星馳せる英雄は空を翔ける   作:MuliPhein

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第10話
遂に緑谷くん強化の片鱗が出ます!


体育祭、障害物競争 前篇

雄英体育祭当日。

相澤が宣告したように、警察・プロヒーローが数多く警備に当てられていた。

当然マスコミの面々も生放送のため、全国から集結しつつある。

 

場所は変わり、A組の控え室。

全員が体操着に袖を通し、始まるまでの準備運動等を各々行っていく。

 

「コス着たかったなー」

「公平を期すためだし、しょうがないよ」

 

芦戸がこぼした愚痴に、尾白が苦笑しながらそう返す。

実際、ヒーロー科は青山などアイテムが必須な者を除けばコスチュームやサポートアイテムの持ち込みは禁止されている。

そんな中、芦戸は何やらムッとした表情でアルスの方に視線を移す。

 

「……じゃあ竜間、そのゴーグルなに?」

「……ただの、保護眼鏡だよ。念の為、サポート機能が無いことを、相澤先生にも確認取って…装着する許可はもらってる。けど銃は、サポートアイテム扱いになって……使えないんだけれども」

 

アルスの頭部には、皮の防具と、防具に取り付けられた保護眼鏡を装着している。サポート機能を有していない為、相澤から許可を取り、今回装着して体育祭に臨むのだ。

なお、アルスは今回歩兵銃(マスケット)は使用できない。

歩兵銃(マスケット)は魔具ではない、実在する物品。

一応魔弾を使う上で必須の物だが、魔弾の全てが殺傷性が高すぎるだけでなく、銃自体がサポートアイテムとして扱われてしまった事もあり、一切使用できないのである。

 

「竜間」

「……? どうしたの、焦凍」

 

個性を使用するのに必要なアルスの鞄を取り付け終えた頃に、轟がアルスの元に来ては声を掛ける。

 

「客観的に見ても、実力はお前の方が上だと思う」

「?」

 

突拍子な質問にアルスは首を傾げるが、轟は気にせず続ける。

 

戦闘訓練(まえ)は負けたが…体育祭(こんかい)は負けねぇ」

「……そっか」

 

強い闘志と…それとは異なる別の感情を抱いたその目に、アルスは静かな声で一言返す。

 

要は、宣戦布告だ。

 

以前の訓練の事を、どうやら根に持っているらしい。

 

「おれも…潔く負けるつもりは……ない。今回も…おれが勝つよ……」

 

対して、アルスも挑発し返す。それに対して轟はいささか不機嫌そうになるが、すぐに退く。

しかし今度は出久の方に意識を移した。

 

「緑谷。お前にも負けねぇ」

「……えっ、僕!?」

 

まさか自分にも宣戦布告されるとは思ってなかった出久は、困惑と驚愕を顕にする。

 

「お前…オールマイトに目ぇ掛けられてるだろ。別に詮索するつもりはねぇが……お前には勝つぞ」

 

アルスは目を細める。

出久という、格下(・・)に負ける事などないという、圧倒的な自信。そうでなければ、ここまで強い感情を持って宣言する事などない筈だ。

 

だが、アルスは知っている。

緑谷出久という少年は、既に大きくレベルを上げている事を。

 

アルスは知っている。

緑谷出久は、新たな武器(・・・・・)を得ている事を。

 

「……客観的に見ても、轟くんの方が上なのは、分かってる。でも! 僕だって今日この日まで必死こいて(死ぬ覚悟で)努力してきたんだ!!」

 

───僕も本気で…獲りに行く!!

 

強い強い、思いのこもった言葉。それには轟も半ば圧倒されたらしく、「…………おお」とだけ返して引き下がった。

 

「……かっこいいよ、出久」

 

殺伐とした空気の中、アルスは出久への賞賛の言葉を、ひとり呟いた。

 

 

 

◆◆◆◇◇◇◆◆◆◇◇◇◆◆◆

 

 

 

やってきた入場の時間。アルス達A組は、入場ゲートまでの通路を歩く。

 

『ヒーロー科!! 1年!! A組だろぉ!!?』

 

プレゼント・マイクの楽しそうな実況を聞きながら、アルス達は遂に会場入りする。

各々、緊張の念を募らせる者。高揚感を抱く者といる中、他の科の生徒達も続々と入場してくるが……ヒーロー科1年B組を除いた皆、やる気は薄そうだ。

入場を済ませた事を確認した、主審を務める18禁ヒーロー『ミッドナイト』が壇上に上がる。常闇が「18禁なのに高校にいていいのか」という疑問に対し、何故か峰田が食い気味で肯定していた。

アルスは無視した。

 

『選手宣誓!! 生徒代表、1ーA…竜間アルス!!』

 

1年の選手宣誓は、入試で首席だった者が担う。

つまり、今年はアルスが選手宣誓を行うのである。

アルスは翼を羽ばたかせて空を舞い、壇上に上がっては一通り見渡して口を開く。

 

「……宣誓。おれ達は…スポーツマンシップに則り……正々堂々、戦うことを誓います」

 

お手本通り、または台本通りの内容に、会場は静まり返る。

予想はしていたアルス。仕方なく、ここにひと手間(・・・・)を加える事にした。

 

「…まぁ、ここで、おれから……一言。……全員、一位は間違いなく、おれだから……安心して2位以下に収まるよう、頑張って」

 

以上です、と締め括った途端、他の組から猛烈なブーイングが飛び交う。

A組一同はマジかよやりやがった! と言いたげな表情と共に呟くが、アルスは一切気にも留めず、翼を広げて飛び上がり、元いた場所に戻る。

 

「さーて、それじゃあ早速第一種目といきましょう!所謂予選よ! 毎年ここで多くの者が涙を飲むわ(ティアドリンク)!! 運命の第一種目は…コレ!! 障害物競争!!」

 

モニターに映された障害物競争の文字と共に、ミッドナイトがルール説明に移る。

1年生計11クラスによる総当りレース。約4kmのスタジアムの外周を走り抜け、誰よりも速くゴールする。分かりやすい内容だ。

競走中は自由の校風らしく、コースアウトでもしない限りは何をしてもOKという、割ととんでもねぇものをぶっ込んだが、そこは割愛。

 

そしてコースの出入口に多くの生徒達が殺到する中。

 

アルスはただひとり、最後尾(・・・)で保護眼鏡を掛けながら翼を広げて待機していた。

 

「それじゃあよーい……」

 

…………スタート!!!

 

開始の合図と共に……出入口が氷に閉ざされた。

 

読者諸兄ご存知、轟焦凍の仕業である。

 

元から列の先頭を陣取っていたが故に、氷結と共に誰よりも早く出入り口を出て、先頭に躍り出た……筈だった。

 

「……先に行くよ」

「ッ、竜間…!!」

 

アルスが瞬く間に轟に追いつき、更には追い越した。

アルスの狙いは、最初からこれであった。

氷結の及びにくい最後尾。開始と同時に空を飛んで、文字通り最速で(・・・)凍り付いた出入り口を脱出。

その後は前述の通りである。

空中最速。その肩書きを有するアルスは、轟との距離をグングン離していく。

 

『さーて実況していくぜ! 解説アーユーレディ!? ミイラマン!!』

「無理矢理呼んだんだろうが…!」

『スタートから先陣を切ったのは轟……じゃねぇ!? 竜間アルス!!速ぇ速ぇえ!! あいつどんな速度で空飛んでんだよ!?』

 

実況を始めたプレゼント・マイクは予想外の戦況に驚いた。

初手の凍結。そこから轟が先頭にいると、誰もが思うだろう。しかし空の支配者たる鳥竜(ワイバーン)が躱せぬ筈もなく。

既にアルスは、轟とは圧倒的な差をつけて先行している。

 

『さぁてなんだかんだ先陣を切る竜間だが、このまま順調で行くと思ったら大間違い!! いきなり障害物だ! 第一関門、【ロボ・インフェルノ】!』

 

アルスの前に現れたのは、入試の際に用いられていた雄英ロボ。しかしその数は0ポイント含めて相当な数だ。

 

しかし───

 

「そう。…でも……おれには関係ない(・・・・・・・・)

 

あろう事か、アルスは0ポイントよりも高く飛び上がると、さっさと素通り。傍から興味がないと言わんばかりにあっさり突破する。

その次にあるのは、奈落に連なる無数の石柱。障害物名は『ザ・フォール』。石柱の間にはロープが敷かれており、本来ならば綱渡りをして渡る事を想定しているのだろうが……

 

『……ってそうじゃん!! アイツ空飛べんじゃん!! 意味ねぇ!?』

「……もうちょっと考えて作れよ」

 

プレゼント・マイクは今更気付き、相澤は冷たく突っ込んだがもう遅く、アルスは楽々と突破していった。

そして最後……『怒りのアフガン』なる、言わば地雷原。

地雷の位置は目を凝らせばわかる上に、威力は大したことがないそうだ。

これもアルスは早々に飛び去って突破しようとする。

 

───しかし。

 

「(…なにか、来る)……“キヲの手”

 

体育祭が始まって、初めて魔具を抜いたアルスは、魔鞭“キヲの手”を振り抜くとそこには大きな網があり、“キヲの手”はそれを滅多切りにする。

 

「飛行対策、か…」

『そのとーり! 飛行個性対策用の捕獲ネットだ!! 捕まったら脱出するのは難しいぞ!!』

「厄介だな……」

 

網を落とすのは苦ではない。高速で振るわれる“キヲの手”が、飛来する網を次々と切り落としていく。

しかしこの網、異様に連射性が高い。その上アルスの移動先に合わせて撃って来る為、なかなか身動きが取れない。

その間に、徐々に後続が追い付いてくる。

 

「(ちょっとまずいな……)」

 

これには流石のアルスも、焦りを隠せなかった。

 

 

 

◇◇◇◆◆◆◇◇◇◆◆◆

 

 

 

数刻前。障害物競争が開始した直後。

緑谷出久は、個性『OFA(ワン・フォー・オール)』を20%(・・・)を引き出し、全速力で駆け抜けていた。

 

「(やっぱりアルスくんが先頭か…!)」

 

出久自身、予想はできていたが、その速度は想像以上。おまけに少し出遅れたが故に、その距離は遠い。

 

「(そんなの関係ない。オールマイトとの約束を果たす為……そして、アルスくんに勝つ為!!)」

 

出久はさらに加速する。

そして最初の障害物、『ロボ・インフェルノ』の元に到達。

今の出久なら、撃破する事は容易いだろう。アルスという生きた天災に鍛えられた事も踏まえ、最初相対した時の恐怖など微塵も感じなくなったのなら尚更。

 

───だが。

 

「(今は、最速で突破する事を優先しなきゃ!!)『黒鞭』!!」

 

出久の手の甲から、黒い鞭のようなものが伸び、0ポイントの頭部に貼り付くと、黒鞭と称したそれを巻き取りながら自身を持ち上げて0ポイントの頭部に着地するのと同時に0ポイントの頭を蹴り、再跳躍。

結果として出久は一度も仮想敵と戦闘せずに突破。

次は奈落の障害物、『ザ・フォール』。本来は綱渡りして突破するもの。

しかし出久は20%まで引き出したOFA(ワン・フォー・オール)で柱と柱の間を飛び越えていく。

 

「駄目だ、遅い……」

 

出久はそう独白するが、普通に速い方だ。それでも、先頭三名まで、まだまだ距離がある。

空中で足を繰り返し動作(・・・・・・)しながら飛び越え、『ザ・フォール』を通過し出久は現在6~5番目にまで登り詰める。

最後の障害物……地雷原『怒りのアフガン』で見たのは……

 

「(アルスくんが、苦戦してる…!?)」

 

何度も飛来する無数の捕獲ネット。

“キヲの手”を振るいながら対処しているが、その連射性にアルスは完全に止まってしまっている。

これ幸いにと、後続の轟と爆豪が徐々にアルスへと距離を縮めていく。

 

「(僕も追い付かないと……え?)」

 

意気込む出久が見たのは……

 

……網に捕らわれ墜落するアルスの姿だった。

 

 

 

『おおっと!! 竜間、遂に網に捕まったァ!! これは万事休すかァ!!?』

 

アルスが網に捕まり、翼を羽ばたかせる事が出来なくなり、遂に墜落する様子を、プレゼント・マイクは高々と実況する。

 

「(……“原因を考えて、対策する”……この高さか)」

 

しかし、アルスはまだ諦めていない。

網の中で目を閉じていたアルスは聴覚に意識の全てを集中させ……網が飛ばなくなった事に気付く。

網弾が射出される条件となる、感知対象の高さ。それを理解したアルスは……

 

「……“キヲの手”

 

鞭にあるまじき、異常な程に繊細な挙動で振り抜かれた魔鞭は、アルスの身体にまとわりつく網を、アルス自身を一切傷付けることなく細切れにする。

 

『マジかよアイツ!! 捕獲ネット細切れにしやがった! けどそのままじゃあ地面と激突するぞぉ!!』

「……まさか。おれは」

 

───鳥竜(ワイバーン)だ。

 

アルスは翼を広げる。その瞬間、即座に体勢を立て直し、地面スレスレの低空飛行を始めた。

 

『嘘だろ…一瞬で持ち直しやがったぞアイツ!』

「空中は、竜間の領域だ。あの高さから体勢を立て直すくらい、造作もないだろ。なによりアイツ…捕獲ネットが発射されない高さ(・・・・・・・・)を見抜いたな」

 

相澤の言うように、捕獲ネットが放たれるのは、一定の高度を飛ぶ存在にのみ。

アルスが飛ぶ高さには、反応せずに放たれる事などないのだ。

 

誰もが思う。このままアルスが独走するのではと。

 

しかし、その確信に近い考えは即座に塗り替えられる。

 

アルスの遥か後ろ───轟と爆豪の二人がいる場所から……

 

───深緑深紅の閃光が輝いた。




【魔具紹介】
“キヲの手”
魔具。射程20mにも及ぶ魔鞭。鞭にあるまじき鋭角的で繊細な動作を可能とする。
この魔具の異能は『巻き付いた対象の強度問わず捻じ切る』というもの。かつてこの魔具で“燻べのヴィケオン”の左前肢を捻じ切った。

【次回予告!】
爆豪「俺の前に出るんじゃねぇ、クソナード!!」
轟「お前達には負けねぇ。勝って、俺はアイツを…!!」
出久「それでも! 僕はかっちゃんやアルスくんに……追い付くんだぁ!!」
アルス「……なんで三人とも、真面目に次回予告やってるの?」
轟「……そういや、そうだな」
出久「アルスくん!? それ言っちゃ駄目な奴!?」
爆豪「つーかテメェも納得してんじゃねぇ半分野郎!!」
アルス「次回。【体育祭、障害物競争 後篇】。…さらに向こうへ」

4人「Plus ultra!」

ヒロアカキャラで異修羅構文を書くか否か。

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