アビスシェルダー系超級とアニメ再現系生産型アホ二人。 作:内藤悠月
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機神の核の整備のための準備が急ピッチで進められていた。
アイテムボックスという輸送の概念を覆す代物と、ジョブスキルの組み合わせはあらゆる場所へ即座に足場を作り上げる力を持ち、それ用のアイテムすらすでにデンドロの世界には存在している。
建築から船の建造まで、広く使われるその技術は当然マスターたちも取り込んでおり、製造に関わるマスターならば扱いを熟知していないものはそうそういない。
「足元びっちゃびちゃでやりづれえ」
「ん。なら飛ぶ」
「スラスターで飛びながらは無理だろ……」
「ある」
「あるのか!?」
「ん。変形四脚」
最も、今回は修理のための拠点としての役割しか使えなかったが。
核のある位置が高すぎて足場を組立てても届かないのだ。
「あっちは準備に手間取っているね。手伝わなくていいのかい?」
「構わない。どちらにしろあいつらに全部まかせるしかないからな」
竜王と
「負けを認めて良かったのか? だってお前、全然本気じゃなかっただろ?」
「……どうしてそう思うのかな?」
疑問を投げかけたのはウルティマだった。
どこか抜けた印象のあるウルティマだが、強さには真摯である。
敵手の能力を正確に読み取る技術はウルティマ自身のセンススキルであり、直感から大体の力量や特技を読み取れる。
牽制に出した攻撃から本命の能力を予想するのは伝説級以上の相手に出来ないと致命傷をもらいかねないという理由もあるが。
そして、特に装備品関係はかなりの高精度。
自身が扱うからなのか。普段どんな装備を使うのか、どの武器が本命なのか。少し戦い方を観察すれば読み解ける。
「34振り」
「……はは、どうしてそう思うのかな?」
「34振り、おそらく同時に使う魔剣の数だ。それに複数の魔剣の異能をかけ合わせて使うのもできるだろ?」
「……まじかよ」
あるいは魔剣以外も混ざっている可能性はある。だが、それだけのアイテムを同時に使用するというのは、通常エンブリオの補助なしには考えられない。
「……正解だとも。あれは
「そうか、そういう考え方ができるのか」
「それにこういうものを使う余地もある」
エンブリオが装備品でなければ取り込めない関係上、あれが装備枠を使わない武器という認識がなかったウルティマ。
それを尻目に、【読竜王】はある魔剣を取り出した。
銘を、【はやぶさの剣】。
「……嘘だろ、俺が売った剣――」
ベルドが膝から崩れ落ちた。
彼には確かにそれを売った記憶がある。島で露店を開いていた時、確かに売ったのだ。
顔見知りの島民だったので油断していた。
「攻撃速度補正、+100%の一品……。金属塊払いで良い値はついたと思ったら……」
「なにそれ超ほしい」
島には通貨そのものの流通が少ない。なのでベルドは資源での支払いを受け付けている。
逆に言えばそれは資金の出どころを把握できないという原因になる。
言いくるめられたのか、そもそも変装だったのか。聞く価値もない。
「まあ、別にいいか」
「切り替えが早い!」
そもそも反社とつるんでいたわけではないのでベルドはすぐ切り替えた。
幸い、脅威度の低い相手だ。これが地竜王統とかだと、ウルティマを消しかけてなかったことにする必要があったかもしれないが、そのような相手ではない。
言い方は悪いがただの引きこもりだ。
「……まあ、君たちの人となりは私の固有スキルで理解していたのさ。あとは【アリステア】を守れる力と意志があるかどうかの問題だった」
「なるほどねぇ……。もしろくでもない奴らだったらどうするつもりだったんだ?」
「【アリステア】の核を破壊して逃げていたさ。逃げるのは得意だからね」
まあ、あるだろうな、とウルティマは思った。
おそらくは空間に作用する類の魔剣だろう。元々迷宮を作り出すような魔剣だ。
空間を折り曲げる程度のことは簡単に実現できるはずである。
「で、君たちは彼以外にも、私も欲しがっていたね。契約があるから話せることはそう多くないよ?」
「構わない。ほしいのは【読竜王】、あなた自身であって知識ではない」
管理AIと結んだ契約により、【読竜王】は一部の知識を語ることが出来ない。それ相応にバーターで利益も受けているが、それ故に彼は契約に縛られていた。
機神そのものの維持と自由もその一つである。仮に動き出し、マスターが使えるようになったとしても手を出さない。
<時間孔アラカ><界境断><ミセルコルドリアの魔王の
起爆できるのは【読竜王】とジャバウォックのみ。三振り同時に起爆すれば世界の半分を滅ぼせる。
ある種の脅しだった。
「船として動かす以上、艦長がいる。で、その権限を特定の誰かに依存させたくなかった」
マスターと言う存在は、不条理である。ふらりと現れたと思えば、ふらりと消える。それは国家に所属するマスターですらそうだ。
そしてゲームである以上、さらりととんでもない奇行を飛ばすことがある。
極端な話、信用ならないのだ。
肝心な時にいなかったりするケースが山のようにある。
「氏族長と、
「なるほど。それを主張するのに私はうってつけの存在だった、というわけか」
「マスターの欠席中に氏族長だけにまかせるのも忍びないというか、人が良すぎてろくな目に合わない可能性が否定できなかったからな……」
その点、【読竜王】は最適だった。読み合いにおいて負けず、自衛できる十分な能力を持つ。
場合によっては即逃走の選択肢も取れる。
機神について熟知している点も評価できる。
存在自体が、
「あんたは名前からして、生きる大図書館みたいなもんだ。だから多分、仕事を引き受けてくれるならその知識を求められることもあると思う」
「まあ、そうだね。すでに【楽譜】について聞きたくてウズウズしてる子もいるみたいだし」
「話したくないなら黙っていて構わない」
ある意味で、獲得した価値を放り投げる発言だった。
【読竜王】の持つ知識は膨大である。持つ知識だけで図書館が作り出せるほど。
それに歴史にも精通している。どれもが外部の文献に残されているものばかりで、体験したものではないのだがそれでも現代では集めることが出来ない資料を記憶している。
契約によって話せない範囲はあれど、比較すればごくわずかな範囲に過ぎない。
それを、話す必要がないと言い切る。
「マスターは自由だそうだ。なら、関わる人々も自由じゃないと釣り合いが取れないだろう? それにな、きっと面白くなる」
「面白く?」
「これから神話級UBMを殴りに行くからな」
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「やっべ、全然MPが足りねえ」
そう呟いたのはロウだった。機神の核の修復を請け負い、12メテル級のACの手のひらにのった状態で修復作業を行っている最中の発言である。
直径30メテル程度の、機械球。普段の【テセウス】の性能ならば、10万もMPを投入すれば修復しきれる程度の大きさである。
ポーションや【MPクリスタル】【マギバッテリー】などのMP回復手段によって供給し続けているのにもかかわらず、使ったはしからどんどん流れ出していくのだ。
まるで、そこにある球体が全てではないかのように。
そして、それは事実である。
彼らが現在いる場所は、【アリステア】の心の中。他の作品で言うならば生得領域や固有結界といったところか。
<
核を中心に心象世界を広げ、それを機械の殻で覆い、身を守る。<
ここで問題になるところは、外殻と核は別のものとして切り分ける事ができるが、心域と核は決して切り離せないものであるという点だ。
つまり、回復魔法で修復するにはこの領域全てを癒やすことが必要なのである。
「ウルティマー! ベルドー! 助けてくれー!」
なので、早々に音を上げた。
足りないものは仕方ない。
足らす手段を持つものを呼ぶしか。
「何をやれば良い?」
UFO形態に変形したウルティマと、それに乗ったベルド。
スラスターによって宙に浮いたままのACと、その手のひらに乗るロウ。
シュールな構図であった。
「MPが全然足りねえ。どうにかして埋め合わせたい」
「目標値は? 大体1000万くらいか?」
「50%回復させられるクリスタルがあるから、最大MPを増やしてやってくれ」
「なるほどな。じゃあ脱げ、ロウ」
「言い方ァ!」
そう言いながらもロウは全身に身にまとっていたパワードスーツを解除し、ツナギ姿となる。
そして、ウルティマは触手のように外装を変形させ、ロウへと触れる。
「じゃあやるぞ。《
必殺スキルの宣言。事前に用意しておいた【ウロボロス】の分身体、【
その元となった装備品は【
他の【銀砂】シリーズを輸送・MPを供給する目的で設計されたと思われるその機体は、ゆったりと空を飛ぶ程度の性能しか持たず、亜竜級以下の性能だが、その最大MPだけ500万近い。
漆黒の粘液状に変形したそれがロウの身体を包み込む。
恐ろしく絵にならない構図だ。美少女ならいざしらず、男でこれをやることになるのでなんとも言えない。
そして、その融合の果てにロウは鯨をモチーフにした怪人態になっていた。
訂正。良く言って鯨モチーフの仮面ライダーっぽい姿になっていた。
「うお、すっげえ最大MP。部位ステータスだからすこし扱いが難しいが……」
「【MPクリスタル】x2《
「じゃあ早速。《
【廃物修繕 テセウス】の必殺スキル、《
最も、他の性質も回復魔法のそれと等しい。部品の欠損を回復するには莫大なMPが必要になるし、死んでいるものを生き返らせることは出来ない。
追加効果として傷や欠損を埋め合わせるのに別の素材を使って、完全に機能させるという使い方もできる。
部品を抜き取って、分割したものを複製してしまうということも可能だった。
<
【テセウス】はコストが多い分、回復速度が早く、回復可能範囲が広い。
このような広範囲・巨大な回復には時間を使ってでも【ムー】のほうが本来向いているだろう。
回復魔法のような性質を持っているということは、最大MPによってその性能が変動するということだ。
500万もの最大MPによって、その性能が大幅に強化され、そして500万もの投入MPによって、回復量が爆発的に増大する。
その結果。
神域の姿が、一変した。
水が張られた青空だったその姿は、空から水面に向かって無数のビルが生え、水面からはモノリスのようなものが核を中心に複数本立ち上がる。
それらには表面に光が走っており、それが機能していることが見て取れた。
機神の頭脳体の機能が復旧した姿だった。
だが。
「……すまねえ」
「どうした? うまく行ったんじゃないのか?」
「一番肝心なパーツが、回復できなかった……」
「それは、なんだ? なにかで代用できないか?」
「多分無理だ。だってないのは……」
魂。
命を定義するもの。
「魂が、ないんだよ……。魂がないと、こいつは動かねえ!」