星馳せる英雄は空を翔ける   作:MuliPhein

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第三話です。
魔具をどう活用させるか難しい…


最初の苦難 1

入試から数日後。アルスは家に置いてある原木をジッと見つめていた。

 

「“茸垣(たけがき)”。椎茸、エリンギ……できてるな。よし…」

 

“茸垣”。

複雑に入り組んだ原木からキノコが生える、ただそれだけの非戦闘用の魔具。中にはこの魔具でしか生やせないキノコも存在するらしい。

“星馳せ”もそうだったが、アルスもなんだかんだ気に入っている魔具で、キノコ料理を作る上で重宝しており、キノコの材料代が浮くだけでなく、この魔具は性能も特段強力ではないために、ずっと出し続けられる特性を有している。

 

「今日は…キノコの入った野菜炒めかな。……ん?」

 

鳥竜(ワイバーン)の耳が、家のポストに何かが入った音を捉える。調理道具を置いたアルスはポストを確認する。

そこには、アルス宛のひとつの封筒。封筒には『雄英高校』と書かれていた。

 

 

 

アルスはリビングの広いテーブルの上で封筒を開封する。

中には書類と、小さな機械。アルスは機械のてっぺんにあるボタンを押した。その瞬間、機械から発された光が、空間にスクリーンを投影し───

 

『私が投影されたァ!!』

「……オールマイト?」

 

なんとスクリーンには、No.1ヒーロー、オールマイトが映し出されたのである。

なんでも来年度…つまりアルス達新入生の入学に合わせる形でオールマイトが教師として就任するらしく、サプライズで合否を伝えるのだそうだ。

 

『竜間少年、(ヴィラン)ポイント63ポイント! 文句なしの次席合格さ!』

「…そっか。よかった……」

 

合否結果、アルスは次席合格。その事にアルスはホッとするも、何故か、映像が終了する兆しがない。

 

『しかし! 我々が見ていたのは、敵ポイントのみにあらず!!』

「ん…?」

 

映像が続く。怪訝そうに首を傾げるアルスを他所に、映像のオールマイトが説明する。

救助活動(レスキュー)ポイントと呼ばれる、審査制の別枠のポイント。怪我人の救助や手当てなどの救助活動を行った際に振られるポイントであり、撃破点と合算するのだという。

つまり……

 

『竜間アルス、救助活動(レスキュー)ポイント50ポイント! 合計113ポイント!! 君こそが、今年の首席合格さ!!』

「……首席、合格」

『おめでとう、竜間少年! 雄英(ここ)が君のヒーローアカデミアだ!!』

 

オールマイトが最後にそう締め括ると、映像が終了する。

結果を聞いたアルスは、早速リューキュウ(龍子)に連絡を入れる。

勿論、彼女には大変喜ばれた。

その後龍子から「合格祝いよ!!」と一際高いレストランに連れて行かれた。

 

 

 

◇◇◇◆◆◆◇◇◇◆◆◆

 

 

 

「実技総合成績、出ました」

 

合否通知が送られる数日前。

モニターがある一室に集められた教員たちは、ミッドナイトの一言と共に、一斉にモニターに視線を移す。

 

救助(レスキュー)0で二位とはなあ!」

「後半、他が鈍る中“爆破”の派手さを活用して仮装(ヴィラン)をおびき寄せて迎撃し続ける……タフネスの賜物だ」

「対照的に(ヴィラン)ポイント0で八位。アレに立ち向かったのは過去にも居たけど、ぶっ飛ばしたりしたのは久しい。ただ、発動の衝撃で甚大な負傷……まるで個性を発現したての幼児のような……」

「けどやっぱよォ……一位のコイツ、竜間アルス! こいつァすげぇぞ!!」

 

各々の教員が、二位以下の評価を降していく中、プレゼント・マイクが一位……即ち、アルスについて言及し始めると、流れが変わった。

 

「空を飛ぶ事で素早く索敵しつつ迎撃……また、個性で取り出したサポートアイテムらしき武具の扱いも卓越している。武器ごとに扱いが異なるというのに、だ」

「特に、このラ〇トセー〇ーのような剣……まさか、0ポイントを一刀両断してしまうとは。とんでもない威力だな」

「0ポイントの腕を防ぎ切る、あのペンダントみたいなのはなんだ? あれだけの質量差すら無視して、完全に防御するなんて……」

「さすがに制約はあるでしょう。あれだけの防御力をおいそれと発揮できるように思えませんし」

 

教師達がアルスの能力を話し合う中、ひとりのくたびれた男性は、その光景をうんざりとした様子で見据えていた。

 

 

 

◇◇◇◆◆◆◇◇◇◆◆◆

 

 

 

「ネクタイは……うん、ちゃんと締めれてる…」

 

中学を卒業して約一ヶ月。遂にこの日アルスは雄英高校の一年生となる。

制服に着替えてから、鞄の中に一通りの荷物があるのかを確認して、肩下げ鞄を掛けた。

龍子…もといリューキュウは既に家を空けているため、自宅にはアルスだけだ。

ただし、アルスの入学式には必ず来るそうで、先に事務所で予定の調整等を行うらしい。

 

「…いってきます」

 

ひとりそう呟きながら家の鍵を閉めると、アルスはその大きな翼を広げ、空を舞う。

雄英までは、自宅から公共交通機関を利用して約40分。

しかしアルスが空を飛んで移動する場合、信号による停止も無いためノンストップで向かう事ができ……なんと20分足らずで到着する。

 

「おれのクラスは…1ーAか…」

 

昇降口に掲示されている名簿で、自身のクラスを確認したアルスは、早速教室へと足を運ぶ。

廊下含めた全てが広々としており、別に飛んで移動してもいいのだが、なんとなく歩いて移動してみたくなったアルスは、そのまま歩いて教室前へとやって来る。

 

「(あれ、彼は……)」

 

教室の前には、緑がかった黒髪の男子生徒。

よく見るとアルスには見覚えがある。

 

「…校門で、転び掛けてた人……?」

「えっ」

 

緑髪の少年は、アルスの呟きに驚いたのか肩を跳ねながらアルスの方を見る。

 

「(デカッ!? ド、ドラゴンの個性…!?)」

「君も、A組…?」

「えっ!? う、うん…」

「そっか。…おれはアルス。竜間アルス」

「あ…ぼ、僕は緑谷! 緑谷出久! よろしくね、竜間君!」

「アルスでいいよ。おれも、出久って呼ぶから」

 

なんだかんだ、早速緑谷出久という少年と仲良くなったアルスは、二人揃って教室に入る───が。

 

「机に足を掛けるな! 先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないのか!?」

「思わねーよ! テメーどこ中だよ端役が!」

 

教室に入った途端、眼鏡を掛けた真面目そうな男子生徒と、不良を思わせる様な風貌の男子生徒の二人による、罵り合いが始まった。

 

「(ツートップ!!)」

「うるさいな……出久、どうしたの…? 知り合い…?」

「あ、まあ……うん」

 

絶望する様な表情を浮かべている出久の様子に、アルスは怪訝そうに首を傾げる。

すると眼鏡の男子生徒がこちらに気付き、出久の方に歩いてきては自己紹介をする。彼は飯田天哉、という名前らしい。

そんな彼は、何故か悔しそうにしつつ出久を賞賛している様だった。二人の関係性がイマイチ分からず、置いてけぼりのアルスだったがアルスの元に二人の生徒がやって来る。

 

「ケロ。やっぱりあなたも受かってたのね、英雄(ヒーロー)さん」

 

アルスは、声を掛けられた方を見る。その二人は、いずれも見覚えがあり、アルスはすぐに思い出す。

片方は、五体の仮装敵に囲まれ、窮地に陥っていた男子生徒。もう片方は───

 

「きみは…あの時、お邪魔虫に…潰されそうになってた……」

「そうよ。あの後、お礼が言えなくてごめんなさい。助けてくれてありがとう」

「俺も同様だ。重ねて助太刀、感謝する。俺は常闇踏陰。こいつは俺の個性の黒影(ダークシャドウ)だ」

『ヨロシクナ!』

「蛙吹梅雨よ。梅雨ちゃんって呼んで欲しいわ」

「竜間アルス。よろしく。踏影に、梅雨」

 

各々が親睦を深めていく中、アルスの耳が僅かな異音を捉える。反射的にマスケット銃を取り出し、銃口を『ソレ』へと向けた。

そこには……寝袋に包まれたくたびれた男が、床に寝転がっていた。

 

「誰、アンタ…」

「…竜間。それしまえ。危ないだr「出久、警察に通報して。不審者が校内にいる、って」オイちょっと待て」

 

男は全力で止めた。無理もない。

 

「……ったく。いきなり銃口向けながら通報促す奴がどこにいる」

「怪しいでしょ、普通……」

 

無駄に伸ばした黒髪を掻きながら気を取り直した男は、教室に入ると着席するよう促す。

 

「担任の相澤消太だ。よろしくね。早速だが……体操着(コレ)着てグラウンド出ろ」

 

寝袋から取り出した体操着を配りながら、相澤、と名乗った男はそう告げる。

 

「(なんか…生暖かい……)」

 

つっこまなくてよい所を、アルスは心の中でつっこんだ。

 

 

 

◇◇◇◆◆◆◇◇◇◆◆◆

 

 

 

『個性把握テストォォォ!?』

 

だだっ広いグラウンドにやって来たA組一行。

相澤主催のこの行事に、一同驚きと困惑を隠せない。

 

「入学式は!? ガイダンスは!?」

「ヒーローになるなら、そんな悠長な行事、出る時間ないよ」

 

ひとりの女子生徒、麗日お茶子がそう問い掛けるも、相澤は無慈悲にもバッサリと切り捨てる。

雄英高校の校風は、まさしく『自由』。それはなにも生徒側だけの話ではなく、教師側もまた然り。

そして『個性把握テスト』は小〜中学まで行った体力テストを、個性を使用した上で測定する、という内容であった。

 

「竜間。お前中学ん時、ボール投げ何メートルだった?」

「? …69メートル」

「んじゃ個性使って投げてみろ。円の中なら、何しても構わん」

「じゃあ……魔具を使っても、大丈夫…って事ですか……?」

「まぐ? ……ああ、お前の個性で出す、あの武器類の事か。好きにしろ」

 

許可は降りた。

アルスは円の中に入りつつ、鞄からひとつの鉄筒を取り出す。

 

「え待って。あいつ、どっからあの鉄筒出したの???」

「鞄から取り出したように見えましたが……」

 

そう。その筒の大きさは、アルスが腰部に取り付けている鞄の大きさを超えていた。

それを無視して、筒の穴にボールを投げ入れたアルスは、角度を調整して構えた瞬間……超高速でボールが射出された。

 

『……!?!?』

「……“ヒツェド・イリスの火筒(ほづつ)

 

魔砲から放たれたボールは長い長い放物線を描き、やがて減速して墜落し……遂に地面に着弾する。

 

───衝突音と共に巨大な土埃を巻き上げながら。

 

ピピッ、という電子音が鳴り響くと、相澤の端末に数字が表示され、それを皆に見せる。

 

「『3425.3m』ぅ!?」

「どんだけぶっ飛ばしたんだよ!?」

 

各々が驚愕を顕にするのをアルスは気に留めず、“ヒツェド・イリスの火筒”を鞄に仕舞う。

 

「まずは自分の最大限を知る。それがヒーローの素地を形成する、合理的手段」

 

制限なしの個性使用。その事実に高揚感を覚える者は大小問わずおり、誰かが「面白そう」と告げた。

その瞬間、相澤の纏う空気が変わった。

 

「……面白そう、か。ヒーローになるための三年間、そんな腹積もりで過ごす気でいるのかい?」

『!?』

「よし。トータル最下位の者は見込みなしと判断し……除籍処分(・・・・)としよう」

 

その言葉に、大多数が絶句する。

 

先程、相澤は告げた。『雄英の自由の校風は、教師もまた然り』、と。

 

「ようこそ、雄英高校ヒーロー科へ」

「(…Plus ultra(さらに向こうへ)の精神で、取り組まないと……生き残れないな)」

 

アルスは察する。これが、雄英に入学して最初に訪れる苦難であると。




次回から個性把握テスト本番になります
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