司「役者たるもの、やはり様々な経験を積まねばな!」 作:司単推しの豆腐
言い訳させていただきますと新しい環境でドタバタしててェ…。
もう動けなくってェ…。
他の司の小説見てて書かなきゃとはずっと思ってました…マジ遅れてすいません。
結構突貫なんで変なところあるかもなんですけど許してくだちい。
あと全然関係ないんすけど誰か司の小説もっと増やしてくださいませんこと?
司エキスが足りねえっす。
「ハーっハッハッハ!!!ついにこの時が来たな!!!」
『うるさっ…!?』
「司くんがこんなにもテンションが高いのは珍しいねぇ」
「でもでも!あたしもすっごくドキドキワックワクだからその気持ちわかるな!」
…む、少し声が大きすぎたか?
しかしそれもしょうがない、というもの。
なぜなら、今日こそオレが華々しい『スター』として初めて皆の前に立つ日なのだからな!
「あぁ…今日までいろいろあった…」
「…なにやら、思い出に浸っているようだね?」
『はぁ…とりあえずほっとけば?』
っと、そろそろ準備をしなくては間に合わなくなってしまうな…。
「それでは、お前たち!張り切っていこうではないか!!」
「うん!いっくよー!今日も~…?がんばろわんだほーい!」
「『わんだほーい!』」
「リ、リーダーであるオレを差し置いて掛け声だと…?!」
『なんでアンタがリーダーなの…?』
「ふふ、緊張とは無縁なようで安心したよ」
いつか、絶対に!オレがリーダーに相応しいと皆に思い知らせなくては…!
~~~
「わぁ~…!お客さんいっぱいだね!」
「あ、あぁ…まさかこれほどまでとは…」
「まぁ、仕方がないだろうねぇ…❝あの❞天馬司が出るともなればこうなるのは目に見えていたさ。
それに君の先日の発表、注目を集めないほうが難しいさ」
「…確かにな、本当に考えが甘かったと言わざるを得ん」
…しかし、よく考えなくてもこれはチャンスだ。
ここで成功を収めればオレはきっと…。
『…ぅ……』
…クソ、これだからオレの考えは甘いのだ。
あのネネロボとやらを操作している少女はきっと、ショーになにかしらのトラウマがあるのは目に見えていた…。
それを克服するためにもきっとロボを遠隔で操作してショーに出ようとしている、それほどまでにあの子にとっては大きな問題なのだ。
そんな少女が慣れない中、多くの客を相手に最高のパフォーマンスを出せるか?
なぜ、オレは──
「──司くん」
「…ッ…どうした?神代」
「君が過去と決別したように、寧々も──ネネロボの操作主も、きっと全力で最高の結果になるように努力するよ。
だから、信頼してあげてほしい」
「──あ」
…見透かされていた、か。
……そうだな、オレが気にしすぎても仕方がない、か。
「…あぁ!わかった!しかし、なにかあればオレたちでサポートするぞ!」
「フフッ、そうしようか」
オレはちらりと舞台裏のロボットの操作主がいる場所を見る。
コントローラーを握る手は小刻みに震え、不安に満ちたその顔色はお世辞にもいいとは言えない。
少なくとも今からステージに立つ者の所作ではないかもしれない。
しかし、それでも。
その目は決意に満ちて、真っ直ぐステージを見据えている。
(…あぁ、そういえば先ほど類があの子の名前を言っていたが……)
…うむ、オレは何も聞いていないな。
たとえ聞いていたとしても、本人から聞くまでは本当かどうかも分かったものではないしな!
「みんな~!準備できたって~!」
「あぁ!今行くぞ!」
ワンダーランズ×ショウタイム!初公演スタートだっ!
~~~
『くッッ…!ドラゴンだと?!しかし、このペガサス王子に撤退の二文字はない!行くぞネ・ネー!』
『ふっふっふ!このエムムがお世話したドラゴンはそう簡単にはやられないのだー!』
『クソ…!ドラゴンなんてどう倒せば…!?』
(よし、ここまでで問題はない!そして肝心なのは…)
『そういえば、ドラゴンは歌に弱いと聞いたことがある…どうにかならんか?!』
『マカセテクダサイ、オウジ』
(ここのソロパートだ…!がんばれ…!)
『──~~♪』
『…うぅ、むにゃむにゃ…あたしもなんだか眠く……』
『おぉ!ドラゴンとエムムがうとうとしているぞ!』
(よし…!このままいけば!)
『~~♪…~……』
「…なっ!?」
突如ネネロボの動きが止まる。
目の光は消え、声も流れてこない。
(故障か?!どうして急に…!?)
動揺して焦燥を隠せなくなってしまっていることにさらに焦りそうになっているオレの視界には。
舞台裏で、どうしていいかもわからず立ちすくしている少女の姿が入り込んできた。
その目には涙が浮かんでいる。
それを見て、すっと頭が冴える。
(焦るな…!考えろ!まずは、時間稼ぎだ!)
『ネ・ネーどうした!お前が眠くなってどうする?!…皆!ネ・ネーを応援してあげてくれ!』
先ほどの焦りが顔に出てしまっていたためか、応援の声もどことなく小さく感じる。
それでも、少しずつ大きくなるまで粘る。
『う、うわー!みんなの応援でドラゴンが怖がっちゃってるよ~!』
(…!ありがとう、鳳さん!これなら歌じゃなくても倒せる方向に持っていける!)
『覚悟しろ!ドラゴン!このペガサス王子がお前を──』
「あっ…!危ない!」
『ぬ?ぐぉッ?!』
いつの間にかこちらに突っ込んできていたネネロボに体勢を崩され潰されそうになる。
「…クソッ!…ネ・ネー離せ!オレはあのドラゴンを倒さなくては…!』
「つ、司くん大丈夫?!た、助けなきゃ!」
「ま、待ってくれ…オレはまだ!」
こちらに駆け寄る鳳さんの奥に見える神代にまだやれる、と目線を送るも神代は「ここまでだ」と言わんばかりに目を伏せ首を横に振る。
『こうして、ペガサス王子はドラゴンたちと仲良くなり──』
「…ッ」
本来と違う結末を迎えた物語のエンディングを聞きながら、オレは唇をかみしめるしかなかった。
~~~
「…どうやら、充電がなかったようだ。それと、司くんのほうへ行ったのは自律思考プログラムの誤作動だったよ」
「つ、司くん…大丈夫…?」
「…あぁ、大丈夫だ。鳳さん」
…オレはなぜ本番前に人の心配なんてしていた?そんな余裕がオレにあったのか?
機材の点検確認とはいかずとも、充電の確認程度ならオレでも十分にできたはずだ…!
だというのに…
「──ごめん、なさい」
「…え」
初めて聞いた声は、あのロボから聞こえていた少しばかり強気な声より、ずっと弱々しくて、消えてしまいそうで。
少なくとも、その言葉を聞きたかったわけではなくて。
「わた、わたしのせいで」
「わわ…!え、えっと大丈夫だよ?!それと初めまして!」
「…君のせいでは、ない。少なくとも君だけのせいではない」
「司くんの言うとおりだよ、寧々。機材の確認をするタイミングはいつでもあったんだ。
その時に、充電を確認しておけばよかった」
気まずい沈黙が流れる。
少し時間が経って、オレが口を開く。
「…ショーは延期だ」
「「…!」」
「…一応理由を聞いてもいいかな?」
数えればキリがないが、一つ挙げるとするなら…。
「…少なくとも今のコンディションでお客さんを笑顔にできる気はしない」
「それは…」
神代は少し考えた様子を見せる。
が、すぐにこちらを向き直る。
「…違いないね」
「ならば、一度解散だ。各々、体をしっかり休めるように」
「あっ…」
誰のものともわからぬ声が漏れる。
けれどオレに、今のオレにそんなことを気にする余裕はなかった。
△▼△
なんだか、家にいるのも居心地が悪くてセカイに来てしまった。
用事があって咲希が見に来ていなくてよかった、なんて思ってしまう自分に嫌気が差す。
例え相手が誰であろうと変わらぬ、最高のショーを届けるのが『スター』だ。
こんなのでは夢から遠ざかるばかりだ。
「やぁ、司くん今日はどうしたんだい?」
「…!カイトか……知ってはいると思うが、今日が我が劇団の初公演があってな…まぁその、トラブルが起きてしまってな…」
…こう思い返すだけで、悔しくなるな。
オレにできることはもっとなにかあったはずだ。
充電の確認はもちろんのこと、あそこでネネロボから急いで離れられれば…いや、まずあの子がロボットなしでも人前に出られるように何か手助けができていれば、あんなお客さんに失望させるようなことは…。
「…詳しく、話を聞かせてもらってもいいかな?」
「……え、あぁ…まず、そうだな──」
~~~
「──なるほど、そんなことが」
「…本当に、『スター』をめざすものとして不甲斐ない限りだ。
オレにはもっとできることがあったはずで……」
そこまで言ってカイトを見やるとその青い目は真っ直ぐこちらを見据えていた。
そして、
「急で申し訳ないんだけど、司くん。ショーを見ていかないかい?」
意図が分からないその発言に、自分でも間抜け面をさらしているんだろうな、という気がする。
おてんばすぎるミクと違ってカイトに限って意味のないことは言わないと思うからきっとなにか意味があることには違いないが…。
「少し待っていてほしい、すぐにミクを呼んでくるよ」
「あ、あぁ…構わんが……」
少なくとも、今のオレにはその理由は予想できなかった。
~~~
『──あるところに、夢を叶えるために努力する少年がいました。
その少年は人一倍努力をして、人の手助けもできるだけしていました。
きっとその経験が自分の助けになると信じて』
(…そんなこと、当然だろう。
夢を本当に叶えたいのなら、努力なんて当たり前にすべきだ。
経験を積むのも、同様だ)
『けれど、あるとき少年は失敗をしてしまいました。
仲間を手伝おうとして、自分のことが疎かになってしまっていたのです』
(……本末転倒だな。そんなこと余裕のある奴だけがやるべきことで──。)
(───オレも、そうだったな。省みるとあまりに愚かに感じるな)
『そして、その失敗のことで、仲間に怒られてしまいました』
(…それは、そうなるだろう。それで怒らんのもおかしい)
『も~!だから私は一人でもできるからいいって言ったのに!』
『…ごめん、でも不安で……』
『…!なんで信じてくれないの!私たち仲間でしょ!?……もういい!』
『ま、待って…!』
女の子を演じているミクが舞台から捌ける。
そして、残るはカイトただ一人。
『…どうして。
……どうして、いつもこうなんだろう。
なんで、僕は皆を──
(……ぁ…)
そして、それを聞いて何か、腑に落ちた。
『このセカイには、人を呼ぶことができるんだ』というカイトの言葉、それならば鳳さんたちを、志を同じくする者を呼んだって良かったはずだ。
そうしなかったのは、きっと──
──仲間を信じられないんだろう?』
理由は、分かりきっている。
オレはアイドルの頃の仲間、あの良き友人たちとの決別をしきれていないのだ。
…笑えるな。
アイドルの頃のオレとの決別は済ませた、なんて思っていたのに、何一つとしてできていないではないか。
しかし、だからといってどうすれば…。
『謝ら、ないと…』
…!
『信じきれなくて、ごめんって言わないと。
…それで、許してくれるなんて思わないけど。
それでも…!』
…そう、だな。そうすべきだ。
オレがすべきは、きっと…。
気付いたら舞台上から降りたカイトがこちらに向かってきている。
「──司くん」
「…どうした?カイト」
「どうだろう、参考になったかな?
司くんの助けになれば、と思ったんだけど…」
カイトは不安そうに言ってくるが…ならばその不安すらも吹き飛ばす勢いで言ってやろう。
「──あぁ!助かった!ありがとうカイト!!!」
「!……それなら、よかったよ」
「司く~~ん!」
勢いよく突っ込んでくるミクに反応しきれず、倒れそうになるところを踏ん張って堪える。
「み、ミク!だから突っ込んでくるのを…!」
「ねえねえ♪ミク達のショーどうだった~?」
「む…あぁとてもいい演技だった!ミクはあんな演技もできるのだな、と素直に感心したぞ」
実際、無邪気という言葉を体現したようなミクからは考えられないくらい、深みのある演技だった。
ある意味、人間らしかった、とでもいえばよいか?
「えっへへ~♪じゃあじゃあ!司くんたちのショーも楽しみにしてるね!」
「あぁ!もちろんだ!いい知らせを持ってくると約束しよう!!!」
「わ~い!がんばってね司くん!」
オレとミクの掛け合いを笑顔で眺めていたカイトが、何かにハッと気づいた表情をして、オレのほうを向く。
「司くん、暗くなる前に一度戻ってみたらどうかな?
もしかしたら誰かまだ残っているかもしれないよ」
「そうするとしよう!ミク!カイト!今日はすまなかったな!そして、ありがとう!!!」
そうしてオレは暗い気持ちで訪れたセカイから、一転して明るい顔で去った。
「…本当に、頑張ってね。司くん」