アビスシェルダー系超級とアニメ再現系生産型アホ二人。   作:内藤悠月

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【万才賢姫 レオナルド】

 □

 

 【万才賢姫 レオナルド】。【マクロス・グランバロア】のエンブリオであり、Type:メイデンwithアドバンス・フォートレスの少女だ。

 その能力特性は建造物強化とジョブの器。

 【レオナルド】自身が上級職6個分、下級職12個分の生産職限定ジョブ枠を持ち、その上で建造物に取り付くことでその性能を建造物に付与する能力を持ったエンブリオ。

 

 そして、その能力特性にかかわらず、普段は船団のまとめ役をしている、船団の要である。

 

(なんで妾、ここにおるんじゃろ)

 

 そんな彼女だが、【マクロス・グランバロア】を【アリステア】に統合すると発言したA*(エースター)に対して、とんでもない泣き言を言いはじめたフラメタを言いくるめなだめた後。

 A*(エースター)とアヤカ・ノーレッジの会議に参加させられていた。

 船団の頭脳二人の会議。

 ウルティマの演説の後、必要な話だからと連れ込まれた。

 なぜか船団長であるフラメタは外された状態で、だ。

 

「アヤカ、わかっているな?」

「わかっています。『どうすれば勝てるか』ではなくて、『どのように勝つか』ですよね?」

「そうだ」

 

(いやわからんわからん! こいつら話が早すぎる!)

 

「まてまて、勝てないかもしれないから、って話じゃなかったのか!?」

「何言ってる、レオ。ウルティマだぞ、勝って当然だ」

「負けることを考えるほうが難しいですよ、レオ」

 

(これ妾のほうがおかしいのか?!)

 

「神話級、レベル91。この時点で格付け自体は終わってる。本来あの山の中に何が眠っていたとしても、ウルティマの敵じゃない」

「というかですね。理論上の話になるんですが、ウルティマさんに【天神の槍】を取り込ませられればそれだけで話が終わるんですよ」

 

天神の槍(ジャベリン・オブ・ジ・アトモス)】。<南海>を荒らし尽くした【アビスシェルダー】の命脈を断ち切った古代文明の遺産。

 魔法力の融合によって生み出されるプラズマは文字通りあらゆるものを溶解・蒸発させる破滅の豪砲である。

 その最大の問題点として、専用の弾薬を必要とし、それを再生産できない。だが、それをウルティマは踏み倒せた。

 

「質量比較防御も、海底鉱山でもウルティマに取り込ませれば問題なく突破できる。それくらい好き勝手できる行動能力がウルティマにはある」

 

 A*(エースター)あの瓦礫の山に取り込まれたものを自由に【スクラップ・アビス】が使える可能性も考慮している。

 だが、それらがあろうとウルティマが触れられる時点で敵ではない。

 あの【アビスシェルダー】を正面から、小細工無しで打倒しうる戦力として評価されているのは伊達ではないのだ。

 強いて言うならば、空間系の防御だが、こちらを持っている可能性は考慮していなかった。

 それがあるなら、ウルティマの初撃で対応されている。

 

「質量比較防御と、キメラ殺しの魔剣による結合破壊と、魔眼による突入阻害。これがきれいに噛み合ってしまったせいで【スクラップ・アビス】の無敵は成立しています。質量比較は討伐可能なマスターをウルティマやその類型に限定しながら、キメラ殺しでそれを即死させられるように。そして魔眼がギミック突破のための戦力を近づけさせません」

 

 ある意味で【アビスシェルダー】とは真逆の防御能力だ。

 【アビスシェルダー】は無数の汎用スキルを積み重ねた結果の無敵だったのに対して、【スクラップ・アビス】は極まった特異に由来する無敵。

 どちらが強いかという問題ではない。

 突破手段が限界まで絞り込まれていることが問題なのだ。

 

「で、だ。本題はこの魔剣だ」

「やっと妾にもわかったぞ、どうやって無力化するかじゃな?」

()()」「違いますよ」

「ええー!?」

「無力化するだけならJJ(ダブルジェイ)だけで事足りる。あいつは超一流の怪盗だからな」

 

 はあ、と息を吐くA*(エースター)

 

「この点において問題はみっつだ。ひとつは魔剣を送ったやつ。ふたつめは、勝利によって力を得てしまうこと。みっつめは盤上(グレート・ゲーム)だ」

レイヤー(視点)の違いですね」

「レイヤー?????」

「作るやつ、売るやつ、売った後の社会」

「なるほど……」

 

 レオナルド、レオは職人である。船を作るために望まれ、あらゆる物を作り出す能力を備えて生まれてきた。

 レオが受けた説明は、職人が作り出した道具がどれだけの人間に関わるかという段階である。段階ごとに求められる倫理が異なり、考えることが違う。

 たとえば作る者は「それを本当に作るべきか」、売る者は「本当に売るべきか、誰に売るか」、社会は「どれだけ許容するか」。

 

「あれを倒せば、倒したという事実が魔剣のやつ、国、世界に伝わる。これは決定事項だ」

「すでに複数名に観測さ(見ら)れていますからね……」

「これ妾知る必要ある!?」

代表者(まとめ役)だろ。逃げるな」

 

「だから、どのように勝つか、を考える必要が出てくる」

「正直あまり考えたくないですね。面倒くさいです」

「じゃあ考えなくていいんじゃ」

「私たちの進退に関わるが」

「じゃあダメじゃろ……」

 

 考えることが多くて頭を抱えそうになるレオ。事実として抱える必要があることではあった。

 

「魔剣のやつ。可能な限り力を見せつけて、二度と手を出したくないと思わせるのが最上」

「多分無理ですね。“化身”の襲来を見て、日和っていた程度の指し手ですが、マスターの増加を隙だと見る程度の思慮です」

「だよなぁ……」

 

「何を敵として見定めているのじゃ……?」

「魔剣が理由なく湧くわけ無いだろ。あれはゲームの“外”からもたらされたものだ」

「多分“化身”と同じルートですね。外世界とはロマンがありますね」

 

「で、その“なにものか”が目的のためにこの世界へ魔剣を投げ込んで来てる。外から魔剣を投げることしか出来ていないようだから、目的は多分降臨・侵略だな」

「とするとウルティマさんが回収した三振りは虎の子でしょうか」

「多分そうだろうなぁ……」

 

「【読竜王】が言うには、モンスターが魔剣を取り込んだケースは初めてだそうだ。つまり新しい手法を試しはじめているということだ」

「<UBM>がシナジー能力獲得するとか考えたくないんじゃがなぁ……」

「そう、それだ。それが危険すぎる」

 

 そう言い切るA*(エースター)

 

「魔剣のやつが手当たり次第に相性の良い魔剣をUBMにばらまけば、それだけで対処不能になりうる」

「可能ならこれがうまく行かない手段だと、学習させたいところですが……」

「まあ、微妙な線だ。努力目標とするしかない」

 

「次に、グランバロア。ぶっちゃけた話、ウルティマ込みで私達は今回、【グランバロア号】に匹敵する船を手に入れることとなる」

「性能には神話級UBM相当からSUBM相当まで、そこそこブレがありますけどね」

「後ろ盾がない。最悪ウルティマを前面に押し出すしかないぐらいに迂闊に持ってしまった力になる」

「ウルティマさんが冒険船団所属なのも最悪ですね。今、【アビスシェルダー】の特典武具もあってパワーバランスが崩れていますから」

「船ごと冒険船団所属にすると国が割れる。それはもう盛大に」

 

「あとサトミ。ぶっちゃけあいつの作る船、物理か魔法砲台しか火力がないから完封できるんだけど……」

「はっきり言って最悪ですね。完封できる事実が」

「完封できる事実が!?」

 

 A*(エースター)の目は「だってあいつ船と見ると性能試験と称して襲ってくるんだもん……」と言いたげだった。

 なんなら、強ければ強いほどその傾向は強くなる。

 

「【グランバロア号】と性能試験したいとぼやいてるのは有名な話じゃもんなぁ……」

「絶対やっていい船と見られる」

「関わりたくないです……」

 

 【マクロス・グランバロア】において、サトミ・ヤマモトの評判は悪い。

 シンプルに思想の反りが合わないためだ。

 あいつら仮想戦記を題しているくせに、SFを一切認めない。

 

「次に、世界。というか、カルディナの魔女だ」

「……? 他国のトップがなんで出てくるのじゃ?」

「理由はいくつかあるが……グランバロアの敵国のトップだということ」

「ちょっと考えてください。合衆国のような政治体制の国で、ワントップに思考と超級武力が統一されているのすでに異常なんですよ」

「動きを見るに確実に世界を盤上としてなにかを指している。最終目的はわからないが……」

 

 少なくとも、国と国民のためではないのは確かだ、とA*(エースター)はこぼした。

 

「アルターは頭が不在、ドライフは内紛の関係で内政するしかなくこっちを見る余裕はない」

「レジェンダリアは伝統的に内政特化の引きこもり国家ですし、天地も内戦で海を見る余裕はありませんね」

「天地は動くかもしれないが、そもそも海の壁が分厚いからな」

「黄河は国体が安定している関係か、そういう動きはないですね」

「帝国だから何かしらありそうなんだけどなぁ……」

 

「それと、先々期文明の遺産か。一定の目的のうちに動いていることがわかっていて、歴史の端々に顔出してる」

「多分“化身”対策ですね。過去の遺物が現代の人間に迷惑かけてくるのやめてほしいんですが。人工知能の性能がいいから、全体を群れとして捉えると指し手とみなすしかないですし」

「あの時代の兵器、無駄に頑丈で現代でも動くからあの時代の命令そのままの行動するんだよなぁ……」

「妾もあれくらいの機械を作りたいものじゃ……」

 

「あとゲームマスター(管理AI)も警戒対象だ。そもそもこのゲーム自体がGMの目的のために運営されていることは自明の理だが……」

「待て待て待て、とんでもない仕様しているとはいえ、ただのゲームなんじゃろ!?」

「お前だよ! お前ら(エンブリオ)を育ててなにかしようとしてるのは間違いないんだよ! というかレオが言うのか!?」

「仕様眺めていてもそれは自明ですからね。なんのためのデータ取りかはよくわかりませんが……」

「こっちもカルディナの魔女と同じで目的不明のまま、世界遊戯(グレート・ゲーム)指しているのは間違いない。しかもそれで普通にティアンが死ぬ」

 

 ――【モビーディック・ツイン】とかな。

 A*(エースター)は声を潜ませる。

 

「で、こいつら相手に出していい情報として、【スクラップ・アビス】にどのように勝つか、になるんだが」

「や、やっと話が戻ってきたな……」

「ぶっちゃけこいつらがピーピング(覗き見)でこっちの情報を探ってる。だから、世界に対してどれだけ開示していいか、で勝ち方を選ぶ必要がある」

「そもそも、選ぶなんてことできるのじゃ?」

「そりゃ、決まってるだろ。最強ってのは、好きな勝ち方を選べるヤツのことだ。ウルティマがオール・インするのなら、私が勝ち方を選ばせてやる」

 

「で、だ。その勝ち方の中でも、選ばないといけないでかいのがある」

「のじゃ?」

「レオ、多分お前、超級進化する」

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