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スピードシンボリという名を聞かれれば、人々は一体何を思い浮かべるだろうか。
人は言うだろう、彼女は〝時代の最先端を走った〟ウマ娘だと。
人は言うだろう、偉業に手を〝伸ばし続けた〟ウマ娘だと。
人は言うだろう、偉大で尊敬に値する〝先人〟であると。
それらはきっと正しくて、世間の総意であると俺自身認めている。けれど、俺は違う。恐らく、俺だけが違う。
「さて、準備運動は済んだ……そろそろ始めようか、〝トレーナー〟」
「そうだな、それじゃあトレーニングを〝再開〟するぞ。スピードシンボリ」
彼女はまだ、〝走り続けている〟。
⏰⏰⏰
時は半月前に遡る……
「エキシビションマッチ? 」
『そうだ、今度始まる企画で日本のトレセン生徒らと関わる事になっている。その最終目録で私自身が彼女らと走る事にした』
久しぶりに聞いた元担当ウマ娘の口から、とんでもない言葉を聞き一瞬目眩がした……が、久方ぶりの感覚に思わず口角が上がる。
「まったく……本当に君は、俺を驚かせるのが大好きだな。スピードシンボリ」
『ふふっはてさて一体、なんの事だか』
「シラを切るつもりかぁ? 世間じゃ時代の先駆者やら、稀代のチャレンジャーやら言われてるが……まだまだ新米だった俺からしたらただの駄々っ子なジャジャウマだったぞ? 」
『愛しの担当ウマ娘の〝可愛いお願い〟、叶えてこそのトレーナーだと私は思うがね』
「ソレは本来俺たちトレーナーサイドが言うものであって、ワガママ言う側のセリフじゃねぇよ」
『細かい事は言いっこなし、我々はそういう間柄だろう? 』
「……くはっそうだな、そうだったな」
言い合いのような、口喧嘩のようなじゃれ合い。現役時代にやったような懐かしいやり取りに破顔してしまった。
「さて、それじゃあ久方ぶりに愛しの〝担当ウマ娘〟の可愛い可愛いお願い……聞き遂げてやるかな」
『ッ! きっキミ、その言い方……』
「ん? なんだ、どうかしたか? 」
『いや、なんでもない。続けてくれ……本当、手放せない人だよ』
「よく分からんが、とりあえず俺はコレから何をどうすればいいんだ。結局仕事についてはまだ聞かされてないぞ」
『あぁ、それなら簡単な事だよ。安心してくれ』
「そいつは良かった、さっきはあー言ったがお前に振り回されるのはこりごりだからな」
『ッ!………………』
カチンッと、何処かで音がなった気がした。
「スピードシンボリ? おーい、どうしたー? 」
『気が変わった』
「え? 」
え? なにごと?
『君にはまた、私を担当してもらう』
「は? 」
『拒否権は無いと思ってもらう、それじゃあ詳しい事は追って連絡するから今日はこれまでに』
「おっおい!? ちょっと待って──」
『君にはとことん付き合ってもらうから、覚悟して貰うよ』
⏰⏰⏰
「はぁ……ほんとーに、俺の人生なんでこうなっちゃうかねぇ……」
「おやおや、キミだって若いとは言えないがコレからどうとでもなる歳じゃないか。そう悲観する事は無いんじゃないかな」
「どうとでもなるっか……」
「ん? 」
俺は目の前にいる担当ウマ娘を見つめ、更にもう一度ため息をつく。
「なっなぁ! ヒトの顔を見てため息をつくってかなり酷くないかなキミ!? 」
「いんや、自覚が無いというのは残酷だなって」
「だから何の話だい!? 」
「こっちの話、お前にゃ関係ないよ」
「キミって、現役の時からもそうやって煙に巻いて……私の気も知らないで……」
「訳分からん事言ってないで、練習始めるぞ」
「はいはい、分かりましたよトレーナー」
♢
「なぁルドルフ」
「なんだいシリウス……ってあぁ、スピードシンボリとそのトレーナーさんか。彼女達がどうかしたのか? 」
「スピードシンボリって確か、独身だったよな」
「あぁそうだね」
「……そのトレーナーが誰かと付き合ってるとかは」
「聞いた事が無いね、彼みたいな人は引く手数多だろうに」
「…………アレでか? 」
「アレでだ……全く彼女もそのトレーナーも互いの前だと当時のままらしい、いやはや微笑ましいな」
「お前がトレーナーの前だとあーなるの、もしかしてアレ見たから? 」
「さて、どうかな」