星馳せる英雄は空を翔ける   作:MuliPhein

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第16話
異修羅構文、書くの楽しいけど、クラスや二つ名考えるの難しい。


決着、及び準決勝までの小休憩

常闇踏陰。個性『黒影(ダークシャドウ)』。

自我を持つ個性という、世界的にも珍しい個性を持っている。

 

しかし、黒影(ダークシャドウ)は彼の個性ではない。

 

彼には双子の兄弟がいた(・・)。しかし、その兄弟はこの世に生まれ落ちる事なく消えてしまった。

 

彼は、結合双生児である。

本来別々で生まれる筈であった双子の兄弟は、母の中にいた頃に繋がり、今の常闇踏陰となって生まれ落ちた。

黒影(ダークシャドウ)は常闇踏陰の個性となる形で生まれ、同時に常闇踏陰の本来の個性を抑え込む“蓋”として機能していた。

 

本来ならばその“蓋”は外れる事などない。それ程までに黒影(ダークシャドウ)という個性は強力なのだ。

 

そして今、光で弱った黒影(ダークシャドウ)という“蓋”が緩み、同時に常闇踏陰に生じていた強い闘志が引き金となった事で……

 

……常闇踏陰本来の個性が引き出される。

 

 

 

◆◆◆◇◇◇◆◆◆◇◇◇

 

 

 

「……黒影(ダークシャドウ)を、倒したからと言って…俺に勝ったと思うな、アルス。勝つ気になるのなら……俺を! 倒してからにするんだな!!」

 

強い闘志を宿した言葉を、アルスという友に大体的に宣言する。その感情に呼応するように、彼自身の身体にも変化が訪れており───

 

「……踏影、それ…なに?」

「? 何を……ッッ!!?」

 

ドクン、と心臓の鼓動を思わせる音が響く。

常闇の全身に広がった紫のような色合いの紋様。それに伴い彼の足下の影が、影にあるまじき挙動を始め───

影が、アルスへと襲い掛かった。

 

「ッ!」

 

アルスが反射的に翼を羽ばたかせ、後方に飛び退く。

出来なかった。ガクン、と一瞬だけ空に躍り出た自身の身体が、何かに引っ張られた。

見ると、先程の影……違う。アルスの足下の影(・・・・・・・・)がアルスの右脚を捕え、地面に縫い付けている。

 

「(なんだ、これ……)」

 

“キヲの手”。“凶剣セルフェスク”。魔具・魔剣を幾度と持ち替えて攻撃するが、一向に解けない。手応えに関しては、黒影(ダークシャドウ)とよく似ている。

 

「(なら……)」

 

アルスは手元にある魔剣や魔具を投げ捨てた。その瞬間、先程まで鞭や楔の魔剣を形取っていたそれらは、元から存在しなかったかのように光の粒子となって消える。

アルスの個性によって具現化された魔具達は、アルス以外“持つ事も使う事もできない”。そこに例外はなく、アルスの手元を離れた瞬間に消滅する。

それらを投げ捨てた直後、鞄から取り出したのは小さな壺の魔具。“地走り”という。

中身を一滴垂らすと、爆炎が昇る。それは、起点に程近いアルスをも巻き込んだ。

観客や実況を担うプレゼント・マイク達からどよめきの声が上がる。

“地走り”の炎が辺り一帯を焼き尽くすように駆け回る中で、爆炎の起点となった場所から一羽の鳥竜(ワイバーン)……アルスが飛び出す。

飛び出す直前までアルスの体表を覆っていた(・・・・・・・・)光の膜。

“死者の巨盾”という、無敵の防御魔具。

その最小防御範囲は使用者の肉体───即ち、アルスの肉体のみの保護。

先の“地走り”を自身を巻き込む形で放つのと同時に、“死者の巨盾”で身を守り、自身を捕らえる影を光源に晒して焼いた事で、拘束から逃れる事に成功する。

 

「(性質は…黒影(ダークシャドウ)と同じで、光に弱い。……でも、光による攻撃力の減衰が…ほとんどなかった。……似て非なる別の個性と考えた方がいい)」

 

常闇踏陰が発現させた、謎の影による飽和攻撃。

だが、様子からして彼はこの力を全く自覚していなかったらしい。実際常闇はその力を抑えようと必死にもがいている。

 

「…鎮、まれ……鎮まれ鎮まれ鎮まれッ……!!!」

 

気付けば常闇の腕にも影が巡り、鳥のような翼を形取っている。完全に、常闇自身の意思に反しているらしい。

このままでは取り返しのつかない事態になるだろう。

 

「(……助けなきゃ)」

 

友の窮地。一羽の鳥竜(ワイバーン)は、常闇踏陰という友の為に空を翔ける。

だが、現在使用できる魔具や魔剣が制限されている以上、手段は限られる。

“キヲの手”、“凶剣セルフェスク”。このふたつは先程手放した為、再使用までの時間がある以上まだ使えない。

“地走り”も同様の理由がある。

“腐土太陽”。“慄き鳥”。“ヒツェド・イリスの火筒”。“ヒレンジンゲンの光の魔剣”。

いずれも、殺傷性が高すぎるものばかりが残されている。

 

「(なら、詞術で……)」

「【アルスより───】」

『それ以上出るな、竜間』

 

アルスが詠唱を始めた直後、相澤が割って入る。

その瞬間、常闇の足下から広がる影や全身に及ぶ紫の紋様が消えていく。

相澤消太(イレイザーヘッド)の個性、“抹消”。

 

「竜間くん、離れるか口塞いで!」

 

同時に、ミッドナイトが自身のタイツを割きながら常闇に接近。彼女の個性、“眠り香”を吸わせて常闇を眠らせた。

 

「踏影……!」

 

心配の念が滲む声と共に、アルスは眠った常闇の元に飛翔すると抱え上げ、急ぎ足でスタジアムを後にした。

 

 

 

二回戦、第三試合。

その結果は常闇の起床までお預けという、なんとも後味の悪い形となった。

 

 

 

◆◆◆◇◇◇◆◆◆◇◇◇

 

 

 

「常闇くん……」

 

眠った常闇を抱えてスタジアムを後にしたアルスの光景を、観客席から出久を始めとしたA組は心配そうに眺めていた。

入学当初からアルスを通して知り合った訳だが、同じクラスメイトとして心配なのは事実だ。

 

「……試合、終わっちまったのか?」

 

そこに、リカバリーガール診療所から帰ってきた焦凍が、自身の席に着きながら出久にそう問い掛けた。

 

「……色々あってね、常闇くんが起きるまで試合の結果は分からないんだ」

「?」

 

先の試合の状況を知らぬ轟焦凍に、緑谷出久は説明していく。

 

 

一方その頃、リカバリーガール出張診療所。

ベッドの上で規則正しい寝息を立てて眠る常闇踏陰を、心配そうに竜間アルスは見つめる。

先の試合で負った手傷は、既に生術とリカバリーガールの個性で治している。

 

「……無理に付き添わなくたって、控え室に戻ったっていいんだよ」

「……友達が…踏影が、心配だから」

「そうかい」

 

かれこれ30分近くは経つ訳だが、未だに目覚めない常闇に寄り添うアルスに対して、リカバリーガールはそう言う。

 

そんな中。

常闇の瞼が何度か動き、目を開く。

 

「踏影…!」

「……アルス、か? ここは───」

「リカバリーガールの診療所。……目が覚めて、良かった」

 

アルスはほっと息を吐き、安心しきった表情となり、気を張って強ばっていたのか、力を抜いた。

対して常闇の表情は暗いままだ。先の試合での出来事を気にしているらしい。

 

「……アルス。先程は、すまなかった」

「? ……なんで、踏影が謝るの…?」

「俺は……俺は、お前を過剰に傷付けようとしてしまった。故に───」

「…だから。なんで踏影が謝るの?」

 

常闇が謝罪してきた事に、アルスは理由が分からずそう聞き返す。困惑する常闇を他所に、アルスは続ける。

 

「だって踏影のアレ……故意じゃないだろう? だから、踏影に非がある訳じゃないんだし、謝んなくていいんだ……」

「ッ、だが…!」

「くどいよ、踏影。……とにかく、おれはそんなに気にしてないし、怪我だって…もう治ってる」

 

先の試合のハプニング。実際、アルスは本当に気に留めていない。その事を示す様に畳んでいた翼を広げたり、腕を伸ばしたりしてみせる。

アルスなりの気遣いが、今はただ嬉しかった

 

「ッ……すまな……いや、ありがとう」

 

また謝ろうとしてしまった事に気付いて、常闇は言い直しては改めて感謝の念を告げる。

その表情は、先程のような曇った顔とは程遠い微笑みであった。

 

 

 

◇◇◇◆◆◆◇◇◇◆◆◆

 

 

 

「……ところで踏影。試合、どうする?」

「試合…? お前の勝ちで事が進んでいるのではないのか?」

 

アルスが持ち掛けた話題に、常闇は疑問を抱く。

二回戦、第三試合。この戦いは、予想外のハプニングによって一時中断という扱いとなっている。

 

「いや。踏影が起きるまで、動きは未定だって。一応……踏影が望むなら、やり直しもできる」

 

その内容に常闇は悩む。だが、彼は早くに答えを出した。

ある意味で、決まっていた様なものでもあった。

 

「……いや。先の試合で、黒影(ダークシャドウ)は大きく弱体化している上、何より……新たな、俺の個性が再び暴走する危険性もある。そんな状態では、お前と戦っても負けるだろう」

「……いいの?」

 

アルスは申し訳なさそうに、あるいは悲しそうにそう聞き返す。お互い、全力でぶつかり合う事を楽しみにしていたが故の感情であった。

 

「ああ。だが……次は負けん。この個性(ちから)を必ず俺のものにして、な」

 

常闇はアルスへと拳を突き出す。それに応えるように、アルスも右の上の腕で拳を作って彼の拳と手を合わせる。

俗に言う、グータッチと言うやつだ。

 

「……分かった。楽しみにしてる」

 

ひとりの人間(ミニア)と、一羽の鳥竜(ワイバーン)

 

強固にして、確かな絆が垣間見えた瞬間であった。

 

 

 

二回戦、第三試合。

勝利者───竜間アルス。

 

 

 

それは己が片割れである影の怪物を、意のままに操る事ができる。

それは暗黒の元強化される影をその身に纏い、尋常の防御を穿つ攻撃性を備える。

それは影の全てを操り、支配する異能を由来を知らぬまま保有している。

 

光と相容れぬ異能を持ちながら、世に光明をもたらす影の支配者である。

 

影法師(シャドウマスター)人間(ミニア)

 

影差す光明、フミカゲ。




【本作での常闇踏陰】
常闇くんの黒影(ダークシャドウ)、自我持ってるのなんでだろ、と思っていた矢先、何かで『常闇くんと黒影が結合双生児、あるいはバニシングツインなんじゃないか説』を見て、書くか。となって書きました。
違和感あったりしたらごめんなさい。

次回、『準決勝ー勝利の権化と鳥竜(ワイバーン)の冒険者ー』。
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