アビスシェルダー系超級とアニメ再現系生産型アホ二人。   作:内藤悠月

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竜王の試練

 竜王の問いかけ。

 それは即ち、なんのためにここまで来たのか、なんのために戦うのか。

 そして、なんのために力を得ようとするのか。

 

(しくじった……ここまでは読めてなかった! なにか、古代伝説級クラスの<UBM>までならウルティマに殴り倒させればそれで済む話だった!)

 

 A*(エースター)は思考する。

 予定通りに物事が進まなければ気がすまない彼は、現実を予定に合わせるだけの思考能力を持ち合わせている。

 一つの組織の指し手として、方針を作り出し、計画を立案し、人を動かして目的を達成して見せる。

 その能力を十分に持ち合わせていた。

 逆説的に、それが叶うからこそ、人の持つ不確実性を嫌うのかもしれなかったが。

 

(無視は……出来ない。問いかけに答えないという選択肢はない。それはこのあとに響く)

 

(だが、どう答える? 答え次第では……)

 

 それは、この状況では最悪の想定の一つ。

 

(最悪、ウルティマがこの状況で離脱する!)

 

 それはインフィニット・デンドログラムがゲームであるがゆえに出てくる選択肢だ。

 何もかもを投げ出して、ゲームを辞めてしまう。ウルティマ本人に今その気はないかもしれない。だが、その実ウルティマの心はインフィニット・デンドログラムから離れつつあるとA*(エースター)は見ている。

 その存在が()()()()とみなされることは、それだけ重い。

 

 まさかこんなところで【マクロス・グランバロア】の集団としての器が問われることになるとは、思わなかった。

 

(力を求めてきた、というわけではない。そもそも当然論外。全力で殺しにかかってくるだろう)

 

 そういう思惑自体はある。【マクロス・グランバロア】全体の戦力を拡充することができる機会をゲーマーが逃すわけはない。

 

(人助け? その言い分が通るか?)

 

 やろうとしていることがメチャクチャすぎて、説明が難しい。この状況で端的に説明できない。

 島が機械で出来ていることを利用して、それを修理して動かして、氏族の人間を逃がそうなどという計画が一言で伝わるわけがない。

 

(<UBM>の撃破? ダメだ、そんな未知数を作戦に組み込めるわけがない)

 

 なんらかの手段でこの島そのものをウルティマに食わせるほうがはるかに確実で、可能性がある。

 【重騎士(ヘヴィ・ナイト)】のような、重量依存のスキルの種にして攻撃力を引き上げてしまったほうが。

 だが、それでは本来の目的が果たせない。

 

(いや、納得させなくてもいい。ウルティマだ。ウルティマが解答に納得すればいい。最悪その後殴り倒せばいい)

 

(なら……)

 

「私達は――」

 

「決まってんだろうが! 神話級<UBM>から()()()()()()!」

 

 A*(エースター)よりも先に口を開いたのは、マチュだった。

 直情的で、頑固で、決めたことは曲げない。鋼のような女。A*(エースター)からみれば、なぜ金属を変性させるエンブリオが開花したのかわからないほどの強情家である。

 

「ふむ? マチュくんと言ったか」

 

【読竜王】は語ってもいない名を言い当てる。それこそが彼の能力であると明かすかのように。

 

「君たちは巨大な、そう【グランバロア号】にすら匹敵する巨大な船を持っているじゃないか。それに乗せて逃がせばよくないかい?」

「いいわけあるか! 故郷を、信仰を捨てろと? あの善良で、疑うことを知らない人たちにそんな仕打ちは!」

「だからといって、島ごと動かすとはだいそれたことを考えたね? それができると思っているのかい?」

「できるとも! オレの相棒がその方法を考えたんだ。そこに間違いがあるはずない」

「ふふ、言い切るね。だが、彼は、この場は、"力"だ。それを不用心に渡すわけにはいかないな」

 

 どことなく、不思議な言い回しをする【読竜王】。まるでそれの遺志がまだ生きているかのような言い回しだ。

 あるいは、彼からなにかをすでに引き継いでいる。それがなにかはわからない。

 だが、それに基づいて、彼は機械の神を守ろうとしている。

 

「なら“力”を示せ。意志を通すだけの“力”があると私に証明してみろ」

 

 【読竜王】の気配が変化した。指に嵌められた指輪型アイテムボックスから、三本の剣が取り出されている。

 フレーバーテキストのみが羅列された、世界に空いた穴。そのどれもが“本物の魔剣”。

 

「!!」

 

 A*(エースター)はとっさに、ウルティマへと指示を出す構えをとった。

 あらかじめ決めておいた、超音速域に対応した連携のためのハンドサイン。条件が整った今であれば前衛全員が超音速機動可能である。

 

「おっと。言っておく必要があったね。君」

 

 【読竜王】はウルティマを指差す。

 

「君は戦うな。君が上がっていい舞台ではないからね。わかるだろう? 私が見たいのは……彼らの意志。【マクロス・グランバロア】に集う彼らの意志だ。君は所詮外様だろう?」

「それはここで戦わない理由になるのか?」

「なるとも。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだから。君が戦うべき舞台ではないというだけ。座って見ていなさい」

「こいつ……!」

「もし聞けないのなら、私は彼を終わらせるよ。どのみちここまで人が踏み入った時点で、終わらせるかとの二択だ」

 

【読竜王】は指差す。指さした先、機神の核と思しき球体にはすでに一本の剣が突き刺さっている。

 

「<ギルベルスタの自決の魔剣>。あれを抜けるのは私だけだ。私以外が抜けば、この空間はその時点で死ぬ。ウルティマくん、君が参戦するならばあれを起爆する」

 

(クソが……ウルティマを、封じられた!)

 

 A*(エースター)は高速で思考を巡らせる。おそらく、アレに読み勝つのは不可能だ。

 戦いの前提が異なる。なればこそ、本来はその土台が違うウルティマをぶつけるのが正攻法のはずだった。

 

A*(エースター)、突き刺さってる魔剣に《鑑定眼》を通した。やつの言ってることは多分本気だぜ……。斬った結果そのものをなかったことにする魔剣だとよ。つまりあれが突き刺さってるって時点で本来完全に終わってるのを遅延してるだけだと」

 

 ベルドはそう報告する。いくつかの視覚強化アイテムを自身に使うことでやや距離のある魔剣を鑑定した結果がそれだった。

 正確には斬った影響を先送りにしている。なのでいつでも核を斬り捨てることができるのだ。たとえ魔剣に触れていなくても。

 

 そうなっては、交渉する余地がない。ウルティマ抜きで挑むしかなくなった。

 

「……パーティリーダー、A*(エースター)だ。当然、準備には時間を貰えるんだろうな?」

「もちろん。全霊でかかってきなさい。少なくとも、()()を悪意から守れるだけの意志があることを示しなさい」

 

 難しい注文だ。

 極端な話、力だけなら、ウルティマをけしかければそれで事足りる。ゆかりの高速呪歌を重ねがけして、あるアイテムをベルドに吐き出させて、ウルティマを超超音速で発射すればいい。起爆する暇もなくそれで終わるだろう。

 だが、得たものや繋がりを守り通そうという意志は……<マスター>という存在には難しい。

 この件は、【マクロス・グランバロア】の力で乗り越えなければならない。()()()()()()()()()()()()

 

「全員集合! 作戦会議始めるぞ!」

「敵の目の前で!?」

「離れたところで全部筒抜けだ。なら意思統一だけやってなにするか決める」

 

 わらわらとA*(エースター)のまわりに集まるマスターたち。

 よくもわるくも【マクロス・グランバロア】の面々はA*(エースター)の事を信用している。わりと陰口もするが。

 作戦立案能力と状況分析能力の高さはぴか一であるがゆえに。

 

「ウルティマにバフ山盛り乗せて発射するんじゃダメですか?」

「ダメだ。色んな意味でな……、この状況で戦わせること自体がリスクだ。俺達のやるべき戦いをウルティマに取り上げさせることになりかねない」

 

 ウルティマ本人の前でそれをいうのはA*(エースター)というオタクのデリカシーの無さだった。

 

 ウルティマはある意味で騎士のように見られている。誰かのピンチに駆けつけ、颯爽と解決して見せる。その力を持つ超級。

 本人がそれを事実だと思っているかはともかく、ある意味で凡人ゆえの高潔さを持っていた。

 ウルティマは、決して蛮族の略奪者ではない。

 

「あとあいつ多分2000年前の【楽譜(スコア)】知ってるぞ」

「叩きのめして全部教えてもらいましょう!」

 

 ゆかりは現金だった。

 

「なんでウルティマはロウと685が脱落するのだけは確実に阻止してくれ。最悪その二人が生きていればどうにでもなる」

「……わかった」

「685は準自己生存型だから落ちることはあまりないし、ロウも被ダメを逃がす装備持ちだからよっぽどがないとデスペナしないとは思うが」

 

 それは勝てなかった場合の算段だった。

 最悪、ウルティマに前提を破壊させる。「挑んだが負けた」という結果を持って、ウルティマを舞台に上げる。

 託す意志と託されるもの。

 

「まずは勝利条件を決定するぞ。やつは力を見せろと言い放った。これは討伐を意味していない」

「本当にそうか? あの言い回しをしてくるタイプって信用ならないぜ」

「そうでないと、あの魔剣が抜けないからな。ある意味で生き残るのは大前提だと言える」

「つまり、どうにかして攻撃手段を奪う必要があるわけか。そちらは任せろ。【怪盗】の出番だ」

「JJ、結果だけ言えば連れてきて正解だったよ……」

 

 JJをけしかけ相手の魔剣を奪う。

 【怪盗霊装 アルセーヌ】の《ハートオブリベリオン》は保有する窃盗系スキルを強化し、盗難対策が施されたアイテムであろうと盗み出すことができる。

 相手が武装しているならば、特典武具の力を合わせすべてを奪い去る事ができるだろう。

 本人の手管も合わせ、【神】に相応しい器だった。先任がいたので超級職にはなれなかったが。

 

「魔剣を奪うだけでは止まらない可能性が高い。なので火力を吐き出してもらう」

「ん。任せて」

「こちらも例のアレの準備も完了している」

「おう。火力装備なら用意してあるぜ」

「手足をもぐつもりでぶっ放せ」

 

 火力の集中により、相手の防御を削り切る。

 敵手の負傷なくして力の証明は不可能だ。その名から足切りとなりうる防御手段を持っていないとA*(エースター)は判断した。

 もっと効果が多岐にわたるような、万能型の固有スキルを持っているはずだ。その対応手段に対しては多種の火力で押し切る。

 

「火力を集中するために、相手を釘付けにする必要がある。ゆかりとマチュと、私の人形でコンパクトに攻める。後ろから砲撃が飛んでくる苦しいボジションだが、任せる」

「ま、ゆかりさんに任せておきなさい」

「おう、やってやるよ」

 

 準超級ならぬ身で火力を出すには、最低条件として攻撃を当てることが求められる。

 なにを当たり前のことを、と言われるだろうが、デンドロにおける準超級の戦闘速度は音速に達する。故にそもそも攻撃を見てから避けることが可能になっていた。

 END型ならまた話が変わってくるが、こちらも防壁展開といった手段でそもそも攻撃を届かせない手段を持つことも多い。

 故に、当てるための条件を整える必要がある。

 なので戦場で敵手のヘイトを集め、攻撃を逃さない役割は攻防ともに重要なのだ。

 

「それでだな……、最終勝利目的だが」

A*(エースター)、わかってるぜ。欲しくなったんだろ?」

 

 マチュはそう言い放つ。

 

「【読竜王】自体がよ! ならやるべきことは決まってるだろ? 勝者総取り(ウィナーテイクオール)! 奪えば全部だ!」

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