後書きの次回予告、書くの楽しい。
異修羅の設定を上手く落とし込むの、難しいなぁ……違和感あったら教えて下さい!
試合終了後。
ビルの凍結を轟の個性である左の熱で溶かしたあと、五人はモニタールームへと赴いた。
講評の時間である。
先程同様、今試合のMVPは誰なのか、というオールマイトの問い掛けから始まり今回も八百万が返答する。
「はい、オールマイト先生。竜間アルスさんですわ」
「おれ?」
「竜間さんは、轟さんと障子さんお二人の動きをしっかり読んだ上でチームメイトを適切に動かし、かつ竜間さん自身も轟さんを単独で制圧しました。
尾白さん、葉隠さんは竜間さんの作戦に流されて動いている節が強く、もう少し自主性を伸ばすべきかと。
障子さんは轟さんの氷結で完封できたと思い込み、索敵を中断してしまい、尾白さん達の行動の自由を許してしまっている気の緩みが目立ちます。
そして轟さんも、総合的な攻撃や判断は何も間違ってはおりません。ですが、最後の竜間さんの攻撃の対処が遅れて制圧されてしまっている点から、気を緩まずに立ち回る必要があったかと。……以上ですわ」
「う、うん……正解だ(また全部言われちゃったよっ!!)」
流れる様に評価点・改善点を全て述べた八百万に対し、オールマイトはややゲンナリとしていた。
そんな中、轟がアルスの元に歩み寄る。
「竜間。ひとついいか」
「どうしたの?」
「お前が最後に撃ったあの熱線……あれはなんだ?」
「熱線……熱術のこと?」
アルスが轟の問いに答えるが、聞き覚えのない単語に、轟は顔を顰める。
「俺も気になっていた。最後の攻撃は魔剣や魔具の類には見えなかったが……その熱術とやらに興味がある」
そこに常闇も加わる。気付けば、何人かのクラスメイトがわらわらと寄って集ってきていた。
「熱術は…説明するの面倒だけど……要は詞術を使って撃っただけだよ」
『詞術?』
一同、首を傾げる。またしても聞き覚えのない単語。
そんな中で唯一、八百万だけが反応を示した。
「し、詞術!? 竜間さんは、詞術で会話する事ができるのですか!?」
「うん。というか……おれは生まれた時から、ずっと詞術で話してるよ。日本語では、話してない……いや、どっちかと言うと、日本語に近い、別言語かな……?」
『は?』
突然意味のわからない事を言い出したアルスに、一同茫然とする。
おかしい。事の発端は、轟がアルスの熱術について聞いただけである筈なのに、いきなり言語関係の話まで飛躍しだした。
「竜間さん! どうか詞術について教えていただけないでしょうか!?」
「え、いいけど……」
「八百万少女! 授業中だから!!」
目を輝かせながらアルスに詞術を教えてほしいと頼み込んだ八百万。しかしその手前でオールマイトが待ったを掛けた為、そのまま戦闘訓練は続行された。
◇◇◇◆◆◆◇◇◇◆◆◆
放課後。
戦闘訓練は、出久を除き誰も大きな怪我を負うことなく終了する。
更衣室で制服に着替えた各自は教室へと戻り、反省会を開く事になったのだが……爆豪は皆の静止を完全無視して帰ってしまった。
それはさておき───
「竜間さん! 詞術についてを───」
「いいよ。いま、教えるから……」
八百万を筆頭に、アルスの用いる詞術について興味を示した面々が集まっていた。
「まず、百。詞術について、どこまで知ってる…?」
「はい。お恥ずかしながら……人類が文明を興して間もない頃、一部の人族が扱っていた異質な言語で、突然廃れて滅んでしまったもの、という事しか……」
「うん、おれも…それは知ってる。一応調べてるし。じゃあ、詞術の基礎から、教えるよ」
「詞術というのは、相手に自分の“言葉”を
その説明に、一同驚愕を顕にする。
だが矢張り、まだ理解と納得出来ていない節も多々あるのは事実だ。
「ど、どんな言語でも…!? そのようなこと、どの文献にも……」
「多分だけど、詞術を使っている自覚と認識、そして詞術を使える身体の人が、徐々に減っていったんじゃないかな。もしかしたら……今の人にも…詞術が使える人は居るのかもしれない。けど…その自覚が無いから…詞術の話をほとんど聞かないんだと思う。まあ当時を知らないから……確証は、ないんだけどね……」
詞術は、異修羅の世界のみにあるものだと、アルスは思っていた。
しかし、この世界は“彼方”と酷似していながら、詞術の概念が存在している。
アルスが想像する以上に、詞術の概念は様々な世界に存在しているのかもしれない。それこそ、その概念を理解する事も、気付く事もないだけであって。
「話を戻すよ。詳しい原理は…おれも分からないけど…要はおれが発した言葉が、相手の用いる言語に置き換わって、聞こえる。逆もまた然り、相手が発した言葉は…おれの使う、言語になって聞こえるんだ……」
「それってさあ、つまり……英語の授業とか無双できんじゃね!?」
「上鳴アンタ天才!」
金髪の電気を発する個性の持ち主である少年、上鳴電気が呑気にそう言うと、桃色の肌と髪の少女、芦戸三奈が相乗りする。
「残念だけど……そういう訳にも、いかない。あくまで、
「「何ィィィ!?」」
しかし、アルスから非常な現実を叩きつけられ、二人は無惨にも膝から崩れ落ちる。
そんな二人を意に返さず、轟がアルスを睨みながら問い掛ける。
「まて、竜間。詞術ってのは、要は“会話する為の力”って事だろ。そんなんで、どうやってあの熱線を撃てる」
「……落ち着きなよ、焦凍。焦ったって、答えがすぐ出る訳じゃない」
「なんだと?」
「おれが話してたのは……あくまでも“広義の詞術”。日常会話をするに当たって……使う詞術なんだよ」
「広義…? つまり、“狭義の詞術”も存在していると?」
「そう。“狭義の詞術”こそが、熱術に…関係している」
次の話題。それは狭義の詞術。
新たな単語に一同静かに傍聴する。
「……“狭義の詞術”は、詞術の力を用いて……対象に、燃えたり物を動かすように頼んで、特定の現象を起こす。そしてそれらは、四つの系統がある。『力術』。『熱術』。『工術』。『生術』の、四つ」
「力術は…ものを動かしたり、飛ばす系統。熱術は…炎や電気……熱に通ずるエネルギーを生成する系統。工術は…物質の形を変える系統。生術は…物質の性質を変える系統。これらを使うには、必ず詠唱を口にする必要があるんだ…」
四系統全ての基礎的な概要を話したアルスだが、何人かは理解しておらず、頭を抱えて呆然としていた。
その様子に、アルスは仕方ないな、と言わんばかりの表情を浮かべた。
「……実際に見せた方が…早いか。コップとか水入れられるもの、ない? できれば……三つ」
「えぇ……こちらに」
八百万が個性を用いてコップを三つ創り出す。それを受け取ったアルスは、手洗い場にひとり赴いて水をコップに注いで戻ってくる。
「熱術は、試合中に見せたから……今から…順に力術、工術、生術の詞術を見せるよ。まずは、力術から」
水の入ったコップのひとつを取ったアルスは、自身を囲う皆に見える様にする。
「【
アルスが詞術詠唱を終えると、突然コップ内の水がひとりでに飛び上がった。アルスは腕どころか手首すら動かしていない。
「おおっ!」
「でも、イマイチ分かんねー…」
瀬呂がそう言う。実際、皆の反応はやや微妙だ。
「……そう言うと、思った。次は、工術」
水が吹っ飛び、水の面積が半分程になったコップを置くと、次はまた別のコップを取る。
「【
先程と異なる詞術詠唱を終えると、アルスはコップをひっくり返す。すると、コップから出てきたのは、液体の水ではなく……
「え、氷!?」
「ううん、違う。…触ってみて」
「……ケロ!? 氷みたいな見た目なのに手が沈むわ!? それに冷たくない……どうなってるの?」
「文字通り、水に形を与えたんだ。……ただ、氷の硬さや冷たさは、付与できないんだけどね」
アルスと言えど、そこまでの事はできない。
しかし、工術を極め抜いた存在はその限りではないらしい。“窮知の箱のメステルエクシル”は
メステルエクシルの工術は、単なる変形に留まらず、もはや別の物質に変化させているという訳の分からない事をやってのけているらしい。
「最後は……生術」
その話題はさておき、アルスが最後のコップを取ると、再び口を開く。
「【
詞術詠唱を終えるが、何も変化はない。
その事に、皆怪訝そうに首を傾げる。
「……電気。これ、飲んでみて」
「えっ」
「いいから」
無理矢理押し付けられたコップを、上鳴は仕方なさそうにコップに入った水を飲む。
「!?!? にっっっが!?」
「……生術で、味を変えたんだ。やろうと思えば…水をお酒にもできる。使いようによっては……治療にも使える系統なんだよ」
味変した水の苦さにのたうち回る上鳴を他所に、アルスは生術の説明を加える。
皆が感嘆する中、轟は未だ疑問を抱いた表情を浮かべていた。
「…何かを媒介にすりゃ、詞術ってのが使えるのは分かった。だが、あん時は何も媒介に出来るもんは無かっただろ」
「あったよ」
「は?」
「風。厳密には……酸素」
「……そういう事かよ」
熱術の媒介は空気を用いる事が多い。
あの時、ビルの壁に空いた大穴から入り込んだ大量の風が熱術の根源となったのだ。
「それを狙ってたのか」
「いいや……狙ってない。おれはただ…射線を開く為に“ヒツェド・イリスの火筒”を撃っただけだから」
「……そうか」
要は、偶然の代物。あの時、アルスが満足に扱えたのは
何も狙っていない。単なる偶然とアルス自身の発想がもたらしたものである。
「……ところでアルス。詞術は、俺達にも習得できるものなのだろうか?」
「無理」
「!?!?」
常闇がソワソワとしながら問うも、アルスが即不可能と断言する。
「詞術は…完全に生まれつきのもので…おれは、たまたま使えただけだからさ。聞くけど、踏影。外人と話した時や会話を聞いた時、自分の言葉で聞き取れた事……ある?」
「…………ない」
「じゃあ、無理だね」
「た、鍛錬すれば身に付けられる事などは……」
「ない。言ってしまえば…認識と、身体構造の問題。……詞術を使わない身体と認識を持って生まれた以上、決して詞術は使えない……」
───それこそ、
“窮知の箱のメステルエクシル”の半身、エクシルは
軸のキヤズナの手によって
「なん…だと……」
常闇は項垂れる。厨二病を患っている彼からすれば、詞術というものはその厨二心をこれ以上ないほど刺激する概念であり、『もしや自分も使える可能性があるのでは』という淡い期待を抱いたものの、アルスによって粉々に粉砕されたのだ。無理もない。
何故項垂れるのか理解できなかったアルスは、慰めようとする中で教室の扉が開かれた。扉の方を見ると、ギプスを着けた出久が入ってきた。
「デクくん! あれ、怪我治して貰えなかったん!?」
「麗日さん。これは僕の体力的なアレで……ところで、かっちゃ……爆豪くんは…?」
「勝己なら…早々に帰って行ったよ……でも歩きだったし、敷地も広いから…まだ近くかも」
「本当!? ありがとうアルスくん!」
アルスの言葉に出久は急ぎ足で教室を出て行ってしまう。
何か用事があるのだろう。
しばらくして出久が帰ってくる。
爆豪への用事を済ませたらしい出久は、先程よりも意気消沈している様子だった。
「大丈夫…?」
「あ、うん。大丈夫。心配かけてごめんね、アルスくん」
「それなら…いいけど……出久。腕、見せて」
「え!? い、いや見せるのは……折れてるし腫れてるし……!」
「いいから」
アルスが折れた右腕に取り付けられているギプスの隙間に手を差し込み、折れていると思われる箇所を強く握る。
「痛っでぇぇぇえええ!?」
「ごめん……ここか。これなら……」
「【
生術の詞術詠唱を行ったが、一見すると何も起こらない。
しかし、出久にだけ分かる明確な変化が起こる。
「……あれ? 痛くない……って、治ってる!?」
『なあっ!?』
「いや…完全じゃない。まだ、痛みと違和感はある筈。身体を休めて、明日リカバリーガールに診てもらえば…完全に治ると思うから……」
「こ、これもアルスくんの個性…?」
「いいや。これは、詞術。皆には説明したけど、出久にも教えるよ……」
アルスは先程の説明を出久にも行う。
さすがに四系統の実践は控えたが……出久は早い段階で理屈を理解していた。
「そうだったんだ……ありがとうアルスくん。でも、どうして完治させなかったの? ……ああいや! 図々しい言い方になっちゃったけど、そんな意味は無くって!」
「分かってる。しなかったんじゃなくて、出来なかったんだ。まだ…出久の事、完全に理解してないから……応急処置をしただけ」
「どういう事?」
「詞術行使に必須なのが…対象への理解度。土地、物品、人物。それらに対する理解が不足していると……詞術の威力や精度が低下する。まあ……あとひと月くらい、出久と接してれば、骨折程度なら完治させられるから」
実際、ちゃんと接し始めてまだ二日。出久に対する理解が不足しているのも無理はない。
いくらアルスが四系統
「(詞術……もっと早く知ってたら…いや、僕に適性があったら……僕は
誰にも言えない、自分の師匠との秘密。
有り得たかもしれない“もしも”を思い浮かべた出久は、その感情を押し込んでは、下校時間になるまで皆との反省会に臨んだ。
【この世界の仕組み】
異修羅世界と彼方の構造が混ざっている。そのため、詞術を使える人物と使えない人物で分かれている中で、個性という異能が蔓延っているため、詞術の存在は大きく知られていない。
故に、この世界で、もしも緑谷くんが詞術が使える身体で、どの系統に適性があってもヒーローの道に進めたという悲しき事実。
【次回予告!】
出久「怪我、治してくれてありがとう、アルスくん」
アルス「いいよ。友達を助けるのは、当たり前の事だから……」
出久「そう言えば、なんで次回予告やってるの…?」
アルス「なんか、急に
出久「そ、そうなんだ……」
アルス「ところで出久」
出久「ん?」
アルス「“ヒロアカ”って…なに……?」
出久「……なんだろうね」
アルス「あ、時間。…次回、【襲撃者の宴 前篇】」
二人「「さらに向こうへ! Plus ultra!」」