アビスシェルダー系超級とアニメ再現系生産型アホ二人。   作:内藤悠月

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キメラな超級はその力を振るう

 装甲をえぐられ、海上に倒れ込み仰向けに浮かんだ状態になった機械の巨人のコックピットをウルティマは覗き込む。

 そこには赤いニット帽と体を引き締めるパイロットスーツを来た少女だった。

 だが、ウルティマの気を最も引いたのは《看破》によって見透かされた彼女のジョブだった。

 

 【量産錬金術師(マスプロダクション・アルケミスト)】。生産職である。

 生産職はその成長補正によってDEX(器用さ)が高まるため、乗り物への適性自体は高い。

 だが、乗り物に合ったジョブにはそれ用の操縦スキルが存在しており、性能を高める上に直感的に機体を操作可能になるため、あるかないかでは雲泥の差。

 

 つまり、無職よりはマシな素人が乗っていたようなものなのだ。

 それの答えはコックピットにむき出しで設置されている、見たことのないはずなのに見覚えのある緑色の金属フレームが答えのような気がしなくもないが、正直それで納得したくない。

 

「があああ! またやっちまった! 何度目だ? 今やることじゃねえ!」

 

 デンドロではまあまあ珍しくない、アニメ再現系……それもGQuuuuuuXの主人公の見た目をした少女は頭を頭を抱えて後悔のようなものをしていた。

 というか一人称が俺の時点で、全く寄せる気がないあたり、見た目だけ借用しているタイプのプレイヤーのようだ。

 

 ウルティマは別にそれに対して思うことはない。

 レジェンダリアには山程いたし、グランバロアにもコスプレ軍服が複数名いる。超級にもいる。

 ただ、機体まで再現してくるタイプは……大体性格が厄介なことになっているのが気になるだけだ。

 

 うわあ、関わりたくないなぁ。

 ウルティマの心はそれで染まる。デンドロでははっちゃけたマスターがいろいろな問題を持ってくることが珍しくない。

 そして、それは最終的に<超級>にまで持ち込まれたりする。

 あまり人からの依頼を断らないウルティマは特にそういったバカの被害を受けやすいタチだった。

 

 そして、このガンダムのコックピットにいたマスターはその手合に見える。

 

「がああああ……。しかたねえ!」

 

 勝手になにかを覚悟を決めた顔をする少女。

 《看破》にはマチュという名称が浮かんでいる。

 

「”深海棲艦”のウルティマ!」

 

 なにか覚悟を決めた顔。

 ウルティマは、たじろぐ。

 

「俺を、俺たちを!」

 

 だが、そこで彼女の言葉は遮られた。

 

 一瞬にして、()()()()()()()()()()()()()()

 重力が失われ、あらゆる方向から強烈な重圧がかかる異常な空間にへと、周囲が変質した。

 それはまるでデフォルメした宇宙のような、そして闇の中で輝く深海のような。

 銀河の星がすべて光って見せる、星の海の姿。

 

 極彩色の闇だった。

 

(!? 一体どこから攻撃を!? 索敵は怠ってなかった!)

 

 その答えは、海底にあった。

 クラゲかなにかのように透き通った体を持ったヒラメかマンタかのような平べったい生き物がそこにいる。

 その名を、【星界深潭 ペスカ・ゴーティ】という。

 

 ウルティマは、その姿を捉えられない。

 展開された星界はUBMをUBMたらしめる固有のスキルである。

 《最果ての宇宙(ディーペスト・デプス)》というそのスキルは一言で言えば異常環境を作り上げる効果を持つ。

 

 一つ、極限の圧力を生じさせる。

 一つ、重力を失わせる。

 一つ、それは知覚スキルを狂わせる。

 

 そして圧縮することにより、その身を異界にへと沈み込ませる。この結界そのものが異界を現実に表出させる力を持つがために。

 <南海>にあって、その生命を【アビスシェルダー】に収穫されなかった最大の理由である。

 

 そしてそれは当然矛となるスキルも持ち合わせている。

 それは《最果ての星海(モスト・ディスタント)》。《最果ての宇宙(ディーペスト・デプス)》に適応する()()()を召喚するスキルだ。

 海にしか適応できない生き物しかいない環境において、一方的な環境を押し付け相手を生態系の底辺に貶める。

 すなわち、条件特化型古代伝説級UBMである。

 

(重力と知覚の消失に異常圧力を伴うテリトリー(結界)型スキル)

 

 ウルティマは思考する。

 ちら、と横を見れば、生産職(非戦闘型)の少女が苦しんでいる。

 着ている装備(パイロットスーツ)の性能がいいのか、苦しむだけで済んでいる。

 カンスト(合計レベル500)でもEND型でなければ耐えられず、肉体が潰れるであろう圧力の中で、まだ生きている。ならば、まだ助けられる。

 そう、考える。

 

 だから、自身の手札を開示することにした。

 

「《キメラテック・ルール》」

 

 彼の黒い鎧が変形する。

 背部や肩、両足。余剰のある各部位から、何かの器官が飛び出す。

 

 「《我が子よ、愛よ、半身よ》」

 

 歌うように、それを宣言する。

 彼の黒い鎧から人の声とは思えぬ歌声が響き、彼から飛び出した器官の一つ、蜂の巣に似た尾から小型で漆黒の蜂が飛び出してきた。

 その蜂はウルティマの周囲を取り囲む。

 

「《キメラテック・ルール》」

 

 再度、鎧を変形させるそのスキルを口にした。

 本来は宣言を必要としないスキル。だが、言葉に出すことで《キメラテック・ルール》の制御性は上がる。少なくともウルティマはそう認識している。

 

 そして、ウルティマの周囲を取り囲んでいた蜂がすべて変形し、それらは巨大な槍のような形にへと姿を変えた。

 

 なぜそうなるのか。

 それは、エンブリオと特典武具のシナジーである。

 

 ウルティマの持つエンブリオ、タイプ:フュージョンアームズ【層鱗融鎧 ウロボロス】の能力特性は装備の融合、連結、分離だ。

 第一スキル、《サイバネティック・レギオン》はエンブリオと自身が所有する装備品を融合させ、その全性能を獲得するスキルだ。当然その性能は取り込めば取り込むだけ向上し、その装備攻撃力だけでも16万に届く。

 最も、他のスキルにリソースが取られているために同系統のエンブリオと比べても性能が低い。超級だからこそその許容装備品数は二〇〇弱。だが特化した第六形態のエンブリオならそれだけで一〇〇に届きかねない。

 

 第二スキル、《キメラテック・ルール》。これは取り込んだ装備品に由来する形状にエンブリオを変形させるスキルだ。

 装備品は基本的に元々の形状でその性能を発揮する。取り込んだ装備品の能力を発揮するために形を変えるだけのスキルである。変形速度自体は【ウロボロス】の速度に比例するためだいぶ速いが。

 そして彼が“深海棲艦”と呼ばれる所以である。取り込んだ戦艦を自身の武装として顕現させるその姿が、まさしく“深海棲艦”のそれそのものだったから。

 

 第三スキル、《サイバー・ダーク・ラビリンス》。取り込んだ装備品の持つ要素を組み換え、異なる装備品に作り変えるスキル。

 必殺スキル、《超未来融合(ウロボロス)》。取り込んだ装備品を、他者に移植するスキル。

 

 《サイバー・ダーク・ラビリンス》と《超未来融合》はここでは関係ない。

 《サイバネティック・レギオン》と所有する特典武具の相性が蜂の変形した原因だ。

 

 その特典武具を【はいぱーきぐるみしりーず びーずねすと】という。

 【蜂囲陣刑 ビーズネスト】というUBMのMVP特典であり、その能力は自身の分身となる軍隊蜂の生成である。

 きぐるみについた尾(節足動物が元となっているので腹というべきか)から自身の分身として扱われる蜂を呼び出し、使役する。

 このとき、自身というのはウルティマのことではなく【はいぱーきぐるみしりーず びーずねすと】のことだ。

 特典武具になるということは、それ一つの道具に貶めるということであり、一つの道具としてしか機能しないということでもある。

 所有者とつながりを作るものもあるが、あくまで個別の物として扱われることが常だ。

 

 だが、【ウロボロス】の《サイバネティック・レギオン》は装備品と融合するスキル。

 それによって、融合した【はいぱーきぐるみしりーず びーずねすと】が生成する蜂は【ウロボロス】の分身であり分体、という扱いになってしまった。

 つまり、【ウロボロス】の性能を加算され《キメラテック・ルール》で変形可能な生物へと変化してしまったのだ。

 

 ほぼ自身と同じ性能の分体を派遣できる能力。しいていうならば数十体しか出せない点が欠点である。

 

 そして、それによって可能になったことがいくつもあった。これがその一つである。

 

「《冬の帳》」

 

 それは神話級特典武具、【冬竜撃槍 ドラグウィンター】のスキル。

 自身から数百メテルを冬に閉ざす《竜王気》派生スキルである。踏み入ったあらゆる物を冷却し、凍結する死せる冬の具現だ。

 しかし、特典武具になっている以上、その力はオリジナルに及ばない。

 

 だからこそ、ウルティマは蜂を槍にへと変形させた。

 能力の噴出点を複製し、同時にスキルを発動させるために。

 

 それは、“累ね”と呼ばれる技術である。複数人で息を合わせてスキルを使用することでそのスキル効果を何十倍にも引き上げる技であり、性質上同じスキルを持った人物が複数必要だったり、装備品では実現できなかったりするものだ。

 

 だが、ウルティマはそれを一人でやる。

 増えた蜂と、噴出点の複製によって一つのスキルを複数同時に発動させる。

 彼にアジャストした特典武具だからこそできる無茶だ。普通の装備品でやろうとすると【ウロボロス】に同種のスキルを持った装備品をいくつも取り込ませる必要がある。

 

 結果として絶死にして極凍の結界が七重に展開され。

 本来形のない領域であるはずの《最果ての宇宙(ディーペスト・デプス)》が凍りついた。

 スキルの効果もすべて失われ、ウルティマの知覚スキル上に【星界深潭 ペスカ・ゴーティ】の姿があらわになる。

 その姿は……丘に上がった深海魚のようであった。

 

 本来、美しい姿を持つはずの【星界深潭 ペスカ・ゴーティ】だったがそれは《最果ての宇宙》の中での話だ。適切な圧力がなければ自身の形を保つことは難しい。それが陰圧であればなおのこと。

 急激に圧力が変化すれば神話級UBMですら爆散するのだから。

 

「見えたぞ、ナマズ野郎」

 

 《最果ての星海》は《最果ての宇宙》の中でしか使えない。呼び出されるモンスターは《最果ての宇宙》の中でしか生存できず、そもそも召喚することすらできない。

 【ペスカ・ゴーティ】はもはやまな板の上の鯉だった。

 

 水深数百メテルの海底にへばりつき、【ペスカ・ゴーティ】は古代伝説級に相応しいSTR(筋力)END(頑丈さ)で体を維持している。

 このままではどうしようもないと考えているのか。

 こうしている今も【ペスカ・ゴーティ】には《冬の帳》の冷気によるデバフが積み重なっている。

 海水も凍りつき始めている。

 

 だから、起死回生の行動を取った。

 古代伝説級のステータスを使った奇襲である。

 その力は数百メートル程度の水深は一瞬で飛び越え、ウルティマとマチュに襲いかかる。

 

「大人しく凍ってりゃ良かったのにな」

 

 海面へ上がってきた【ペスカ・ゴーティ】が最後に見たのは海属性の魔力式大砲がついた蜂だった。

 海水を直接操作し質量を直接相手にぶち込むというイカれたコンセプトのそれによって、【ペスカ・ゴーティ】の胸に大穴を開け、その身を光の塵にへと変えたのだった。

 

 ◇

 

「おい、おい、なんだよ、ウルティマ。つえーじゃねえか」

 

 息も絶え絶えに、マチュは言葉を紡ぐ。

 

「誰だ? 【アビスシェルダー】から逃げた腰抜けみてぇなこと言ってたやつは。全然ちげぇ……」

「……」

 

 ウルティマは答えない。

 本当に誰だよそれ言ったやつ、とは思っている。

 だが、どれだけ強くても、意味がないのだ。間に合わなかった者には。

 

「どう考えてもその強さは、【アビスシェルダー】の先にあるもの」

 

 だから、ポツリと。マチュはこう、口からこぼした。

 

 奈落の果て、だと。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 それは半身に数多の武具を取り込むことによって、自らを最強の武具と成すことができる。

 それは自らの力を切り分け、己のために武具をかき集めるための分体を作り出す必殺スキルを持つ。

 それは数多くの武具の異能(スキル)を一つに累ね合わせ、魔境のすべてを踏破する業と力を操る。

 7つの特典武具とかつての文明の遺産によって、一旦の完成を迎えた究極の融合生命体である。

 

 冒険者(ローグ)合成獣(キメラ)

 “深海棲艦”奈落の果てのウルティマ・ウェポン。




一週間毎に投稿する予定が、モンハンしてて遅れました。
なんでこうも時間に余裕ないんですかね……毎日投稿できてる作者の時間どうなってんですかね……。

Q.なんでマチュは全部見た訳でもないのにアビスシェルダーみたいだってわかったの?
A.ウルティマ・ウェポンのエンブリオは第三スキル以外能力が全部割れててグランバロアでは知れ渡ってるから。
 実のところちゃんと隠すべき特典武具と装備構成は隠してるからバレてても問題ないのです。
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