アビスシェルダー系超級とアニメ再現系生産型アホ二人。 作:内藤悠月
「魂が……ない……?」
それはある意味で当然の話だ。機械の神の死因となった傷は、先代の管理者と呼ばれる存在がこの世界に訪れる前のモノ。
そこから数千年生き残っていた時点で相当な生命力と言えた。
そのような命も、今代の管理者がこの世界に訪れる前には絶えている。魂が残っていてもすでに自然に溶けて還っていることだろう。
むしろ、神であるからという理由で魂がその遺骸に縛り付けられているのなら、残酷な話であると言えた。
「機神の構造自体は修復できた。でもそれを動かす
結果として、魂がなければ動かない。
そもそもの動力が
だが根本的な源泉がなければそれも大した量にはならない。
「ん。【デウス・エクス・マキナ】も通らない」
機神は通常の機械とは異なる。神の遺骸であるために、それは異常な技術で作られていた。
一部の特典武具やエンブリオの中にも、機械のように見えるが機械として扱われないもの、逆に機械には見えないが機械として扱われるものが存在している。
それと同じように機械としての在り方がずれていた。
結果として、あらゆる機械のシステム内部に潜り込み操縦席を増設するエンブリオの効果も通らない。
「手詰まりじゃないか……」
ウルティマはそうこぼした。
これではなんのために迷宮へ潜ったのかわからない。
時間を浪費しただけになってしまう。
『問題ない。想定通りだ』
そう、スピーカー越しの音声が聞こえてくる。
その声の方向には、赤いガンダムの姿があった。
『魂がないのは想定していたことだ。むしろ起動できる状態まで持っていけたことは想定よりも順調なくらいだ』
そして予想したケースの中のひとつ、そもそも修復が出来ないケースよりも遥かにマシである。
ウルティマがいなかったのならば、かなり回りくどくて時間のかかる作業をする必要があった。だがウルティマがいる。
そのおかげでかなりのショートカットが可能だった。
『ウルティマの
「……あっ。あー」
自分の能力であるにもかかわらず、忘れていたのは……そのような使い方を想像していなかったからだ。
「なあ、
ロウのもっともな疑問。いきなり固有名詞だけ言われて理解できる人間などそうそういない。たまにいるが。
「簡単に言えば冒険船団のキメラ部隊の一部戦力のことだ。」
コックピットのハッチを開け、ガンダムの手のひらに乗り移った
ガンダムのコックピットに乗っていないのに動作するのは、この機体が《自律人形》が付与された人形であるからだ。
人形自体が自ら考え、エネルギーを自発して動作する。人形師系統の夢のようなスキル。
「あそこにはいくつか【ミスリル・マリオネット】が配備されている。それを使うジョブ持ちが一人もいないのにな」
無論、《自律人形》も付与されていない。人形製造系エンブリオではそこそこ見られる、人形を独立稼働させる付与スキルであるが、キメラ部隊の【ミスリル・マリオネット】にはその類のスキルもない。
もともとジョブスキルによって作られた人形はその動作を助ける機能が盛り込まれている。だが独力で動くにはそれに特化したスキルが必ず必要だ。
あるいは、はじめから
「その人形はウルティマの必殺スキルで思考部位と動力を植え付けることで独立可動させてる。人形自体は
「正解。使える思考能力と外部から動作させられる装備が本当にレアでそうそう使える方法じゃなかったけども」
人工知能の類や外部ステータスを人形の上から被せてやることで動作させられるようにする。それが
必殺スキルで作成された装備の全性能を融合対象に加算する。そのため知能の類もそのまま融合対象に付与されて発生する現象だと言える。
人形はアイテム分類であるために、ウルティマのログイン状態にかかわらず稼働させ続けられる強みを持つ。だが《超未来融合》は装備を作り出すのに自身の力を必殺スキルにて切り分ける必要がある諸刃の剣。
相手がティアンならばジョブとの兼ね合いで性能を極端に盛る必要はない。だが人形の場合は外部から被せて動かしてやる関係上、かなりの性能の装備を切り分けてやる必要があった。
まして、グランバロアに移籍する前、第六形態の頃は必殺スキルで切り分けた装備の性能はスキルを除いて半減していたため、なかなかに財布にくる裏技だったのだ。
その上、当時は思考部位となるインテリジェンスウェポンが見つからなかった。
取り込んだ時点で【ウロボロス】の機能に上書きされてどのようなものであってもウルティマに従うようにはなっているものの、都合がいい装備など早々存在しない。
後にアルター王国で見つかる煌玉兵は独立したステータスを持ち、独自の人工知能も保有した最高に都合のいい特殊装備品が発見されることになるが、もはや必要ないものではあった。
今は、【れみら・くらいせら】がある。煌玉獣の製造を可能にするこの特典武具があれば、人工知能を持つ装備品を人形に被せることは、資金の問題だけに収まる。
必殺スキルのために高いSTRとDEXのゴリ押しで神話級金属を加工し装備スキルの薄い全身鎧を作る必要もなくなった。
「ただ人工知能系はあくまで対象の知力加算だから、結局思考中枢となる
「問題ない。そのためにC4-685がいる。機神ではなく、【
そう。《サイバネティック・レギオン》で融合した装備品は、その種別までを引き継ぐ。剣を取り込めば剣の、銃を取り込めば銃の、船を取り込めば船の、種別の情報をそのまま抱えることになる。
必ずしも有利になるとは言い難い特性だ。【金属化】したモンスターを取り込んだ日には、モンスター種別特効スキルの対象になることすらある。
ジョブスキルによるパッシブ強化の影響を受けやすいため、通常は有利になりやすいが、同時におかしな対策が刺さりやすくなるということでもある。
そして、機械・乗り物の種別がある以上、【デウス・エクス・マキナ】は【
融合によって形が変わっているように見えても内部情報は殆ど変わっていないために可能な手段だった。
【デウス・エクス・マキナ】は操縦するためのシステムが存在するなら、それをかき集めて構築しなおし、自身が扱えるように改造するスキルを持っている。
その派生で、機械の操縦系を組み直してまとめ直す事もできた。
つまり、魂がなければ動かないものを、増設された人工知能で動かせるように組み替えることも可能なのだ。
【テセウス】が機神の機能を補完し、【ウロボロス】が身体と
複数のエンブリオの特性を重ね合わせ、魂の代わりとなるシステムを構築し直す超弩級の作業。
「……それ、オレがいなかったらどうするつもりだったんだ?」
「この部屋の外からアタックを掛けるつもりだった。あのあたりまでは完全な機械判定だったからな。エレメンタルよりの判定になってるのは中核だけだ」
遠回りとはいえ、機神が起動すればそれで良かった。
核を抑えた以上、使用する権限が手に入る。権限があれば【デウス・エクス・マキナ】は接続が可能だ。
動作を起動させるのにシステムの中をしばらくさまようことにはなっただろうが。
「わかった。……じゃあやるか」
すでに【
ほかよりも明らかに多い製造コストのわりに、特徴が他の機体と比較して巨大でたくさんの荷物やオプション装備を積めることしかない、欠陥品の煌玉獣だが、ウルティマは割と重宝していた。
艦載用の装備が積める特殊装備品だったからだ。
グランバロアにおいて、艦載用の装備は普通に買える中では飛び抜けて強力な装備品である。これが積載できて手軽に使える装備品は択が少ない。
製造コストを考えれば、小型の船を買う方が安いのだが、小型の船では乗せられない艦載装備は多い。【
この【
「《
ウルティマの手に持った黒い球体の状態だった【
その場の全てを覆うには根本的な質量が全く足りず、【
それどころか、島全体に広がっていく。外装もまた機神の一部である。
外装の欠損を【
「ん。《仮想操縦席》」
「うわあ! 急に乗り換えるな!」
4脚のACがその手を【
システムに潜り込み、操縦システムと接続する【操縦玉座 デウス・エクス・マキナ】の基本スキルである。
宣言と同時にACはアイテムボックスに仕舞われ、【デウス・エクス・マキナ】は【
突然足場が消えたロウは慌ててウルティマに飛びつく羽目になったが。
なお、ロウは【
「あー、あー。どうだ」
『ん。システム掌握成功。主要武装、86%喪失。副武装、73%喪失。環境維持機能、43%喪失。魂力出力、8%をマーク。艦橋機能、
「そうか!」
絶望的に生きている機能が少ないが、それでも。
最も必要な機能は生きていた。
船を船として動かすのに必要な機能が。
『システム調整、整備。艦橋展開。……多分、地上?』
特に揺れも何も無い。だが、685のコンソールにはその情報が表示されている。
確かに艦橋が展開されたことを。
その場所はおそらく、地上の中心部だろうということが。表示されている地図と現在の島の形とで差異があり、その情報のすり合わせが行えないことが曖昧な発言の原因ではあった。
「よくやった! これで島を船として動かせる!」
これで一仕事終えたといった表情になる
神話級のUBMが迫っているからといって、故郷を捨てろと氏族の人たちにいうのは忍びなかったのだ。
神体ごと逃がす事ができるのなら、その必要もない。
同時に、別の使い方も脳裏によぎっているが。
状況を打破するマスターキーになる、そんな予感が。
そのタイミングで、PiPiPiと
グランバロアの優れた電探技術を利用して作られた電波通信端末である。ゴツい通信用の部品と、それに似合わないスマートフォン型のコンソールを持つチグハグな機械だった。
「……なに!? 思ったよりも早かったな」
その連絡は、発見の報告だった。
「ウルティマ! 神話級UBM見つかったぞ! 銘は【廃害真呪 スクラップ・アビス】! 十中八九アレの残りだ!」