アビスシェルダー系超級とアニメ再現系生産型アホ二人。 作:内藤悠月
逆説的にアホ二人は生産職の厳しいところをガン無視できる強さがあることが判明してしまいましたが……。
「じゃ、いこうか」
「待てー! 私も連れて行って貰おうか!」
一人のマスターがその場に割り込み、静止を掛けた。
仮面をつけ、怪盗のような服装をしたモサモサの髪の男だった。
「
「イヤだー! 超級に恩を売るんだ! 強くなるチャンスなんだぞ!?
その場に現れたときはクールな印象だったが、それは一瞬で破壊される。なんと情けない言葉なのか。
「なあマチュ。あれ誰?」
「【
「実力者じゃん……」
CV.福山潤にうまく似せられた声がよく通る。だからこそその情けない発言の情けなさが際立つのだが。
腰につけられた拳銃、【劣・万魔の銃】。右腕に巻きつけられた短剣付き鎖の逸話級【再動恋鎖 エコーエコー】。そして鑑定が通らない仮面とタキシード風のロングコート。おそらくエンブリオだろう。
見えている範囲でも準超級に相応しい装備ランク。最もこの場にいるものの装備品と比較して突出しているのは特典武具ぐらいだが。
「ウルティマ様ー! どうかワタクシめをパーティに加えてくださいませ!」
「なんだこいつノリだけはいいな」
スライディング土下座を決めながら滑り込んでくるJJ。
「はあ……。できることは?」
「よろしいので!?」
キャラブレブレじゃないか。ウルティマは薄っすらとそう思う。
「AGI型前衛の典型的な盗賊ビルドだ。サブジョブの【
「
「お前には別の仕事があるんだよ! わかったらさっさと戻れ!」
「イヤだー! 超級に恩を売るんだー!」
「レジェンダリアにも<心の強盗団>ってクランいたけど、そいつらもまあまあめんどくさいやつらだったなぁ」
「あんなんでもうちではトップの強さなんだよな……」
「ゆかりさんはいいと思いますよ。可愛くて」
「それに金払いはいいからな。エンブリオのスキルで金がドロップするとか」
JJのエンブリオ【怪盗霊装 アルセーヌ】。その固有スキル《テイクユアハート》は、状態異常を受けている相手に窃盗系スキルを当てることで、追加のアイテムを獲得するというものだ。
どこから盗み出しているのか、スライムからカード型のアイテムを獲得することもある。
獲得できるアイテム自体も、ほとんど対象に依存していないように思われる。
そもそも、物質段階にないなにかに形を与え奪い取るとそのスキルの説明には記載が存在し……成功するとわずかに放心の効果もあるのか、動きが悪くなることもあった。
「ん。連れて行く」
「ここでゴネられても仕方ない。戦力になるのは間違いないしな」
【マクロス・グランバロア】の中では上から数えたほうが早い実力者ではある。どのクランにも属さず、フリーランスとして様々なクランに顔を出し、その戦力を貸し出しているため連携にも長けている。
……つまりはまあ、どこでもうまく戦えるために、逆説的に声を掛けられなかった。
村と船には即応できる戦力を残しておきたかったし、そういう意味ではJJはうってつけだった。必殺スキルによって得られるもの、それが強力な札であるために。
「……はぁ。わかったよ。ついてこい」
「
「この程度で泣くなよ気持ち悪いな」
「あんなんでも【
「まじかよ」
「【盗神】って確かカルディナの重鎮ティアンが就いてるやつかぁ」
結果として、JJを含めた9人でダンジョンへと挑むこととなる。
「というわけで、だ。私は
□■
「いやー、思ったよりも快適ですねぇ。徒歩になると思ってたんですが」
「本当は徒歩のつもりだった。ただまさかウルティマがここまでできるとはな……」
「そのせいでJJとC4-685が酷使されることになってるんだが」
「結果的にJJ入れたの正解か」
「私はめちゃくちゃ忙しい! AGI型だからなんとか追いつけてるが探知スキル使い続けるのきついぞ!」
『ん。直進左通路、敵』
「あいよ。【ジェム-《クリムゾン・スフィア》】起動」
そこには、UFOの形状に変形したウルティマと、その上に乗るマスターたちの姿があった。
【れみな・くらいせら】の形状はUFO型のきぐるみであり、それは直径3メテルというサイズ。それに【ウロボロス】の形状を変形させることによって、マスターを乗せるだけのスペースを作り出したのだ。
なおC4-685の乗る【30MM-LOADER 4】は正面にウルティマが掴んで保持する形となっている。
ダンジョンの通路が広ければ軽トラのような形状に変形することも可能だった。だが、スペース的にUFOにならざるを得ず、やや乗るには快適さの欠ける状態になっている。
だが、それでも徒歩よりはるかにマシだ。
なぜならこのUFO、平気な顔で超音速飛行可能なため……はるかに速い速度で移動できる。足を棒にするリスクもない。
UFOに同乗する関係上、近接武器が使えない問題はあったが、マチュ以外は遠距離攻撃を持っている。致命的な問題はなかった。
最悪ウルティマが掃射すれば出現するモンスターは簡単に溶ける。
そうしていないのはどちらかといえば、このパーティの実力を見るためだ。
「【デウスマキナ・ミネルヴァ】とか【デウスマキナ・キメラ】とか【デウスマキナ・ヒドラ】とか……見たことないモンスターが多いな。それに《看破》の通りが悪い。機械っぽい見た目だけれど先々期文明由来じゃないのか」
ウルティマはそう言葉にする。UFOの中央からフルフェイスヘルメット付きの首だけ飛び出しているような状態なので、微妙に居心地が悪いことになっていた。
流石に飽きるため情報収集も兼ねて会話を試みる。
「ああ、あれは機械の神の眷属……というか、人間で言うところの白血球みたいなもん、らしい。詳しいことはよくわかっていないが、時間経過で復活するからこの機械の神が生産しているのは間違いない」
「倒せば【神の血】とか、それに連なる特殊な機械部品がドロップするからよく狩りに入らせてもらっている」
「材料にすると結構強力な装備が作れるんだぜ」
「あとアレ……魔力式でも火薬式でもない謎の銃がドロする時ある」
デンドロにおいて倒したモンスターがリポップする場所は<神造迷宮>しか存在しない。そしてここは<神造迷宮>に分類されず……調査班による調査では、一部の壁からモンスターが製造されて出てくることが確認されていた。
<神造迷宮>は本当にモンスターが無から湧く。予兆こそあるが。
「まあ、なんも情報がないということだ。サイコメトリー系のエンブリオあって情報が読み切れないのは相当だが」
「それはそれで困るなぁ」
「このダンジョン……というか島が“異物”なのはわかる」
それは誰もが感じていた感覚だった。“外”とは違う。あり方というか、根本的に走っているシステムが異なる感覚。<エンブリオ>とも、<アーキタイプ・システム>とも違うなにか。
雑にモンスターに括られ、ドロップアイテムが追加されているが、そもそもの前提が違うもの。
そういった薄ら寒い、出来の悪い想像が脳裏から離れない。
<神造迷宮>のモンスターから感じるコピペ感とはまた違うものだ。
本来はアイテム扱いになるはずの機械が、どういうわけかモンスターとして分類されていることであるとか。
迷宮そのものもなんというか、大きな機械が出入りすることを前提に作られたSFの戦艦のような作りである。それが各所から血のように銀色の【神の血】を流していた。まるでこの場自体が生きているかのように。
いや、生きてい
□■
探索は順調に進んだ。ダンジョンの難易度自体はさほど高くない。罠らしい罠もなく、奥に進めば強くなるモンスターが脅威なぐらいだ。
それも《虹の防壁》と《ライフゲイン・ウエイト》によるバフ、【統率の旗】【誠の旗】【奮起の旗】という名称のパーティを強化する装備品によるバフ、多重に重ねられた演奏バフ、尽きぬアイテムによるバフの前に塵芥へと帰る。
重ねられたバフが強烈すぎて突出した技量を持たないカンストティアンでも伝説級UBMを倒しうるほどだった。
出現するモンスターのランクが高くなるだけで代わり映えのしない迷宮の姿。
最奥にたどり着いた一行が見つけたのは、巨大な扉だった。
まるで銀行の金庫か、あるいは潜水艦の隔壁のような巨大な扉。
「あっさりついたな。後半普通に伝説級モンスター出てきてビビったが……」
「《虹の防壁》が元々戦艦用で助かりましたよ。一発使うだけで100万近いHP増えますからねこれ」
「上級奥義クラスの魔法を魔眼の機能で拡大してるだけだからちょっと効率悪いのが気になるが……」
『ん。金庫開ける』
「C4-685、それ金庫じゃないぞ。まあ開けてしまっていい」
比較的巨体を持つACがウルティマのUFOを離れ、扉に触れる。巨大な施錠ハンドルを掴み、そのロックを外した。
重々しい音とともに、扉が稼働し始める。
機械仕掛けのその扉は勝手に回転し、両脇の壁の中へと消えていく。
そして、そこに広がっていたのは。
一面の青空と、その青を写し取る地面だった。なにか整えられた床材の上に薄く水が張られている。
誰かによって誂えられた人工の聖域といった印象だろうか。
視線の先、その空間の中央と思われるその場に、ひび割れた歯車の球体が存在していた。
あれこそが、探し求めていた、機械の神の心臓。神核。ただそれだけが、一目で理解できた。
「やあ。待っていたよ」
そこには、男が一人立っていた。龍の頭を持つ長身の男がだ。
本来いるはずのない者。もとより、知らなければたどり着くことすら出来ぬ島の、ダンジョンの最奥。
どうしてそのような場所に、
「【読竜王 ドラグリード】……なぜこんな場所に!?」
「それは君たちも同じだろう、というのは意地悪かな?」
マスターたちは各々、戦闘態勢に入った。警戒しているため……ではあるが、どちらかといえば。
人間に友好的な立場を取る竜王。それは長い月日で人間を観察してきたということだ。
人々を欺く狡知の邪竜。そういうものである可能性が高いと見なした。
「なに、そんなに緊張する必要はないよ。君たちの目的は、彼、だろう?」
【ドラグリード】は宙に浮かぶ歯車の球体を指差す。それは死んだように沈黙していた。砕けた破片が周囲を飛んでいる。
その仕草は、友を紹介するような気安さを孕んでいた。
「ふふ。そういえば自己紹介がまだだったね。問いを投げかけるには不躾すぎるか」
「私は半
「さあ問おう。君たちは私の友に、なんのようかな?」