アビスシェルダー系超級とアニメ再現系生産型アホ二人。 作:内藤悠月
□<南海>・【盤上生存圏アリステア】
「それで、作戦はなにかあるか?」
【アリステア】に【スクラップ・アビス】が襲来する数時間前。
結局のところ無策でしかないウルティマと、それに群がる【マクロス・グランバロア】勢の姿があった。
「とりあえず、みんなの出せる最高の装備をかき集めるとして……」
【積層鱗鎧 ウロボロス】の特性は武装集約・変形・分割。当然のことながら、強力な装備があればあるだけその強さを増す。
だが、その強さも《既死改星》の前にはまったくの無意味だ。
「あのキメラ殺しの能力、あの感触からしてあれは<本物の魔剣>だろうね」
そう口を出したのは【読竜王】だった。
「は!? そこの竜王のおっさんならともかく<UBM>がなんでそんなもんを!?」
「お、おっさん……」
妙なところでショックを受ける【読竜王】。だが実年齢は4000歳を超える。おっさんとかそういう年齢ではない。
はっきり言って比較対象が三大竜王しかいない年齢である。
「“与えられた”ものだろうね。
「アレ……? いや、わかるぞ。グレート・ゲームの指し手がいるんだな?」
「少なくとも2000年前から最近までそんなことはなかったけれど……、今代の管理者の手が緩んだのを見て隙だと判断したんだろうね」
「はえ~。世界観壮大だなぁ……」
わかっているのか、わかっていないのか。
概念的なグレート・ゲームを理解できていないためである。
【大海賊】ルーフィーだけは、「自分がその立場ならそういうやり方をする」と頷いていたが。
「ウルティマくんが回収した三振りは
「それで生まれたのが【スクラップ・アビス】ってわけか。【アビス】なのに死んでなかったのはそのあたりが理由か……。とすると、魔剣の性質は……」
「”繋がりを断つ”……だな。多分ハサミだ。【ウロボロス】が分解された手応えからするに、触れると関節か接合部を裁断される感覚があった」
魔剣の使い方は、異能モノの漫画のように、解釈で変化しうることを感覚的に理解していたための発言だった。
最も、回収した三振りはそもそもの能力が尖りすぎていて変化させる余地がなかったが。
「なら、やることはひとつだな。どうにかして魔剣を無力化する。その方法は……」
「“盗む”しかない」
そう、力強く断言したのは
「無力化する方法……どうすれば……」
「ガン無視するなよ
「じゃあここから拘束状態にある【スクラップ・アビス】のどこにあるかわからない魔剣を盗めるか?」
「無☆理」
「こいつほんま……」
今、【スクラップ・アビス】は拘束状態にある。
ウルティマの置き土産である分体を使った多重圧縮《
超巨大な鎧を身にまとう代償として、その鎧の足が設置していなければまともに動くこともままならない。
重力を打ち消し、あらゆる方向から重圧をかける《
「しかし、魔剣は迷宮を作り出すものだろう? なら【スクラップ・アビス】の体内は迷宮になっているはずだ」
「どうしてそう考える?」
「私ならそうする。魔剣を守るなら自身の鎧の内側、誰にも届かないところに据える。その力を最大限発揮できる場所……祭壇となる心臓部が良いだろう」
「あの瓦礫の中かもしれないぞ?」
「ない。それはない。あれの武器は重さだ。ギチギチに圧縮されたあの真珠の山こそが【スクラップ・アビス】の最大の力だ。そんなところに魔剣を混ぜ込んだら……一瞬で砕け散る」
本物の魔剣は鋼でできている。デンドロに登場する幻想金属と比べても遥かに脆い金属であるが、どういうわけか本物の魔剣の強度は古代伝説級金属を超えていた。
そういった点も含めて、逸脱である。
ただそれでも、数十万トンの質量には耐えられないだろう。
「それに……」
「自身の根底を委ねるほどの魔剣を守る迷宮は……メメントス*1のようなものじゃないか。私が行かなくてだれが行くんだ」
「
そう言い切り舞台に上がる覚悟を示す
「それはそれとしてルーフィー船長とゆかりとソラリスはつけてくれ」
「こいつほんまさぁ……」
さっきまでの啖呵はなんだったのか、普通に戦力を要求する
突入させるなら戦力を集めて投入するのは当然のことではある。だが、一切躊躇なく<ヴァンキッシュ>の前衛戦力を指名するあたり本当に遠慮がない。
「そもそもどうやって侵入するつもりなんだ。ウルティマくらいの速度がないと接敵もままならないぞあの弾幕は」
「……ちょっといいです? あのサイズなら……アレしかないと思うんですが」
「……アレ?」
そう声を上げたのは<超時空船団>のメンバーだった。最初期から【マクロス】の製造に関わり続けた【船大工】である。
「ま、マクロスアタックです! 敵の土手っ腹に拳つきたてて強引に送り込みましょう!」
「話聞いてた!?」
「拳には【徒労輸送艦 シーシュポス】を使いましょう!」
「オレェ!?」
「自爆すれば誘爆も狙えて一石二鳥です!」
「オレのこと労って!?」
めちゃくちゃな言い分である。だが、実に合理的だった。
キメラが触れれば分解されるというのならば、触れなければいい。
代わりとなるなにかでぶん殴ればいいのだ。最も、ウルティマに見合う攻撃力を持つ代わりのものなど、存在しないが。
だが今回はどうやって侵入させるか、だ。
ウルティマの攻撃力によって圧壊せず、相手にめり込ませても問題ないエンブリオ。
それが自傷に対して完全な耐性を持つ【徒労輸送艦 シーシュポス】だった。
それでも数回拳として殴れば壊れてしまうだろうが。
「なら……こうだな。全員、覚悟しろ!」
なにか大切なものを出しだすことを、予見させる声。
「この島に、【アリステア】の《サイバネティック・レギオン》に【マクロス・グランバロア】を食わせる! この島ごと最強の船にするぞ!」
それはある意味で自分たちのプライドを売り払う行為だった。
力を得るために、根拠地を手放す。本来は愚かなことだ。その上、それはこの島を戦いに巻き込むということ。
守るべきものを戦いに巻き込むとは。
「ウルティマ。ひとつ聞きたい」
「ああ。だいたい分かるぞ。【永劫鎧帰】だろ」
「ああ。それには制限があって、【ウロボロス】には取り込めないようになっているとは聞いた」
【ウロボロス】の必殺スキルの、当然の制限。一度に複数種の装備品を選択し、ひとつの【永劫鎧帰】にまとめ上げる関係上、作成した【永劫鎧帰】を《サイバネティック・レギオン》で取り込めた場合、単独のエンブリオで無限に成長することが可能になってしまう。
それを可能にするリソースはさすがの超級エンブリオにもなかった。
つまり、【ウロボロス】の《サイバネティック・レギオン》で【永劫鎧帰】を取り込むことはできない。
一部の制限解除系のスキルを持ったジョブを試したことがあったが、それでも駄目だった。
「その逆、
「
そう。
【永劫鎧帰】に【ウロボロス】を融合させることは可能なのだ。
【アリステア】と【マクロス・グランバロア】と【ウロボロス】。
この3つをひとつに束ね、最強の船を生み出すプラン。
この世界の
「ああ、そうか。それもありか……。というか、それもあったか。
ウルティマがなにかに気がついたように、それを開示する。
「【融帝】の最終奥義を使う。これで、ここにいるマスター全員
《
何を言っているかわかりにくいが、使用者の肉体と結合されているモンスター部位とを融合させ、完全な生命体へと作り変える最終奥義なのだ。
モンスターの
それは【魔王】や【邪神】が作り出す眷属の似姿。
《眷属変生》のシステムのα版を流用した、眷属に似て非なるナニカへと成り下がる最終奥義なのだ。
【融帝】の保有するリソースが流出・変質し、融合した複数の部位をリソースの器へと作り変え、それにふさわしい姿にへと変化する。
眷属に比べれば遥かに多い器を抱え、それに最適化されるということは、【融帝】の持つスキルに【融帝】のスキルの効果が反映され、その出力を4倍に上昇させるということでもある。
融合部位の持つ制限は取り払われ、その強みは強大化。
最強のキメラにへと進化するスキルだ。
だが、当然、最終奥義であるがゆえのリスクは存在する。
180秒。
それがスキルの保証する生存期間だ。
もとより《眷属変生》による眷属化はその対象となる生物の素質に大きく影響をうけ、その生存確率は【邪神】用に改善されたスキルですら10%弱。
プロトタイプの【色欲魔王】に至っては1%に満たない。
《
【融帝】の就職条件に適合するティアンが《眷属変生》を受けた場合、80%前後で成功しうることとくらべれば、遥かに低い確率だ。
この絶命は【老化】や【拒絶反応】、【崩壊】のような、状態異常によるものなので延命自体は可能ではある。
だが、【健常のカメオ】や【
その上、使った時点でジョブを全て失う。マスターにとってはこちらの方が重いだろうか。
これを使用することで、ウルティマは100の【永劫鎧帰】に同時に融合できる身体になる。
「融合して……どうなる?」
融合対象がウルティマの、【ウロボロス】の性能を得る。それはわかる。
だが、ウルティマが【スクラップ・アビス】に触れられない前提はそれでは変わらない。
「【ウロボロス】が融合対象のスキルを使えるようになる。エンブリオのスキルであっても」
結構ギリギリまで眷属にしようかと思ったんですが、眷属器配布システムがよくわからないのと眷属化いれるのもアレだなと思ったのと、説明がややこしくなるような気がしたので半端な感じになりました。