アビスシェルダー系超級とアニメ再現系生産型アホ二人。   作:内藤悠月

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必殺スキル

 □<南海>

 

「ヒャッハー! これで空の覇者だー! 【バイアクヘー】だけにいい顔させるかよ!」

「オーナー! 先行しすぎないでください! 我々では追いつけません!」

 

 クラン、<スカイエース>。【マクロス・グランバロア】に参画する戦闘系クランの一つである。

 その最大の特徴は加入しているマスター全員が空戦に特化したエンブリオを保有していることだ。

 

 例えば、身一つで空を飛ぶ魔導演算のエンブリオ。

 例えば、ジェット機やヘリのエンブリオ。

 例えば、純竜級の飛翔能力を持つガーディアンのエンブリオ。

 例えば、アイアンマンスーツを製造するエンブリオ。

 

 どれもが自在に空を飛び、空での戦いに特化している。

 問題は……そもそも、空の土俵で戦うこと自体が厳しいということだ。

 

 デンドロの空は、海と同様に魔境である。

 純竜級が多数、その縄張りを主張しあっており、迂闊に飛び込めばすぐに目をつけられ、襲われることとなる。

 しかも往々にして陸のモンスターよりも強い。

 

 必然的に、空で戦うことを選ぶ場合、空中でとどまったりできるか、小回りが効くか、あるいは陸・海上のどちらかに動きを切り替えて縄張りを避けられる能力を必要とする。

 AGIによる固有時間加速がある以上、空戦兵器の持つ速度の強みは純竜級モンスターのほうが速いという根本的な問題によって打ち消されてしまう。

 

 準超級ならぬ身で、空を自由に闊歩することは難しい。

 飛べるというだけならば誰もが同じ土俵に立ち、その上で強さだけがその場に残るための最低条件。

 そもそもその土俵で生きてきた純竜級の従魔か、あるいは空を飛ぶものを殺し尽くす力なしでは、存在すら許されない。

 

 <スカイエース>は、空においてようやく土俵に残ることが許された程度の弱者に過ぎない。

 いや、過ぎなかった。

 

 <スカイエース>のオーナー、【魔法騎兵】ウルハ・デグレチャフのエンブリオ、TYPE:カリキュレーター・アドバンス【超魔導演算珠 ドラコナイト】。これは魔法原理で動くものに取り付けることでその演算力を強化し、制御を行う能力を持つ。

 これを【試製飛行ユニット】と銘打たれた、特殊装備品枠として作られた魔力式大砲に取り付けることでウルハは空を飛んでいた。

 魔力式大砲や魔力式銃の類は、MPを供給しその内部機構に刻まれた魔法を発動する事によって、魔法攻撃を行う武器である。それに、飛行魔法を組み込んだ、ある意味で意味不明な代物をウルハを使いこなす。(なお、元々は空を飛ぶ船のための装備だったそうだ)

 腰辺りの前へ、箱型に詰め込まれたその装備を懸架することで、だ。

 

 武器に【杖銃】とよばれる、特定の魔法が使用できる長銃型の杖を使用することで、ウルハの戦闘スタイルは完成していた。

 【ドラコナイト】により強化・制御された【試製型飛行ユニット】は亜音速で飛行し、さらにその飛行魔法を応用することで【杖銃】の魔法攻撃を加速させる。

 

 最も、それでも純竜級に毛が生えたようなものだったが。

 接続先の強化という、将来性に全振りした特性に装備品が耐えられていないというのも大きな原因だが、そもそもカンストレベルでも純竜に勝てるマスターは4割を超えない。

 ウルハはギリギリ討伐可能な側に引っかかっているだけマシな部類である。<スカイエース>の面々は単独では純竜に勝てない。攻撃力か、あるいは機動性かのどちらかが不足していた。

 

 あの【プリズムオーラ・スクラップ・クラーケン】の討伐とA*(エースター)の分析のあと、ウルティマはある提案をした。

 彼の持つ権限……冒険船団所属の<超級>として、クエストを発行する権限だ。それを使用して、正式に【マクロス・グランバロア】へ<UBM>の討伐、およびその協力の依頼を発行したのだ。

 適切な文書に記録を残す必要こそあれど、これを用意することで船団の財布から報酬を出せる。

 冒険者としての側面が強くグランバロアの各地へ飛び回るウルティマだからこそ託されている権限と言える。

 それにグランバロアの立場からしても、倒す必要のある<UBM>だとウルティマは判断した。

 

 その承認とともに【クエスト【討伐――未発見<UBM> 難易度:十】が発生しました】とアナウンスが生じたことは不安要素だが。

 

 この際、<UBM>捜索のための斥候としての仕事を与えられたのが<スカイエース>である。空中を高速機動できる<スカイエース>はそれだけで活動可能範囲が広大になる。船では亜音速で移動するにしても、結構なリソースを食われる。だが、単独で飛行可能なマスターはかなりの低コスト、あるいは無消費でそれを行えるためだ。

 そして微妙に心もとない戦力だが、報酬の前払いも含め、複数の装備がウルティマから貸与・譲渡された。

 クールタイムが重いが強力な砲撃を可能な積載大砲、《操縦》の効果を高めるお守り、従魔へのバフを行う鎧、自身が作った装備の性能を高める指輪。属性攻撃の威力を高める籠手やメリケンサックや杖。その他様々な純竜級から伝説級のモンスタードロップの装備品。

 その中でもとびきりなのは、オーナーに渡された全身鎧。名を【永劫鎧帰(パワー・ボンド)】。必殺スキルによって生み出された【ウロボロス】の分体だった。

 

【積層鱗鎧 ウロボロス】の必殺スキル、《超未来融合(ウロボロス)》。それは【ウロボロス】と融合状態の装備品を複数選択し、それを元に【永劫鎧帰(パワー・ボンド)】を作成。対象者の全身を覆う装備枠に寄生・融合させるスキルだ。

 最大HP500万という絶大なコストを消費し、自身と融合した力の根源を消費し、対象者の全身装備枠を消費し。その先に完成するものは【ウロボロス】の眷属そのものである。

 

 作成時に消費した装備品のほぼすべての性能を有し、かつその融合可能枠が5枠に劣化した《サイバネティック・レギオン》と形態変化が格納形態と最適化形態のみに限られた《キメラテック・ルール》の2つのスキルと、フュージョン系に見られる所有者と融合する特性、装備品のステータスが部位のステータスになる特性を保有する。

 しかも付与された《サイバネティック・レギオン》は消費した装備品の数が多ければ多いほどその枠数は減っていく。

 自らの力そのものを切り分け分体を作り上げる必殺スキルである。

 

 この必殺スキルは当然ウルティマにも利益があり、接触状態であれば《サイバネティック・ルール》で融合した装備品を【ウロボロス】に吸い上げられるし、《サイバー・ダーク・ラビリンス》の効果対象にもなる。

 完全にアイテムとして切り離しているので維持コストを払う必要もない。

 なにより、このスキルによって【ウロボロス】のキャパシティを開放することができるのだ。というより、エンブリオのみだとこれ以外で開放できない。

 かわりに装備枠があるならば石ころ相手でも【永劫鎧帰(パワー・ボンド)】を移植可能である。

 事前に作成して融合対象をあとから選ぶことも可能だが、作成された【永劫鎧帰(パワー・ボンド)】を《サイバネティック・ルール》で再融合することは装備制限として不可能になっている。

 

 ウルハに渡されたのは、【れみな・くらいせら】の《メタリアル・マテリアライザー》にて作成された量産型の煌玉竜、【銀砂之強撃(ナノマテリアル・ストライカー)】。魔法機構によって空を飛翔する、純竜級相当の機体を元にした【永劫鎧帰(パワー・ボンド)】だった。

 ロボットのドラゴンで、強さが純竜級で、魔法による飛行を行い、攻性バリアとそれを応用した破壊ブレス機能がある程度の、普通の純竜と対して変わらぬ性能のもの。

 だが、【永劫鎧帰(パワー・ボンド)】によって融合させられたものについては事情が異なる。

 

 まずその純竜級のステータスに、装備者のステータスが加算されるのだ。パワードスーツのようにガワのステータスが引き上がるだけだが、全身を覆っている以上発揮値上の区別はつかない。

 その上、どういうわけかMPバッテリーの最大用量が最大MPとして部位ステータスに加算される。これによって何が起こるか。ざっくり言えば魔法系超級職並の最大MPが手に入る。

 一応、装備者本人ではなく【永劫鎧帰(パワー・ボンド)】から魔法スキルを使わなければその最大MPが算出式に加わらないが、実際問題全身を覆っているので誤差だろう。

 

 結果として。これを得たウルハのシナジーは真に完成した。

 魔力式の機械をベースにした【永劫鎧帰(パワー・ボンド)】はその稼働にMPが必要で、魔法によってSTRやDEX、AGIのステータスを発揮する。それに各種機能は魔法現象だ。

 その上で【試製飛行ユニット】とMP消費軽減スキルのついた【杖銃】を《サイバネティック・レギオン》した。そして、【超魔導演算珠 ドラコナイト】に【永劫鎧帰(パワー・ボンド)】を接続した。それだけ。

 

 超音速で飛び回り、上級職の奥義程度なら難なく防ぐバリアを貼り、上級職奥義に匹敵する魔法攻撃を雨あられと連射可能な準超級、竜の魔人が誕生した。

 なお見た目も割とドラゴン型の怪人っぽくなっている。よく言って仮面ライダー、悪く言ってオルフェノクあたりだ。

 

 ……ウルティマがこれを渡したのは【銀砂】シリーズ用のオプション装備にある探知装備を追加するため。準超級を作る目的は一切なかったと言っておこう。

 <UBM>を探査するための必要経費だったはずなのだが、とんでもないことになってしまった。

 

 ちなみにグランバロアでは海の上にいることを条件に個人のもつスキルの探知範囲を広げるアクセサリーが豊富に存在している。これは海という環境に適応するための装備品だ。ウルティマもかき集めてかなりの数保有しているのだが、それも<スカイエース>の面々に提供していた。

 ――これがどういうわけかエンブリオの探知系スキル、あるいはギアやキャッスルが持つことのある単なる探知機能すら強化する。彼らにとっても相性がいいアクセサリだった。

 

 そして、その成果はというと。

 

「レーダーに感あり! 神話級UBM相当……!」

「おい、アレを見ろ! 海中を……山が、山脈が動いてやがる!」

「ネーム見えるか!?」

「いや、もっと近づかないと無理だ! ネーム浮かんでいるが小さすぎる!」

 

 空戦ゆえの弱みが出た。活動可能なレンジの長さこそが空戦型マスターの強みである。より有利な位置から、相手の攻撃の届かない位置から、一方的に攻撃する。

 空戦型の最大の強みはその点であり、速度によって補足もさせない。逆に言えば、その距離自体が壁として機能するということだ。己にとっても、敵にとっても。

 

「しかたあるまい! 総員、突撃態勢! あの<UBM>にギリギリまで接敵し、ネームを盗み見る!」

 

 ウルハはそう号令を掛けた。なんやかんや空戦クランとしてその実力を発揮してきた、複数のエンブリオという能力も速度も異なるものを一つに束ねあげる必殺の陣形である。

 それはさながら空に浮かぶ陣地だ。攻撃に対して有機的にその形を変え、守りに対して流れ込む水のように弱きを見つける。これはシナジーにあらず。教練の果てに身につけた連携である。

 

 そして、ネームが読み取れるギリギリのところまで一気に突っ込んだ、その結果はというと。

 

「……ひっ」

 

 眼が、合った。

 目。目。目、目、目。

 膨大な、目がそこにあった。

 

 歩き回る真珠色の山の中に、膨大な数の目が並んでいる。

 その全てが魔眼。

 

『KYURURURURU……《七十七連装魔眼投射機構(スターダスト・ジェノサイダー)》』

 

 生命を嘲笑うような、鳴き声だった。

 

 突如、空が燃え上がる。魔眼に焦点があった空間、その場が炎上を引き起こしたのだ。

 

「【スモークディスチャージャー】射出! 魔眼を持っていることはわかっていたことだ! 視線を通すな!」

 

 複数の機体から煙幕が展開され、その姿を覆い隠す。

 

「攻撃する必要はない! 我々の任務は情報を持ち帰ることだ! 一人として死ぬな!」

 

 ウルハはそのバリアを細かく分割、視線に合わせ壁としていた。本来【銀砂之強撃(ナノマテリアル・ストライカー)】には決してできぬ芸当。その不可能を【ドラコナイト】によって実現している。

 効果を直接視界内にもたらすものこそ防御が間に合わないが、視線に合わせて何かを発射するタイプのものは攻勢防御の壁によって防ぐことができた。ただし、そのたびに衝撃で気流が乱れ、飛行型のエンブリオは煽られてしまうが。

 

「損害から予想! 上級職の魔法並の威力が絶え間なく発射されている模様!」

「連射し放題とは、恐れ入るな! 上級魔法職が一山いくらで売られているのかわかったものではない!」

「――ネーム確認!」

 

 その魔眼の嵐の中。万能型な結果、比較的探知能力に優れた戦闘ヘリ乗りのマスターがその報告を上げた。

 

「次いでクエスト名更新確認! 対象名称――【廃害真呪 スクラップ・()()()】、想定通り神話級!」

 

 その名は。奈落の悪夢が、蘇ったことを示した瞬間だった。

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