アビスシェルダー系超級とアニメ再現系生産型アホ二人。 作:内藤悠月
ウルティマと相対した【スクラップ・アビス】の取った一手は、逃走だった。
切り裂かれ、ちぎれた右腕。それを材料に、《自切分体》と 《
【ハイエンド・オーシャン・スライム】と呼ばれる、純竜級の海水スライムだ。莫大なHPと、莫大な体積。それを併せ持ち、純竜級でありながら下手な条件特化型UBMよりも討伐が困難なモンスターである。
それを壁として使い捨てにする。
「待て!」
ウルティマの静止の言葉は、届かない。届くと思って発してもいない。
20万近いSTRを使って、跳ねるように迷宮の奥へとかっ飛んでいく【スクラップ・アビス】。
「――《冬の帳》!」
【ドラグウィンター】、その固有スキル。《竜神器》によって増幅を重ねた竜王気が、瞬時に【ハイエンド・オーシャン・スライム】を凍結・粉砕する。
全身の各所から突き出た槍はあらゆるものを静止させる絶
だがそれは一瞬の隙。
たった一動作、それだけの時間で脅威は膨れ上がる。
『《メタリアル・マテリアライザー》』
貯蔵された莫大な数の魔眼。それが一斉に起動する。
それを統括する円盤は怪しげに輝いている。
創造されたのは【
それぞれが全て、改変兵装を備えた超級の脅威である。
そしてウルティマの後ろには、複数のマスター。協力者。一瞬逡巡するウルティマだったが。
「後背はお任せください! ウルティマは先へ!」
そう言い切ったのはアヤカだった。
前線指揮官としてこの場に立つ、状況を判断するためにいる者。
そして、そこ場に立つものは皆戦うためにここにいる。ウルティマに守られるためにいるわけではない。
「任せた!」
だから、この場を託してウルティマは飛ぶ。
その背面に、ジェットスラスターを展開し宙をかっ飛ぶ。
インフィニットデンドログラムにおいて、ジェット推進は不合理である。
轟音を立て、直進しか出来ず、器官に頼り、燃料と強度でしか速度を出せず、捕食者の餌にしかならない。
だが、絶対強者がまっすぐ前へ進むだけならば。
それは最良の手段となりうる。
弾丸のごとく、ただ前だけに。
ウルティマは変形する。衝角として槍を突き出し、ただ【スクラップ・アビス】を追うために。
□■□
<UBM>にしろ、マスターにしろ、【勇者】にしろ、多種で複数のスキルを持つ存在はある特異点を越えたタイミングである手法を獲得する。
手に入れた手札の枚数を整理し、より強力な手段へと昇華するために、その方法にたどり着くのだ。
それは複数のスキルを同時に、ひとつの
【勇者】の変幻自在の戦闘技法、“鵺”。あるいは、【アビスシェルダー】の持つ無敵の複合装甲。
そして《我流魔剣》。
方向性を同じくしたスキルの重ね合わせ。あるいは歯車のように噛み合ったスキル群による一極集中行使である。
勇者ビルドの最大の強みであり、同時に弱み。勇者ビルドにとって超えるべき壁のひとつだ。
その効果は上級職のスキル群であっても容易に超級職の奥義を越え、使える手札が多ければ多いほど強大なものにへと変貌していく。
ラーニング型であればなおのこと。どうあれ自らのスキルを整理し、ひとつにまとめあげ最強の形を作り上げる必要が生じるものだ。
数多くの装備品を束ね力とするウルティマもまた、その技法を会得している。
完全なる無敵を実現する多層概念防御。多属性多層射撃攻撃。固有スキルの多重詠唱。
そしてそれは次の段階に進むことを余儀なくされている。
最終奥義《
今のウルティマはなんにでもなれてしまう。
望むがままに、自在にその形を変え、その力を変え、自らのあり方を規定できる。
故に。
戦う形を作り出す必要があった。
□■□
すれ違いざまに【スクラップ・アビス】が浴びたのは冷たい爆発だった。
極限まで圧縮された冷気が【スクラップ・アビス】の眼前で炸裂し、体表が一瞬で凍結を起こしたのだ。
それと同時に強烈な衝撃が発生し凍結した箇所を容赦なく粉微塵に砕いていく。
『~~~~~~~~!!!』
これはなにか。青白い粒子が霧のように撒かれ、それが連鎖的に爆発を繰り返す。
「《
対応する特典武具は【冬竜撃槍 ドラグウィンター】。醤油抗菌の【アブラスマシ】をモデルに、竜王気に《冬の帳》と融合した弾薬の情報、火力系マスターのスキルを付与したウルティマの新たな攻勢形態である。
《竜神器:冬火征々》によって極限化した竜王気出力を攻勢能力に特化させた純然たる攻撃形態。
捕食能力の重ね合わせによって致死状態からでも回復できる【スクラップ・アビス】でなければこの一手で絶命していただろう。
そして当然、神話級は対応してくる。
散布するというプロセスを経る以上、空気の流れに依存する。
だからこそ。
『《エアタイトアーマー》』
魔眼の超過稼働。複数の魔眼の同時使用。自らの周囲に空気を集め、固定することで空気の流れを完全に遮断する。
それと同時に、空気を支配し、自らに有利な状況を構築して見せる。
だが。
その
「《
対応する特典武具は【Q極きぐるみしりーず ぺすか・ごーてぃ】。ゼタの【ウラノス】をモデルに、《最果ての宇宙》と複数のテリトリー系エンブリオを重ね合わせた領域制圧形態。
その効果は絶止の領域。外部で戦っている【マクロス・アリステア】が展開する領域の強化版。周囲を即座に真空の宇宙に近しい状態にし、あらゆる生命の活動を拒絶する。
そしてなによりも、
【破壊王】を模倣した【スクラップ・アビス】にとって致命的な効果。
踏ん張ることが出来なければ、20万近いSTRもその意味を失う。
ウルティマは作り出した隙を見逃さない。
「《
対応する特典武具は【すーばーきぐるみしりーず ぜたろどん】。ミロスラーヴァの【ヴォジャノーイ】をモデルに、総質量1tあたり1点ステータスを増強する特典武具と、複数機械の形状を由来した巨大ロボット形態である。
完全環境耐性こそ再現出来ずともその体躯とスペックを再現することは可能だった。
特に質量はウルティマにとっても武器である。適切に展開して振り回すだけで、伝説級ボスモンスターの首を吹き飛ばしたことすらある。
それを、ロボットの形でまとめることで最大の攻撃力を実現する攻勢形態として結実した。
そして、巨大な拳によるラッシュを【スクラップ・アビス】にへと叩き込む。
10で足りないなら100を、100で足りないなら1000を。
相手が再生するというなら死ぬまで攻撃し続ける。
その攻撃全てが致命的。
自己捕食によって自身の治癒し続けている【スクラップ・アビス】にとって、回復リソースは有限だ。【アビスシェルダー】と違い、蓄えから消費して回復しているがために、限界がある。
そして、これを相手に耐え続けるということは、リソースを削られきってそのまま死ぬということ。
打開手段はない。
悪夢の守りは喪われた。現在進行系でその総量を減らしつつある。
最強の形は無為になった。上回る力でもって、ねじ伏せられようとしている。
いや。
ひとつだけある。
だがそれは、【スクラップ・アビス】にとっての禁じ手。
この姿になってから、理屈だけは出来ていた。だがそれは……。
【
【スクラップ・アビス】にとって最大の侮蔑。【アビスシェルダー】に成り下がる、自己の否定。
だが、死んだら元も子もないのだ。
ゆえにこそ、その手札を切る。
《
それらをつなげ、自らの鎧に残る真珠を喰らい尽くす。
喰らえば喰らうほど、器は変質していく。
「おいおい、冗談だろ……? この鉄火場で<UBM>が覚醒とかアリかよ?
捕食学習の欠点。弱い力を取り込んで弱体化するリスク。不要な力が成長を圧迫するリスク。
それを無制限に溜め込める器に流し込むことで克服する。
文字通り鎧に残る命の全てを取り込んで、最強の形へと至る。
レベルアップに伴い与えられたそのスキルの名は《弱肉狂食》。
【破壊王】の疑似器を元にした、学習キャパシティ拡張のスキルである。
《
竜王気を凍結爆薬化するウルティマの新たな戦闘形態。
醤油抗菌ほどの瞬間火力は出せないが(コレに関しては醤油抗菌が青天井に伸ばせる点がおかしいだけ)、代わりに粒子化して散布することが可能となっている。
どちらかといえば爆豪のかっちゃんみたいな動きが可能な形態で、醤油抗菌本人が見れば似ても似つかないという感想になるだろう。
なお、コレに限らず《螺旋収束》に必要な竜王気の制御は、C4-685の【デウス・エクス・マキナ】に同乗した【読竜王】の手によって行われている。
《
ウラノススタイルと名乗りながらウラノスメタで構成された領域制圧形態。
直接のモデルは【モビーディック・ツイン】戦で見せた《コードNull:ファラウェイ・ホーム》。
真空化と解釈している時点でゼタに怒られる案件ではあるのだが……。
《
元々使っていた大型攻勢形態を最終奥義に合わせて増強させた攻勢形態。
耐性の方は再現できていない。元々ウルティマが高耐性であるのと、比較対象が超級の耐性のため。
どちらかといえばType:ギアとしてのあり方を模倣した形態のため、ロボット型のエンブリオなら大体似ていると言えてしまう形態でもある。