スピードシンボリのトレウマ   作:ゴールド@モーさん好き

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以前別々に投稿していた物をこちらに纏めました

ウマ娘のスピードシンボリが好きで書いちゃいました!

卒業したスピードシンボリと、トレーナーのお話

ネット掲示板でも書いてます
https://bbs.animanch.com/board/4589284/


〝挑戦者〟の恋の行方

「トレーナーさんお疲れ様でした」

「あぁお疲れ様、ゆっくり休むんだぞ」

「はーい!」

 

 俺は中央トレセンのトレーナー業を営んでいる者だ、今も担当しているウマ娘と練習後のミーティングを終わらせた所だ。俺は机に向かい資料の整理を行っている。

 順調に仕事を進めている俺だが、最近頭を悩ませている事がある。ソレは──

 

「恐らくそろそろ」

「こんにちはトレーナー! 暇だから来ちゃった」

「……〝スピードシンボリ〟」

 

 スピードシンボリ、俺が以前担当を受け持っていたウマ娘だ。卒業して暫くは普通だったのに、どういう訳か〝最近になって〟よく顔を見せに来る事が増えた。

 

「あのなぁスピードシンボリ、学園OGのお前がそう頻繁に来るのはこう……あんま良くねぇんじゃないか? 」

「でもこうやってしっかり入れてるよ、ほら」

 

 スピードシンボリは首に掛けている入校許可証を見せつけるように胸を張り、ふんすっと誇らしげな顔をする。

 

「いやまぁ確かにお前は正規の手順をおって入ってはいるが、けれどお前はやっぱりここの卒業生で、ここは在学生の居場所だ」

「……トレーナーは私に会いたくないってのかい? 」

「そうは言ってない」

「じゃあなんだって言うだい、トレーナー? 」

 

 スピードシンボリはあからさまに嫌そうな表情を見せ、机に片手を支えとし顔を寄せ見つめてくる。

 

「お前とは学園外でちゃんと会ってやる、っと言ってるんだ」

「ッ! そうか、なら良い。それで? 」

「ん? 」

「だから、それで? 会ってくれるんだろう、何時になるか位は聞かせてくれないかい」

「とりあえず今は担当を取ったばっかだ、信頼関係を少しずつ築き上げなきゃいけない時期にある」

「そうだな、大事な時期だ」

「だから少なくとも向こう2ヶ月は隙間時間が計算しにくい」

「……………」

 

 スピードシンボリは嫌を通り越し、落胆した表情でコチラを見下してくる。

 

「どうした? スピードシンボリ」

「……なんでもない、気にしないでくれ。それなら仕方ないし、これからもこうやって私から顔を見せに来るよ。それじゃあね」

「いやだからそうホイホイ簡単に来るなって行っちゃったし……もう……」

 

 俺は机に突っ伏して、暫く考え込んだ後鍵付きの引き戸を開け〝中身〟を見つめる。

 

「………………意気地無しの甲斐性なしだよな、このままじゃ」

 

♢

 

「全く……トレーナーも、あんな風にあしらわなくてもいいじゃないか」

 

 私はトレーナー室を後にし、彼を想う。

 私の挑戦を笑わなかった稀有な人、私の挑戦を受け止め続けたバカな人。そして、私の挑戦に夢を見た……

 

「罪な人……」

 

 未熟者だった私に夢を見させた人、傷心した私に夢を諦めさせなかった人、夢敗れた私に希望を捨てさせなかった人。

 

「我慢ならもう沢山した」

 

 彼には彼の人生がある、だから縛りたく無かった。積み重ねてきたこの想いは所詮子供の勘違いで、色恋に触れてこなかった私の思い違いで、彼には届かないモノという事に〝していた〟。

 その意識が変わったのは、彼から新しい担当ウマ娘が出来た事を、まるで世間話かのように伝えられた時だった。

 

「あの時、ちゃんとした受け答えを出来ていたか自信が無いんだよな。それ以降の会話の記憶かなり朧気で、気がついたら家に居たから」

 

 そこで気付いたんだ、彼が彼の人生を歩むのは良い……けれど、〝他の誰か〟が彼と寄り添い共に人生歩むのが嫌なのだと。

 

「あの人の隣は私だけだ、誰にも譲れない」

 

 あぁ欲しいな、彼が欲しい。誰にも盗られたくない、私だけを知っていて欲しい……

 

⏰⏰⏰

 

「やぁトレーナー、また来たよ」

「スピードシンボリか、いらっしゃい」

 

 ん? また私がトレーナー室に訪れたら、トレーナーはお説教をするでもなく〝昔のような〟笑顔で迎えてくれた。

 

「これからお茶を入れる所なんだが、スピードシンボリも飲むか? 」

「頂くとするよ、ありがとう」

 

 まぁ今日はたまたま気分が良かったとかそういう日だったのだろう、私はそう結論付けてソファに腰掛ける。

 

「なぁスピードシンボリ、君は確かURAの海外事業部を目指して居るんだよな」

「あぁ……私が伸ばした手は着いぞ夢の果てに届かなかったが、私の走りはまた誰かの夢を作った。キミがそう言ってくれたからこそ、私も新たな夢に向けて走る事を決めれたんだ」

「そうだったな……」

「トレーナー? もしかして、疲れてたりするのか? もしそうなら今日の所は」

「いや! そうじゃない、そうじゃないんだ……」

 

 どうも反応が鈍いというか、心ここに在らずのように思えたから心配するが、帰ってきたのは否定の意であった。

 

「そっそうか? ならいいが、無理は禁物だからな」

「あぁ、分かってる……」

 

 トレーナーはお茶を飲み、一息つけながら目を閉じて数刻した後私を真っ直ぐ見つめてきた。

 

「スピードシンボリ」

「なんだいトレーナー? 」

「お前は優秀だ、きっと海外事業部に入り、そこで夢の為に邁進し続けると思う」

「そうあれるように頑張り続けるつもりだよ」

「そこで、だ……海外事業部となれば、その身で実際に海を渡り現地へと赴く事だってあるはずだ」

「そうだね」

 

 海外事業部とは海外のウマ娘が、日本のトレセンやレースと関わる際又はその逆のサポート等を行う部署だ。当然、現地の知見を肌で感じ取る事も必要になるケースがある。

 

「お前はきっと、色んな所に行っても平気だと思う。そう思える程のウマ娘を担当できて誇りに思う……あぁ違う、言いたいのはコレじゃない」

「トレーナー? 」

 

 トレーナーは頭を自分の手でガシガシとするや否や、ポケットから〝なにか〟を取りだした。

 

「スピードシンボリ、俺をお前が〝帰るべき場所〟にして欲しい! 」

「へ? 」

 

 …………はへ? トレーナー、今何言った?

 

「俺はただのお前の元担当トレーナーで、もうお前の夢に全力で応援する事は叶わなくなってしまった。けど、それでも俺はお前と一緒に居たい。疲れたお前にお疲れ様を言ってやりたい、良い事があったお前におめでとうを言ってやりたい」

「えっ待って待って待って、お願いトレーナー待って」

 

 嘘、急に何言ってるのトレーナー。そんなの、まるで……まるで!

 

「俺と、結婚を前提に付き合ってくれ! 」

「──ッ!」

 

 プロポーズ、夢にまで見た愛の告白を私は今受けている。嬉し過ぎて、幸せ過ぎて、何より驚き過ぎて涙が止まらない。

 けど言わなきゃ、トレーナーが言ってくれたように私も言うんだ。私の、気持ちを。

 

「はい、私も……貴方が大好きです」

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