アビスシェルダー系超級とアニメ再現系生産型アホ二人。   作:内藤悠月

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オペレーション・シリウスライト

 □<南海>・【盤上生存圏アリステア】

 

 壇上に一人、ウルティマは立つ。

 村の中央、宴会場として使われたその場。ウルティマはそこに立っていた。

 周囲には【マクロス・グランバロア】の面々が、どういうわけかと集まっている。

 現在も島はUBMからすこしでも距離をあけるために航行中であり、その速度も上げているためにひどい揺れだった。

 それに掃海もまだ終わっていない。

 それでも集まったのは、肝心要のウルティマがそこにいるからである。

 

「あー、みんな、集まってもらって済まない」

 

 クソ忙しいタイミングでの招集。

 ウルティマがUBMを討伐すると踏んでいたからこそ、死力を尽くしていた案件。

 そのウルティマが、なぜかここにいる。

 

「最初に謝っておく。オレは、【スクラップ・アビス】に敗北した」

 

 だから、これはその前提が崩壊したことを示していた。

 

「未判明の能力がひとつ。相手がキメラなら問答無用で分解するような能力だ。結果として、オレは……手も足も出なかった。出なくなった」

 

 ウルティマの攻撃手段は【ウロボロス】の攻撃力集約能力に依存していると言って良い。

 飛び道具にしても、その全てが【ウロボロス】の集約によって攻撃力を担保している。

 魔力式大砲にしても、見せ札の域を出ず、あの巨大な山脈鎧による増設HPを突破する火力はない。

 

「おい……おい、どうするんだ! ウルティマで勝てないなら……アレを倒せるやつなんていなくなるぞ!?」

 

 そう。そうなのだ。《悪夢の残骸》は、その価値(リソース)と質量の両方を足し合わせた値を比較し、自身よりも低いものからの干渉を完全に無効化する。

 この条件を突破できる可能性を持つ超級は数えるほどしかいない。

 【総司令官】。周囲の土地や資源を連結する、【スクラップ・アビス】に似た能力を持つ飛行要塞の質量と価値の総量によって。

 【器神】。莫大な量の先々期文明の機械と連結したエンブリオによって、足切りラインを超える者。

 【建造王】。全エンブリオ中最大の大きさと質量のエンブリオと、最強の戦艦(ヤマト)によって。

 【破壊王】。《破壊権限》によるスキル効果の破壊(マスターキー)で強引に突破する。

 【犯罪王】。【破壊王】のコピーと、その莫大なレベルによって一線を超える。

 【殲滅王】。七度の復元とその都度得られる耐性と特効能力。

 【嫉妬魔王】。腹の中に抱える“土地”の総量によって。

 

 その上で、あの山脈鎧のHPを削りきり、【スクラップ・アビス】に致命を与えられるものは、といえば皆無になってしまう。

 

 そして、その上で最も手軽に《悪夢の残骸》を超える手段である、連結・融合による質量の獲得。

 それを否定する超常能力を保有しているとあっては。

 

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 条件特化型が、その条件を背負って自由に移動している。

 【スクラップ・アビス】はそういう化け物である。

 

 山脈鎧を削り取りさえすれば、どんな超級でも攻撃は通るようになるだろう。

 だが、それは条件を突破したものが行わなければ行けない。

 条件を越えられるものをあつめ、それらによる総力戦。

 

 ひどく不可能なように思える。

 

「……」

 

 A*(エースター)は考える。

 異常なるキメラ殺しの力。ウルティマほどの存在を一方的に解体して見せるその能力を、突破する方法。

 脳裏にはすでに浮かんでいる。だが、それは実現できることなのか?

 2つの矛盾する方策。その2つを同時にこなす必要がある。

 

「……オレは、アレに、【スクラップ・アビス】に勝ちたい」

 

 ウルティマは言葉を絞り出す。

 胸のうちに秘めた、泥のような想い。

 

「交戦してわかった。アレに世界を滅ぼす力はない。【アビスシェルダー】と比べて、分体作成能力に欠けてる」

 

 あれが持っている分体作成能力がスライム由来の《分体作成》ではなく、蜥蜴のような自身の一部を囮として切り離す《自切分体》であることが最大の理由だ。

 通常の分体を作り出す能力を獲得できないのだ。身体(能力)構造的に。

 亜竜にも劣るステータスを切り離すと、命に関わるという問題がつきまとっているのだ。

 発揮ステータス自体は《最強の形(アイノカタチ)》で強烈なごまかしがかかっているが、蓋を開ければ弱小極まるステータスでしかない。

 

「けど、単独でグランバロアは滅ぼせる。放置すれば、そう遠くない未来に」

 

 最強の鎧を、グランバロアは突破できない。旗艦である【グランバロア号】ですら、攻撃が通るか怪しい。

 そもそも接敵する頃にはもっと重くなっているだろう。そうなれば、ウルティマですら攻撃が通せなくなる。

 その守りはSUBMやイレギュラーにすら匹敵する。

 

「【アビスシェルダー】から、総力上げて守った(グランバロア)だ。アレの残骸(残り火)程度の木っ端に、滅ぼされてたまるか」

 

 まごうことなき本心。これまで守ってきたもの。守ってきたのに取りこぼしたもの。

 ウルティマは、自らを無敵だと勘違いした庇護者にしかなれない。誰かと相棒になるには、巨大になりすぎた。

 ならば。

 ならば庇護者として徹するべきなのだ。

 

 最強とは、希望なのだ。どこまでも届く、長い手。

 どうしようもない現実を覆す、一手。

 

「これは【アビスシェルダー】のときにいなかったオレが、グランバロア最強の前衛のオレがやるべき仕事だ」

 

 舞台に上がる資格を失ったものが、舞台に上がるためには。

 舞台に上がるべき理由を積み上げる。

 そして、掛け金を積み増す。

 その両方が必要だ。

 

 すなわち、人生を賭した大勝負(オール・イン)

 

「――導きの星(サザンクロス)は、オレが継ぐ。オレの出せる全部をお前らにやる! オレに全てを捧げろお前ら!」

 

 会場はどよめく。

 ウルティマは一言も勝てるとは言わなかった。

 つまり、勝てる算段もないということだ。

 そのうえで、失敗すれば島だけでなくグランバロアが滅ぶ。

 

「てめえら! 何日和ってやがる!」

 

 そう喝破したのはマチュだった。

 

「超級の金で大博打が打てるんだ、全賭け(オール・イン)一択だろうが! それともなにか? お前らはただの負け犬なのか?」

「てめえ、言い方考えろバカ!」

 

 A*(エースター)マチュをひっぱたく。

 状況を選ばずこういう啖呵を切るには、マチュの良いところでもあり、悪いところでもある。

 

「まあ負け犬だろうな! 船団にも所属せず、こんなところに集まってんだ。独立独歩なんて言えば聞こえは良いだろうが、競合クランと折り合いがつかなかっただけだもんな」

 

 【マクロス・グランバロア】がひとつのクランではなく、複数のクランに別れているのは理由がある。

 単にプライドが邪魔してひとつになることがなかったからだ。

 そしてそのプライドを張る相手というのが……、本国で主要なクランとなっているものたち。

 すなわち、超級の所属するそれぞれのクラン。

 

 それぞれが、それぞれに勝ちたいとうっすら思っている。

 自分自身のクランで、あれらのクランを上回りたいと。

 

「だがな……眼の前の、自分の戦いから逃げるやつに明日は来ねえ!」

 

 だが、もはやそんなことを言っている暇はない。

 本当の意味でひとつになるべき時が来てしまったのだから。

 

「オレたち、<ヴァンキッシュ>はウルティマに乗る。そっちのほうが……面白いだろ?」

 

 最初に声を上げたのは<ヴァンキッシュ>オーナー、ルーフィーだった。

【マクロス・グランバロア】では最大の戦闘・調査に特化したクラン。

 当然そこに未知があるならば、突っ込むことは厭わない。

 

「たっぷり儲けさせてくれるんだよな? なんせ超級がバックだ。あれもこれも……売れる」

 

 <ガルホート交易団>オーナー、ベルド。

 ほぼクラン単独で【マクロス・グランバロア】の経済を回し、外部との取引を取り仕切っている、事実上の屋台骨。

 すでに戦いの後の利益を計算しているような男だが、ある種の誠実さの裏返しだ。

 

「ウルティマ殿にはウチの部下の強化をおこなってもらわなければ。ここは恩を売るべきところであります」

 

 そう次いだのは、<スカイエース>のウルハ。

 ウルティマの必殺スキルにより、準超級の能力を手に入れた者。

 自身のクランのさらなる強化を目論んで、恩を売りたがっている、ように見える。

 だがそれは言葉にした時点で、意味は裏返ってしまう。

 すなわち照れ隠しのような。

 

「<ネオスペース>オーナー不在につき、代理で返答する。<ネオスペース>はウルティマにBETする」

 

 そう声を上げたのはカラード。<ネオスペース>のロボット製造者だ。

 オーナーは可哀想なことに本日不在だった。

 ウルティマにBETするということは、所有する船のすべてを吐き出すということとほぼ同意。

 だがそれでも乗ることを選んだ。

 

「壊れたものを直すことなら」

「ウルティマ様、私を頼ってくれるのですね!」

「酒しか作れないがいいかい?」

 

 <マクロスシティ商工会>の面々。

 寄合所帯であるがために、特定の代表者と呼べる人物はいない。

 それゆえに、口々に協力を言葉にした。

 

「……うう」

「しゃんとせんかフラメタ! 妾のマスター!」

「だってみんなめちゃくちゃやる気というか……どうせ私にやれることないし……」

「もとを辿ればおぬしがはじめたことじゃぞ! それに妾もおる!」

「うう……。ウルティマさんの力になります」

 

 おずおずと。<超時空船団>のオーナー、フラメタは手を上げた。

 相変わらずの引っ込み思案。

 だが、【マクロス・グランバロア】を【マクロス・グランバロア】たらしめるのは彼女である。

 

「なんだ、結局お前ら全員乗るんじゃねえんか。当然俺らも乗るぞ」

「はぁ~~~~~。わかった。私も腹を括ろう」

 

 <ポメラニアンズ>のマチュA*(エースター)

 A*(エースター)は、その先に吐き出さなければならないものを見越して大きなため息をつく。

 必殺スキル。その可能性に気がついたなら、出さざるを得ない。

 

「氏族一同、皆様と比べればやれることは少ないでしょうが、我々も力になりますぞ」

「!?」

 

 そして。

 そう声を上げたのは機人(サイボーグ)氏族長のロウジィだった。

 彼らは守られるだけの存在ではない。

 二〇〇〇年を越えて、神の亡骸を守り続けてきた誇り高い氏族なのだ。

 

「まさか機人(サイボーグ)氏族まで乗るとはな。まあ彼らのための戦いなら、彼らも戦うべき、か」

 

 A*(エースター)はそう言葉にする。

 戦う必要がないからと言って、戦わない理由にはならない。

 

「なにするんだかわからんが全部使って戦うんだろ? なら、作戦名が必要じゃないか?」

 

 そう切り出したのはカラードだった。

 ウルティマをぶつけてそれで終わりというわけには行かなくなった以上、作戦を立てる必要があった。

 そして、それに名前をつける必要も。

 名前は重要である。目的意識を統一し、何をするべきかはっきりさせる効果がある。

 

「【アビスシェルダー】のときは総力戦で船乗りの導きの星だってんで南十字(サザンクロス)だかの名前をつけたんだろ? なら……」

 

 マチュはそう返す。

 そもそも再現系のアバターを使う人間は総じて形から入るタイプである。

 そして多くはロマンチストのようなことを口にする。

 ガワに影響され、作品に通底する美徳のようなものを無意識に内在化するためだ。

 もっとも、その影響は言動ぐらいだが。

 

「グランバロアの総力に対して、究極の一で【スクラップ・アビス】を討つ。それにふさわしい船乗りの星。すなわち」

「――作戦名(オペレーション)極点に至れ(シリウスライト)だ」

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