アビスシェルダー系超級とアニメ再現系生産型アホ二人。   作:内藤悠月

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【写し刃レイフォート】

 □■

 

 シラフとソラリスは【魔眼鋼之調律】と相対する。

 その機械人形は両腕から武装を展開し、メイド服のスカートの裾から機械腕が伸びていた。

 伸びる四本の腕はそれぞれ先端に兵器のようなアタッチメントが取り付けられ、戦闘態勢が整っていることが見て取れる。

 

「なあ、アレ、どれぐらい強いと思う?」

「先々期文明の兵器なら古代伝説級は固いんじゃないっすかね?」

「まあそう見るのが妥当か」

 

 ステータスではこちらが大幅に上回っている。

 だが、煌玉人には改変兵装と呼ばれる、事象そのものを捻じ曲げる力を持つ武装が存在している。

 決して軽んじていい相手ではない。

 

「《ロジック・クラスター》」

 

 機械の演算能力による先読み。それによって初動を【調律】に取られる。

 独立して動く機械肢が光る粒子をばらまく。

 

 高度演算によって爆発規模そのものが完全に制御され、触れたものそのものを消し飛ばす爆発属性と固定ダメージ属性の混合魔法兵器。

 その攻撃範囲は自由自在。煌玉人でなければ制御できない欠点はあれど、非常に優秀な範囲殲滅攻撃だった。

 

 だが。

 シラフとソラリスは、すでに普通の前衛ではない。

 ウルティマのステータスを共有され、純粋性能型の神話級UBMを超越するステータスに、4倍強化されたエンブリオを持つマスターである。

 

「喰らえ!」

「喰らうっす!」

 

 爆発の中を抜け、手に持った酒瓶と剣を同時に叩き込む。

 

「《空間固定》」

 

 それを、絶対防御によって受け止めた。

 決戦兵器に積まれた機能、その廉価版。円盾程度の大きさしか固定できない代わりに、発動コストを簡略化した代物である。

 それでいて目に見えないために、非常に対処しづらい防御能力。

 

「《ポーション・ブレス》!」

 

 それに対し、次の攻撃を繰り出したのはシラフだった。

 シラフに与えられた【永劫鎧帰】、その原料。【銀砂之蟒蛇(ナノマテリアル・ドランカー)】にある2つの機能のうちの1つ。装填された液体を高速で吹き付ける攻撃機能である。

 無論、装填されたのはシラフ手製の毒酒。まともに喰らえば複数状態異常に陥る代物だが、機械にはまともに通らない。

 

 だから、固定された空間に吹き付けた。

 固定されている以上、そこには霜がつく。

 

「《クルーエルステップ》!」

 

 そこにソラリスが強襲を掛けた。瞬間的な踏み込みの加速とステップによるフェイント混じりの攻撃スキルである。

 急加速された剣撃は機械肢を捉え、切り落としにかかった。のだが。

 

「《ベクトル・キャンセラー》」

 

 物理運動を打ち消す第二の守り。自身に触れた運動エネルギーをゼロにするということは、あらゆる物理攻撃を防ぐことが可能な代物である。

 

「く、抜けねぇっす! その剣高いのに!」

 

 とっさに剣を手放して機械人形から離れるソラリス。

 手放した剣は、機械肢に触れた状態で空中に固定されていた。

 

「鎧持っていかれなかっただけマシだと思いな」

「うう、っす。とすると、()()をぶっつけ本番っすか」

「まあそうなるな。俺は剣を使えないからどうしようもないが」

「バカ! あんぽんたん! 大酒飲み!」

「ははは。褒め言葉だ」

 

 シラフを罵倒しながら、ソラリスはアイテムボックスから二本の魔剣を取り出す。

 妖刀四十二染にも匹敵する、禍々しいまでの情念が込められた魔剣。一目見るだけで怖気が走るほどの、妄執が込められたもの。

【マクロス・グランバロア】に所属する数名の【魔剣鍛冶】が、わずか数時間という短い納期で仕上げた、最高傑作。

 

 だからこそ、機械人形は目を見開く。

 

「我が神の……写し身……!?」

「そう、っす!」

 

 その銘を、【写し刃レイフォート】。情念制御のエンブリオと剣を打つことに特化したエンブリオ。そして、【魔剣鍛冶】の持つ武器にリソースを込めるジョブスキル。それらのシナジーと、<レイフォートの刹那の魔剣>という手本を元に作り上げられた、魔剣。

 神の手によって作り上げられた超常を、人の手で再現した切り札である。

 

「我らの神が人の手にあることすら我慢ならないというのに……なんという不敬でしょう」

「知ったこっちゃないっす。人は、神すら越えていくものっす!」

 

 そう言い切り、ソラリスは再び斬りかかる。

 先ほどと同様に、《空間固定》と《ベクトル・キャンセラー》による二重防御で受ける体勢をとったチューリだったが。

 その機械肢は斬り飛ばされる。

 

「な……!」

「うまく行ったじゃねえか!」

 

 《刻弦》。【写し刃レイフォート】に付与された、唯一の装備スキルである。その効果は、“現在”にわずかに刃を食い込ませること。

 <レイフォートの刹那の魔剣>と比べれば、100分の1から1000分の1にまで性能が劣化しているが、それでも時間軸に刃を通せる利点は非常に大きい。

 わずかに刃が入るということは、そのまま刃を通せるということだからだ。

 

 “現在”を切り捨てて過程を消し去ることは出来ない。だが、攻撃を防いだという事実に少しだけ刃を食い込ませることはできる。

 そして、攻撃力次第にこそなるが……刃が食い込むならそのまま切り裂く事ができる。

 

 結果として。受ける防御は全て切断する事ができる魔剣として【写し刃レイフォート】は誕生した。

 急造品であるがゆえに、耐久力が著しく低い代物である。だがこの戦いの間は十分に保つ。

 

 「それにこっちには俺もいるんだぜ? 《ヒット・ザ・ボトル》《ポイズン・カクテル》《ポーション・インジェクター》」

 

 《ポイズン・カクテル》。【調毒酒師】の基本的なスキルで、二種類の飲み物を混ぜ合わせるスキルだ。その際、口当たりを滑らかにし毒性を高める効果を持っている。

 シラフの《ヒット・ザ・ボトル》と重なると致命的なほどの毒性を生み出す代物だ。

 これを使い、【アルコールハラスメント】と【オカシシ】から抽出した成分とを混ぜ合わせて作り出した酒を、《ポーションインジェクター》……【蟒蛇(ドランカー)】の持つ液体薬(ポーション)を高速で飲むスキルを使い一気飲みをする。

 【アルコールハラスメント】による毒性の転写。

 

 するとどうなるか。

 

「な、に、を……」

「こいつは……キくだろ?」

 

 強烈な感覚異常。幻覚症状。どういうわけか、それが機械人形に過ぎないチューリに発生していた。

 自分自身が2つにわかれる感覚。ひとつの鮮明な意識を保ったまま、複数の体に分裂する異常な感覚に襲われている。

 機械はひとつの感覚器でふたつのものは同時に処理できない。ひとつの箱で処理できるものはひとつだけである。

 

「というか……私にもシラフと人形が増えて見えるっすけど……」

「そういう幻覚作用だ! 気にするな!」

 

 もっとも幻覚症状を受けていないソラリスからも、シラフとチューリは分裂して見えていた。

 他者に影響を及ぼす幻覚症状。異常極まる毒性。

 いかに増幅された毒性とはいえ、ここまでの症状を引き起こすものなのか。

 

「おっと、迎え酒」

 

 酒瓶をラッパするシラフ。それと同時に分裂して増えたシラフが消える。

 《ドランクドライバ》の効果により、状態異常の効果が無効化されたのだ。

 

「「わけがわかりません……頭が、おかしくなる……」」

「それは同意するっすけど……」

 

 まともな知覚ができなくなったチューリ。愚痴が2つの口から同時にこぼれる。

 演算能力を活かした正確無比な攻撃は不可能となった。

 

「「《パルス・ミサイル》」」

 

 ゆえにこそ、使うのは盲撃ち。適当にばらまけば効果を発揮する代物。

 適当にばらまいても敵を狙って追尾する攻撃魔法を瞬時に64発展開しばらまいた。

 

「バカシラフ! 発狂モードなったっすよ!」

「うおおお! 防げ防げ! 後ろにこぼしたらヤバい!」

「ああもう! 《シールドプロテクション》!」

 

 即座に回数制限のある防御スキルを展開し、その攻撃そのものを押し込む。

 ソラリスは盾の扱いを騎士系統によって熟達している。無数の弾幕も、押し込めば一箇所に集めることが可能。

 複数枚展開できる盾を持つソラリスは相手の範囲攻撃を防ぐことを得意としていた。

 

「「《サンダー・カタクラフト》」」

 

 全周囲電磁投射防壁魔法。それ用の兵装によるものだが、機械人形を中心に致死の電撃網が展開される。

 

「やば、近づけなくなったっす」

「盾で押し込め」

「《シールドプロテクション》《シールドバッシュ》!」

 

 ソラリスはシラフのその発言に合わせ、瞬時にストックを切り、それを強引に機械人形にへと押し付けた。

 《シールドバッシュ》はどちらかといえばノックバックさせる力の強いスキル。だが、ウルティマとのステータス共有による攻撃力が伴えば。

 電撃網を払うことぐらいは容易い。

 

「食らえっす! 《アサルトスロー》!」

 

 防御膜の隙、そこへめがけて魔剣を投げつける。肩口から胸の間に魔剣は突き刺さり、そのまま地面に機械人形を縫い付けた。

 時間軸に食い込む性質があるからか、一度突き刺さると抜くのに非常に苦労する剣でもある。

 片方が縫い止められれば、増えた片方もまたそれに伴って動けなくなる。体感覚を共有する幻覚症状の分身であるためか。

 

「ほいじゃグッバーイ、っすよ」

 

 二本目の魔剣で以て、ソラリスはチューリの首を刎ねる。

 機械人形の終わり。

 

「妙に厄介な相手だったっす……」

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