アビスシェルダー系超級とアニメ再現系生産型アホ二人。 作:内藤悠月
通路を黒い霧が埋め尽くし、その場にかかる
ウルティマの与える暗視の力がなければ先を見通すことすら出来ないほどの闇。
光属性に対する耐性、視界を潰す闇、触れたものからバフを奪い去る力。極めて優秀なエンブリオだ。
そしてその闇をシェルターとして突入班はダンジョンを突き進む。
出力の強化された【ホルス】が見通した迷宮構造に従い、6桁に至るAGIによって本来なし得ない速度で攻略を進めていく。
壁となる敵が生産された機械しか存在していないために、それらは
うねる鎖が敵手に触れるたびにその姿が消え、アイテムボックスにしまわれていく。
「ベルドから借りられて良かった。これがあるのとないのとでは……盗める規模が違ってくる。今なら戦艦だって盗めるぞ」
ベルドのエンブリオ、【ミニュアース】の必殺スキル、《
枠とスタックの概念により、巨大な容量を持つに至ったアイテムボックスのアクセス権となると、数枠であってもとんでもないことになる。アイテムボックスを入れ子にした上でスタックすることによって、個人が使うには余りある容量となるのだ。
その上、一度権限を与えれば世界中どこであってもアクセス可能。
進行方向に立ちふさがる【合金之尖兵】やそれの改造型しか出てこない現状において、脅威と呼べるものは何もなかった。
「進行方向、直進10秒後に敵性アリ、対処をお願いします」
「規模は?」
「古代伝説級ボスモンスターです。以降の攻略と戦力を考えると1秒以内に撃破してください」
そう。脅威にあたっては行けない。
下手に戦力を投入できない。
なぜなら仮想敵は超級。この戦力で撃破することを考えるならば、最低でも
そしてダンジョンを30分で攻略することを考えれば、古代伝説級モンスターであっても瞬殺しなければならない。
一撃で以て、障害を排除する。
ウルティマの力を借り受けているのならば、出来て当然のことだ。
「接敵! 【ローズダイヤ・スクラップ・タイタン】!」
通路の先、広い部屋には頭部が魔眼に置き換わった巨人の姿があった。
黒い体皮に四本の腕。それに真珠の鎧を身にまとっている。
その上その身に纏うのは《竜王気》。鎧に組み込まれたUBMの力を強引に引き出していた。
「俺が行く! 《ヒットザボトル》、【アルコールハラスメント】!」
飛び出したのはシラフだった。片手には酒瓶を持ち、スキルを発動させながらその酒を煽る。
口につけた瞬間、鎧に与えられた力によって一瞬で酒は飲み干され……、シラフと巨人の双方が同時に全身から血を吹き出した。
【アルコールハラスメント】とひどい名前を銘打たれたその酒の持つ
肝臓置換型アームズ、【酒酔酒解 デュオニュソス】のスキル、《ドランクドライバ》は自身が受けている状態異常の数だけ、自身が飲む酒の効果を強める力を持つ。それに加え、最新の状態異常以外の影響を無効化する。
【カメオ】や【ポーション】、回復魔法と違って状態異常自体は残ったまま、その効果だけが停止している状態になっているわけだ。
そして、《ヒットザボトル》は自身が受けている状態異常を酒に付与することで、その酒の品質を劇的に高めるスキル。
【
ふたつのスキルにより劇的に高められた状態異常は、瞬時に巨人を侵す。
ウルティマから共有された莫大なHPを持つシラフはともかく、巨人にとっては致命的。
巨人は膝から崩れ落ち……光の塵となって経験値にへと変わった。
「最悪の酒ですね!?」
「ええ……あいつなにやったの……」
ドン引きである。元々、シラフは味だけを追求した毒酒を作ることで有名なマスターだ。
味は旨いが、飲むと重篤な状態異常にさらされる。そういう酒を売っている。
あまりに酒を飲むことに執着するので、リアルでこいつは肝硬変なのでは? という疑いすら向けられていた。
「まあ……先に進みましょう、ッ!」
「《シールド・プロテクション》《パリィ》!」
脅威を排除したその瞬間の隙。それに合わせて、天井から【エメラル・スクラップ・シースパイダー】が奇襲を仕掛けてきた。
落ちるに合わせて、その四肢の先に接合されたブレードを振り回す。
だが、ソラリスはそれに合わせて盾を突き出した。
彼女の役割はタンク。敵の攻撃を引き付け、皆を守る。
味方の損害を減らして、効率よく敵に脅威を押し付けることこそタンクの真髄。
ソラリスは相手の攻撃を絡め取り、海蜘蛛を壁に叩きつけた。
使い切りの防御スキルを合わせて弾くことで本来ありえないほどの衝撃を生み出し、軽度の【昏倒】を引き起こす。
「ゴムゴムのぉ――《
無防備になった【エメラル・スクラップ・シースパイダー】の土手っ腹に、ルーフィーの拳が突き刺さった。
まるでゴムのように、自在に伸びるルーフィーの腕。
タイプ:ボディ、【邪神零落 クローリングケイオス】のスキル、《虚無の触腕》。どこにでもある次元の歪みと十一次元を利用することで、3次元上にある自身の
3Dモデルの手足が伸びたりねじれたりするバグのようなものをイメージしてもらえれば正確だろう。
また、十一次元を利用する関係上、真っ当な防御能力のほとんどをすり抜け、クリティカルヒットを誘発する。
その一撃によって、【エメラル・スクラップ・シースパイダー】は内側から爆ぜた。
体液が部屋に飛び散り周囲を青い血で染める。
「うわっ、キモッ」
「デンドロのこれ、本当にどうにかならないっすか」
これが嫌だからという理由で攻撃属性を選択するマスターが居るほど。
「ドロップアイテムは置いていくぞ!」
「先を急ぎましょう」
「行くっすよー」
□
AGIに任せ、途中で現れた機械兵もアイテムボックスにしまいながらの高速攻略。
六桁ものAGIによる高速機動は、距離の概念を縮めるほどのものであり、本来ならば数日かけて潜るほどの深度まで数分で到達する。
すなわち、最深部。山脈鎧の心臓であり、【スクラップ・アビス】が変形した【バルドル】の中。
魔剣によって歪められ広大な神殿と化したコックピットである。
そこには巨大な円盤機械と精悍な男性、少女型の機械人形の姿があった。
《看破》には【廃害真呪 スクラップ・アビス】。
《鑑定眼》には【レミナ・クライセラ】と【
精悍な男の腰には、大きなハサミのようなものが下げられている。
《鑑定眼》を通すまでもない。あれこそが探していた魔剣だ。
「会いたかったぞ、<UBM>諸君。なにか思っていたよりも数が多いようだが」
「キシシ」
「想定外の戦力です。ですが……」
「敵ではないっす!」