アビスシェルダー系超級とアニメ再現系生産型アホ二人。   作:内藤悠月

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前話、少しだけ加筆してあります。
機神に接続するまわりの説明なのでわざわざ読み返す必要はありません。


【廃害真呪 スクラップ・アビス】

 □<南海>

 

 【アビスシェルダー】によってあらゆる命が収穫され、なにもなくなった海、<南海>。

 奇しくもそれが没した戦場跡に【廃害真呪 スクラップ・アビス】はいた。

 

『KYURURURURU』

 

 そう、それを嘲るような声を発しながら。

 水中故に、音は響かない。だが、それは確かに嘲笑っている。

 巨大な真珠の山を背負い、そこに残っているかもしれない何かを探すように周囲をうろついていた。

 

 ひどく醜い姿である。

 名の通り、廃棄物(スクラップ)を積み上げた、歩くゴミ山。

 おそらくはその性根もまた、同様。

 

 そして、その山にへと無数の魚雷が突如として殺到した。

 

 【12連装VLS】。<グランバロア架空戦記協会>の傘下クランのひとつが製造した戦艦用の垂直発射システムである。

 グランバロアに存在する戦艦の規格に合わせ、砲塔の穴に収まる形で制作された複数のタラップと発射管で構成された、ミサイル運用システムだ。

 そしてそれに搭載されていたミサイルは水中の目標を叩くために作られた対潜ミサイル。

 海中にある目標へ攻撃を届かせる兵器。

 

 その総数、72発。

 その全てを、ウルティマが全身から放出したのだ。ウルティマの持つ絶大な攻撃力を伴って。

 

「……殺す!」

 

 見敵必殺。下位の伝説級UBMならばそれだけで倒せる威力のミサイルを即発射である。

 巨大な相手に対して、ウルティマがよく使う手段だ。

 ウルティマの、【ウロボロス】の保有する絶大な攻撃力は実のところ、大砲のような巨大で高威力な武器よりも、小さくて連続で攻撃が可能な武器のほうが重く乗る。

 小さくて攻撃速度の早い武器は小さな攻撃力しか持たないが、【ウロボロス】で融合した結果、巨大な攻撃力を得ることになる。

 大砲やミサイル、機銃が全く同じ攻撃力を持つのだ。

 扱える現象の差は残るが、効率的にHPを削り取るという意味では機銃のような高速で連続攻撃を繰り出せる武器のほうが望ましい。

 

 故に、大砲を両腕に展開して使用するのは、ただの見せ札に過ぎない。

 当然、神話級UBM相手にそのような出し惜しみをする意味はないが。

 

 殺到する対潜ミサイル。

 それを受けて、【スクラップ・アビス】は……、その山の表面を焼くにとどまった。

 被弾した箇所の魔眼はこわれ、えぐれ、脱落こそした。だが、山として積み上げられたそれを崩すに至らない。

 神話級UBMの、それも自身に廃棄物の山を積み上げて鎧とする【スクラップアビス】の総HPにとって、超級職奥義相当の一撃など、蚊の一刺しに等しいのだ。

 それに、《悪夢の残骸》の質量差による概念防御によって攻撃そのものが大幅に減算されている。

 

 そして、固有スキルの防御によって攻撃が通らない可能性はA*(エースター)から聞かされていた。

 当然、防御を抜く手段も用意している。

 

「右腕外装連結。【300メテル級旧式戦艦】及び【鋼裂(スティール・テアー)】!」

 

 ミサイルに紛れ、爆発の中から【スクラップ・アビス】の身体にへと取り付いたウルティマ。

 敵性UBMの知覚から逃れるため、圧縮して全身を覆っていた【ぺすが・ごーてぃ】の《最果ての宇宙(ディーペスト・デプス)》を解除し、右腕を変形させる。

 巨大な戦艦がそのまま腕の延長として生え、その先に衝角としてチェーンソーが生えた。

 先々期文明の遺産のひとつであり、ウルティマにとって最も雑に使える超々高威力攻撃手段。

 稼働そのものに劣悪な燃費のMPを要求するかわり、1分間に消費されたMPと等しいだけの防御能力を減算する破滅的な攻撃性能を持つ回転鋸である。

 そして、投入量によっては本来損傷する可能性があるが、【ウロボロス】に融合された時点でそのリスクは存在しなくなった。

 

 戦艦の先に継いだのは、そのサイズを拡大するためである。

 

「MP投入量100万! くらいやがれ!」

 

 戦艦が【スクラップ・アビス】に振り下ろされ、その装甲を削り取り始めた。

 並のUBMならば押し当てるだけでその生命が溶ける致命の刃。

 

『GYURORORORORORO!!!』

 

 【スクラップ・アビス】は、悲鳴を上げた。

 それまで、生まれてから海域で出会った全てから自身の身を守っていた真珠の鎧と《悪夢の残骸》が突破されている。

 鎧に走る神経網が断ち切られ、それが激痛として【スクラップ・アビス】に伝わっている。

 無敵の鎧が突破されたがゆえの悲鳴。

 

 全身の魔眼、廃棄物の山の両面に連結された《七十七連装魔眼投射機構(スターダスト・ジェノサイダー)》から魔法を盲撃ちするがその効果はない。

 ウルティマもまた【スクラップ・アビス】と同じく無敵の装甲に覆われた超級である。

 それも、複数種にわたって。

 

 あるネイティブ装備によってもたらされた、現在HPの5%以下の攻撃を完全カットする《鋼鉄の皮膚》。

 装備品に対するダメージは全てが破損であり、それ故に取り込むことによって無敵の鎧へと化した《破損無効》。

 融合することによって事実上あらゆるダメージを10%にまで軽減する効果にへと変貌した【身代わり竜鱗】。

 耐性の範囲が広すぎるため、効果量が最大でも10%しかない《攻撃耐性》のスキルを持ったアクセサリーを複数。

 膨大な装備品のENDを積み上げたが故の、50万近いEND。

 

 どれかひとつでも、致命傷を防ぎ得る強力な防御効果。それらが重ね合わさったウルティマは、無敵である。

 他のステータスにしても、複数の煌玉獣と、【すーばーきぐるみしりーず ぜたろどん】の持つ総質量比例ステータス強化の《増長する命》によって平時の【獣王】に次ぐ。

 無敵にして最強。それ故に、最高の英雄。

 

 だが、この程度でくたばるならば、【スクラップ・アビス】は神話級UBMにまで成り上がっていない。

 積み上げた廃棄物の山の持つスキルを行使することもでき、その山の中に眠る切り札と、己の形に由来する、切り札を切る。

 ただ一度、()を殺した者の姿と力を写し取る《最強の形(アイノカタチ)》。それによって得た、最強の姿。

 

『《無双ノ戦骸(バルドル)》』

 

 山の内側から突き出した拳によって、ウルティマは水平線の向こう側へと吹き飛ばされた。

 片腕を戦艦そのものに変形させ、顕在化した質量が1万トン弱近いウルティマを、だ。

 

 廃棄物の山が立ち上がる。その形を巨大な神にへと組み替えていく。

 それはあの決戦を目撃したものならば、誰もが知る姿を、醜悪に歪めたもの。

 【破壊王】の切り札。【戦神艦 バルドル】の必殺形態の似姿だった。

 

「随分と……舐めた姿を」

 

 冒涜である。

 侮辱である。

 屍を弄ぶ廃棄物の山がかたどって良い姿ではない。

 

 なによりも、あの日、あの場に立てなかった者の前に、現してよい姿ではない。

 

「《ラッシュミサイル》!」

 

 膨大な数のマイクロミサイルとともに、ウルティマは再び距離を詰める。

 その形を、腕だけ戦艦に変えたものから、背部に推進器を搭載したものへ。そしてさらにそこから、全身の大きさを巨大化させていく。

 【銀砂之巨神(ナノマテリアル・タイタン)】。100mを超える超大型の筐体と、その質量を攻撃力に変えるオプションを搭載した巨人型煌玉獣。

 他の煌玉獣を20機は作れる高コストな割に、性能自体は純竜級に毛が生えた程度でしかない機体。だが、そのオプションとその体躯はそれだけでウルティマにとってひとつの武器である。

 本質的に耐久型であるウルティマにとって、被弾の増加は許容・無視できるリスクだ。それ以上に、同等のスケールで殴ることができるほうが、そして全身に兵装を展開できるほうが、遥かに利点が大きい。

 

 そして、この状態で殴り合うのならば、圧倒的にウルティマのほうが有利だ。

 たとえ【スクラップ・アビス】のステータスとスキルが【破壊王】のそれと同等だったとしても、ウルティマの守りを抜くことは一切出来ない。

 複合防御は重ねることによりそのスキル強度を増しているし、そもそも膨大なHPと防御力が削り切ることを許さない。

 

「《融合体突撃(トランプルキマイラ)》……《冬の息槍(ドラグウインター)》!」

 

 合成部位による攻撃の攻撃力を5倍化する【融獣騎(キメラ・キャバリア)】の奥義を載せ、【冬竜撃槍 ドラグウィンター】の竜王気を収束した右ストレートを放つ。

 全身を旋回中の【鋼裂(スティール・テアー)】の効果も合わせ、あらゆる防御スキルを凍結粉砕し防御能力を引き裂き削る必殺の一撃である。

 投入MPSP量次第では己自身の守りすら突破可能な耐久殺し。

 

『KYURARARARARARA』

 

 【スクラップ・アビス】は嘲りを隠さない。なぜならそれは、己を殺せると確信している一撃であるから。ゆえにこそ、絶対を打ち砕く愉悦。それが感じられる。

 

『KEKEKEKEKEKE――』

 

 だからこそ。

 【スクラップ・アビス】は己だけの、崇める信仰を起動させる。

 

『――《輝死改星》』

 

 それは今の姿になってからつなぎ合わせて作り上げた固有スキルにして、【スクラップ・アビス】第一・唯一の固有スキル。

 《悪夢の残骸》も《最強の形(アイノカタチ)》も、【アビスシェルダー】によって与えられた力に過ぎない。

 だが、これは【スクラップ・アビス】だけのもの。【アビスシェルダー】から秘匿した、己の自由の象徴。【スクラップ・アビス】が崇める神。

 <離縁鋏シャツリ>の、莫大な想念をかけ合わせた最大稼働、限定奥義である。

 

 ウルティマの拳と、【スクラップ・アビス】の拳が打ち合わさった。

 その数値だけ考えるならば、砕け散ったのは【スクラップ・アビス】の腕である。

 圧倒的な攻撃力の差がその結果を確定させたはずだった。

 

 だが、砕けたのはウルティマの【ウロボロス】だった。

 打ち合わさった瞬間に、触れた先から分解されるようにその腕がバラバラに切り離されたのだ。

 物事の繋がりを断つ力を得た固有スキルを前に、【ウロボロス】はまた無力であった。

 

(……足、切り!)

 

 足切り。基準に満たぬものを選別し、挑む権利すら奪う能力のことである。

 他のMMOでいうならば、DPSチェッカー。これは一定以上の攻撃力がなければどのような手段を取ろうともボスを撃破できなくなる条件のことである。

 実装の仕方はゲームによっても異なるが、最も多いのは1カウントごとのHPの回復だろう。

 

 デンドロでは違う。

 DPSチェッカーのような露骨な手段こそないが、ENDのような防御能力や、UBMの固有スキルといった特殊な手段によって実現されている。

 そしてそれには時折、どれだけ強くても特定条件に当てはまるなら挑む権利すら奪われる、そのようなものが混在しているのだ。

 

 ()()()()()

 【スクラップ・アビス】は、二重の条件特化型にして足切りの能力を持つ。

 ひとつに、質量と価値(リソース)の見合わぬものからの干渉を一切受けない。

 もうひとつに。

 種族がキメラであるならば、その接合の一切を断ち切る。

 

 端的に言おう。

 ウルティマは、戦いの舞台に上がる権利を失った。

 

 

 

 

 □■□

 

 

 

 

 それは、遺跡と廃棄物の山脈を糸繰り鎧い、その価値と質量によって全ての条理を否定する。

 それは、自らを殺す敵手の姿を写し取る、擬態と変形の力を持つ。

 それは、縁と繋がりの理を断つ、条理に拠らぬ魔剣を隠し持つ。

 数多の魔眼と真珠の呪いを身に纏う、蘇った奈落の悪夢である。

 

 発掘家(ディガー)擬魔(ミミック)

 【廃害真呪 スクラップ・アビス】。




《悪夢の残骸》
装備品と自身の総質量とリソース量を加算した数値を敵性存在と比較し、己より総量が少ない存在からの攻撃やスキル効果を減衰・無効化するスキル。
【傲慢魔王】の《アッパー・ポジション》互換のスキルである。
また、一定範囲までの自身の分体にも影響を及ぼし、分体の質量比で分体を守ることが可能。

最強の形(アイノカタチ)
自身を殺した敵手の姿を模倣・変形し、その能力を獲得する一種のラーニングスキル。
複数の条件が存在し使用条件が厳しいため非常に強力なラーニングスキルとなっている。
また、通常そのまま使用できないスキルは自身の肉体に接合することによって改造することができる。
・変形可能になる対象は殺された自身の総リソース量の2倍まで。
・変形できる対象は自身の総リソース量の2倍まで。
・殺される自身はつながりがある分体でも構わない。
・このスキルは本体・各分体それぞれ一度しか使用できない。
このスキルによって【スクラップ・アビス】は【バルドル】を模倣している。

《輝死改星》
 自身の信仰対象である御神体の想念を全身に拡大し、自身のスキルを増強・強化して魔剣化するスキル。
 内部で心臓型のエンジンとして巨大な魔眼が用意され、それによって<離縁鋏シャツリ>の想念を増幅している。
 【バルドル】に変形後、獲得出来なかった《既死壊世(グローリア)》を参考に作り上げたスキル。
 輝く死とは【アビスシェルダー】のことであり、それによって改められた星とは【スクラップ・アビス】のことである。

これらのスキルに加え、【アビスシェルダー】によって廃棄物を背負って殻を作るスキルと、手足を分体として切り離すスキルを保有しています。
こちらは通常モンスターが保有しているスキルのため、固有スキルではありません。
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