アビスシェルダー系超級とアニメ再現系生産型アホ二人。 作:内藤悠月
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迷宮化した【バルドル】のコックピットの中、祭祀場のように姿を変えたその場に、マスターとUBMは相対する。
部屋を埋め尽くすほどの闇の中、光に頼らぬ視界を持つがゆえに、お互いの姿をはっきりと知覚していた。
先々期文明の儀礼様式の中、怪人めいた姿を持った複数人のマスター。
筋骨隆々な偉丈夫と、それに仕えるように寄り添う少女人形。
どちらが
ましてや。
偉丈夫の姿が、グランバロアを救った英雄の姿であるのなら、なおさら。
「お客人方。ご足労いただきありがとうございます。こちらは主の【廃害真呪 スクラップ・アビス】。わたくしは侍従のチューリと申します」
最初に口を開いたのは少女人形。
聞けば不思議と心が安らぐ、柔らかな声音である。
そのにじませる敵意を読み取れないのならば、だが。
「わざわざこのような場所まで、何用でしょうか。迷い込んだのならば、お帰りはあちらになります」
慇懃無礼に、そう言い放つ。
ここまで来たと言うならば、その解答はわかりきっているというのに。
「いいえ。いいえ。退くべきは貴方がたです。私達への強襲こそ許しがたい蛮行ですが、ここで退いて人を、グランバロアを襲わないというならば私達は目をつぶりましょう」
それに答えたのはアヤカだった。
UBMを見逃すなど、それこそ愚かな行為だが。生きたまま交渉できるならばそれは大きな相互利益を生む。その可能性があった。
まして【スクラップ・アビス】は超一流の発掘者である。
協力できるならば、グランバロアの海底の遺跡調査は飛躍的に加速することだろう。
「なにを異なことを。それこそ愚かな選択でしょう。この世界は弱肉強食。弱きは奪われ、強きは栄える。それを否定できる生き物は、ここには存在しないでしょう?」
当然、そんな可能性は存在しない。
「それに、我らが神を降ろすのに……そう、【グランバロア号】でしたか。あれが必要なのです。それとも、あれを提供いただけますか?」
不可能に決まっていた。
「……ふう。交渉できるかと思ったのですが。大方予想どおりの結果ですね」
その言葉にアヤカは交渉を打ち切る。
「おい、JJ。アレやれアレ」
「キシシ。いいの頼む」
シラフとルーフィーが
「我らの目的は【スクラップ・アビス】の討伐、【アビス】の悪夢の再来の否定!
グランバロアの総力を以て成し遂げた、世界の終わりの破却、それを覆させはしない。
たとえ海底の山脈に姿を隠そうとも、我らはその姿を暴き、何度でも戦いを挑むだろう。
我らは不屈の不死者である。悲劇の否定者である。終わりを乗り越えるものである。
世界を貪る暴食の怪物よ。汝の
“
“
”
その他含め、以下7名。
――我らが“奈落の果て”の
そう、
「主を、アレと、【アビスシェルダー】ごときと同じように扱うなァ!!!」
『GYUUuuuuu,GAAAAAA!!』
即座に行動を移したのは【スクラップ・アビス】と機械人形だった。
莫大なSTRに由来する縮地。瞬時に距離を詰める。
「【クロック・バランサー】臨界駆動。《ジェット・チェイス》!」
機械人形が真っ先に使用したのは、改変兵装【クロック・バランサー】。
その機能は、範囲内のAGIを平均化し、その上で自分や味方のみをわずかに速い状態するというもの。
影響範囲内にいるAGI型よりも高速化し、他に搭載された兵器で圧殺する、そのような改変兵装であった。
AGIであるならば100万あろうと平均化し、その数値を上回る。
6桁にも及ぶ莫大なAGIによる見てから回避する戦法を潰すための一手。
《破壊権限》と20万程度と推測されるSTRによって、あらゆる防御を破壊する【破壊王】の拳を、避けさせないための手段。
それに対して突入班の手は。
「ゴムコ゚《摂理の嘲笑者》!」
ルーフィーが前に出て、その拳を受け止めた。
全身が黒鉄に染まり、金属にも似た光沢を帯びている。
「お前、
【クローリングケイオス】の固有スキル、《摂理の嘲笑者》。
事前に【マクロス】勢の中で議論され、用意された《破壊権限》対策である。
その効果はといえば、自身の上位次元へのシフトだ。そこに3次元の
このスキルを発動中のルーフィーには絶対に触れる事はできない。
影に触れて実体に干渉する事ができないように、目に見えるルーフィーの姿を攻撃しようがルーフィーの本体には一切届かなくなるのだ。
この場に残るルーフィーの姿は、より上の次元から落ちてきたルーフィーの影に過ぎないのだから。
影を通して現実に一方的に干渉できる非常に強力なスキルだが、難点も多い。
SPの消費も激しく、本来であれば数分でコストが溶けてしまうこと。
上位次元側にも“地形”があり、そこの影響を受けてしまうこと。
そもそも行使に上位次元を認識し、操作できる技術が必要になる。
それは人間に「上向きに歩けば空を飛べます」と言っているようなものだからだ。
それ故、【クローリングケイオス】の固有スキルはルーフィーの制御なしでは使用できない。
それらを置いても。ルーフィーに《破壊権限》は届かない。
「主! ――《ダイヤモンド・スレイ》!」
「おっと、嬢ちゃんの相手は俺だぜ?」
「うちもいるっすよ」
《ダイヤモンドスレイ》……周囲のENDを最大20万減算する改変兵装のスキル。それをものともせず、少女人形の前に立ちはだかったのは【調毒酒師】シラフと【海賊騎士】ソラリスだった。
酒の高速飲酒により、HPを回復し続けるシラフに、パーティにおいて最大の防御力を持つソラリスの二人が、機械人形を抑えにかかる。
先々期文明の異常な性能を持つ兵器群を自由に使わせればそれだけで状況が崩れてしまう。
「ロエさん、捕食状況をお願いします」
「あの魔剣、<離縁鋏シャツリ>恐ろしくかったい……! 5分ぐらいかかりそう!」
「皆さん! 5分です! 5分耐えてください!」
触れるだけでバフを喰らい尽くす【スコル】にあって5分もかかる異常事態。
そもそも強度の高いバフに対しては捕食出来ない限界があるのだが、少しずつでも削れている時点で異常というべきではあった。
極小で、膨大な量のバフの塊。それがパズルのように重なり合っている。そう表現するしか出来ない。
「ゆかりさんはバフを切らさないようにお願いします!」
そう、事前の取り決めの通りに。
「ゆかりさんはバフ係……に見せかけてェ!」
<きつねの道しるべ>と《デスボイスシャウト》を組み合わせ、コックピット周囲を音響探査しながら攻撃するゆかり。
音による攻撃であるために、戦闘速度に全く追いつけていないという問題こそあれど音の届く範囲全てが攻撃範囲。
知覚外の敵を警戒し、増援を潰す役目である。
当然一番の警戒対象は【レミナ・クライセラ】。あの中に何が収まっているかわからない。
はじめから決めていたことだ。
ウルティマの鎧を共有した時点で、並のバフはまともな効力を持たない。
一部倍率バフは強力にかかるが、音という性質上、高まったAGIとの兼ね合いから狙ったように掛けられるかはわからなかった。
そのため、自己バフを多重に掛けつつ、それによって周囲を警戒。増援をさせないことを第一目的としたのだった。
そして、あらかじめバフと周囲探査の指示を入れ替えていた。
相手の知能が高いことを前提とした策。
一瞬
そして
現状、致死となる攻撃は【破壊王】の拳のみ。
莫大な質と量の防御スキルも、《破壊権限》の前では無為。
重ねた防御で攻撃を減衰させて防げるまで弱らせるか、そもそも触れられないようにするか。
そうでなくては防ぐこともままならない。
突入班には防御スキルの耐久力を引き上げる手段がなく、防御スキルで受けるという選択肢が存在していないのだ。
外の【マクロス・アリステア】ならENDで攻撃を防ぐこともできるが、《ダイアモンドスレイ》の影響下ではそれも不可能。
20万減算された結果、ENDは30万程度にまで下がっている。想定される攻撃スキル込みの【破壊王】の攻撃が通ってしまう。
故に、ルーフィーが【スクラップ・アビス】を引き受け、次元の壁によって受け切る。
それのみに絞られる。
《ジェット・チェイス》でAGIを平均化された状態でも、《冒涜的存在》による肉体の変形も含めればルーフィーのほうが【破壊王】よりも早い。
そして突入班の勝利条件は、敵手の打破ではない。
ウルティマを自由に戦わせることだ。
これは前哨戦。
粘り切るか、魔剣を奪い取るか。
そのどちらかで、勝利が確定する。
「ゴムゴムのォ! 《
『GYUAAA,《破城槌》!』
相手の意識を釘付けにするために、脅威となるだけの攻撃を放つルーフィー。
対するは、人語を理解しないがゆえに鳴き声を上げ、翻訳によって鮮明にスキル名だけが聞き取れる【スクラップ・アビス】の拳。
十分なリーチから放たれたその拳は、正確に拳を打ち合わされる事によって相殺される。
「攻撃の衝撃が……破壊されたァ!」
「そんな使い方もできるんですね。想像以上に危険です」
だが、【破壊王】の意識がルーフィーに向かっているうちは想定通りだ。
最終奥義である《
そして《
自らの体内で使うようなスキルではない。
そして、だからこそ見落としていた要素もある。
「……は?」
《摂理の嘲笑者》によって、絶対的な無敵が約束されていたはずのルーフィーの右腕が、切断されている。
この場にある《輝死改星》の影響は、すでに食い尽くされている。すでに触れることはリスクにならない。
見落とされていたのは、異能というものの本質。
不条理を理不尽に現実へ押し付ける、そのあり方。
魔剣を抜いた【破壊王】がそこに立っていた。
大鋏を2つに分かち、双刀のように。
「へぇ、面白いじゃないか。神話級だなんて言うんだから、それぐらいしないとな!」
それに対し、狂気的な笑顔を浮かべるルーフィー。
「もっと貪欲に、攻撃的に行かないと、勝てないってことだよな。お前らついてこい!」
乱戦に合わせ、姿を隠した
ここからもっと暴れるということを、大々的に宣言する。
「――にゃる・しゅたん! にゃる・がしゃんな! にゃる・しゅたん! にゃる・がしゃんな! 《
その口からは、冒涜的な呪文が滑り出た。
JJが語った二つ名はJJがこの場で考えて即席で名乗った二つ名です。