最近忙しかったりで全然執筆できない……
魔剣。
それは、超常の異能を備えた刀剣。その由来はよく分かっていないが、“彼方”から流れてくるものであるという話が最有力とされる。
魔剣の異能は様々だ。
剣閃に伴い炎を放つ魔剣。
認識する限り、敵の攻撃よりも速く剣を振るう事が出来る、先制の魔剣など。
そしてその魔剣達には、それぞれが固有の剣技…“奥義”と称されるものが存在する。
魔剣を持つ者の前に現れ、その者が善悪聖邪であろうと関わらず取り立てる死神、おぞましきトロアが生み出したもの。
しかし、習得は一朝一夕ではない。
世界逸脱の剣豪、柳の剣のソウジロウを以ってしても、習得には時間が掛かるという。
それは、万能の適性を有する星馳せアルスも同様であった。
しかし、彼には剣に対する適性を有していても、剣の頂点にいるソウジロウやトロア程の技量はない。
何より彼には奥義を習得するつもりなど毛頭もなかった筈だ。
ひとつで戦局を覆しうる数多の魔具や魔剣。これらを使いこなせているのならば、奥義を習得する必要性など皆無だろう。
しかし、竜間アルスは違った。
自分は星馳せアルスではない。同じ容姿、能力を有しているのだとしても、わざわざ星馳せアルスの生涯をなぞる必要などないのだ。
ならばこそ、彼がやらなかった事・出来なかった事に手を出し、極めようではないか。
故に竜間アルスは鍛えた。魔剣の技を。
魔剣の奥義を、精々四割程の再現が出来るようになる程度には、魔剣を使い込み続け……今日、その技を初めて振るう事となる。
◆◆◆◇◇◇◆◆◆◇◇◇
「……“
“ヒレンジンゲンの光の魔剣”が抜かれ、光の軌跡が間合い内の爆破の弾幕を六割程を撃ち落とした。
“塒”という、“ヒレンジンゲンの光の魔剣”を用いた防御の剣技。
最強の攻撃を、最強の防御とする奥義である。
とはいえ、今のアルスの技量では間合いの内にある攻撃を全て捌く事は叶わない。
「(残数……この程度なら、捌ける)……“凶剣セルフェスク”」
最後に“凶剣セルフェスク”を放ち、光の魔剣で斬り損ねた爆破弾を断つ。
それでも残ったが……アルスの体躯でも回避可能な位置にある。
アルスは急上昇。自身よりも高い位置に居る爆豪へ、爆破弾を避けながら距離を詰めていく。
「ッ、まだ……!」
対アルスを想定していた大技を破られ、致し方なく“点”ではなく“面”での大爆破を放つ。
掌から火花が弾け、放たれた爆炎がアルス───
「……遅いよ」
───に到達するよりも速く、既に彼は爆豪のいる高さを超えていた。
「……は? グッ!?」
驚きのあまり、爆豪は思わず振り返る。
同時に、彼の顔面をアルスが掴んでは急降下を始め……その勢いのまま地面に叩き付けた。
その衝撃で舞い上がった土や瓦礫がパラパラと音を立てながら落ちていく。
「…!」
パチパチと火花が爆ぜる。
アルスは飛び退こうとするが、爆豪の頭を抑えている腕を掴まれ、一瞬硬直し───超至近距離で爆破を食らう。
地面に叩き付けられてもなお、爆豪勝己の意識は保たれていた。
アルスもまた、叩き付けた程度でやられると思っていなかった。
双方油断していなかった訳だが……仕掛けるまでの速さは、爆豪勝己が上回っていた。
煙が晴れる。
そこには、翼で自身の身体を守るアルスの姿が。
しかしその翼は酷く焼け爛れていて、とても飛翔出来そうにない。
「(生術で治す暇を……勝己が与えてくれるとは思えない……)」
アルスは魔剣と魔鞭を握り直す。
空を飛ぶには、自身に生術をかけて治す他ない。
しかし目の前にいる男は、それを許さないだろう。
真正面からのぶつかり合い。それ以外に、ふたりに道はない。
ふたりは身構える。
先に駆け出したのは、爆豪勝己。
距離を詰め、連続で爆破を放つがアルスは飛び退いて避け魔鞭を振るう。それを見切った爆豪は爆破で上昇して避けつつ、『
それを“凶剣セルフェスク”の楔を的確に挟み込んで防ぎ、再び魔剣の柄を振るって楔を飛ばす。
それでも爆豪は億さず爆破で散らす。
「【
視界が妨げられ、声が爆破音で隠されている僅かな時間、アルスは翼を治療する為の生術を唱え始める。
「【
焼け爛れた翼が元に戻っていく。
しかしその速度は決して早いとは言えず、じわじわと…だが確実に治っている。
アルスの生術の腕前は、万能の適性をもつ持つ故にかなり高い。だが一瞬で治す事など不可能だ。
その間にも治療行為に移った事に気付いた爆豪が、爆煙を突っ切って襲来する。アルスは柄を振るい……降した配列命令は
楔同士が柄に直接連結し、鞭のように…もうひとつの“キヲの手”の如く振るう。
さすがに魔鞭ほどの挙動では振り回せないが、それでも攻防ともに優秀な鞭がひとつ増えたのだ。爆豪と言えど、不用意には近付けない。
爆破で魔鞭と、鞭の如く振るわれる魔剣を飛び退いて避けては、一度距離を取った。
その間にも、先の生術でアルスの翼は治っていく。
その事に爆豪は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。
「(……強ぇ)」
爆豪勝己は戦慄する。
今までの攻撃も、上手く隙に付け入ることでどうにか出来た所も多い。
しかし、今はどうだろうか。
翼の治療に意識を向けていながら、魔鞭と、鞭と化した魔剣。ふたつの鞭を巧みに操り、通常の爆破が届かない距離を維持している。
爆豪としては、もう大規模爆破を放つだけの余力はあと一発限り。
しかし、翼の治療が終われば超高速で空を飛び回れるアルスに当たる事はないだろう。
仮に先程のような広大な弾幕を張っても、“塒”で落とされるだけ。
“原因を考えて、対策する”。
単調ながら厄介なものだ。既にアルスは、爆豪勝己の爆破に対する対抗策を幾つも頭の中に浮かべている。
「(けどなァ…!!)」
……完膚なきまでに叩き潰す。そう決めたからには、引き下がれない。
爆豪勝己は考える。今の自身の機動力では、間違いなくアルスに反応される。
弾幕や閃光で目眩しをしようにも、アルスの優れた聴覚が、こちらの位置を正確無比に捉えるだろう。
「(最速で爆破させるんじゃ、逆に
正史と違い、彼は自身でその答えに辿り着く。
掌の汗を極限まで蓄積し、放つ技。
名を───
「『爆速ターボ』───」
───『クラスター』!!!
先の爆発とは明らかに異なるそれと共に突っ込んだ爆豪。
アルスは、その超加速に驚きつつも魔鞭を振るう。
慣れぬ技故に、急停止などできやしない。
しかし、その不可能を無理にでも可能にする天才がいる。
「甘ぇんだよ!!」
その速度を維持しながら爆豪は上昇。魔鞭を避ける。
アルスの頭頂部に回り、反撃される前に今の自分が出せうる限りの全力の爆破を放……
「……“逆羽”」
……つ直前に、爆豪の掌、脇腹、肩、大腿。上記の箇所に何かが
“凶剣セルフェスク”の、楔。“逆羽”という、楔の刃を散弾のごとく撃ち出す奥義である。
こちらも、今のアルスの技量で四割程度の再現が限界。
そして楔の魔剣の異能……磁力操作が働き、爆豪は墜落。
同時に振り抜かれたアルスの拳が、爆豪の腹部に深々と突き刺さった。
先程と違って爆破で踏み留まれず、地面を転がっていくが、手指の爪を引っ掛けてなんとかラインギリギリで停止する。
二度目の、腹部に衝撃。
見ると、翼を完治させたアルスが空を翔け、爆豪の腹にとどめの蹴りを入れていた。
それに堪えるだけの暇すら無かった爆豪が耐えられる筈もなく。
「爆豪くん場外! 勝者、竜間アルス! 竜間くん、決勝戦進出!!」
場外に、爆豪は押し出されてしまった。
「ッ…クソッ」
「……勝己。でも、おれは───」
「うるせぇ…!!」
アルスがなんだかんだフォローしようと声を掛けるが、怒りの形相を浮かべた爆豪が一蹴し、フラフラとステージを去って行こうとするも、試合中の負傷が祟り、倒れ込んだ後に運搬用のロボットによって診療所に連れていかれた。
アルスはただ、その光景を静かに見守る外なかった。
準決勝、第二試合。
勝利者───竜間アルス。
次回、『決勝戦ー象徴の後継者と