二試合分詰め込んでしまった。
なので、第二試合の後半は次回。
二回戦、第三試合が結果としてアルスの勝利である事が告げられ、第四試合に移る。
二回戦、第四試合。
切島鋭児郎VS爆豪勝己。
この試合は正史同様、速攻を仕掛けた爆豪によって硬化を破られてしまい、敗北。
これで二回戦の全てが終了し、遂に準決勝。
準決勝、第一試合。
緑谷出久、対、飯田天哉。
◆◆◆◇◇◇◆◆◆◇◇◇
『さぁさぁいよいよ準決勝!! 第一試合! なんだかんだトリッキー! でも殴られると多分痛い! 緑谷出久!!
「さっきから多分ばっかじゃねぇか」
実況の内容に相澤はしれっとツッこんでいく。プレゼント・マイクは無視をした。
そんな実況を気に留めず、スタジアムに立つふたり。
エンジン、飯田天哉。
「……緑谷くん。先の騎馬戦では完敗だった。だが、今回の君との一騎打ち……ボ…俺が勝つぞ!」
「僕だって……負けられない理由があるんだ。今回だって…僕が勝つ!」
飯田天哉は友である緑谷出久に追い付き、勝ちたい。
緑谷出久は憧れの想いに応え、
異なりながらも、どことなく共通している想いを抱くふたりが───
『START!!!』
今、ぶつかる。
「『レシプロ・バースト』!!!」
先制したのは飯田だ。
レシプロ・バーストによる超加速。彼の狙いは、出久の複数個性を発動させる暇を与えず、初手で撃破する事。現状アルスにも並びうる出久を倒すには、今の彼にはそれしか手がない。
「(やっぱそう来るよね!)」
しかしその事を読めぬ出久ではない。
正面へと“セントルイススマッシュ・エアフォース”を放つ。
横薙ぎに振り抜かれた蹴りに伴う風圧が飯田へと殺到し、レシプロの速度を緩める。
減速したその瞬間を狙い、出久は体勢を整えながら屈むと正面に跳躍。上段蹴りの姿勢に移る。
「『セントルイス』……」
「ッ! 『レシプロ』……」
「『スマァァァッシュ』!!!」
「『エクステンドォォォ』!!!」
ふたりの放つ蹴りが交差する。
一から二秒程拮抗し───押し勝ったのは、出久。
「(くっ…! やはり減速した状態では威力も出ないか!!)」
今更ながら、飯田は出久の狙いに気付く。
出久が最初に飯田を減速させたのは、蹴りの威力を落とす為。飯田の蹴り技は、エンジンによる加速が前提となっているものが多い。それが無ければ、15%程度の出力で押し勝つ事は可能である。
「(一旦距離を……)」
飯田は一度飛び退き、再度加速しようとするが、出来なかった。
自分の足にいつの間にか出久の黒鞭が巻き付き、また跳躍してしまった為に体勢を整える事ができず、転倒する。
「ごめんね飯田くん!!」
一応ながら謝罪しつつ、出久は飯田を鞭越しで振り回しては投げ飛ばす。
「くぅっ……! ぉぉぉおおおお!!!」
それでも飯田は、なんとか姿勢を整えては足を着いて踏み留まりつつ、エンジンを吹かせて慣性を殺───
「……『デトロイト』」
「ッ!」
「『スマッシュ』!!!」
───せなかった。
飯田を投げ飛ばした直後に
結局踏み留まれなかった飯田はそのまま場外に。
「飯田くん場外! 勝者緑谷くん! 緑谷出久、決勝戦進出!!」
ミッドナイトの宣言により、今試合は終結する。
場外に倒れ伏す飯田は酷く悔しそうだが、同時にどことなく晴れやかな表情でもあった。
「負けてしまった……今の俺では、まだ君には届かないか」
「そんな事ないよ飯田くん。君のレシプロは、僕よりも速く、長く走れるじゃないか。実際、僕だって最初に無理矢理減速させなきゃ、削り殺されてたかもしれないし」
「緑谷くん……ありがとう。だが、次は負けないぞ。決勝戦、頑張ってくれ」
お互いの思いの丈を告げ、ふたりは固い握手を交わす。その光景に、会場から歓声が上がった。
そしてふたりが観客席に戻る間に、飯田のスマホに着信が入る。
飯田の母からだ。
電話越しで母から告げられた内容に、飯田天哉は言葉を失い…………
少しづつ、少しづつ……どす黒い感情が彼の心を蝕み、支配していく。
準決勝、第一試合。
勝利者───緑谷出久。
「(出久が勝ったのか……)」
生徒控え室。
アルスはモニターで映されていた試合の結果に、大きく感心する。
入学当初とは比べ物にならないほど、緑谷出久は強くなった。
自身の手足を壊していた出久は、アルスが鍛えた事で見違える程の実力者となった。
アルスがそう思い耽っている中、控え室の扉が開かれた。
現れたのは、爆豪勝己。
「「……えっ」」
「あ”っ!? んでテメェがここに……ここ二番かよ、クソが!!」
「(間違えたんだ……)」
どうやら自身の控え室と間違えてきたらしい。
彼にも間違える事があるんだな、と考えていると苛立ちを顕にした爆豪が口を開く。
「トカゲ野郎」
「……トカゲじゃなくて…
「知るか。……“本気”で来い」
凄んだ爆豪が、アルスに対してそう告げる。その言葉の意味を汲み取れなかったアルスは首を傾げるが、続け様に言う。
「全力のテメェを、上から捻じ伏せてやる」
紛れもない宣戦布告であった。
ようやくアルスは彼の思惑を理解する。要は、本気のアルスを捻じ伏せ、自分の方が強いと示したいらしい。
「……上から、ね。……みんな…よく言うんだ。“おれの上を取れば勝てる”……って」
その宣戦布告に応えるように、アルスは爆豪を見据えながらそう呟く。
「……やってみなよ、勝己。おれも、
準決勝、第二試合。
竜間アルス、対、爆豪勝己。
◆◆◆◇◇◇◆◆◆◇◇◇
『さァ、続いて準決勝、第二試合!! 色んな道具を駆使して空も飛べるドラg「だから……
爆破、爆豪勝己。
修羅の如き闘争心を抱く勝利の渇望者、爆豪と、修羅の域に踏み入る実力を備える
『START!!!』
始まった。
「死ねぇ!!」
「【───
初撃、爆豪が正面に大爆破。
アルスが魔具や魔剣、そして空を飛ぶ前に仕掛けたが、それよりも早く力術を唱えて風を操り、その爆破を逸らす。
開始早々、お互いの手の内の読み合い。
詞術の概念を知らぬ観客からすれば、アルスの持つ魔具か魔剣を目にも留まらぬ早さで発動させ、爆破を逸らしたように見えただろう。
その光景には観客と、観戦席にいたヒーロー達は当然湧き上がった。
次に仕掛けたのも、爆豪だ。
爆破で飛び上がると一息でアルスの懐に入り込み、至近距離で爆破を放つ。
しかしそれも、アルスは読み切っている。
「…“凶剣セルフェスク”」
楔の魔剣が盾となって爆破を防ぐと、今度はヂュイ、という音が響く。
爆豪は屈む事で音の原因たる魔鞭を回避。続け様に下から爆破を撃とうするも、既に広げていた翼が羽ばたき、アルスは空を舞う。
故に放った爆破は、アルスの身体どころか体操着の裾すら焼く事なく空振りで終わる。
「『爆速ターボ』!!」
逃がすまいと爆豪は“爆速ターボ”なる技を使って、空に躍り出る。
しかし、アルスは空の支配者である
「“腐土太陽”。“キヲの手”。“凶剣セルフェスク”」
泥の刃が。魔鞭が。魔剣の楔が。次々と爆豪勝己へと殺到する。
しかし彼は爆破を推進力として泥の刃を掻い潜る。次に来る魔鞭を、回避と共に放った爆破で軌道を乱す。次に来る魔剣の楔を爆破で無理矢理散らす。
気付けば爆豪は着地していたが、双方の猛攻に対しお互い未だ無傷。驚く程拮抗していた。
「やっぱりかっちゃんは凄い……アルスくんの攻撃を全部捌くなんて」
その様子に、出久は改めて自身の幼馴染の凄さを理解する。
今の自分にあれらを捌けるだろうか。……無理だ。間違いなく厳しい上、アルス自身も詞術がある。捌くだけで困難だ。
「……もう始まっていたか」
「常闇くん! もう大丈夫なの?」
そこにやって来たのは、先程までリカバリーガール出張診療所にて休んでいた少年、常闇踏陰だ。
「ふたりの尽力あってこそだ。……それよりも、アルスと爆豪が拮抗している様に見えるな」
「うん、実際拮抗してる。“腐土太陽”、“キヲの手”、“凶剣セルフェスク”の連撃を、かっちゃんは全部捌いたんだ」
「あれらを捌くか……修羅め」
常闇もまた、爆豪の能力に素直に感心する。
「【
熱術を唱えると、虚空から一筋の熱線が放たれる。
対して爆豪はスレスレで爆破で飛び上がり、その掌をアルスへと向け───
「『
圧縮した爆破弾を二発放つ。
ここに来て新技。アルスも初見故に、対処が一拍遅れる。
楔の魔剣の柄を振るい、楔を集合させる様に配列しその圧縮した爆破を防ぐ。
背後、爆発音。
後ろを取られた事にアルスは気付き、魔鞭を振るう。
空振り。爆豪の姿はない。
しかし、上から爆発音。上だ。
「ハッ! 取ってやったぞ、テメェの上!!」
先の宣戦布告の意趣返しを、爆豪勝己は述べる。
それでもアルスは平静を保ち、その後を追おうとする。
……それが、不味かった。
「(……掛かったな)」
……“
爆豪の掌から、無数の
その弾幕はステージ全体を覆う程であり、その攻撃は奇しくも一回戦で麗日が見せた瓦礫落としとよく似ていた。
アルスが誰よりも速く空を飛べるのなら、逃げ場を潰せばいい。何より、例え空中でも場外のラインを超えればそれでアウト。
「(……これは、ちょっとまずいかな)」
アルスはその弾幕をどう対策するか、思考を絶えず回していた。
“凶剣セルフェスク”で盾にするか。無理だ。防ぎきれない。
“慄き鳥”で撃ち落とすか。それも不可能。そこまで細かい挙動では飛ばせない。
詞術で防ぐか。これも無理。距離が近い為に詠唱の最中で直撃する。
“死者の巨盾”は、先の常闇との試合で使い切っている。
無敵の魔具には、もう頼れない。
「(……やるしか、ないか)」
唯一、この状況を打破しうる可能性。
しかしそれは、詞術以上に成功する確率が低い。だが、やらねば撃ち落とされるだけだ。
距離を測る。
爆破の弾幕は20。15。10───
───
「……“
アルスの手元が、金色の光を放った。
【塒】
鳥の巣、寝床や小屋などを意味する単語。
次回、『奥義』。