アビスシェルダー系超級とアニメ再現系生産型アホ二人。 作:内藤悠月
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「準備は整ったようだね」
「しっかりバフも全部積ませてもらったぜ。なんなら……あんたを討伐しきれるぐらいには」
「はは、よく言ってのける」
(能力は名称から推定して……なにかしら“読む”スキル。最低でもこちらの情報はすべて筒抜けで間違いない)
名乗ってもいない名前を言い当て、こちらの事情も把握している。
そして竜王が迷宮を出入りしているという情報は一度も聞いたことがない。
そこから、少なくとも【マクロス・グランバロア】が島に到達する前から【ドラグリード】はこの場を動いていない。
とするならば、自身を中心とした広域情報の読解。それが能力の核であると
<UBM>の名称にも合致する。
(問題はその情報量に支えられた“それ以外”だが……気にしても仕方ない。どちらにしても力押しでごり押すしかない)
「おら
マチュは
本来はマチュか
だが、それは仕込みに必要なことだった。
「神の友人を名乗り、この場に座す神秘の門番、【読竜王 ドラグリード】殿。
友人の亡骸を墓守る貴公の事情を我々は知らない。
だが、我々には今、この神体を必要とする理由がある。
最も我々にそれを通す義も道理もない。よって力で奪い去ることとした。
神とあなたの全てを、頂戴する!」
《予告状》。【
自身の存在をさらすことにより、絶大なバフ効果をもたらし固有スキルを使用可能にするスキルである。
「よく言った! 【ジェム-《クリムゾン・スフィア》】×64、《
啖呵と同時に動き出したのは【豪商】ベルドと【
《
ターン制RPGには戦闘中に道具として使える装備品や、消耗品がアイテムとして存在している。それらはターン前に選択し、自身の手番にその効果を発揮するという流れで効果を使うことになっている。
効果が当たるかどうかはあくまでアイテムに設定された数値を参照し、作品によっては回避するという前提が存在しないことも多い。
それが、エンブリオのスキルとして実現された結果どうなるか。
【魔力式プラズマミサイル弾頭】は先々期文明によって制作された、艦載用のミサイルの弾頭部分である。
超級職奥義相当の破壊力のプラズマ弾を着弾地点に発生させる、廉価版の【
ミサイルとして使う前提に立ち、一度使えば壊れる作りとなっている。
逆に言えばその簡略化された構造の結果、生産コストを劇的に引き下げることに成功した恐るべき消耗品だった。
ロウはそれに組み込まれた収束レンズをいじることで着弾地点ではなく前方にプラズマを投射する砲に作り変えている。
最も、一発撃てば壊れるという点は全く変わっていないが、ロウにとっては些事である。
それを敵手に撃てば、どうなるか。
【ドラグリード】の周囲へ瞬時に《クリムゾン・スフィア》の火球が複数展開され、さらにはプラズマ弾が襲いかかるという地獄が生じる。
並の伝説級モンスターならばそれだけでその生命が溶ける超火力だったが……。
「<アルカミラの濡髪の剣槍>」
【ドラグリード】が取り出した魔剣の一本、そのうちの一つがひとりでに浮き上がり、その薙ぎによって周囲の水を巻き上げる。
自動防御と水の操作の異能を持つその魔剣。
まるで水で出来た触手のように、攻勢を取ったスライムのように、歪んだ形の水の層が魔剣に伴ってずれる。
水の塊に攻撃が押しのけられ、ベルドとロウの砲撃が無為に帰す。
「――ま、読み通りだけどな」
「――《アクセルスロー》《スティール・アンド・スラッシュ》《アーリースラスト》《パラライズ・ファング》《
《ミスディレクション》。【怪盗】や【手品師】などが獲得可能な、人の目を盗むスキルである。
大げさな現象や動作などで、自身の本命の行動を隠す効果を持ち、その現象が大きければ大きいほどより大きな行動を隠せるというものだ。
《
だが今でもパーティとして扱えば、味方の大砲に乗じて自身の姿を隠蔽し、不意打ちを仕掛けることが可能だった。
そして、攻撃と同時に《スティール》の効果を発生させる《スティール・アンド・スラッシュ》と《ミスディレクション》の組み合わせこそ
その結果、【ドラグリード】の身体には鎖付きの短剣が突き刺さっていた。
「すでに予告状は渡したはずだが?」
《
《スリーピング・ファング》のような、状態異常を付与するスキルなどの効果判定を8回に増やすスキルである。
あくまで攻撃に伴う効果のみであり、攻撃力強化や属性付与といった攻撃スキルには効果を発揮しない。だが、短剣をメイン武器とする
「それを奪われるのは困るな。<白蓮波濤>!」
「うおおお、斬撃の延長、増殖の魔剣!」
「オレに任せろ!」
<白蓮波濤>。一振りでその斬撃を弾丸のように飛ばし、さらに10にも20にも増やす妖刀である。
手数を増幅するその魔剣は、探せばエンブリオにいくらでも存在しうる能力であった。
見る限り、雑に振るだけでその結果を引き出せる時点で脅威ではある。
だが、その刃の波濤は攻撃の前に飛び込んだマチュの盾とコートに飲まれ、全く意味をなさずに消え去った。
それは所詮物理攻撃である。《完全流体》の付与された人形のコートと《衝撃吸収》の付与されたヴィブラニウム製の円盾。突破するには、“原理”が足りない。
「同じ斬撃延長でも神剣ケテルク*1ならやばかったな。でもそれは違うんだろ? ならオレのカモだ」
攻撃の延長には種類がある。あくまで武器の先端から伸びる形で発生する延長は防御能力に対して有効な突破手段ではない。
延長範囲全てに攻撃判定が発生するタイプの延長や、物理的な実体に阻害されない延長ならばマチュの防御も意味はなかっただろう。だが、そうではない。
「ならばこれはどうかな。《竜王気・練》」
「それはゆかりさんがさせませんよー! 《
《竜王気》を練り上げそれを両手の魔剣に纏わせる【ドラグリード】。熟達した竜王が扱う《竜王気》は攻防ともにその性質を自在に変化させられる。特に攻撃に対する減衰率を変化させるのは、はるかな過去から生きるものには扱えて当然の代物だった。
そして、それを攻撃に転化……、つまり自在に攻撃属性を変化させることは防御の性質変化に比べれば難しいが不可能ではない。
つまり、その《竜王気》で強化された<白蓮波濤>は常に相手の弱点を無尽蔵に増幅して放つことができる。
そしてそれに対応したのがノースブリザードゆかりである。
彼女の【回転全音 アムドゥスキアス】の必殺スキル、《
これは彼女のエンブリオが演奏という、相手の心に訴えかけるものの性質が最大化された結果であり、それによって精神や形のないものをぶった切れるようになるのだ。
とくに精神攻撃的な性質の楽曲を奏でれば耐性を無視してデバフを通すこともできるし、物理攻撃で相手に精神系状態異常を叩き込むこともできる。
精神活動から生じたものならば破壊可能であり……、つまりは魔力の塊を攻撃できる。生成や制御に意識を割かれるスキルの天敵だ。
【アムドゥスキアス】は一回転ごとに轟音を立てながら、《竜王気》そのものを巻き込み破壊した。
「な、読むのと実物とではやはり違うね、面白いぞエンブリオ!」
「ならもっと見せてやるよ!」
マチュのその言葉とともに、紫電をまとったミサイルが【ドラグリード】にへと着弾する。《竜王気》の守りを失った竜王の皮膚を焼き、確実にダメージを通す。
【3連プラズマミサイル】。【鋼核工廠 ヴァプラ】で製作可能な兵器の一つで、EN属性という制作者でもよくわかっていない攻撃属性を持つミサイルだ。
一応、魔法耐性と天属性でダメージを減少させられることは確認している。
だが広範な耐性は高い数値にするのに高いレベルが必要になる。つまりは防ぎにくい攻撃なのだ。
「追撃追撃。釣り銭はいらねえ! 【カンゴルゴーム】【たたかいのドラム】【いなずまのけん】x14【ほのおのツメ】x22【こおりのやいば】x16、《
ベルドが友人から買い上げ続けた、使用効果によって魔法を発動させる武器群による魔法の嵐。
超級職奥義の連射にも匹敵しうるが、火力しかないが故に準超級に至らなぬ身。だがそれは攻撃に劣るというわけではない。
その上、ウルティマから買い上げた魔眼の束縛によって【ドラグリード】を縛り上げる。
「《
壊れたものの素材を埋め合わせ、完全な形で稼働させる必殺スキルと、先々期文明の使い捨て兵器のシナジー。
何度でも何度でも、破壊の嵐を生み出す兵器を蘇らせるエンブリオの力は、瞬間火力を生み出すのに最適だった。
「《
それは破壊した楽譜をラーニングし、その全てを同時に《
その上、受けているバフを重ね掛けし効果時間を延長する<闘争のコンチェルト>の譜面によって、ウルティマから受けたバフを何倍にも増幅している。
ただでさえポンと攻撃力を1万ほど増強する力のある魔眼のバフが重ね掛けされるとどうなるか。
当然、超級にすら匹敵する性能を発揮しうる。
「《アクセルスロー》《スティール・アンド・スラッシュ》《テイクユアハート》《至高の魔弾》!」
攻撃を加えると同時にアイテムを盗み出すスキルと、特異なるアイテムを、“心”を盗み出す固有スキル。そして、盗み出された“心”が形となった力から行使される《至高の魔弾》。
盗み出した“心”を通して、自らの
【マクロス・グランバロア】において、単独で最も準超級に近しい。
『ん。外しはしない。【スタンニードルランチャー】』
相手の機能を停止させる大型のランチャー。【ヴァプラ】の生産能力によって生産されたものだが、それは本来のスケールでしか使用を想定していないものだった。
だが、システム内部に操縦席を誂える【デウス・エクス・マキナ】によって、動力を迂回させることで強引に起動。
3mの機体には巨大すぎる武器を無理やり保持して発射する。
直撃すればUBMであってもその動きを縫い留めて見せる。
「【神話級振動金属徹甲弾】、斉射」
そして、
マチュの存在によって、素材の価値をあまり気にせず使えるがゆえの蛮行である。
無防備に受けてしまえば、神話級すら蒸発する攻撃の嵐。だがそれを【ドラグリード】は魔剣の高速稼働によって防ぐ。
浮遊する無数の短剣が連なる魔剣、<息衝くリュドイラ>。柄を振ることによってその並びを自在に操作し、あらゆる位置から攻撃を加えたり、盾にしたり可能な万能の魔剣である。
本来ならば、《竜王気》の付与によってその刀身を保護することであらゆる攻撃を弾き、同時にあらゆる防御を無為にしていたのだろう。
だが、《竜王気》は削られきった。《スクリーム・シャウト》による全周攻撃は《竜王気》の維持を許さない。
結果として、<息衝くリュドイラ>はそのほとんどが砕け散り、防ぎきれなかった攻撃を受けたことによって、全身は血まみれ。HPこそさほど減っていないが、戦闘能力を削り取ったのは間違いない。
それに、<白蓮波濤>すら
取り出した三振りの魔剣。それらを全て失った。
「ふ、ふふふふ。面白い。面白いぞ、マスター諸君。だからまだだ、もっと、もっと……《龍神
【読竜王 ドラグリード】は、混血の因果故にその肉体は
とんだ出来損ないである。だからこそなのか、古龍としての仕事として、本物の魔剣の回収を命じられていた。
外からの
すなわちそれは作り出されたダンジョンを踏破し、魔剣を理解し、それを操ることだった。
生まれ持った異能として持つ、あらゆる情報を読み取る力はダンジョンを読み解くのに役立った。
《竜王気》はダンジョンの攻勢を凌ぐのに役立った。
奪った魔剣の力は、己の足りない力を埋め合わせるのに役立った。
そして、その全てを組み合わせた究極の一、先代管理者が望んだ物の似て非なるもの。
そこまで練り上げたタイミングで、【ドラグリード】は黒い鎧に殴り飛ばされた。
その一撃で骨はひしゃげ、HPはレッドゾーンにへと突入する。死んでいないのは手加減されたからだ。
「
ウルティマの一撃。
「は、はははははははは! それはそうだ! これを使ってしまうなら、確かに君は戦う資格がある! あの
【ドラグリード】はひとしきり笑う。
「ふふ。これを抜かせた時点で君たちの勝ち、か。うん。いいだろう。力は示された。持っていくがいい。人を愛した神の亡骸を!」