アビスシェルダー系超級とアニメ再現系生産型アホ二人。   作:内藤悠月

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デンドロ史上、最“重”の戦い

 エンブリオにもまた、汎用スキルと呼ばれるどのようなエンブリオでも共通して発現しうるスキルセットが存在する。

 ガードナーとの念話を高速化する《高速念話》、チャリオッツの高速機動の反動を緩和する《衝撃吸収》、キャッスル系の展開速度の問題を解決する《即時展開》《即時格納》、テリトリーの効果範囲をカットして方向を絞る《領域識別》といったものだ。

 これらは、エンブリオの基本的な機能に依存し、それらを安定運用するために発生する強化機能である。

 

 特にキャッスル系統には巨大かつ様々な生産・生活機能を伴うものが多いためにそれらを有効に活用するための機能強化が発生しやすい。

 場所を選ばず展開するために、足がついて歩けるようになったり、少しだけ浮遊できるようになったり。

 そして、そのスキルの中に《光学迷彩》という姿を隠すスキルが存在している。

 巨大すぎて目立つエンブリオを隠すためのものだ。本来はスキル特性で獲得するような特殊性だが、どういうわけか汎用スキルの中に存在している。

 

 そして、それは【戦神艦 バルドル】にも存在していた。

 だからこそ、“深海棲艦”と【スクラップ・アビス】の第二ラウンドは、【スクラップ・アビス】の先攻で始まる。

 

 

 

 

 □<南海>

 

 【ウロボロス】の、【永劫鎧帰(パワー・ボンド)】の漆黒に染まった【盤上生存圏アリステア】には、巨大な船がいくつも生えていた。

 【永劫鎧帰(パワー・ボンド)】の《サイバネティック・レギオン》のスキルにより、【マクロス・グランバロア】自体を取り込むことで島ほどある巨体を補完・拡張した姿である。

 四枚のブレードのように甲板がせり出した姿は、もはや島だった面影はなく戦艦としての姿を取り戻していた。

 

 巨大質量同士の合体。ただの質量のみによって、【スクラップ・アビス】の固有スキルを突破可能な存在と成り上がっている。

 それにエンブリオとその派生物につきものの欠損補完機能によって、失われていた機能のいくつかを修復。その性能(ランク)は古代伝説級最上位にまで回復していた。

 

 

 その側面に、機神をいびつに歪めたような姿へと変貌した【スクラップ・アビス】が奇襲を仕掛けてきたのだった。

 《光学迷彩》。巨大なキャッスル系のエンブリオが獲得する、自身の姿を欺瞞するスキル。戦闘中に使えない程度の性能しかない欠点こそあれど、不意打ちに使うならばその問題も関係がない。

 それに《悪夢の残骸》の、複数の遺骸によるスキルの使用。

 けして強力な隠蔽ではなかったが、上級エンブリオ程度の探知では発見できない、はずだった。

 

「《パリィ》」

 

 数十万もの攻撃力を秘めた拳が、透明な盾によってあっさりと跳ね除けられた。

 

 《パリィ》。

 武器によって相手の攻撃をいなす、武器職にとって基本にして初歩の防御スキルである。

 その効果は相手の攻撃の正確さと、使用者のDEXによって決定し、うまく型にはまれば水が流れるように相手の攻撃を崩し任意の位置に受け流す事が可能だ。

 最も、通常の武器職ではそこまでDEXが上がらないため、使用者の殆どは自前の技術で攻撃をそらしているという、主従が逆転したスキルでもある。

 

 使用者は【盾騎士(シールドナイト)】ソラリス・アプレンティス。

 当然、上級エンブリオしか持たないマスターがそんなスキルで機神の拳を受け流す事はできない。

 

 だから、盛ったのだ。

 DEXを、10万単位で。

 

「よくやったソラリス! 行くぞお前ら! 《マクロス・トランス・フォーメーション》!」

 

 A*(エースター)の号令とともに、【盤上生存圏アリステア】は起き上がる。

 海上に突き出した甲板は展開し、そそり立っていた巨大な塔はその構造を海底につきたて、巨大な船は縦に向かって形を変えていく。

 《マクロス・トランス・フォーメーション》。【マクロス・グランバロア】に搭載されていながら、自らの自重によって使用すれば最後、関節から破断して崩壊する未来が確約された、変形スキル。

 それが、【盤上生存圏アリステア】と【永劫鎧帰(パワー・ボンド)】の力によって、自重を支えられるENDを得た。

 それを行使できるだけの力を得た。

 そして、【スクラップ・アビス】を殴り殺せる力を得た。

 

 起き上がるだけでも800メテル。残骸を巻き込んで変形しているために、本来のバルドルより数倍は巨大な姿になっている【スクラップ・アビス】の巨躯を凌駕したサイズ。

 

「《虚無の触腕》」

 

 空母を盾として連結させた、巨大な右腕がいびつな形へと歪む。まるでゴムのように、変形して伸びる。

 

「「「「色々もりもりのぉー!」」」」

「「「「 《マクロス・アタック》!」」」」

 

 《ピンポイントバリア》。《竜王気》。《マテリアルバリア》。【盤上生存圏アリステア】……いや、銘を改めよう。【マクロス・アリステア】に連結された、様々な防壁スキル。

 それを右腕の正面に展開し、衝角として。

 

 完璧だったはずの奇襲を防がれて虚を突かれた形となった【スクラップ・アビス】の土手っ腹にその空母をつきたてた。

 

「イジェクト!」

 

 その発言とともに、空母の前半部分が切り離される。

 魔剣対策だ。拳をつきたて、そのうえで相手に触れない。

 その解答のひとつ。

 

 拳そのものを切り離してしまうこと。

 

 一度しか使えない、大技ではある。

 

「自爆しろ【シーシュポス】」

 

 そして、空母の先端として接合されていたのは、エンブリオ。

 唯一質量差で【カンゴルゴーム】に攻撃を通せていた、輸送艦だ。

 そのエンブリオの自爆は、超級職奥義にも匹敵する。

 

 そんなものが土手っ腹に突き刺さった状態で炸裂するとどうなるか。

 まして、前面装甲に兵装を格納している【バルドル】の姿を模倣している状態で。

 

 結果として、誘爆を引き起こした。

 弾薬庫に、魔眼。誘爆すると非常にまずいものばかりだ。前面装甲へ誘爆による、様々な魔法が炸裂する。

 多くの防御スキルは自傷にたいして効果を発揮しない。《悪夢の残骸》もその一種だった。

 

「これで行けるとは思っていなかったが」

 

 そして、これですら一切の致命傷にならない。

 《悪夢の残骸》に積層したその全ての残骸。それが《無双ノ戦骸(バルドル)》によってひとつのHPにへと昇華されている。

 10億を超えるその総HPを突破するには、弱点(コア)を貫く他にない。

 

「プランA、目標2-2! プランBに移行! 百魔獣(ラードーン)シフト!」

「任せろ!」

 

 いや、もうひとつある。

 

 超高火力で、削り殺すこと。

 【融帝】の最終奥義と《竜神器:冬火征々》、【神の血】。それらによってウルティマの力を発現させた、【マクロス・アリステア】なら実現可能。

 

 制限の外れた《キメラテック・ルール》の変形により、【マクロス・アリステア】はその装甲の形を変形させる。

 <ヴァンキッシュ>が回収し【ウロボロス】に取り込んだ残骸がひとつ。【蛋白之殲滅(オパール・アナイアレイト)】の顎を、百。

 全身に主砲として展開する。

 最終奥義によって高度に連結したスキル群が、接合により極限まで増大した最大MPが、その砲門に致命の力を宿らせる。

 

 その姿、百の竜の頭を持つ怪物のごとし。

 世界を焼き尽くして余りある、英雄(かいぶつ)の姿。

 奇しくも、世界を滅ぼしかけたあの奈落の怪物にも似た姿。

 

 悪夢の残滓を滅ぼすにふさわしい、最強の装いだった。

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