

 

激情が、彼女の顔を染める。

これを突き付けたところで、なんの意味もない。

 

「私が!…私が、一番わかってる…!こんなことしてたってどうにもならないって!でも!」

「過去は変わらない、未来も変わらない。今を変えないかぎり、一生そのままなんだ」

 

これは、いままで彼女が向き合ってきたものだろう。一歩踏み出して、それでも…変わらなかった彼女にとって、こんなもの慰めにもならない。

 

「君の歌は、綺麗だった。とても」

「…何急に?慰め?」

「本心だ、君の歌はとても綺麗だった。あのロボの動きだってそうできることじゃない、君には才能がある」

 

オレが持っているものとは違う。

これはネネにしかないもの。

 

「結局振り返ってみると…ロボの充電がなくなってしまったこと以外は、実に順調な良いショーだったと思わないか?」

「…そう、かもね」

「ならば、もう一押しではないか?」

 

あれは足りぬところも多い穴だらけのショーかもしれないが、穴だらけの道の上をうまく走ることができていた。

 

「あのショーは誰が欠けてもいけないんだ。オレやえむ、類に…ネネも。誰か一人が欠けてしまったのなら、途端に成立しなくなってしまうんだ」

「…それは、そうでしょ。四人しかいないんだから」

「ハッハッハッ、そうだ四人しかいないんだ。ならば、その分一人一人の価値も大きくなるのは当然だな!」

 

 

「まぁ、その…結局のところ何が言いたいかというと、あまり気にするな!ということだ!」

「…いろいろ言って、締めがそれ?」

「ぐ…な、なんとでも言え!アドリブはまだ特訓中だ!」

 

落ち込んでいた表情も、少しずつほほを緩ませ、穏やかな表情へと変わっていく。

 

「でも…ありがとう、なんとなく元気出たかも」

「感謝などいらん!リーダーとして当然のことだ」

「…前々から気になってたんだけど、リーダーなの?」

 

か、感謝の直後に失礼な奴だな?!

 

「当然だ!オレ以外に適任がいるのか?!」

「えむじゃないの?いつも集合とかの連絡とかしてたし、名前付けもそうだし…」

「…そういえば、お前たちと連絡先を交換するのを忘れていたんだった」

「…それでよくリーダーって言えたね?」

「ぐ、ぐぬ…!」

 

 

 

い、いつか絶対にオレが一番リーダーにふさわしいというところを見せてやるからな!

覚悟しておけ!

 

 

 

「…ずっとさっきみたいな感じなら自然とリーダーになると思うんだけど」

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