司「役者たるもの、やはり様々な経験を積まねばな!」   作:司単推しの豆腐

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遅れてすいません
猫耳司くんほしかったなぁ…
出ました報告したらキレ散らかします



第七歩

 

「なぁお前これ見た?」

「これ、って…はぁ?!」

 

友人のスマホを見た若者が声を荒げる。

少ししてはっとすると周りに謝罪するかのように何度か頭を下げる。

 

「…いや、これデマじゃねえの?どうせまたどっかのテレビが根も葉もないこと言ってんじゃ…」

「俺もそう思ったんだけどさぁ。もともと所属してた事務所が直々にわざわざ動画撮って出してるから、多分ホントだぞ」

「つったって…なんで今更?」

 

天馬司がアイドルを辞してから一年以上も経つ今、何故今更という思いは尽きない。

しかし、

 

「まぁ…夢に向かってがんばってるらしいし、そのためにもここらで線引きしておこう、とでもなったんじゃねえか?」

「ま、アイドルを辞めた以上俺らがとやかく言うことではないわな…」

「そーそー、むしろ元ファンからすることなんて夢の応援ぐらいしかないわな」

 

それが、彼の望むことならば応援したい。

彼らはそう思った。そう思う者たちが多く居た。

 

こうしてアイドルとしての天馬司の終止符は打たれた。

それを認めない、望まない者たちを置き去りながら。

 

〜〜〜

 

(…大方、好意的な反応が多いな)

 

自分用のパソコンを弄りながら、思う。

好意的なものは少数になる、と考えていたがその見積もりも甘かったようだ。

世間との認識の乖離に驚くばかりであるが、それ自体は都合がいい。

ファンの皆も、時間が経ったからか割り切って応援してくれる人達が非常に多く、自身が恵まれていることを強く感じる。

 

が、しかし

 

(…当然否定的な意見も少数ながらあるわけだが)

 

今になって声明を出したことを邪推する者、アイドルとして復活しないことを明言したことに対して怒りをあらわにしている者…各種報道メディアでもそのような声はよく取り上げられている。

 

こればかりは、いつであっても起きたことであろうから多少は目を瞑るしかない。

 

(ただ、気がかりなのが…)

 

そのような過激な者たちが自身の夢の妨げにならないかどうか、この一点に尽きる。

最悪の場合、フェニランに迷惑がかかる可能性もあるし経営陣に報告や相談をして対策を練る必要も出てくるだろう。

いや、まず目先の心配をすべきだ。

そのうちワンダーステージでの公演も始まるからショーの仕上げにも入らなければならんし…。

 

「か、考えなければならんことが多すぎる…!」

 

…改めて、自分がいかに面倒で、難しい立場にあるのか、実感させられる。

そしてそんなオレを採用してくれたフェニラン側への感謝の念が積もる。

もし、オレが経営者ならば、こんな見え見えの地雷を所属させたくはない。

 

…というか、今考えるとワンダーステージ所属になったのもそれが理由なのやもしれん。

あのステージを復興させるため、だとか考えていたが実際のところは…まぁ別に、今となってはどうでもいいか。

兎にも角にも、ショーを成功させるべきだ。

 

 

ショーの成功はきっと少数の否定的な意見を消すことにつながっていくだろう。

実力で黙らせるのが、一番手っ取り早い方法には違いないからな…。

 

~~~

 

「──ぜぇ、はぁ……あ、危なかった…あと少しで遅れてしまうところだった」

 

今日は、一日通しての練習だからかなり大事だというのに…!

間に合ったからいいが…気を引き締めねばいかんな。

 

「しかし…神代や鳳さんはどこだ?む、メールが…

『僕たちは機材を取ってくるから、少し待っていてくれ』?

…少し申し訳ないが、お言葉に甘えるとするか…疲れたしな」

 

椅子に腰を下ろして、休む。

 

「あぁ、いや衣装を用意せねばならんな。たしか、奥のほうに置いた気が…」

「っ…!」

「む?」

 

か細い鳴き声のような音が耳に届き、そちらのほうへと目を向ける。

視線の先には何やらおびえた表情の可愛らしい少女が座り込んでいた。

怯えられるようなことをした覚えはない、がなんだか見覚えがあるような…。

 

「…すまない、このステージはまだなにもやっていないのだ。迷ってしまったのならどこかに案内して──」

 

そこまでいってふと頭によぎる。

 

(……この子、あのロボにどことなく似ているような…)

 

そう思うと、一気にパズルが組みあがっていくような感覚になっていく。

神代はロボットを操作する者がいると言っていた。そしてその者は恥ずかしがり屋とも。

それならば、目の前の少女がそうだとすれば合点がいく。

おまけに、なにやら操作端末のようなものを持っている、となればこれはもうそういうことだろう。

 

「──ふむ、なるほどな……オレは天馬司、といっても知っているよな…まぁいい!始めまして!」

「う、あ…え、えと…」

 

…しまった、恥ずかしがり屋なんだったな…失敗した。

まぁコミュニケーションを急くこともないしな、相手が話しかけてくれるようになるくらいまで待つことも必要だろう。

 

「む、すまん。気がはやってしまった…オレたちは同じ志を持つ者だからな。

ゆっくりと君のペースで構わないから、オレたちとも話してくれ」

「…はい」

「そろそろ機材の準備も終わっただろうな…衣装だけ取ったら表に行く、邪魔したな」

 

少女はなにか迷っているような不安そうな表情をして、下に目線を向けている。

…踏み出そうとしているが勇気が出ない、といったところだろうか?

ならば、

 

「…先ほども言ったが、ゆっくりでいいんだ。

なに、これが最後のチャンスというわけでもない」

「…あり、がとう」

 

少女はまだ下を向いている。

 

「そろそろ二人が来る。神代はどうかは知らんが、鳳さんとはまだ話せないだろう?」

 

そう聞くと、うなずいてくれる。

 

 

「そうか。なら、やはり今はここまでだな」

「…」

 

なにやら落ち込んでいる気もするが…オレが踏み込みすぎてもいかんし、神代にケアをお願いしておくか?

 

「では、また会おう」

 

…ファーストコンタクトとしては上々だろう。

あとはオレにできることは待つことだけになるが…気長に行くとしよう。

 

 

 

 

 

(…どうして、いつもこうなっちゃうんだろう)

 

(あっちから歩み寄ってくれて、こっちのこと色々察してもくれてるのに、どうして…)

 

 

~~~

 

「司く~ん!おはよ~~~!!」

「あぶっ…!い、いきなり飛びついてくるなと何度も言ってるだろう!」

「ほえ?そうだっけ?」

「あっ…」

 

しまった…ミクが飛びついてきているのと同じ感覚でつい反射的に…。

な、なんとかごまかさねば。

 

「い、いやいつも同じように飛びついてくる知り合いがいてな…同じように言ってしまった」

「へ~!どんな子どんな子?!」

「…少し、鳳さんに似ているかもな」

 

おてんば娘なところとか、特に。

 

「へ~!いつか会ってみたいな~!」

「…」

 

 

『このセカイには、人を呼ぶことができるんだ』

 

 

「…それは、難しいかもな。アイツは少し遠いところにいるから」

「え~残念だなぁ…」

 

…なぜ、ためらう。

仲間なのだろう?ともに同じ志を持っているのだろう?

だというのに、なぜオレは…

 

「──司くん?」

「っ、どうした鳳さん?」

 

反射的に言葉を返す。

少し放心していたようだ。

 

「う~ん…なんかこうムムッて顔してたから」

「…ははっ、なんでもないさ」

 

鳳さんはなんとなく納得のいっていない表情をしているが、本当に何でもないのだ。

 

「おや、司くん。到着していたんだね。間に合ってよかったよ」

「あぁ、なんとか時間ギリギリだったがな…っとすまん、一ついいか?」

「ん?なんだい?」

 

オレは先ほどのロボの操作主の少女について経緯を説明した。

 

「─というわけで、フォローを入れておいてほしいんだが…」

「あぁ、了解したよ」

「すまん、助かる」

「いやいや、助かっているのはこちらの方さ」

 

…正直、出過ぎた真似をしたのでは?と不安だったが、事情を知っている神代が言うのなら少し安心できるな。

 

「…よし!機材の準備はできたか?」

「うん、もちろん完璧だよ」

「心の準備は?」

「バッチリオッケー!」

「そこのロボットは?」

『…平気』

「ならばよし!公演も近くなってきているし、気合を入れていくぞ!…しまった!」

 

オ、オレはすごく大事なことを忘れてしまっていた…!

 

「オレたちは劇団名を決めていないではないか…!」

「そういえば、そうだったねぇ…ショーの内容などの確認が今までは主だったし、そこまで頭が回らなかったね」

「はいは~い!じゃあじゃあいま決めちゃおうよ!」

『…いいんじゃない?全員揃ってるし』

 

まぁ、こんなこともあろうかとオレは以前から密かに考えていた名前があるのだ…!

皆がアッと驚くさまが目に浮かんでほほが緩む。

最初はオレから行くとするか…。

 

「ならばオレから提案したいんだが…『劇団 ペガサスター』なんてのはどうだ?

以前から温めていたモノなんだが」

「……これはまた」

『ダッ…サ』

「そんなバカな?!」

 

ダサい…お、オレがアイドルをやっていた時からずっと考えていたモノなのに…!

先輩アイドルや社長にも聞いて笑いながら褒めてくれたのに…!

 

 

「…一応由来を聞いてもいいかな?」

「!そうだな!由来を聞いたらきっと納得するはずだ!」

『そんな気はしないけど…』

 

まだ…まだなんとかなるはずだ!

ペガサスはまだ飛べるはずだ!

 

 

「オレの苗字は天馬…つまりはペガサスなわけだ」

「そうだね」

「そしてオレは『スター』になりたい」

「存じ上げているよ」

「だから『ペガサスター』だ!」

『却下』「無理かな」

「そんなバカな?!?!」

 

由来を聞いて尚即答?!

 

 

「ねぇねぇ、『ワンダーランズ×ショウタイム』なんてどうかな?」

『採用』「暫定一位かな」

「由来すら聞いてないのに?!」

 

な、納得いかん…!せめて、由来を聞かねば納得できん!

確かにピンときた自分がいるが認められんぞ!

 

 

「まぁ確かに由来は聞くべきかもね」

「えっとね~…ワンダーステージはどんな世界にもなっちゃうワンダーランドなの!」

「なるほどね」「確かにショーによって世界観は変わるな…」

「それでねそれでね!ここのショーでとってもニコニコってした時間を過ごしてほしい!」

「確かに笑顔に越したことはないな」

「だから『ワンダーランズ×ショウタイム』!」

『採用』「一位かな」

「ぐ、ぐぬぬぬ…!」

 

非の打ちどころがない…!

込められた想いがものすごく素晴らしい…!

 

 

「…ええい!ならば、劇団名は『ワンダーランズ×ショウタイム』で決定だ!」

「やった~!」

 

さらば、『劇団 ペガサスター』…。

 

 

 

 

 

『…ねぇ、類』

「うん?どうしたんだい?」

『…アイドルって、どこか変わってるものなの?』

「…そんなことはない、とは言い切れないねえ……」

 

(さっきの真面目っぽい感じ、なんだったの…?)

 

(…でもこっちのほうが話しやすい……かも)

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