司「役者たるもの、やはり様々な経験を積まねばな!」   作:司単推しの豆腐

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最近マイセカイとチャレライ消化しかできてないです…。
更新頻度遅くなると思うんで誰か設定丸パクリして続き書いてくれてもいいのよ。


第六歩

 

桃井さんや雫に問い詰められた…というほどでもないが、質問されたことは暁山と同じように夢の部分は濁しつつも答える。

 

『別にアイドルが嫌なわけじゃないんだ、むしろ楽しかった』

 

きっとこれは本心だ。

まだ自分でも納得のいっていない部分はあるかもしれないが、これは、きっと…。

 

そう考えていると桃井さんは安心したような顔をして、優しい笑顔のままこちらを向く。

 

「…それならよかったわ。わたし結構心配してたのよ?」

「ええ、本当に…理由が他にあるのは気になるけれど、とにかくよかったわ」

「ああ、心配をかけてすまん」

 

…オレも二人がアイドルをやめた理由は気になるが、ここで聞くのはあまりに無粋だろう。

予想にはなるが楽しい話でもないだろうしな…。

 

~~~

 

「…む、もうこんな時間か」

 

喫茶店に入ってはや一時間ほど、雑談でほとんど過ぎてしまったが、なかなかに楽しい時間だった。

アイドルの頃はこのような時間はなかったし、とても新鮮だった。

 

「あら…さみしいけど、もう帰らなきゃね…」

「なにいってんのよ雫…別にこれが最後ってわけじゃないんだから……また、暇なときにでも集まりましょうか」

「そうだな…近況報告がてら、たまに集まるぐらいなら構わんぞ。

お互いに忙しくなるだろうしな」

 

そんなことを言いながら互いに帰路につくため解散する。

 

 

にしても今日は懐かしい人たちに会ったものだ。

冬弥や雫に桃井さん…。

 

アイドルの頃が懐かしいな…咲希の見舞いとの折り合いがつかず何度か行けなかったのは、本当に申し訳ない…。

 

 

 

……そろそろ、昔との決別をしっかりしなくてはならん、か?

引退理由を明かさなかったのは、やはりよくなかったかもしれん…。

雫や桃井さんのように心配してくれた人もいれば、暁山のように気になって仕方がなかった人もいるだろう…。

 

そのような人たちに、申し訳が立たん…となれば、やることは決まったな。

まず家に帰ろう、話はそれからだ。

 

~~~

 

『…引退理由を公表したい?』

「はい、以前からお話は通していたと思いますが…そろそろちょうどいいか、と」

 

家についた後、オレは以前所属していた事務所の社長に連絡をとっていた。

引退したオレから何かを発信するには、事務所の力が必要不可欠だからだ。

 

『…新しい夢を追うため、でいいんだよね…?どうして急に?』

「はい、勝手なことだと分かっていますが、新しい夢のための前段階準備が終わって今ならば公表しても活動に支障もでないかと…」

『なるほどねぇ…』

 

一瞬沈黙が流れる。

正直、無理と突っぱねられても仕方がない内容ではある。

あまりにも自分勝手だ。

重々しい空気の中、社長はゆっくりと口を開く。

 

『……構わないよ』

「…!本当ですか!」

『いいとも、でも一つだけ条件がある』

「…条件、ですか?自分にできることなら」

 

無理を通しているのだ、少しのお願いくらいはなんてことない。

 

『天馬くん、きっと君は自分の評価を気にしたことがないだろう?』

「…そう、ですかね?」

 

前置きにしてもあまり理解ができない。

一応、人並みには気にしているとは思っているが…。

 

『君は自分が及ぼす影響の大きさを理解できていない…君の夢からして、仕方がないのかもしれないけどね』

「…?」

 

確かに意外と多くの人に知られているな、とは感じていたが…そこまでだろうか?

 

「えっと、それで……条件というのは?」

『…ふぅ、条件は自分について調べることだ。

一時間くらいね。』

 

…それが、条件…?

正直拍子抜けだ。それをして、一体何になるんだ…?

 

『終わったら連絡してくれ。そうしたら私が公表するための手続きをしよう、それじゃあ』

「あ、ちょっ!」

 

…き、切られてしまった。

まぁ…言われた以上やってみるか……。

 

~~~

 

…当たり前だが、最近の言及は少ないな。

もうやめたのもかれこれ一年ほど前だしな…。

 

「…む、【考察】人気アイドル 天馬司が辞めた理由とは…だと?」

 

公表はしていなかったからな…推測が世に出回るのも不思議ではないか。

何とはなしにクリックしてみる。

 

「…は?」

 

目を疑う。

そこには自分が思いもしていなかった虚飾が並んでいた。

 

『同じグループのやつがイジメていた』

『事務所にこき使われて嫌気がさした』

『いろんな人から恨みを買って芸能界を追放された』

 

そこには事実無根の完全な嘘が並んでいた。

あくまで予想…しかし、それが自分以外の誰かに向いてしまっているのは、酷く心に刺さる。

 

『家族が辞めろ、とか言ったんじゃね?』

 

特に、目についたものは、オレにとって到底許せないものだった

父さんや母さんはオレがやりたいことを優先してくれて、辞めたいと言ったときも納得してくれた。

咲希なんて、ずっと寂しかっただろうにそれをこらえてオレを応援してくれていたのだ、こんなことを言われて、許せるわけが…

 

「あ…」

 

オレの、せいか…?

オレが自分勝手にアイドルを始めて、何も言わず辞めたせいでこんなにも、これほど多くの人に迷惑が掛かったんじゃないか…?

 

 

“『君は自分が及ぼす影響の大きさを理解できていない』”

 

 

先ほどの言葉の意味が、今なら理解できる。

オレは、あまりにも浅慮で何も理解できていなかった。

それを戒めるために、社長は調べろ、といったのだろう。

 

反省はしていた、していたつもりだった。

全く足りていなくて、まず反省すべきことを正しく認識すらできていなかった。

 

後悔はしていなかった、したくなかった。

湧いてきてしまう後悔の念は蓋をすることも目を背けることすらもできないくらい大きくなっていた。

 

 

 

開き直ることはしたくない。

でも、このまま引きずるべきでもない。

そんなことをすれば、夢に遠ざかる。

 

どうするべきだ、オレは。

 

 

…一度、頭を冷やそう。

 

△▼△

 

「…な、なんだ?」

 

セカイに来た…が、どうなっているんだ?

いつもと比べて暗くなっているセカイに驚きを隠せずにいるオレに声がかかる。

 

「司くーん!!」

「のわっ!?ミ、ミク!だから突っ込んでくるのを止めろと…いや、それよりどうなっているんだ?」

「えっとねー…このセカイって司くんの想いからできてるんだよっ♪」

「…?それはもう知って…いや、待てよ?」

 

もしや、オレの想いに陰りがある、だからこのセカイが暗く変化している、ということか…?

 

「司くん、どうしたの?」

「…実は、な。」

 

ミクに今までのことを包み隠さず伝える。

抱えてもどうにもならんことはあるからな……これがそうとは限らんが。

 

オレが言い終えると、ミクは頭を抱えながら悩んでいる。

さしずめあまり理解ができなかったのだろう。

そしてひとしきり悩んだ後顔を上げる。

 

「…うーん…司くんは、『スター』になりたいんでしょ?」

「あぁ、そうだ。それに関しては一切の妥協もしないし、諦めるわけもない。

しかし…それではなくとも、アイドルでなくとも、目指すことはできたはずなんだ…」

 

結局のところ、オレは後悔してしまっている。

アイドルを夢のための踏み台にしたことを、後悔している。

それだけはしたくない、と思っていたはずなんだがな…。

 

「でもでも!『スター』になるために必要だと思ったんでしょ☆」

「それは…」

 

それは、そうだ。結局のところ、オレは一つの夢に向かってただ進もうと思っただけだ。

 

「ならなら!今司くんが悩んでるのも『スター』には必要なんじゃないかなっ♪」

「この悩みすらも…?」

 

…そうだ。オレがワンダーステージを訪れたとき、オレは何を感じた?

落胆や不安、困惑もあったかもしれない。人すらも不足する状況なのだから、当然だろう。

しかし、オレは一番に「やってやる」と思っていたはずだ。

その逆境すらも『スター』には肝要であると。

 

なのに、なんだ?この体たらくは…!

先ほどみた声など、観客のうちの一人の小さな小さな声だ。

それらをすべて真に受けて、成り立つか?

『スター』たりうるか?!

 

そんな意見にすらもならぬ噂話など、舞台の上で吹き飛ばすほかない。

それこそがオレが目指した『スター』の姿ではないのか!

 

「…ありがとうな、ミク。今のオレに必要なことが分かった気がする!」

「えっへへ~☆司くんが元気になってよかった~♪」

「迷惑をかけたな…っと、すまん。やることがあるからオレはここらで失礼する」

「うん!またね~!!」

 

▲▽▲

 

『…それで、どうだった?世間一般の自分の評価を調べて』

「乖離があった、と認めざるを得ませんね…」

 

自分の知名度、アイドルを辞めたことに対する反応、どちらも自身の予想を覆された。

 

『で、そのうえで聞かせてもらうけど…それでも君は引退の理由を公表するかい?』

「…」

 

きっと社長はこう言いたいのだろう。

『ほとぼりが冷めつつあるのだからわざわざする意味はない』『むしろその行為は火に油を注ぐことにほかならない』と。

しかし

 

「それでも、していただきたいんです」

『…』

「我儘なのは重々承知です。それでも…『わかった』…え?」

『ウチの広報担当にはこっちから話を通しておくよ。そこからは君がやってくれ』

 

あまりにもあっけない肯定の言葉。

正直なところ、こんなにも早く認められるなんて考えてもいなかった。

 

「…!ありがとうございます!!」

『構わないよ…それでは、連絡は追ってする。今日は休んでおきなさい』

「はい!お疲れさまでした!!!」

 

通話は途切れる。

予想外ではあった、がしかし今の自分を見つめなおして理解に一歩近づけたのだ。

それだけで感謝してもしきれないのに、手筈まで任せてしまっていることに流石に申し訳なくなる。

昔から、あの人には迷惑をかけてばかりだ…。

 

そんなことを考えていると、もう夜遅くになってしまった。

今日はもう寝て明日に備えよう。

オレは公表について考えを巡らせながら、目を瞑った。

 

~~~

 

「…はぁ、ホントに。天馬くんは変わらないねぇ…昔から。

っと、さっさとやることやらなきゃね……えーっと、次の仕事は…

 

 

 

──フェニランに出張ライブ、か」

 

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