司「役者たるもの、やはり様々な経験を積まねばな!」 作:司単推しの豆腐
友人が小説書いてて自分も書くかぁ、とやる気がわいたので書かせていただきます。
続きをすぐ出すかもわかりませんが見ていただけると幸いです。
セカイから戻ったオレはワンダーステージに来た。
当然、誰もいなかった。
「……」
ここに、こんな気持ちで来るのは初めてだった。
初めての頃だって、多少の不安要素はあれど夢に向かって全力だった。
そして、それはきっと──
「皆も、同じだった」
鳳さんも、神代も。あの、名も知らぬ少女だって同じはずだ。
ならば、探さなくては。
探して、言わなくてはならない。
言えなかったことを。
そして、ふと後悔する。
「……なぜオレは連絡先を交換していないんだ」
いままで、なぜか口約束で待ち合わせをしていた弊害が出たことに嘆息しながら、とりあえずランド内を見回ることにする。
~~~
探してみると、案外簡単に見つかった。
ピンクの髪が、夕暮れの中で一際目に留まる。
鳳さんは、何やら観覧車の前で立ちすくんでいた。
今までに見たことのない、笑顔とは程遠い憂いを帯びた顔でただ、立っていた。
その表情にどこか気後れする、が──
「──鳳さん!!」
「……つ、司くん?」
ここで、声をかけなくてはいけない。
なぜなら俺は、皆の、ワンダーランズ×ショウタイムのリーダー……座長だから。
「鳳さん、話が──」
「ねえ司くん、一緒に観覧車乗らないっ?」
──へ?
~~~
「どんどん上がってくね~」
なぜ、オレは観覧車に乗っているのだろうか。
負い目があったのは否定できんが、それでも感じたのだ。
鳳さんにも、言いたいこと──言わなければならないことがある、と。
「あっ。ほら、見えたよ司くん」
「…!ここから、ワンダーステージが一望できるのか」
初めて見たときは、奥まった場所でこんな場所でショーができるのかと思ったものだが……こうしてみると
「……いい場所だ」
「でしょ?おじいちゃん、緑がいっぱいあるからあそこにステージを建てたんだよ」
「…おじいちゃん?鳳さんのおじいさんはこの遊園地の創設者…?つまり鳳さんは……お、鳳…?」
なぜ、気づかなかったのか。
鳳という苗字、時々この遊園地に深くかかわっているような発言をしたり、護衛がいること。
…いや、本当になぜ気づかなかったんだ?!
「…ま、まぁいい。しかし、解せんな…そんな超がつくほどのお嬢様がなぜ自分でショーを?」
「えっとね……一年前にね、おじいちゃんとお別れしたの」
「……!」
「その時お父さんが、古いステージだし維持費もかかるから、壊して新しいステージを建てたほうがいい、って言ったんだ」
「でもあたし、おじいちゃんのステージがだーいすきだから、絶対残したくて壊さないで、ってお願いしたの!」
少なくとも、その御父上の判断は経営者として正しい判断であると言わざるを得ないだろう。
そして、鳳さんもそんなことはわかり切っている。
それでも、思い出は……過去の輝きは、忘れようと思ってもこびりついて離れないものだから。
「そしたら今年の連休までに採算が取れるくらいいっぱいお客さんを呼べたら考えてもいい、って言ってくれたんだ」
──なるほど、合点がいった。
なぜ、ワンダーランドはオレを、ショーキャストとしてのキャリアのない、知名度もリスクの高い『天馬司』を雇ったのか。
ワンダーステージで跳ねれば御の字。
そうでければ、ワンダーステージごと切り捨てる…そんな考えが、きっとあったのだろう。
鳳さん本人にその気がなくとも、感じ取っていたのだろう。
関わって分かったが、鳳さんは無邪気で子供のようにわんぱくだ。
それでも、勘がよくて頭だって良い。
だからきっと目の前の少女は。鳳さんは。
これほどまでに泣きそうで、申し訳なさそうな顔をしている。
「……ごめんね、司くん。あたし、あたし…」
「…どうしてそれを先に言ってくれなかったんだ」
「みんな、皆ショーを作るのに一生懸命だったでしょ?
ショーにはいろんな人が必要だけど…みんながショーを思いっきりするには、考える人も必要なんだって……おじいちゃんが言ってたの」
……そうか、オレは自分ばかり、『自分のショー』のことばかり考えて、
これほどまでにショーのことを見て、考えてくれている人を見落としていたのか。
「…ごめんね。司くんのことを考えないで、あたしのためだけにショーをやろうとしちゃったんだ。
今からでも、やめようかなって。ほら、こんなただのあたしの我儘に皆を巻き込んじゃって」
それは、それだけは違うだろう。
「…むしろ謝るのは、オレのほうだ」
「へ…?」
呼吸を整える。
今から、言うべきことを言うのだ。
鳳さんも、オレに明かしたのだから当然次はオレだ。
「オレは、皆のことを信じ切っていなかった。オレが、オレ一人でステージを手にしようとした。自分のことだけを考えてショーをしようとしたというならそれは…お互い様だろう」
これは、罪の告白。罪の懺悔。
そんなことしたって許されることではないが、お互いに加害者で被害者というのなら。
打ち消しあって……お互いに許しあったっていいだろう。
「お互い様…そっか、そうなんだ」
「鳳さん…いや、えむ」
これは宣言だ。過去を捨て、未来へ羽ばたくという宣言。
同じ方向を向くものというだけでなく、ともに歩む者としてあるという自分への誓い。
当たり前で、小さな一歩ではある。
それでも。
「オレと、ショーをしよう。今度は一緒に」
一人で歩もうとした己への自戒。
同時に、泣いて目を腫らすえむへの許しと懺悔を込めて。
手を伸ばす。
「…うんっ!今度は一緒に!」
えむは破願して、笑みを浮かべる。
横から受ける夕焼けが、どうにも綺麗だった。
「……ところで、神代の連絡先とか持ってないか?」
「えっ…!交換してなかったの?!あれっ!?あたしも司くんと交換してない!」
~~~
「……さっきぶりだな、神代と…」
「ネネロボの操縦者だよ。ネネ、とでも呼んであげてほしいな」
…それ、本名じゃないのか…?
「…まぁ、良い。まず、謝罪を「いらないよ」…」
今日はなんだか、話の腰がよく折られるな…。
「いや、そういうわけにも…」
「大方、自分本位にショーをしていたことへの謝罪、とかだろう?
きっと、そっちのえむくんも」
…驚いた。頭がいいとは思っていたがこれほどとは。
「え、えっと。でもね、あたしたちどうしても謝りたくて」
「その必要はないねぇ…だって僕たちも似たようなものだし」
……いや、まぁなんとなく気づいてはいたが。
「こっちのネネは昔にした失敗から人前に出るのが苦手でね…それを克服させてショーをしたかったんだ。だから、お互い様ってやつさ」
なんだ、皆一緒だったのか。みんな、自分のためにショーをして……勝手に負い目を感じていた。
それならば、話は早い。
言うべきことは一つだけだ。
「オレたちで、ショーをしよう。今度は一緒に」
「フフっ、喜んで……ネネは、どうする?」
「…!わ、私は…」
少女は、ネネは口ごもる。
きっと今日の失敗がまだ頭に残り続けているのだろう。
すでに一歩踏み出していたというのに、それで失敗したのだろうからもう一度踏み出すのに躊躇するのは当然だ。
だから、オレたちは待つ。
「わ、私は、人前に。あのロボでしか出れないし…」
「うんっ!ネネロボちゃんすごいよね!シュバババって動くし、歌も歌えるし…あれっ!?歌ってるのってネネちゃん?!」
「こんなの、全部私の我儘だし…」
「大丈夫だよ、ネネ。ここにいる皆、我儘放題だったわけだしね」
「また、失敗なんてしちゃったら…」
「そのためにオレたちがいる。その代わりにオレたちが失敗したら助けてくれるとありがたいな!」
ネネは、恐る恐る口に出す。
言いたくても言えなかったことを。
「わ、私でもまた、ショーをしていいの…?」
その答えに返す言葉は決まっている。
「「「もちろん!」」」
知らないことは、多い。
好きなもの、嫌いなもの、なぜショーが好きなのか、なぜショーをするのか。
それでも、同志だった。
でも、これからは仲間だ。
そして、おれももう一歩踏み出す必要がある。
仲間なのだから隠し事はなしだ。
「えむ、類、ネネ」
「名前で呼ばれるのは初めてかな?フフッ、それほどまで気に入ってくれたのならうれしいねぇ」
「ちゃ、茶化すな!」
調子が狂うな本当に…。
「…ま、まぁいい。仲間なのだから、隠し事はなし、ということにする。
だからお前たちも聞いて…いや、見てくれ。オレのセカイを」
スマホを取り出して『Untitled』を流す。
「わわっ!?」「きゃっ!」「これは…」
三者三様のリアクションをしながら光に飲まれる。
行こう、セカイに。