星馳せる英雄は空を翔ける   作:MuliPhein

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初投稿です。よろしくお願いします。


Ⅰ:異界英雄譚
星馳せの転生者 1


地平の全てを恐怖させた“本物の魔王”を、何者かが打ち倒した。名も存在も定かではない“勇者”を決めるべく、黄都によって開かれる六合上覧。その参加者のひとり、鳥竜(ワイバーン)の冒険者…名を“星馳せアルス”という。

彼は最強種、(ドラゴン)の中の最強、“冬のルクノカ”との戦いで敗北。その後試合中に使用したある魔具の反動による暴走で、黄都を襲撃し……『魔王自称者』に認定され、討伐された鳥竜(ワイバーン)の英雄。

 

「……いや。誰も予想できないでしょ。その星馳せアルスに生まれ変わるだなんてさ」

 

そう一人つぶやくのは、三本腕(・・・)の奇形の鳥竜(ワイバーン)の幼体。彼は、読んで字のごとくの転生者である。

彼には、所謂『前世の記憶』なるものがある。熱狂的ではないが、書籍を買って読む程度の『異修羅』と呼ばれるライトノベルの読者であり、その中でも『星馳せアルス』というキャラクターを推していた。

とはいっても前世の自分が何故死んだのか、またかつての自分の名前や誕生日も曖昧で、辛うじて性別が男であったことを含め、覚えている記憶の方が少ない。

とは言っても星馳せアルスというキャラクターの姿形で生まれたのなら、そのキャラクターが住まう世界なのだろうか、と考えていたのだが……

 

「『彼方』……にしては荒廃してないどころか、むしろ発展してるよね。それに、砂人(ズメウ)狼鬼(リカント)みたいな人がいっぱい居る……」

 

異修羅世界における異世界、『彼方』。“客人”がかつて住み、逸脱の何かを備えた“客人”を追放する世界。

アルスは最初、自分は『彼方』の方にいるのかと考えた。

しかし、今アルスがいる世界は作中で描写される『彼方』とはだいぶ異なるどころか、人族や魔族、鬼族に類似する見た目の者が非常に多い。

 

「…ほんとに、何がどうなってるんだろう」

 

アルスは自身に起きた事、これからどうなるのかが全く分からず、ひとり悩む。

そんな中、自分の元にひとりの人間(ミニア)の女性が現れた。

 

 

 

◆◆◆◇◇◇◆◆◆◇◇◇

 

 

 

竜間龍子。個性『ドラゴン』。

後にリューキュウと呼ばれるヒーローとなる彼女が『それ』を見付け出したのは、本当に偶然だった。

普段通らない、たまたま通り掛かった道にある小さな路地。その入り口で座り込む、小さな蜥蜴を見付けた。

否。蜥蜴というには、その体躯は幼稚園児並みに大きく、腕がある場所から翼が生え、三本の前肢が垂れ下がっていた。

彼女は、直感的にこの容姿の“個性”の子供だと認識した。心配になり、屈んでは優しく声を掛ける。

 

「……だれ?」

「私は龍子。竜間龍子よ。ぼく、お母さんとお父さんはどうしたの?」

「…しらない。きがついたら、ずっと…ひとりだったよ……」

「ッ…!」

 

捨て子、あるいは浮浪児。しかも奇形の幼子だった。

様子からして、自らの状況をまだ掴みきれていないらしい。

 

「名前は、分かる?」

「……“アルス”」

 

苗字は、と聞いた。分からない、と返ってきた。

意を決した彼女は、座り込む彼へと手を差し伸べる。

 

「そう、アルス君ね。……私と一緒に来てくれる? 大丈夫、あなたを助けたいだけだから」

 

その手をしばらく見つめたアルスは、その小さな翼を龍子の手に添える。彼女の想いに、答えた証明でもあった。

 

 

結果、龍子が家にアルスを連れ帰った後、彼女がアルスの親を探したが既に故人だった。大きな事故に巻き込まれたらしい。

縁者もおらず、アルスは天涯孤独の身であったが、竜間家が彼を引き取る事になり、アルスは龍子の弟に。

 

この日を以って、ただのアルスだった彼は『竜間アルス』となったのである。

 

「龍子姉さん」

「どうしたの、アルス」

「ヒーローって…なに……?」

 

ある日、アルスは物心ついた時から傍らにあった大きな鞄を持ちながら、龍子にそう問い掛けた。

龍子は知る由もないが、アルスは転生者。彼女の家族となり共に住む事になってからというもの、この訳の分からない世界についてを知ろうとしていた。

アルスの問いに一拍置いて、龍子は答える。

 

「ヒーローというのはね、誰かを助けるお仕事なのよ。アルスも…ヒーローになりたいの?」

「特には、考えてないけど……でも」

 

アルスは自らの翼を見る。

かつて龍子の手を取った小さな翼。彼女の手の温もりは、未だに残っている。

 

助けられた命。右も左も分からない己を、救ってくれた人。ならば。

 

「おれも、龍子姉さんみたいに…なりたい、かな…」

 

それが、矮小な一羽の鳥竜(ワイバーン)が抱いた目標にして、願い。

その願いへ向けて、アルスは成長する道を選ぶ。それを、龍子は否定することはなかった。

 

 

 

───それから、十年と数年の年月が過ぎた。




本作のアルスは原作とは中身が違う為、喋り方以外相違点が多いです。
2025/03/31 ー追記ー
コメントでご指摘いただいたので、ちょこっと本文と設定弄ります。
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