新年を迎えて一月と数日、本日は2月14日……つまりはバレンタインである。世は数日前から甘いチョコや色恋のムードを漂わせている。
「さて、どうしたものか」
俺の名前はスピードシンボリ、俺は1人トレーナー室で悩んでいた。バレンタインには日頃から世話になっている愛しきトレーナーへ、チョコを渡そうとしたのだが……
「結局手作りと市販品、どっちを渡すか決めきれなかったな。今日渡すってのに……」
カバンに入っている2つの箱を見て途方に暮れていた、なんて事ないチョコだが世間のムードがな、ちょっと気になるだけだ。
「いや、俺は別にトレーナーの事は別にそんな……あぁいやトレーナーの事を想ってない訳では無いが、俺も彼も今結ばれたら色々と好奇の目で見られる可能性があるし、何より彼の経歴に傷を付けてしまいかねないからこのチョコはあくまで日頃のお礼に渡すだけであって」
そこまで一人言を言って、俺は机に突っ伏した。一体誰に向かっての言い訳だ、この大バカ者……
『スーちゃん』
思い浮かべるのは、俺の事信じ夢を託してくれ、そして俺が使命を任せたただ1人の男。俺の、俺だけの……
「ふっ、全く……〝挑戦者〟と言われた俺がこんな弱腰になるなんて、それこそ彼に笑われてしまうな」
そこまで考えて、俺は腹を括った。想いは言葉にしない、コレはお互いの暗黙の了解だ。けれど、想いの伝え方なんざ星の数程ある。
「スーちゃんただいま」
「あぁおかえりトレーナー……その袋はなんだい?」
書類を提出する為に一時退出していたトレーナーが戻ると、その手には行きの時には無かった紙袋が持っていた。外からでもある程度分かるぐらいには中身も多い。
「これ? チョコだよ」
「え?」
「以前アドバイスした娘達からお礼にって、お返しなんて考えてなかったからちょっとしたサプライズだね」
っとにこやかに笑うトレーナー、彼がちょくちょく担当を取ってないウマ娘へアドバイスをしていたのは知っている。俺自身彼がそのような事をしていたのは知っていたし、俺も嬉しく思っていた。けど……
「ソファに座って、トレーナー」
「スーちゃん?」
「いいからいいから」
俺は困惑するトレーナーをソファに座らせ、俺も彼の膝に座る。カバンから手作りチョコを取り出しあけるとひとかじり、そして……
「んむっ」
「っ!?」
そのまま彼に口移しをした、彼は驚きのあまり目を見開く。その反応が、俺のドロドロになった黒く熱い〝ココロ〟を満たしてくれる。
「す、スーちゃん?」
「鍵は閉めておいた、誰も部屋には誰も入ってこないから安心してくれ」
「いつの間に?!」
嘘である、けど俺はこの胸で暴れる激情を抑える余裕が無かった。
「今からキミが〝誰の〟トレーナーか思い知って貰うけど、許してよね?」
そういう俺はきっと、はしたない顔をしてると思った。